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第零章 天女の始まり
35 陰陽師の来訪
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「もし。そなた、この屋敷のものか?」
才蔵の昨晩の寝床は真田屋敷の塀の上だ。丁度桜の木が植えられているため、屋敷の中からは少し目隠しになっているが、きっと屋敷の主やその従者は気配で気づいているであろう。
そんな才蔵に屋敷の外、塀の下から声をかけてきた男が一人。
「あぁ?誰だおめぇ。」
「通りすがりの者よ。それで、そなた、この屋敷の住人か?」
「何であんたの質問に答えなきゃなんねぇんだよ。」
「ほぉ…。では、質問を変えようか。――…最近、そなたら、子どもを一人拾わなかったか?」
「知らねぇなぁ。」
「…見る限り、そなたは屋敷の主ではないであろう。屋敷の主と話がしたい。繋いでくれんか。」
「俺があんたに従うと思うか?」
「…はぁ。下手に出ると煩わしく、うるさいものだ。
……――そなた、そんなに死にたいか?」
「っ!?」
「――よしあきらさーん!!!」
一瞬にして張り詰めた空気を裂くように、男の背後からやや高めの声が響いた。
「はぁ、はぁ…。もぅ、勝手にどっか行かないでくださいよー…。」
重ぐるしい空気にそぐわない発言をしているのは男よりは年齢の若い少年だった。肩で息をしながら男の傍に立ち並ぶ。
「あれ?こちらの方は…?」
「…。」
「…さてな。それを今聞いていたのだ。」
「あぁ!そうでしたか!申し遅れました。わたくし吉明さんの弟子の藤四郎と申します!ある者を探しているのですが、ちょうどこのあたりで見失ってしまいまして…。もしかしたら、ご存じではないでしょうか?丁度7歳前後の…――、」
「もうよい。藤四郎。行くぞ。」
「え!?ちょっと、吉明さん!?」
藤四郎と名乗った少年が話をしている最中に、その男、吉明は踵を返して去っていった。
「す、すいません、社交性が無いお人でして…。では、僕もここで失礼いたします!――あれ!?もうあんなところに!?ちょっと、よしあきらさーん!」
「…。」
一気に静かになった空間で、才蔵は先ほどの吉明と呼ばれていた男を思い出し、今になって冷や汗がどっと流れる。
(……あいつの放った殺気は本物だった…。しかも、この俺様が気圧される…?…あの男、何者なんだ…?)
「――何も言わなかったんだな。」
ビクっ
「お、おめぇ!急に出てくるんじゃねぇよっ!」
「俺の屋敷だ。俺の勝手だろう。それに、別に気配を消してはいなかったが…。…あいつ、二郎坊を襲ったあの陰陽師だろう。」
「……あいつのあの殺気…、絶対やばい奴だぜ?あんたら大丈夫かよ?」
「なんだ?心配してくれるのか?」
「はぁ!?何気色悪いこと聞いてんだよ!?」
「あんたはすぐに口を割るのかと思った。」
「…俺だって一宿一飯の恩義ぐらいは返すぜ…。」
「すでに二泊してるがな。」
「うるせぇな!そういう細けぇことは良いんだよ!」
「まぁ、感謝する。礼を言おう。」
「…はぁ?」
「だが、お前、いい加減帰れ。」
「いやいや、今の流れで俺を追い出すか!?」
「おーい。主様ー!朝餉の用意できましたよー!」
信繁と才蔵が言い合いをしていると、屋敷の方から佐助が叫びながら近づいてくる。
「…あぁ。今行く。」
「てかさ、ものすごい殺気感じたんだけど、なにがあったんです?」
「さすがに気づくか…。」
佐助の様子を見るに、陰陽師が訪ねてきたことまでは気づいてないようだ。
「ちょっと、主様?聞いてる?」
「あぁ、聞いてる。後でな。」
「え、ちょっと…。…あ、才蔵、お前の分まで姫さんと千代が朝餉、用意してくれたよ。」
「…………なんか、おめぇらと居ると調子狂うわ。」
「はぁ?んじゃ、帰れお前。」
「猿飛佐助ぇ!お前ぇ俺に冷たくねぇか!?」
