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第5話「疑惑の転校生と考えを改める少年」
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一限目・国語
くそっ。
最悪だ。
西野さん(ってことにしてる)の放尿音オカズにオナニーするのに夢中であいつのことすっかり忘れてた……。
あの野郎、俺がトイレから戻ってきた時、しれっと俺の後から教室に入ったよな?
ずっとトイレにいたってことか?
まさか、俺のいた個室とか覗いてたわけじゃねぇよな?
俺のナニ見てナニしてたんだよあの野郎!
……いやいや、落ち着け。
賢者モードに突入した今の俺ならわかる。
これは完全に俺の勘違いだ。
俺の名前知ってたのも、俺を人気のないところに連れて行こうと息を荒くしてたのにも、俺のことをわざわざ遠いトイレまでストーキングしてたのにだって何か理由があるんだ。
そうに違いない。
なんであれ、転校初日からうんこを理由にいきなり授業に遅れるとは良い度胸だぜ。
一通り嵐山に対する転校生いじりも終わり、授業は既に平常運行していた。
「……と、ここには作者の心に残った本へのオマージュが出てくるわけなんだが、嵐山。お前の心に残っている本はなんだ?」
国語教師・小林先生に名指しされ、嵐山は席を立ち、こう答えた。
「寺山修司著作の『さらば、映画よ』です。」
………。
二限目・保健体育
「最近話題になっている【LGBT】だが、【L】は女性同性愛者を指すレズビアンの頭文字からきている。では、【G】は何の頭文字だ、嵐山。」
体育教師・菅沼先生に名指しされ、嵐山は席を立ち、こう答えた。
「【G】とは、ゲイの頭文字で、自身を男性と認識している人物が男性を好きなセクシュアリティのことを指します。日本ではホモセクシュアリティも男性同性愛者の意味として使われがちですが、ホモセクシュアリティは同性愛者全般を指す言葉で、両者を混同するのは誤りです。」
「正解。よく勉強しているな。」
………。
休憩時間
「楓くんって芸能人だったら誰が好きなのー?」
クラスの女子に質問され、嵐山はこう答えた。
「芸能人だったらオダギリジョーかな。あの胸板には憧れる。」
「あー! それすっごいわかるー!」
………。
昼休み
「楓くーん! 一緒にお昼食べよー!」
嵐山は昼休みになるや否や女子の軍勢に取り囲まれていた。
「いきなり下の名前呼びかよ。俺なんて未だに苗字でしか呼ばれねぇし。やっぱイケメン様は住む世界が違ぇや。」
一馬はコンビニで買ったであろうサンドイッチを開封しながらぼやく。
「一馬、しばらくその話はやめてくれ。」
俺は寒気を感じながら鞄の中の弁当に手を伸ばす。
すると、そのタイミングで嵐山が席を立ち、女子たちに向けてこう答えた。
「悪い、一緒に食べたい奴がいるんだ。」
そう言うと、嵐山はつかつかとこっちに歩いてきて、俺の目の前に立ってこう言ってきた。
「神室、この学校、屋上は開いているか? 人はいるか? もし開いていて、人もいないんだったら、そこで一緒に飯食べよう。」
「あ、俺今から食堂行ってくるんで。」
俺は立ち上がり、弁当片手に足早に教室を去っていった。
「おい! お前、弁当持って」
教室の扉を閉める音が、嵐山の声をかき消す。
やっぱあいつ、そうなんじゃねぇのか⁉
どんなに違うって考えても、あいつから疑惑の種振り撒くんだもん! 菜園でも始める気かっつーの!
あー、くそっ!
さっさと飯食ってオナニーして忘れよう!
まだ西野さん(ということにしてる)の放尿音の余韻が残ってるうちに!
「あ……」
廊下を駆けている足がピタリと止まる。
いや、駄目だろ。
神室秀青、お前は間違ってる。
これじゃあまるで、嵐山がゲイだから否定してるみたいじゃないか。
俺は別に、男性が男性を好きになろうとそれは普通のことだと思っている。
男性が女性を、女性が男性を好きになる気持ちと、なんら変わりはないと。
でも、今の俺のやっていることは、普段の考えとは真逆だろ。
どうしようもない変態で、人類最低の変態を自負している、そんな俺が他の奴よりも誇れるところは、性の多様性に素晴らしさを感じるところじゃなかったのかよ。
しっかりしろ、頭を冷やせ。
例えあいつが男性として俺を好きであったところで、それは否定に値するようなことじゃあ、絶対にない。
「……。」
あとであいつに謝ろう。
そして、あいつの気持ちに真摯に向き合って、正面から話そう。
自分の気持ちを正直に。
「……よしっ。」
俺は再び、食堂へと足を動かす。
なんだかさっきよりも体が軽い気がする。
吹っ切れたからだろうか?
