それはチートです

茶盾虫

文字の大きさ
上 下
9 / 23
それは旅立ちの始まりでした。

王国の現状にゃし!

しおりを挟む
ロイドが旅立った日の夕刻、ミールから使者が面会に現れた。
神国ミール大神官の1人、ミズキ・フジワラ。

「お前は勇者の1人だった筈だが?」

「手柄を立てましたの。先の皇帝を討ちましたわ・・・」

クルーガー帝国の先の皇帝は20年前に戦場で討死したとあったが、前に居るミズキ・フジワラはどう見てもロイドより若い。

ー   中身はババアか・・・   ー

マルカスは近衛隊長を呼び、ロイドの報告をさせた。

「国賊ロイドは現在逃亡中、全王国騎士団をもって捜査しておりますが・・・おそらく帝国に逃げたものかと・・・」

マルカスは手を挙げ、近衛隊長を下がらせた。

「報告にあった通り、愚弟、ロイド=バスール・ルクレインは現在逃亡中である」

「・・・逃した。の、間違いでは?」

「俺、いや我が国はミールとはこれ以上関係を悪化させたく無いのだが?」

「よく言う・・・」

ミズキは近衛騎士団に向け、手をかざした。
近衛騎士団は一斉に抜剣し、ミズキまで距離を詰めた。

「・・・貴様の操作系スキルには充分に注意しているからな?配下は既にスキルに対応しておる」

「・・・フン」

ミズキのギフトスキル【遠隔操縦ラジコン】は、他人を意思を奪わずに操作出来る。
だが、バスール近衛騎士は操作系を無効に出来る【戦纏】を持っている。
ミズキが万が一にマルカスを殺害しよう物なら直ちにミズキを斬り捨てるよう配置されていたのだ。
ミズキがスキルを発動しようにも【戦纏】をした近衛騎士団には一切効かなかった。
それもその筈、【戦纏】には前公王、王妃を殺された怨みを使っているからだ。
その気持ちが源の【闘気高揚】である。

「・・・話を変えるわ、神官の1人を匿ってないでしょうね?」

ミズキは【遠隔操縦】を切り、臨戦態勢を解いた。

「神官を匿ってなんの利益がある?見つけ次第、首を刎ねてやるわ!!」

ー   神官の1人を匿う?何かあったのか?   ー

「・・・リュウ・イガラシ、その名前だけでも覚えといて」

そう言い残し、ミズキは消えた。
正確には【転移】した。
マルカスは近衛騎士団に警戒を解かせ、頬杖をついた。

「さて、ロイドは何人間引く事やら・・・」

そう呟き、物思いに耽るマルカスだった。

~・~・~・~・~・~・~・~

ミール首都、サイサリスから逃げるようにバスールを目指して移動する2人がいた。

「歩けるか?イナホ」

「大丈夫ですお父様・・・」

男と女の2人、2人とも黒いローブに身を包み、街道から離れた林の中を進んでいた。
男の手には魔剣が携わり、進行方向の木々を切りながら進んでいた。

「マッサキに着いたら宿を借りよう。信頼出来る宿だ」

「はい、お父様」

だが、男の行く手に阻む者が現れた。

「リュウ・イガラシだな?」

そう言うと、魔剣を持った男に斬りかかる。

「【身体強化】30%!!」

魔剣を持った男がスキルを発動し、降りかかる刃を止める。

「へ!ジジイにしてはやるじゃないか!!」

「まだ貴様等小僧に負けはせん!俺は本物の勇者の1人だからな!!」

魔剣を持った男、リュウ・イガラシはそう言って、相手の刃を払う。

「へ!まるで俺が偽者の勇者みたいじゃねえか!【拘束の罠】発動!!」

「お父様!【幻想の霧】発動!!」

女、イナホはスキルを発動し、林が霧に包まれた。

【拘束の罠】を発動した男は自分のスキルの位置を斬る。

「・・・ちっ・・・」

そこにはイガラシの魔剣と腕だけが残っていた。

「・・・行き先は解ってるんだぜ?大神官イガラシさんよお?」

そう言って男は霧の向こうを見た。

マッサキの街を・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...