「いやいや、なんで勝手に襲ってきた奴に優しくしなきゃいけないのさ。馬鹿?」
「んだとこら!それに襲ったんじゃなくて力試しだろ!?お前だって分かるだろ?男の浪漫みたいな…!」
「知らん。分かりたくもない。」
言い争いをしながららも、朝餉が並んでいるであろう居間に向かっている佐助と才蔵。その背後で信繁は塀を眺める。
塀の外では、今朝落とされたはずの手のひらサイズの紙がヒラリと地面から起き上がり、雛が飛び立つように吉明が去っていった方角へと飛飛び立った。
「主様?」
「………いや、なんでもない。」
◇◇◇◇
「あー!吉明さん!式神が帰ってきましたよ!」
真田屋敷からしばらく歩いた先の川辺に、阿部吉明と藤四郎は腰を下ろしていた。
「あぁ。私が呼び戻した。」
「へ?…式神の気配が急になくなったって言ってませんでした?」
「さっきの屋敷の傍に落ちてた。強い力でも浴びたんだろう。」
そう言いながら戻ってきた人型にも鳥形にも見える紙を手の上に乗せる吉明。すると先ほどまで生き物のように動いていた紙が、本来のただの紙切れのように動きを止めた。
「え!?やっぱりあの屋敷周囲で、誰かが式神を攻撃したってことですか!?」
「…もしくは、常時強いチャクラが練りこまれているところにぶつかてしまったか…。嗚呼、これは失敗したな。式神に目をつけておくべきだったわ。」
穏やかな口調とは裏腹に、吉明は手元に戻ってきたばかりの式神をクシャっと躊躇なく握りつぶす。
「――…どちらにしても、あの屋敷が怪しいのに変わりはあるまい。また、伺うとしよう。」
吉明はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
◇
「はぁ!?陰陽師が訪れた!?」
「あぁ。さっきな。」
「いや、ちょっと!何平然としているんですか!さっきって、もしかしてあの時!?一応おれ、あんたの護衛も兼ねてるんですけど!?」
「俺の方が強いから、大丈夫だ。」
「いや、そうですけど、そうじゃない!」
徳、千代、プラス二郎坊で作った朝食を皆で食べている最中、信繁の「阿部吉明が来たみたいだ。」という、発言で珍しく佐助が信繁にマジギレしていた。しかし、信繁はそんな佐助に目もくれず味噌汁をすする。
「今朝方、何かが屋敷の結界にぶつかってな。様子を見に行ったら才蔵が絡まれてた。」
「ってか、いつの間に屋敷に結界張ってたのさ…!?」
「二郎坊を連れ帰ってからはな。俺がいない間にまた屋敷に誰か侵入されても困るしな。」
そう言って才蔵をギロっとにらむ信繁。その才蔵は食事をする手を止めずに我関せずだ。皆スルースキルが高い。
「…あー、もー!…で、その陰陽師は何しに来てたんです?」
「子どもを拾わなかったか?だとよ。」
その発言で、緊張した面持ちで話を聞いていた二郎坊の手からご飯が椀ごと落ちた。
「わぁ!大丈夫!?」
「あ、ご、ごめん…。」
椀を拾おうとする二郎坊の手が震えている。徳は二郎坊の震える手をとり、代わりに椀を拾うと、二郎坊を抱き寄せ背中を撫でて落ち着かせる。
「…拾わなかったかと聞いているのだから、確証はまだないんだろうな。」
「まぁな。屋敷の主と話がしたいそうだぞ。」
「…あの調子じゃ、また来そうだな。」
「主様。次、俺が対応するんで、主様関わらないでくださいね。」
「……。」
「あ・る・じ・さ・ま!!」
笑顔で青筋立てている佐助の話を無視して、普段通りに食事を続ける信繁。徳は二郎坊には信繁が何とかするから心配しなくてもいいといったものの、自分の立場になるとそうはいかない。徳のわがままで二郎坊を屋敷に連れてきたというのに、徳はいまだに力の覚醒すらもできていないのだ。
(…私はどうしたら、迷惑をかけずに二郎坊を、みんなを守れるんだろう…。………私も信繁様の力になりたい…。)
「大谷の姫は変なこと考えるなよ。あんたはいつも通り力の覚醒訓練を行っていればいい。」
