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2ndプロジェクト 殺人詐欺の怪奇談
17.詐欺が奏でる大胆的地道な復讐計画
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「まあ。今回の計画について、依頼人やみんなには話してないんだけど、だいたい脳内にあるんだよね」
「マジかあ……今回こそは犯罪と呼べる行動をしなくちゃなんねえんだよな……あ。立ってるのもなんだし……」
してもいない罪の重さに恐れ入るぼく。彼女たちに椅子を部室の隅から取り出して、小さな声で座るよう勧めた。古月さんは腰を掛けて、東堂さんを見る。これから彼女が笑顔で言い出す犯罪計画とは何であろうか。
「じゃあ、詐欺の仕方について説明するね!」
東堂さんはチョークを上に投げ、格好よくキャッチしてから正面の黒板に「詐欺」と大きく書いてしまった。その様子を古月さんが、素早く異議を申し立てた。
「ねえ! ここ職員室前の教室なんだし! 詐欺って書くのはやめない? この部活動は秘密何でしょ! それに今から犯罪の仕方を説明するわけでしょ? ちょっと痛むものが……」
彼女の指摘がなければ、ぼくの心はナイフで切り刻まれていたかもしれない。確かにそうだ。教師の目も危険だが、その方法を習うというのは何となく良心が叩かれたり、刺されたりするように痛みを感じる。
その言葉で古月さんやぼくの気持ちを察したのか彼女なりの解決策を教えてくれた。
「じゃあ、今から私が言ったり書いたりのは計画に見せかけた予防策。これでユニちゃんの悩みも大丈夫とまではいかなくても、心にくる攻撃がクッションによって抑えられることくらいはできると思う」
つまり詐欺の被害にあわないようにする計画をぼくたちに教え、そこから計画を知れ。そういうことなんだよな。この方法なら例え、教師に見られたとしても「近所の人が詐欺にあわないようにするため」の一言で許される。だって、ボランティア部なんだもの。
「ボランティア……奉仕……犯罪被害に…………合わせないようにするのも……ボランティア、そう言えばいい」
河井さんは相変わらず無口の様だが、しっかりと物事を考えてくれているみたいだ。副部長として申し分ない力を持っているようで頼もしい。そして、その賢い頭を犯罪に使っているのが少々悲しい気がした。
あれ。では何故、自分はここにいるのだろうか?
「エナちゃん。先生が来たら、真っ先にそれ言ってあげて。で、説明始めるよ!」
「いいわよ」
「まず、詐欺をするとするでしょ。その種類、一人ずつ何個か言ってみて?」
ここで質問か……よし。あれを……
「オレオレ詐欺はあるでしょ? それからワンクリック詐欺……ミステリーだと保険金詐欺、結婚詐欺なんかもあるわね」
古月さんが知っているものをほとんど答えてしまった。ぼくが急いで言葉を出そうとしたのだが、数秒の差で先を越されてしまった。
「架空請求詐欺、融資保証金詐欺……還付金詐欺……これと古月の……オレオレ詐欺が……電話を使う詐欺。……フィッシング詐欺……寸借詐欺……リフォーム詐欺……前金詐欺……フィッシング詐欺………募金詐欺、キャンセル詐欺……予約詐欺……あと後払いとするものを最初から払う気がなくて、食べたり使ったりするのも……詐欺に……なる。注意して」
「……ええ」
ぼくは河井さんから自分の持っている財布を遠くに離した。別に取られるわけではないの分かっている……しかし法律に興味がある訳でもないのに犯罪を知っていたことに、どうしても不信感が湧いてきてしまった。
「陽介君、言える詐欺は……」
「ないよ。言いたかったの、全部出ちゃったから」
「そ、そうよね。エナちゃん、勉強してるからね。凄いからね!」
東堂さんも焦っているように聞こえた。気のせいならば、良いのだが。
後はその知識を河井さんが犯罪に使わないように祈るばかりである。頼むから、その知恵を正義に使ってくれ……
「まあ、それで今回教える犯罪は架空請求詐欺」
その言葉。実際は架空請求詐欺で進めていくつもりなのだろう。
架空請求詐欺。それは払わなくても良い使用料を請求することで、お金を手に入れる詐欺である。この手の詐欺はかなり流通しているものだから、誰でも知っているはずだ。
そんな知識を頭の中から取り出していると、東堂さんが笑い出した。もう計画が成功したかのように……
「知ってる? 断言できるんだけどこういう詐欺で犯人が捕まることも、そもそも被害者が通報することもほとんどないのよ!」
「な、なんだって!? ……ねえ」
河井さんが冷静な顔をしているので敢えて今の話をした東堂さんではなく、彼女に説明を求めた。
「ワンクリック詐欺も……架空請求の仲間……例えば、君がインターネット……使ってるとき……身に覚えのない……請求が来たらどうする?」
「どうするって、だいたい無視するな」
「その通り」
河井さんは頷いて少しだけ微笑みを見せた。河井さん……何だか、目を合わせづらくなってしまった。何故なんだろ。姉さんとは嫌という程、目を合わせられるというのに……今はどうでもいいか。
「えっと……だから、わざわざ通報する人もいないし、逮捕もされない確率が高いのか。だから、東堂さんはこれを?」
「そうよ! 特に男性陣は気をつけてね……被害にあう人多いみたいだから。まあ、どうにしても、そういうワンクリック詐欺は深入りすると情報盗られちゃうから、無視することが一番だよ!」
男性陣と言っても、この部活。男子はぼく一人なんだけどね。
そこに呆れ笑いをしていると、東堂さんは黒板にとある文章を書いていた。
「特に男子は注意すること。アダルトサイトなどに入ると、その情報を誰かに知られたくないという思いから、払ってしまうことがあるから……」
飛び出そうな眼玉を抑え、彼女の字を黒板消しで遠慮なく消させていただいた!
