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第二章『猫神学園に入学だ』
秘密の祠
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猫神学園か。
こんなんでやっていけるのか心配だ。初日から自分のダメっぷりを痛感した。けど、四猫神と悪霊猫の戦いは見ることができた。それはすごいことだ。だけど、それも自分の力なのかどうか。
猫仙人が帰り際、「四猫神はすごかったであろう。体験できてよかったな」だなんて呟いていった。それってどういうこと。猫仙人は映像が見えていたことわかっていたの。それとも、猫仙人がなにかしたの。
きっとそうだ。やっぱり自分の力じゃない。自分にはなんにもないんだ。
さてと帰ろう。
とぼとぼと歩いていたらムサシがやってきた。
「心寧ちゃん、一緒に帰ろうよ」
ムサシだけだこんなにやさしくしてくれるのは。心寧は涙がでそうになった。
「ムサシくん、ありがとう」
ムサシは「僕はお礼を言われるようなことしていないよ」とやさしい笑みを浮かべていた。そんなことない。ムサシのおかげでどれだけ救われているか。ムサシはすでに猫神様だと言ってもいいんじゃないかって思えてくる。
「心寧ちゃん。じゃ、行こうか」
「ちょっと待った。ムサシくんは私と帰るの」
ココが突然割り込んで来てムサシを強引に引っ張っていく。ココったら、もう。
ムサシは苦笑いを浮かべてココと一緒に行ってしまった。断れない性質なのかもしれない。心寧はちょっとだけムサシに幻滅した。けど、やさしいからそうなってしまうのだろう。
まあいいや。早く帰ろう。
校門のところまで来て、心寧は立ち止まる。
どっちに行けば乙葉の家に帰れるのだろう。右、左、直進。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
帰り道がわからない。
朝は園音様の社からここに飛んで着ちゃったからここがどの辺なのかさっぱりわからない。園音様のいる傘猫堂神社の場所さえわかればなんとかなりそうだけど。
とりあえずまっすぐ行ってみようか。いやいや、右に。ううん、左だ。ダメダメ、適当に決めちゃダメ。逆方向に行っちゃったら最悪だ。それならどうする。
「心寧ちゃん、心寧ちゃん。こっち、こっち」
えっ、誰。
声のするほうに目を向けるとそこには園音様が手招きをしていた。
心寧はその姿に思わず駆け出して園音様に抱きついてしまった。
「あらあら、どうしたの。あれ、もしかして泣いているの」
心寧は「泣いてなんかいないもん」と言いつつ涙を拭った。
「それじゃ帰ろうか」
心寧は頷き園音様のあとについて歩いた。
「園音様、わたしね。あのね、猫神学園でやっていけるのか自信がないの」
「あら、そうなの。心寧ちゃんは猫神様にふさわしいと思うけどな」
「えっ、本当に。本当にそう思う」
「ええ、本当よ」
そうなのかな。本当に猫神様にふさわしいのかな。園音様がウソをつくはずがないし……。心寧は今日の授業を振り返ってみた。
猫仙人には『期待しているぞ』って言われたけど、運動もダメ、書写もダメ。他にどんな授業があるのかわからないけど、やっぱり自信が持てない。がんばらなきゃとは思うけど。
「園音様」
「なーに」
「わたし、なにをやってもダメダメなの。それでも猫神様になれると思う」
「あら、そんなにダメダメだったの」
「うん」
園音様はフッと微笑み「大丈夫、心寧ちゃんには相手のことを親身に思うやさしさがあるでしょ。困っている人を見過ごせない心があるでしょ。それが一番の猫神様に必要なものなのよ。授業についていけなかったとしても、きっといい猫神様になれるわ」と頭をそっと撫でてくれた。
そうなのか、猫神様に必要なものを持っているのか。自分にも自慢できることがあるってことなのか。なんだか心の中があったかくなってきた。
「園音様、ありがとう」
「どういたしまして」
ちょっとだけだけど心寧にも希望が見えた気がした。
「園音様、わたしがんばるね」
「応援しているわよ。あっ、心寧ちゃん。あそこに小さな祠があるのが見えるかな」
小さな祠。あっ、あった。
「あれがなに」
「あの祠の扉をコンコンって二回叩けば心寧ちゃんが今お世話になっているお家のそばまで行けるわよ」
「えっ、本当に」
園音は頷き、手を繋いでくると祠の扉を二回叩いた。すると、扉がゆっくりと開きはじめると光り出した。
そうかと思ったらいきなり突風が吹き荒れて祠の中へと引き込まれていく。
うわっ、なに。嫌だ、やめて。
心寧は足をバタつかせて祠の扉にしがみつこうとしたが間に合わなかった。
「心寧ちゃん、大丈夫よ。そのまま身を任せて」
大丈夫なの。本当に。けど、怖い。
「うわわわわぁーーーーー」
気づけば乙葉の家のそばに立っていた。あれ、どうなっているのだろう。夢じゃないと思うけど。後ろを振り返ると同じような祠がそこにあった。園音様もいた。
すごい、これすごい。これだったら学校に遅刻しないで済むかも。
「心寧ちゃん、この祠のことはなるべく他の子には秘密にしてね」