「あ……、…はい。」
なぜか信繁には徳の考えは見破られる。徳は静かに返事を返した。
才蔵の昨晩の寝床は真田屋敷の塀の上だ。丁度桜の木が植えられているため、屋敷の中からは少し目隠しになっているが、きっと屋敷の主やその従者は気配で気づいているであろう。
そんな才蔵に屋敷の外、塀の下から声をかけてきた男が一人。
「あぁ?誰だおめぇ。」
「通りすがりの者よ。それで、そなた、この屋敷の住人か?」
「何であんたの質問に答えなきゃなんねぇんだよ。」
「ほぉ…。では、質問を変えようか。――…最近、そなたら、子どもを一人拾わなかったか?」
「知らねぇなぁ。」
「…見る限り、そなたは屋敷の主ではないであろう。屋敷の主と話がしたい。繋いでくれんか。」
「俺があんたに従うと思うか?」
「…はぁ。下手に出ると煩わしく、うるさいものだ。
……――そなた、そんなに死にたいか?」
「っ!?」
「――よしあきらさーん!!!」
一瞬にして張り詰めた空気を裂くように、男の背後からやや高めの声が響いた。
「はぁ、はぁ…。もぅ、勝手にどっか行かないでくださいよー…。」
重ぐるしい空気にそぐわない発言をしているのは男よりは年齢の若い少年だった。肩で息をしながら男の傍に立ち並ぶ。
「あれ?こちらの方は…?」
「…。」
「…さてな。それを今聞いていたのだ。」
「あぁ!そうでしたか!申し遅れました。わたくし吉明さんの弟子の藤四郎と申します!ある者を探しているのですが、ちょうどこのあたりで見失ってしまいまして…。もしかしたら、ご存じではないでしょうか?丁度7歳前後の…――、」
「もうよい。藤四郎。行くぞ。」
「え!?ちょっと、吉明さん!?」
藤四郎と名乗った少年が話をしている最中に、その男、吉明は踵を返して去っていった。
「す、すいません、社交性が無いお人でして…。では、僕もここで失礼いたします!――あれ!?もうあんなところに!?ちょっと、よしあきらさーん!」
「…。」
一気に静かになった空間で、才蔵は先ほどの吉明と呼ばれていた男を思い出し、今になって冷や汗がどっと流れる。
(……あいつの放った殺気は本物だった…。しかも、この俺様が気圧される…?…あの男、何者なんだ…?)
「――何も言わなかったんだな。」
ビクっ
「お、おめぇ!急に出てくるんじゃねぇよっ!」
「俺の屋敷だ。俺の勝手だろう。それに、別に気配を消してはいなかったが…。…あいつ、二郎坊を襲ったあの陰陽師だろう。」
「……あいつのあの殺気…、絶対やばい奴だぜ?あんたら大丈夫かよ?」
「なんだ?心配してくれるのか?」
「はぁ!?何気色悪いこと聞いてんだよ!?」
「あんたはすぐに口を割るのかと思った。」
「…俺だって一宿一飯の恩義ぐらいは返すぜ…。」
「すでに二泊してるがな。」
「うるせぇな!そういう細けぇことは良いんだよ!」
「まぁ、感謝する。礼を言おう。」
「…はぁ?」
「だが、お前、いい加減帰れ。」
「いやいや、今の流れで俺を追い出すか!?」
「おーい。主様ー!朝餉の用意できましたよー!」
信繁と才蔵が言い合いをしていると、屋敷の方から佐助が叫びながら近づいてくる。
「…あぁ。今行く。」
「てかさ、ものすごい殺気感じたんだけど、なにがあったんです?」
「さすがに気づくか…。」
佐助の様子を見るに、陰陽師が訪ねてきたことまでは気づいてないようだ。
「ちょっと、主様?聞いてる?」
「あぁ、聞いてる。後でな。」
「え、ちょっと…。…あ、才蔵、お前の分まで姫さんと千代が朝餉、用意してくれたよ。」
「…………なんか、おめぇらと居ると調子狂うわ。」
「はぁ?んじゃ、帰れお前。」
「猿飛佐助ぇ!お前ぇ俺に冷たくねぇか!?」
「いやいや、なんで勝手に襲ってきた奴に優しくしなきゃいけないのさ。馬鹿?」
「んだとこら!それに襲ったんじゃなくて力試しだろ!?お前だって分かるだろ?男の浪漫みたいな…!」
