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 僕は元の世界で、α活をしていた。自分の番を見つけられないけどオメガと触れあいたい、というアルファの相手を有料でする、援助交際みたいなものだ。話をするだけでいい、というアルファもいれば、肉体関係を求めるアルファもいた。

 本当なら、アルファとオメガがセックスした時点で、たとえ避妊をしていたところで高確率で妊娠してしまう。想像妊娠をするオメガも少なくない。
 でも、僕は純血オメガという、数少ないオメガの中でも、ことさら珍しい、番になった相手としか孕まないオメガだったので、それはもう、ヤり放題だった。

 純血オメガは、番同士のアルファとオメガの間に低確率で生まれる。元々、アルファとオメガの数自体が少ない、というのもあるが、時代の流れなのか、オメガはアルファとしか結婚できない、という風潮がなくなってから、そもそもアルファとオメガのカップルが少なくなっていった。

 そんな中での純血オメガという僕は、かなりのステータスで、それはもう、お金を払ってくれるアルファに困らなかった。ましてや、アルファなんて優秀な奴らばかりなので金がある。ちょっとねだれば簡単に高額紙幣がポンと増えた。

 気持ちいいのは好きなので、セックスは好きだし、ちょっと媚びるだけで金が増える。都合のいい扱いをされる、ということに対してのプライドさえ捨てられれば、これ以上ないくらい、楽な生活になった。
 ――と、言うのは今でもそう変わらない。

「――店長」

 別の客が、店長に何かを渡している。それをひっそりと受け取った店長が「カイ、おいで」と僕を呼んだ。明確なことは分からないが、何か、決まったやりとりがあるのだろう。暗号とか、合言葉とか、そういう感じのものが。

 一部の客と、店長がひっそりとやりとりをすると、僕の『お仕事』が始まる。

 僕を撫でていた客が、残念そうに去っていく。僕が呼ばれた理由を全く分かっていなさそうなあの客は健全な客だな。顔は覚えたので、次回はサービスしてやろう。彼にふさわしい、『健全な』サービスを。

 僕は歩いて店長の元に行く。店長は、僕の首輪に繋がったリードを、客に握らせた。
 この世界で、人間はペットのような扱いをされている。――でも、それはあくまで人権がないことを、僕が勝手にそう解釈しているだけで、元の世界での、人と犬や猫のような、正しいペットではない。

「おいで」

 僕の一晩を買った客が、優しげに僕へ声をかける。僕は素直に男へついていく。

 ――いつものように。
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