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「先に温めてくるから、服脱いで待ってて」

 僕は脱衣所に男を置いて、先にシャワー室へと入る。
 浴槽のない、シャワー室は、暖房機能がないので、そのままだと少し寒い。暖房がないのは残念だが、水回りの設備が元の世界とほとんど変わらないだけマシだろう。しかも、シャワーは元の世界でも元居た国と変わらない、シャワーフックに引っかけて、自由に動かせるタイプ。

 先にお湯をある程度かけるだけでも全然違うのだ。
 ……それから、こっそりと中に出された精液を出しておかないといけないし。気にしない人は気にしないが、気になる人は気になるものだ。さっきは複数人にまわされていたからいちいち洗う余裕はなかったが、少しでも洗えるならしておきたい。
 本当なら、じっくり綺麗にしておきたいけど、そんな時間はなさそうだ。

「ふ――ン、っ」

 僕は自ら、穴に指をつっこんで精液をかきだす。長時間使われていたそこは、しっかりほぐれていて、二本の指なんて簡単に入ってしまう。
 ぼたぼたと垂れる精液に、どれだけだされたんだ、と思わず見てしまった。獣人は人間より一回あたりの射精量が多いようだし、それが複数人で、しかも一人当たり何回も、となれば、こうなるか、という、妙な納得もあったが。

 急いで出さなきゃ、と乱暴に指を動かすたび、先ほどまでの行為を思い出して、下半身に熱が集まりだす。
 ――いや、いや落ち着け。僕が先に興奮していてどうする。
 気を何とか落ち着かせようと深呼吸をしながら、あらかた中のものをかきだすと、軽く自分にこびりついた体液を洗い流して、そのまま浴室内にもお湯をかける。……多少は温かくなったかな。

 こんなもんか、と僕はシャワーを止める。

「おまたせ、もう大丈夫――って……」

 脱衣所へと繋がる扉を開けたものの、そこにいた男は、ほとんど服を脱げていなかった。一応、脱衣所とシャワー室に繋がる扉と壁はすりガラスのようになっていて、ハッキリ見えるわけじゃないが、誰が何をしているのかは分かる。それでも、僕は準備に気を取られていて、男があまり動いていないことに気が付かなかったようだ。

 緊張で手が震えているのか、男はもたもとボタンをいじっている。
 僕は濡れた手を軽く振って水気を飛ばし、その手でするりと男の手を撫でた。

「っ!」

 驚いたような声上げるが、僕はお構いなしに男の手をとった。そのまま、男の手を僕の腰へと持って行った。

「僕が脱がせてあげる。貴方は好きなところ、触ってていいよ」

 ぷちぷちとボタンを外していき、男の上着を脱がす。身長差は頭一つ分くらいしかないので、特にしゃがんでもらわなくとも問題ない。
 ……随分と綺麗な肌だな。傷だらけの体を持つ冒険者の相手ばかりしていたから、余計にそう見えるのかもしれない。

 そっと甘えるように抱き着いてみれば、ものすごく、男の心臓が早く動いているのが胸元から聞こえてくる。ドッドッとびっくりするくらい早く、大きく脈打っている。

 ――……童貞か? こいつ。

 初めてなのかと問いたくなるほどガチガチに緊張している様子で、僕が折角腰に手を伸ばさせてやったのに、尻にも前にも行かず、ただ、僕の腰に手を添えるだけ。その手すら、触れるかふれないかというくらいのもので、放っておいたら離れて行ってしまいそうだ。
 こんなイケメンなのに、金をはらって僕で童貞卒業か……。獣人の世界って分からないな。
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