「知らん。分かりたくもない。」
言い争いをしながららも、朝餉が並んでいるであろう居間に向かっている佐助と才蔵。その背後で信繁は塀を眺める。
塀の外では、今朝落とされたはずの手のひらサイズの紙がヒラリと地面から起き上がり、雛が飛び立つように吉明が去っていった方角へと飛飛び立った。
「主様?」
「………いや、なんでもない。」
◇◇◇◇
「あー!吉明さん!式神が帰ってきましたよ!」
真田屋敷からしばらく歩いた先の川辺に、阿部吉明と藤四郎は腰を下ろしていた。
「あぁ。私が呼び戻した。」
「へ?…式神の気配が急になくなったって言ってませんでした?」
「さっきの屋敷の傍に落ちてた。強い力でも浴びたんだろう。」
そう言いながら戻ってきた人型にも鳥形にも見える紙を手の上に乗せる吉明。すると先ほどまで生き物のように動いていた紙が、本来のただの紙切れのように動きを止めた。
「え!?やっぱりあの屋敷周囲で、誰かが式神を攻撃したってことですか!?」
「…もしくは、常時強いチャクラが練りこまれているところにぶつかてしまったか…。嗚呼、これは失敗したな。式神に目をつけておくべきだったわ。」
穏やかな口調とは裏腹に、吉明は手元に戻ってきたばかりの式神をクシャっと躊躇なく握りつぶす。
「――…どちらにしても、あの屋敷が怪しいのに変わりはあるまい。また、伺うとしよう。」
吉明はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
◇
「はぁ!?陰陽師が訪れた!?」
「あぁ。さっきな。」
「いや、ちょっと!何平然としているんですか!さっきって、もしかしてあの時!?一応おれ、あんたの護衛も兼ねてるんですけど!?」
「俺の方が強いから、大丈夫だ。」
「いや、そうですけど、そうじゃない!」
徳、千代、プラス二郎坊で作った朝食を皆で食べている最中、信繁の「阿部吉明が来たみたいだ。」という、発言で珍しく佐助が信繁にマジギレしていた。しかし、信繁はそんな佐助に目もくれず味噌汁をすする。
「今朝方、何かが屋敷の結界にぶつかってな。様子を見に行ったら才蔵が絡まれてた。」
「ってか、いつの間に屋敷に結界張ってたのさ…!?」
「二郎坊を連れ帰ってからはな。俺がいない間にまた屋敷に誰か侵入されても困るしな。」
そう言って才蔵をギロっとにらむ信繁。その才蔵は食事をする手を止めずに我関せずだ。皆スルースキルが高い。
「…あー、もー!…で、その陰陽師は何しに来てたんです?」
「子どもを拾わなかったか?だとよ。」
その発言で、緊張した面持ちで話を聞いていた二郎坊の手からご飯が椀ごと落ちた。
「わぁ!大丈夫!?」
「あ、ご、ごめん…。」
椀を拾おうとする二郎坊の手が震えている。徳は二郎坊の震える手をとり、代わりに椀を拾うと、二郎坊を抱き寄せ背中を撫でて落ち着かせる。
「…拾わなかったかと聞いているのだから、確証はまだないんだろうな。」
「まぁな。屋敷の主と話がしたいそうだぞ。」
「…あの調子じゃ、また来そうだな。」
「主様。次、俺が対応するんで、主様関わらないでくださいね。」
「……。」
「あ・る・じ・さ・ま!!」
笑顔で青筋立てている佐助の話を無視して、普段通りに食事を続ける信繁。徳は二郎坊には信繁が何とかするから心配しなくてもいいといったものの、自分の立場になるとそうはいかない。徳のわがままで二郎坊を屋敷に連れてきたというのに、徳はいまだに力の覚醒すらもできていないのだ。
(…私はどうしたら、迷惑をかけずに二郎坊を、みんなを守れるんだろう…。………私も信繁様の力になりたい…。)
「大谷の姫は変なこと考えるなよ。あんたはいつも通り力の覚醒訓練を行っていればいい。」
「あ……、…はい。」
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