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第四章「暗雲を跳ね除けろ」
四猫神話の続き
しおりを挟む「悪霊猫が成仏したのは事実なのだが、その裏にはこの世を混沌させようとする魔の手の者たちがいたのだ。その名を『魔猫集団』。あの者たちが恨みを増幅させて悪霊猫を作り上げていたのだ。四猫神たちはそのことを突きとめ自らの命をもって魔猫の頭領を封印したのだ」
そうだったのか。
心寧は頷きつつも首を傾げた。
「ねぇ、ムサシくん。トウリョウってなに」
「えっ、えっとね。ボスってことかな。わかるかな」
「ボスか。それならわかる」
なるほど。
んっ、あれ……。ボスを封印したってのはわかったけど、なんでこの学校の地下にあるの。なにか関係あるのだろうか。
「教えてあげようか」
えっ、誰。
声のしたほうへ目を向けるとムサシがいた。いや、違う。ムサシの背後に光るものが浮かんでいる。あの光から声がする。
「僕はソウ。四猫神のひとり。君はシュレンの生まれ変わりだね。その慈愛に満ちた魂はまさにシュレンのものだ。心寧ちゃんだったかな。君はきっといい猫神になれそうだね」
「ほんとに、ほんとにそう思う」
「ふふふ。わたしもそう思うわ」
「おや、あなたはソメノではないですか。心寧ちゃんの守護霊をしていたとは驚きだ」
「ええ、わたしはソメノ。あなたの大好きなシュレンの親友よ」
えええ、なに、なに。どういうこと。
えっと、えっと。守護霊様はシュレンの親友で四猫神様のソウはシュレンが好きだったの。
「ソメノ、それは言わなくても……」
ムサシの背後の光が一瞬朱に染まった。
もしかして照れているのだろうか。ソウってかわいい。
あれ、ちょっと待って。ソウはもしかしてムサシの守護霊様なの。それじゃムサシの前世は誰だろう。
「ふふふ、心寧ちゃん混乱しちゃったかな」
「うんとね。よくわかんないかも」
「じゃ、そろそろ教えてあげるね。わたしは前の前の傘猫堂の猫神だったの。だからね、心寧ちゃんのこと園音にお願いしたの。あなたのお母さんにも伝えてね。理解してもらったの」
『お母さん……』
思い出したら涙が出てきちゃった。
「心寧ちゃん、どうかしたのかい」
「あっ、マネキ先生。なんでもないです」
マネキ先生は頷くと猫仙人に顔を向けた。
「それじゃ、大事なことを話すとしようか」
大事な話か。いったいなんの話だろう。
大事な話って言えば学校の下に四猫神様の墓があるのはなんでなの。あれ、ソウもソメノも消えちゃった。教えてくれるんじゃなかったの。
「消えてなんていないよ。守護霊だからね。けど、今は猫仙人の話を聞きなさい」
そうか。それなら猫仙人の話を聞かなきゃ。
「心寧ちゃん、大丈夫」
ムサシの言葉に頷き、猫仙人のほうに顔を向けた。
「では、話す前に心寧ちゃん、ルナちゃん、ムサシくん。前に来てくれるかな」
えっ、なんで。戸惑いながらもムサシに背中を押されてみんなの前にいく。
「以前、この三人は不思議な縁があると話したのは覚えているだろうか」
全員が頷く。
心寧も頷いた。
「実は、この三人は四猫神と関係があってな。まずは心寧ちゃんだが君は四猫神のひとりシュレンの生まれ変わりだ」
「はい、知っています」
「おお、そうか、そうか」
笑みを浮かべて猫仙人は頭を撫でてきた。
「それでルナちゃんだが君は四猫神のひとりハクの生まれ変わりだ」
「やはり、わたくしは由緒ある猫神の家系だったのですね。そうでしょう、そうでなきゃいけませんわ」
猫仙人は咳払いをひとつして話を続けた。
「最後に、ムサシくんなのだが君だけはちょっと違うな。四猫神のソウが守護霊としている。それにシュレンの兄の生まれ変わりでもある」
そうなのか。えっ、ということは前世では兄妹だったの。だから、優しくしてくれるのかも。それじゃ自分のこと好きってわけじゃないのだろうか。
ムサシをチラッとだけ見やりまた猫仙人へと顔を向けた。
「まだ、話はあるぞ。そのシュレンの兄がこの墓を作り結界を張ったのだ。それだけではまだ足りぬとここを守るべく猫神を育てようとこの学校を作ったのだ。四猫神の望みでもあったからな。意志を継いだってことだ。だから厳密にはこの学校の創始者は四猫神じゃなくシュレンの兄グムである。だが、グムは四猫神が創始者だと伝えているためそうなったってことだ」
そうなのか。ムサシの前世も四猫神様と同じくらい凄い。
「つまり、この猫神学園自体が魔猫の頭領を封印する結界となっているのだ」
そうなのか。
「ねぇ、ムサシくん。ケッカイってなに」
「うーん、そうだな。見えない壁でこの場所を守るみたいな感じかな」
「ふーん」
わかったようでわかんない。まあいいか。
あれ、ところで四猫神様ってもうひとりいるはずだけど。そうえいばさっきなんか話していたっけ。
えっと、えっと。
そうそうコクって四猫神様のひとりだ。けど、チムって誰。どこにいるの。
心寧は割れ目の入った墓をみつめブルッと身体を震わせた。
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