「うん、わかった」
心寧は大きく頷き、園音様に手を振ると乙葉の家に走って行った。
こんなんでやっていけるのか心配だ。初日から自分のダメっぷりを痛感した。けど、四猫神と悪霊猫の戦いは見ることができた。それはすごいことだ。だけど、それも自分の力なのかどうか。
猫仙人が帰り際、「四猫神はすごかったであろう。体験できてよかったな」だなんて呟いていった。それってどういうこと。猫仙人は映像が見えていたことわかっていたの。それとも、猫仙人がなにかしたの。
きっとそうだ。やっぱり自分の力じゃない。自分にはなんにもないんだ。
さてと帰ろう。
とぼとぼと歩いていたらムサシがやってきた。
「心寧ちゃん、一緒に帰ろうよ」
ムサシだけだこんなにやさしくしてくれるのは。心寧は涙がでそうになった。
「ムサシくん、ありがとう」
ムサシは「僕はお礼を言われるようなことしていないよ」とやさしい笑みを浮かべていた。そんなことない。ムサシのおかげでどれだけ救われているか。ムサシはすでに猫神様だと言ってもいいんじゃないかって思えてくる。
「心寧ちゃん。じゃ、行こうか」
「ちょっと待った。ムサシくんは私と帰るの」
ココが突然割り込んで来てムサシを強引に引っ張っていく。ココったら、もう。
ムサシは苦笑いを浮かべてココと一緒に行ってしまった。断れない性質なのかもしれない。心寧はちょっとだけムサシに幻滅した。けど、やさしいからそうなってしまうのだろう。
まあいいや。早く帰ろう。
校門のところまで来て、心寧は立ち止まる。
どっちに行けば乙葉の家に帰れるのだろう。右、左、直進。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
帰り道がわからない。
朝は園音様の社からここに飛んで着ちゃったからここがどの辺なのかさっぱりわからない。園音様のいる傘猫堂神社の場所さえわかればなんとかなりそうだけど。
とりあえずまっすぐ行ってみようか。いやいや、右に。ううん、左だ。ダメダメ、適当に決めちゃダメ。逆方向に行っちゃったら最悪だ。それならどうする。
「心寧ちゃん、心寧ちゃん。こっち、こっち」
えっ、誰。
声のするほうに目を向けるとそこには園音様が手招きをしていた。
心寧はその姿に思わず駆け出して園音様に抱きついてしまった。
「あらあら、どうしたの。あれ、もしかして泣いているの」
心寧は「泣いてなんかいないもん」と言いつつ涙を拭った。
「それじゃ帰ろうか」
心寧は頷き園音様のあとについて歩いた。
「園音様、わたしね。あのね、猫神学園でやっていけるのか自信がないの」
「あら、そうなの。心寧ちゃんは猫神様にふさわしいと思うけどな」
「えっ、本当に。本当にそう思う」
「ええ、本当よ」
そうなのかな。本当に猫神様にふさわしいのかな。園音様がウソをつくはずがないし……。心寧は今日の授業を振り返ってみた。
猫仙人には『期待しているぞ』って言われたけど、運動もダメ、書写もダメ。他にどんな授業があるのかわからないけど、やっぱり自信が持てない。がんばらなきゃとは思うけど。
「園音様」
「なーに」
「わたし、なにをやってもダメダメなの。それでも猫神様になれると思う」
「あら、そんなにダメダメだったの」
「うん」
園音様はフッと微笑み「大丈夫、心寧ちゃんには相手のことを親身に思うやさしさがあるでしょ。困っている人を見過ごせない心があるでしょ。それが一番の猫神様に必要なものなのよ。授業についていけなかったとしても、きっといい猫神様になれるわ」と頭をそっと撫でてくれた。
そうなのか、猫神様に必要なものを持っているのか。自分にも自慢できることがあるってことなのか。なんだか心の中があったかくなってきた。
「園音様、ありがとう」
「どういたしまして」
ちょっとだけだけど心寧にも希望が見えた気がした。
「園音様、わたしがんばるね」
「応援しているわよ。あっ、心寧ちゃん。あそこに小さな祠があるのが見えるかな」
小さな祠。あっ、あった。
「あれがなに」
「あの祠の扉をコンコンって二回叩けば心寧ちゃんが今お世話になっているお家のそばまで行けるわよ」
「えっ、本当に」
園音は頷き、手を繋いでくると祠の扉を二回叩いた。すると、扉がゆっくりと開きはじめると光り出した。
そうかと思ったらいきなり突風が吹き荒れて祠の中へと引き込まれていく。
うわっ、なに。嫌だ、やめて。
心寧は足をバタつかせて祠の扉にしがみつこうとしたが間に合わなかった。
「心寧ちゃん、大丈夫よ。そのまま身を任せて」
大丈夫なの。本当に。けど、怖い。
「うわわわわぁーーーーー」
気づけば乙葉の家のそばに立っていた。あれ、どうなっているのだろう。夢じゃないと思うけど。後ろを振り返ると同じような祠がそこにあった。園音様もいた。
すごい、これすごい。これだったら学校に遅刻しないで済むかも。
「心寧ちゃん、この祠のことはなるべく他の子には秘密にしてね」
「うん、わかった」
心寧は大きく頷き、園音様に手を振ると乙葉の家に走って行った。
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