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第二章『猫神学園に入学だ』
心寧の自己紹介
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小さく息を吐き、心寧はその場に立ち上がった。
自己紹介か。なんだか緊張する。ああ、皆に注目されている。心寧は胸に手を当ててみた。胸の奥でドクンドクンって誰かが太鼓を叩いているみたいだ。
大丈夫、きちんと自己紹介できる。落ち着いて。
ちゃんと思っていること話せばいいだけ。思っていること……。あれ、真っ白けだ。
どうしよう。頭の中が空っぽだ。なにか出てきて。頭の中の引き出しを片っ端から引き出して見る。
ウソでしょ。なんにもない。
とにかく落ち着いて。大丈夫。引き出しにはなにか入っているはず。よく見るの。
『わたしはやればできる子だ。そうだよね、お母さん。園音様。ムムタさん』
心寧は深呼吸をひとつしてみんなのほうに向きお辞儀をした。
「心寧です。えっと、えっと、わたしは野良だけど猫神様になりたいんです。傘猫堂神社の園音様のような猫神様になりたいんです。それでここで学ぼうと思っています。えっと、えっと……。猫神様のことよくわからないけど、がんばります。みんな、仲良くしてね」
心寧は再びお辞儀をして席に座った。
「おい、おい。もう終わりか。ウソっぱちの趣味とか特技とかないのか」
「ちょっと、わたしはウソっぱちじゃないわ。心寧よ」
「はい、はい」
もうなによ。嫌なやつ。あれで猫神様になろうっていうの。あっ、ダメダメ。サビ猫のことなにもわかってないのに決めつけちゃダメでしょ。怒っちゃダメ。神様はやさしくなきゃ。園音様みたいになるの。心寧は怒りをグッと堪えて心の奥へと押しやった。けど、心の奥に押し込めた怒りの塊が飛び出そうと暴れている。
落ち着いて、お願い。
心寧はお母さんのやさしい笑顔を頭に浮かべて再び深呼吸をした。そのおかげで怒りがスッと静まっていった。
あれ、ちょっと待って。ミヤビは今、自分の趣味とか特技とか訊いてきた。もしかして、自分に興味があるのかも。ウソっぱちなんて嫌なこと言うけどミヤビは……。
ううん、違う、違う。ミヤビに好かれてもなんか嫌だ。あっ、ダメダメ。そんなこと思っちゃダメ。きちんとみんなのこと観察して理解しなきゃ。ミヤビにもいいところがあるはず。きとんと見てあげなきゃ。
「それで、心寧さん。なにか趣味とか特技とかあるのかしら」
うわっ、まぶしい。
ドレスの子の後ろから光が。なにこれ。やっぱりあの子はもう神様なんじゃないの。なんだか憧れちゃう。あっ、質問に答えなきゃ。
「えっと、わたしは、その。趣味も特技もこれといってないです。けど、みんなにしあわせになってもらいたいって気持ちは負けないつもりです」
そう気持ちだけは負けない。
「あら、そう。まあ、がんばりなさい」
なんだろう。すごく上から目線だ。けど、完全に負けている気がしてそれでもいいかと思ってしまう。きれいだし、オーラもあるし素敵だ。もしかしたらあの子は代々神様の家系なのかも。そうだとしても、自分なりにがんばるだけ。
ダメダメでもきっと猫神様になれる。
「心寧ちゃん、まだなにか言いたいことあるのかな」
「えっ」
あっ、立ちっぱなしだった。心寧は慌ててお辞儀をして席につき小さく息を吐く。なんとか無事に自己紹介を終えられた。よかった。
「それじゃ、次はノワールくんにお願いしようかな」
自己紹介か。なんだか緊張する。ああ、皆に注目されている。心寧は胸に手を当ててみた。胸の奥でドクンドクンって誰かが太鼓を叩いているみたいだ。
大丈夫、きちんと自己紹介できる。落ち着いて。
ちゃんと思っていること話せばいいだけ。思っていること……。あれ、真っ白けだ。
どうしよう。頭の中が空っぽだ。なにか出てきて。頭の中の引き出しを片っ端から引き出して見る。
ウソでしょ。なんにもない。
とにかく落ち着いて。大丈夫。引き出しにはなにか入っているはず。よく見るの。
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心寧は深呼吸をひとつしてみんなのほうに向きお辞儀をした。
「心寧です。えっと、えっと、わたしは野良だけど猫神様になりたいんです。傘猫堂神社の園音様のような猫神様になりたいんです。それでここで学ぼうと思っています。えっと、えっと……。猫神様のことよくわからないけど、がんばります。みんな、仲良くしてね」
心寧は再びお辞儀をして席に座った。
「おい、おい。もう終わりか。ウソっぱちの趣味とか特技とかないのか」
「ちょっと、わたしはウソっぱちじゃないわ。心寧よ」
「はい、はい」
もうなによ。嫌なやつ。あれで猫神様になろうっていうの。あっ、ダメダメ。サビ猫のことなにもわかってないのに決めつけちゃダメでしょ。怒っちゃダメ。神様はやさしくなきゃ。園音様みたいになるの。心寧は怒りをグッと堪えて心の奥へと押しやった。けど、心の奥に押し込めた怒りの塊が飛び出そうと暴れている。
落ち着いて、お願い。
心寧はお母さんのやさしい笑顔を頭に浮かべて再び深呼吸をした。そのおかげで怒りがスッと静まっていった。
あれ、ちょっと待って。ミヤビは今、自分の趣味とか特技とか訊いてきた。もしかして、自分に興味があるのかも。ウソっぱちなんて嫌なこと言うけどミヤビは……。
ううん、違う、違う。ミヤビに好かれてもなんか嫌だ。あっ、ダメダメ。そんなこと思っちゃダメ。きちんとみんなのこと観察して理解しなきゃ。ミヤビにもいいところがあるはず。きとんと見てあげなきゃ。
「それで、心寧さん。なにか趣味とか特技とかあるのかしら」
うわっ、まぶしい。
ドレスの子の後ろから光が。なにこれ。やっぱりあの子はもう神様なんじゃないの。なんだか憧れちゃう。あっ、質問に答えなきゃ。
「えっと、わたしは、その。趣味も特技もこれといってないです。けど、みんなにしあわせになってもらいたいって気持ちは負けないつもりです」
そう気持ちだけは負けない。
「あら、そう。まあ、がんばりなさい」
なんだろう。すごく上から目線だ。けど、完全に負けている気がしてそれでもいいかと思ってしまう。きれいだし、オーラもあるし素敵だ。もしかしたらあの子は代々神様の家系なのかも。そうだとしても、自分なりにがんばるだけ。
ダメダメでもきっと猫神様になれる。
「心寧ちゃん、まだなにか言いたいことあるのかな」
「えっ」
あっ、立ちっぱなしだった。心寧は慌ててお辞儀をして席につき小さく息を吐く。なんとか無事に自己紹介を終えられた。よかった。
「それじゃ、次はノワールくんにお願いしようかな」
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