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 ぜいぜいと息をしながら、時折、尻の穴から精液がこぼれる感覚にびくりと腰を震わせることしか出来ない。

 余韻に浸ったまま、僕はこのままここで寝てしまいたかった。こんな、汗をかいて精液と潮でべたべたになって、体力を使った後に浴室で、しかもタイルの上で横になって眠ったら、確実に風邪をひくことは分かり切っているが。
 でも、どうせ中からかきだしたり体を清めたり、後始末を浴室でしないといけないのだから、移動するのも面倒だ。

 ……いや、これ、中から出るか?

 人間相手だと、下腹部が張っている感覚がある。精液で腹が膨れることなんて、そうそうない。男のモノのサイズからして、指で全部かきだすのは無理だろう。
 エロ本みたいな状態にちょっと興奮するが――それはそれとして、現実問題、精液を出し切って綺麗にできないと非常に大変なことになってしまう。明日、腹を下しそうだな、と今から少しだけ憂鬱になる。

 でも、それを帳消しにするくらい、男とのセックスはよかった。
 ヤってる最中は散々、やめて、とか、待って、とか騒いだ記憶があるが、なんやかんや終わって振り返れば、気持ちよかった最高、という感想になってしまうあたり、自分の性欲が恐ろしくなる。本当に純血オメガでよかった。普通のオメガだったら、もう何人子供が出来ていたか分からない。

「……すまない、大丈夫か?」

 男の気遣うような声。僕は力なく、うなずく。今すぐ動いて、というのは無理だが、少し休めばどうとでもなる。
 大丈夫、という意味をこめて少しほほ笑むと、ごくり、と男が唾を飲み込むのが分かった。

 ――……いや、大丈夫とは言ったけど。再戦は流石に難しいぞ。

「オレと――番になってくれないか」

「――……は?」

 反射で「は?」と答えてしまって、少し経って、意味を咀嚼しきってから、僕は、再度、「は?」と声を漏らした。

 番、というのは、バース性的なもののことではなく、獣人同士で使う、恋人や、夫婦ないしパートナーのことだろう。この世界にバース性があるのかは知らない。ペット扱いを受ける人間に、それを知る機会はない。
 僕が思う番と、彼の言う番がイコールじゃないにしても、特別な相手に使う表現だというのは、なんとなく分かる。

 それを人間である僕に言う、とは……?

 この世界の特徴なのか、この国の文化なのかは分からないが、とにかく、この辺りに住む獣人にとって、人間は獣人以下の生物である。同等の存在じゃない。
 その、はず。

 この二か月、獣人が僕に対する反応を見て、そう感じたのだ。
 ……からかっているのか?

「え、普通にやだ」

 不審に思いながらも、僕は、そう言った。
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