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漣華、自覚する。
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私は、この方が好きだ。
そう自覚した途端、漣華の顔に血が昇る。
恥ずかしさのあまり、体が熱くなり、思わず視線をさまよわせる。
先ほどまで己を慰めようと、あれほどに乱れた格好をしていたのに、礼記の声を聞いてから慌てて身づくろいをしたものの、上に一枚だけ羽織って下は先ほどと同じ単衣姿だ。
単衣とは言っても褲褶、裾丈の短い上着にズボンを履いてさらに靴下まで穿いたままだから、肌が直接礼記の目に触れることはない。
けれど、先ほど使った油は慌てて拭ったからまだ大丈夫だとしても、わずかな精臭が漂ってはいないだろうか。
まさか当の本人にそんなことは聞けない。
そういうことを聞けば、白状させられるだろうし。
あなたをおかずにしてました。
だなんて絶対に言えない。
しかもたった今、自らの思いを自覚したばかりだ。
そんなのがバレでもしたら、どんなに冷たい目線が来ることか!
求婚されている身にしてもバレたら求婚自体がなかったことにされるかもしれない。
そうなったら、と思うと血の気が引いていく。
指先が冷たくなって身体も震えてくる。
ひとりでそんなことを考えていると、そっと額を温かなものが触れた。
え、と視線をあげると礼記の顔が案外近くにあって目を丸くする。
「あ、あの」
「先ほどからお顔の色がよろしくない。赤くなったかと思ったら青くなったり。もしかしてお風邪でも召されましたか?」
熱を測ろうとしてくれていたようで、額には礼記の手のひらが当てられていた。
もう片方は礼記自身の額に当てられている。
「これだとよくわからんな。失礼つかまつる」
そう言うと、ぐいっと片腕で抱き上げられ、膝の上に横抱きにされる。
そうして、礼記の額と漣華の額がこつんと当てられて漣華は慌てた。
「れい、き、さま」
声がかすれる。
「すまない、漣華どの。お熱があるかどうかだけでも。すこしじっとしていてもらえるだろうか」
漣華はこくり、と咽喉を鳴らし、目を閉じた。
もう、顔から火が出そうだ。
たった今自覚したばかりだと言うのに。
こんなに顔が近い。
延唐で最も有力な武家の出で、最も若い将軍。
漣華とて木石ではないから、職場であったり瑯炎の私邸に物売りに来る行商人であったり。
そういった庶民からも話題にのぼるほどに、礼記の人気は高い。
そんな人から、求婚を受けて、たった今、自覚して。
しかも熱を測られているっていったい何の拷問だろう。
なんて甘くて恥ずかしくて。
しかもじっとしていてほしいだなんて、ツラい。
やがて、額から温もりが遠くなり、残った温かさも冷えていく。
それを残念に思いつつ、目を開けようとすると、唇に温もりが触れた。
思わず目を開けると目の前には、礼記がほほ笑んでいる。
「あ」
「あまりに可愛らしくて、我慢できませんでした。申し訳ない」
顔にまた火がともる。
心臓がどくどくと音を立てて、まるで西洋で走っていると言う機関車が内蔵されたかのようで、漣華はどうしていいかわからなくなった。
「お熱も多少ある様子、あとで人を呼びますので、今日はそのままお休みになられてください」
そう言って漣華に布団を掛け、甲斐甲斐しく世話をする。
漣華が戸惑いながらもわずかな不安を隠しきれずに目をさ迷わせると、布団の下に入れていた手を握り、指先に口づけを落とした。
それを見てさらに漣華は赤くなる。
この方はどうしてこんなに私を恥ずかしがらせるのだろうか。
ある意味、憎まれでもしたのかと真剣に悩む。
そして、礼記は何かに気づいたかのように漣華の指先に鼻を当てて、すーっと吸い込んで匂いを嗅いだ。
そうして、唇に弧を描くと、漣華の耳元でささやく。
「次は、こういうことをせずに済むように私に愛させてくださいね」
そういうとまた唇に口づけを落として、にこやかに笑いながら出て行った。
しばらくあっけに取られていた漣華がその言葉の意味に気づいて、布団の中で羞恥に悶えたのは内緒の話。
それからしばらくは揮将軍の機嫌がやたらにいいと外宮内で評判になったのはあとの話。
そう自覚した途端、漣華の顔に血が昇る。
恥ずかしさのあまり、体が熱くなり、思わず視線をさまよわせる。
先ほどまで己を慰めようと、あれほどに乱れた格好をしていたのに、礼記の声を聞いてから慌てて身づくろいをしたものの、上に一枚だけ羽織って下は先ほどと同じ単衣姿だ。
単衣とは言っても褲褶、裾丈の短い上着にズボンを履いてさらに靴下まで穿いたままだから、肌が直接礼記の目に触れることはない。
けれど、先ほど使った油は慌てて拭ったからまだ大丈夫だとしても、わずかな精臭が漂ってはいないだろうか。
まさか当の本人にそんなことは聞けない。
そういうことを聞けば、白状させられるだろうし。
あなたをおかずにしてました。
だなんて絶対に言えない。
しかもたった今、自らの思いを自覚したばかりだ。
そんなのがバレでもしたら、どんなに冷たい目線が来ることか!
