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七不思議編

七人ミサキの始まり…3

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「それにしても立派だよな」
 カヤトは再度、鳥居に手を触れる。
 手から伝わってくる重い感覚はまるで、数百年間生えている大樹のような存在感や圧力がある。
「こういうのを神木というのかもしれないな」
 その声に反応したのか、ミシリと鳥居が軋む。
「嬉しいのか?」
 鳥居は動かない。しかし、なぜだろう、どことなく嬉しがっているように感じる。俺の勘違いかもしれないが。 
「さて、いい加減調べるか」
 カヤトは鳥居から手を放し、鳥居から見て奥にある建物へ向かう。
「……おじゃまします~と!」
 カヤトは古ぼけ苔が生えている取っ手に手をかけてドアを開ける。
「こりゃ、ひどいな」
 中には、御神体と思われる赤い鏡と大量の蜘蛛の巣が張られていた。ところどころ、壁に小さな穴が空いている。
「こんなありさまじゃ、神様も住まないわ」
 そういって、中に足を恐る恐る踏み入れるカヤト。

 ミシミシとなる床は今にも底が抜けそうだ。
「抜けるなよ~」
 慎重に慎重に御神体の鏡がある中央の台に向かうカヤト。
「古いわりに綺麗だな」
 台の上に置いてあった御神体の鏡をそっとつかみ、反射する面についたほこりを払う。てっきり、鏡面も傷ついていると思ったがどうやら傷ついていないようだ。
「御神体だからか?なわけないよな」
 それだけでは説明がつかない。
 説明がつかないということは何かしらの力が働いているということだろう。
「ふん、なるほどな。そういうことか」
 鏡に顔を近づけてよく見てみると。幾何学模様の細い溝が彫られている。
 
 ん、この幾何学模様かなり古いな。
 少なくとも俺の知っているどの幾何学術式とは違う。
 ただ、予想はつく。おそらく、空気中の霊力などを吸収し、鏡自体の自動修復をする術式だろう。
 ただ、これだけではないな……。
 「一応、確認をしておくか。はぁ!!」
 思い切り、鏡を床にたたきつける。
 結果としては、割れた。
 それはもう、カシャン!!と大きな音を立てて。
 「……あれ?直らないな?ちょっと、破壊し過ぎたか?」
 しばらく、待っていると。
 砕け散った鏡の破片が淡い光放ち始め、御神体が元あった場所に徐々に集まり始まる。
 飛んで集まるなどではなく、地面(木の板の上)をズリズリとゆっくりと滑りながら。
 「よかった。さすがに、御神体を壊したなんて組織の上のやつに知られたら怒られるしなぁ~」
 
 教戒条例
 第35条…御神体ならびに、霊的力などをもった神物を壊してはならない。なお、例外として、神物が悪霊化、ならびに、邪神化していた場合はその限りではない。
 
 以上の条例がある。

 それに、うちの組織は、特殊なやつが多い。 
 良くも悪くも、何かしらの霊的、神的、付喪神的、呪い的、悪霊的な力を持っている人たちが集まっている。
 なかには、その力のせいで迫害や虐めにあったりした奴もいる。
 人は、自分と違う力や外見をもったものを差別する傾向がある。
 なぜだろう、同じ人間であるということには変わりがないのに。くだらない!!
 おっといけない、少し昔のことを思い出してしまって熱くなってしまった。
 「お、直った」
 いろいろと考え事をしていたら、いつの間に鏡が直っていた。
 「うん?」
 『我の眠りを妨げるのは誰じゃ?』
 「……これは、脳内に直接聞こえてきているのか。思念ってやつか」
 『もう一度、問う、我の眠りを妨げるのは誰じゃ?』
 思念の声は、どこか凛としていて、儚げで悲しげで、威圧的であった。
 「誰か?人に聞く前に自分が名乗れ」
 おそらく、神である思念を発している鏡に向かって何とも失礼なことを言うカヤト。
 怖いもの知らずである。
 『ふん、人族ごときが。神である我に対してその口の聞きよう。一度、死ぬか?」
 「何を言って!?……っは!!」
 次の瞬間、大量の桜が咲いている川辺が視えた。
 一瞬だが、確実に視えた。
 『どうじゃ?人の子よ。我が神であるゆえんを感じられたじゃろう?』
 「いまのは、隔離世界?」
 『ほぅー、あの一瞬で我の技を見抜くか人の子よ。やるの~』
 「やはりか……」
 
 隔離世界…隔離世界とは、莫大な力を有している神などの存在が創り出す世界。
      その世界では、全てが隔離されており、現実世界の常識が通じない。
      隔離世界から逃れる方法は、隔離世界現存の時間切れを待つか、自分自身も隔離世界を創り出すことでしか抜け出すことができない。
      隔離世界は現実世界に長く存在していられない。
      隔離世界は所詮、創り出された空間。そのため、現実世界に隔離世界を生み出した場合、現実世界の修正力によって消されていく。

 『して、人の子よ。もう一度、問う。何者じゃ?』

 「俺の名は、カヤトだ」
 
 『ほう、態度は変えぬかお主。なかなか、芯が通っておるの』
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