「マジかあ……今回こそは犯罪と呼べる行動をしなくちゃなんねえんだよな……あ。立ってるのもなんだし……」
してもいない罪の重さに恐れ入るぼく。彼女たちに椅子を部室の隅から取り出して、小さな声で座るよう勧めた。古月さんは腰を掛けて、東堂さんを見る。これから彼女が笑顔で言い出す犯罪計画とは何であろうか。
「じゃあ、詐欺の仕方について説明するね!」
東堂さんはチョークを上に投げ、格好よくキャッチしてから正面の黒板に「詐欺」と大きく書いてしまった。その様子を古月さんが、素早く異議を申し立てた。
「ねえ! ここ職員室前の教室なんだし! 詐欺って書くのはやめない? この部活動は秘密何でしょ! それに今から犯罪の仕方を説明するわけでしょ? ちょっと痛むものが……」
彼女の指摘がなければ、ぼくの心はナイフで切り刻まれていたかもしれない。確かにそうだ。教師の目も危険だが、その方法を習うというのは何となく良心が叩かれたり、刺されたりするように痛みを感じる。
その言葉で古月さんやぼくの気持ちを察したのか彼女なりの解決策を教えてくれた。
「じゃあ、今から私が言ったり書いたりのは計画に見せかけた予防策。これでユニちゃんの悩みも大丈夫とまではいかなくても、心にくる攻撃がクッションによって抑えられることくらいはできると思う」
つまり詐欺の被害にあわないようにする計画をぼくたちに教え、そこから計画を知れ。そういうことなんだよな。この方法なら例え、教師に見られたとしても「近所の人が詐欺にあわないようにするため」の一言で許される。だって、ボランティア部なんだもの。
「ボランティア……奉仕……犯罪被害に…………合わせないようにするのも……ボランティア、そう言えばいい」
河井さんは相変わらず無口の様だが、しっかりと物事を考えてくれているみたいだ。副部長として申し分ない力を持っているようで頼もしい。そして、その賢い頭を犯罪に使っているのが少々悲しい気がした。
あれ。では何故、自分はここにいるのだろうか?
「エナちゃん。先生が来たら、真っ先にそれ言ってあげて。で、説明始めるよ!」
「いいわよ」
「まず、詐欺をするとするでしょ。その種類、一人ずつ何個か言ってみて?」
ここで質問か……よし。あれを……
「オレオレ詐欺はあるでしょ? それからワンクリック詐欺……ミステリーだと保険金詐欺、結婚詐欺なんかもあるわね」
古月さんが知っているものをほとんど答えてしまった。ぼくが急いで言葉を出そうとしたのだが、数秒の差で先を越されてしまった。
「架空請求詐欺、融資保証金詐欺……還付金詐欺……これと古月の……オレオレ詐欺が……電話を使う詐欺。……フィッシング詐欺……寸借詐欺……リフォーム詐欺……前金詐欺……フィッシング詐欺………募金詐欺、キャンセル詐欺……予約詐欺……あと後払いとするものを最初から払う気がなくて、食べたり使ったりするのも……詐欺に……なる。注意して」
「……ええ」
ぼくは河井さんから自分の持っている財布を遠くに離した。別に取られるわけではないの分かっている……しかし法律に興味がある訳でもないのに犯罪を知っていたことに、どうしても不信感が湧いてきてしまった。
「陽介君、言える詐欺は……」
「ないよ。言いたかったの、全部出ちゃったから」
「そ、そうよね。エナちゃん、勉強してるからね。凄いからね!」
東堂さんも焦っているように聞こえた。気のせいならば、良いのだが。
後はその知識を河井さんが犯罪に使わないように祈るばかりである。頼むから、その知恵を正義に使ってくれ……
「まあ、それで今回教える犯罪は架空請求詐欺」
その言葉。実際は架空請求詐欺で進めていくつもりなのだろう。
架空請求詐欺。それは払わなくても良い使用料を請求することで、お金を手に入れる詐欺である。この手の詐欺はかなり流通しているものだから、誰でも知っているはずだ。
そんな知識を頭の中から取り出していると、東堂さんが笑い出した。もう計画が成功したかのように……
「知ってる? 断言できるんだけどこういう詐欺で犯人が捕まることも、そもそも被害者が通報することもほとんどないのよ!」
「な、なんだって!? ……ねえ」
河井さんが冷静な顔をしているので敢えて今の話をした東堂さんではなく、彼女に説明を求めた。
「ワンクリック詐欺も……架空請求の仲間……例えば、君がインターネット……使ってるとき……身に覚えのない……請求が来たらどうする?」
「どうするって、だいたい無視するな」
「その通り」
河井さんは頷いて少しだけ微笑みを見せた。河井さん……何だか、目を合わせづらくなってしまった。何故なんだろ。姉さんとは嫌という程、目を合わせられるというのに……今はどうでもいいか。
「えっと……だから、わざわざ通報する人もいないし、逮捕もされない確率が高いのか。だから、東堂さんはこれを?」
「そうよ! 特に男性陣は気をつけてね……被害にあう人多いみたいだから。まあ、どうにしても、そういうワンクリック詐欺は深入りすると情報盗られちゃうから、無視することが一番だよ!」
男性陣と言っても、この部活。男子はぼく一人なんだけどね。
そこに呆れ笑いをしていると、東堂さんは黒板にとある文章を書いていた。
「特に男子は注意すること。アダルトサイトなどに入ると、その情報を誰かに知られたくないという思いから、払ってしまうことがあるから……」
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