求婚されている身にしてもバレたら求婚自体がなかったことにされるかもしれない。
そうなったら、と思うと血の気が引いていく。
指先が冷たくなって身体も震えてくる。
ひとりでそんなことを考えていると、そっと額を温かなものが触れた。
え、と視線をあげると礼記の顔が案外近くにあって目を丸くする。
「あ、あの」
「先ほどからお顔の色がよろしくない。赤くなったかと思ったら青くなったり。もしかしてお風邪でも召されましたか?」
熱を測ろうとしてくれていたようで、額には礼記の手のひらが当てられていた。
もう片方は礼記自身の額に当てられている。
「これだとよくわからんな。失礼つかまつる」
そう言うと、ぐいっと片腕で抱き上げられ、膝の上に横抱きにされる。
そうして、礼記の額と漣華の額がこつんと当てられて漣華は慌てた。
「れい、き、さま」
声がかすれる。
「すまない、漣華どの。お熱があるかどうかだけでも。すこしじっとしていてもらえるだろうか」
漣華はこくり、と咽喉を鳴らし、目を閉じた。
もう、顔から火が出そうだ。
たった今自覚したばかりだと言うのに。
こんなに顔が近い。
延唐で最も有力な武家の出で、最も若い将軍。
漣華とて木石ではないから、職場であったり瑯炎の私邸に物売りに来る行商人であったり。
そういった庶民からも話題にのぼるほどに、礼記の人気は高い。
そんな人から、求婚を受けて、たった今、自覚して。
しかも熱を測られているっていったい何の拷問だろう。
なんて甘くて恥ずかしくて。
しかもじっとしていてほしいだなんて、ツラい。
やがて、額から温もりが遠くなり、残った温かさも冷えていく。
それを残念に思いつつ、目を開けようとすると、唇に温もりが触れた。
思わず目を開けると目の前には、礼記がほほ笑んでいる。
「あ」
「あまりに可愛らしくて、我慢できませんでした。申し訳ない」
顔にまた火がともる。
心臓がどくどくと音を立てて、まるで西洋で走っていると言う機関車が内蔵されたかのようで、漣華はどうしていいかわからなくなった。
「お熱も多少ある様子、あとで人を呼びますので、今日はそのままお休みになられてください」
そう言って漣華に布団を掛け、甲斐甲斐しく世話をする。
漣華が戸惑いながらもわずかな不安を隠しきれずに目をさ迷わせると、布団の下に入れていた手を握り、指先に口づけを落とした。
それを見てさらに漣華は赤くなる。
この方はどうしてこんなに私を恥ずかしがらせるのだろうか。
ある意味、憎まれでもしたのかと真剣に悩む。
そして、礼記は何かに気づいたかのように漣華の指先に鼻を当てて、すーっと吸い込んで匂いを嗅いだ。
そうして、唇に弧を描くと、漣華の耳元でささやく。
「次は、こういうことをせずに済むように私に愛させてくださいね」
そういうとまた唇に口づけを落として、にこやかに笑いながら出て行った。
しばらくあっけに取られていた漣華がその言葉の意味に気づいて、布団の中で羞恥に悶えたのは内緒の話。
それからしばらくは揮将軍の機嫌がやたらにいいと外宮内で評判になったのはあとの話。
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