上 下
3 / 45
序章

殺人未遂はいけません

しおりを挟む
 「ふう、やっとついたか」

 教室の入り口の前で俺は今日も無事死なずに学校に登校で来たことに感謝していた。

 なお、神ではなく自分自身にだ。

「毎回思うだがカヤト。その教室に入る前、深呼吸するのは何でなんだ?」

 こいつ、本気でいっぺん殴ろうかね?
 顔面を、いや、股間を。

「気にしないでくれ」

 俺は何でもないことのように言う。

「そうか、わかった」

 西城の良いところの1つ、人がいやがることをあまり深く聞いて来ない。
 そのくせ、本気で友人が思い悩んでいる時は無理やりにでも話を聞き出して相談にのるという。
 憎めない奴なのである。

 で、教室に入室する。

「おはようカヤト」

「おはよう西城」

 男友達が話しかけてくる。

「あぁ、おはよう」

「あぁ、おはよう」

 ちなみに、教室は30人程の生徒で構成されており、A~Dクラスまである 。
 俺は、Bクラスだ。

 西城と一緒に話ながら自分の席に座ろうとしたら、机の中からカッターナイフが飛び出してきた。

 普段から様々な攻撃を避けているせいか、近頃は攻撃を事前に感知できるようになってきた。

「うお!危ない」

 脇腹をカッターの刃が掠めて飛んでいった。

 日を追うごとに女子達の仕掛けてくる攻撃の殺傷力があがって来ている気がするのだが。

「はぁ~」

 俺はため息を吐きながら頭を抱える 。

 全く、安心して勉強をしていられる環境じゃないな。

「おいカヤト、トイレ行こうぜ」

「授業開始10分前だよ西城」

「大丈夫、大丈夫すぐだって」

「わかった、じゃ行くか」
 僕は椅子から立ち上がって西城と一緒にトイレへ向かう。

「そういえば、昨日の『夜の町』見たか?」

「あぁ、見たよ」

 今、話しているのは最近放送されているアニメの話だ。ちなみにアニメの名前は『夜の町』という。

「主人公の無輝なきカッコ良かったよな、自分の最愛の妹を守るために、今まで隠していた能力を妹の前で発動させるんだもんな」

「ああ、妹も最初は驚いたみたいだが。戦いが終わったら、兄に泣きながら抱きついて《カッコ良かったよ……》って言っていて兄妹愛の強さを感じたよ」

「だよな」

「ああ」

「続きが楽しみだぜ」

「ああ、そうだな」

 は、殺気!?

 シュタ……

 おい、誰だ。
 サバイバルナイフ投げてきたやつは。
 危ないじゃないか。

 そう思いながら俺はナイフが刺さっている壁に目を向けた後、ナイフが飛んで来た方向にも目を向ける。

「あ……」

「あ……」

 後ろに目を向けたらクラスの女子と目があった。
 あ、走って逃げて行った。

 殺人未遂じゃ……

しおりを挟む

処理中です...