ピロリロリロリロ♪
「ん?」
携帯の着信が不意に鳴り出す。
メールか? 誰だ?
俺は携帯を取り出し、メールを開く。
そこには、見覚えのないアドレスからのメールが表示され、こう書かれていた。
〈嵐山です。お前と、今後のことについて本当に大事な話がある。放課後、屋上で待ってます。〉
………。
「なんであいつ俺のアドレス知ってんだよっ!」
俺の叫びに、廊下にいた生徒全員がその視線を俺に向けた。
頭を冷やしきるには、もう少し時間が必要そうだ。
くそっ。
最悪だ。
西野さん(ってことにしてる)の放尿音オカズにオナニーするのに夢中であいつのことすっかり忘れてた……。
あの野郎、俺がトイレから戻ってきた時、しれっと俺の後から教室に入ったよな?
ずっとトイレにいたってことか?
まさか、俺のいた個室とか覗いてたわけじゃねぇよな?
俺のナニ見てナニしてたんだよあの野郎!
……いやいや、落ち着け。
賢者モードに突入した今の俺ならわかる。
これは完全に俺の勘違いだ。
俺の名前知ってたのも、俺を人気のないところに連れて行こうと息を荒くしてたのにも、俺のことをわざわざ遠いトイレまでストーキングしてたのにだって何か理由があるんだ。
そうに違いない。
なんであれ、転校初日からうんこを理由にいきなり授業に遅れるとは良い度胸だぜ。
一通り嵐山に対する転校生いじりも終わり、授業は既に平常運行していた。
「……と、ここには作者の心に残った本へのオマージュが出てくるわけなんだが、嵐山。お前の心に残っている本はなんだ?」
国語教師・小林先生に名指しされ、嵐山は席を立ち、こう答えた。
「寺山修司著作の『さらば、映画よ』です。」
………。
二限目・保健体育
「最近話題になっている【LGBT】だが、【L】は女性同性愛者を指すレズビアンの頭文字からきている。では、【G】は何の頭文字だ、嵐山。」
体育教師・菅沼先生に名指しされ、嵐山は席を立ち、こう答えた。
「【G】とは、ゲイの頭文字で、自身を男性と認識している人物が男性を好きなセクシュアリティのことを指します。日本ではホモセクシュアリティも男性同性愛者の意味として使われがちですが、ホモセクシュアリティは同性愛者全般を指す言葉で、両者を混同するのは誤りです。」
「正解。よく勉強しているな。」
………。
休憩時間
「楓くんって芸能人だったら誰が好きなのー?」
クラスの女子に質問され、嵐山はこう答えた。
「芸能人だったらオダギリジョーかな。あの胸板には憧れる。」
「あー! それすっごいわかるー!」
………。
昼休み
「楓くーん! 一緒にお昼食べよー!」
嵐山は昼休みになるや否や女子の軍勢に取り囲まれていた。
「いきなり下の名前呼びかよ。俺なんて未だに苗字でしか呼ばれねぇし。やっぱイケメン様は住む世界が違ぇや。」
一馬はコンビニで買ったであろうサンドイッチを開封しながらぼやく。
「一馬、しばらくその話はやめてくれ。」
俺は寒気を感じながら鞄の中の弁当に手を伸ばす。
すると、そのタイミングで嵐山が席を立ち、女子たちに向けてこう答えた。
「悪い、一緒に食べたい奴がいるんだ。」
そう言うと、嵐山はつかつかとこっちに歩いてきて、俺の目の前に立ってこう言ってきた。
「神室、この学校、屋上は開いているか? 人はいるか? もし開いていて、人もいないんだったら、そこで一緒に飯食べよう。」
「あ、俺今から食堂行ってくるんで。」
俺は立ち上がり、弁当片手に足早に教室を去っていった。
「おい! お前、弁当持って」
教室の扉を閉める音が、嵐山の声をかき消す。
やっぱあいつ、そうなんじゃねぇのか⁉
どんなに違うって考えても、あいつから疑惑の種振り撒くんだもん! 菜園でも始める気かっつーの!
あー、くそっ!
さっさと飯食ってオナニーして忘れよう!
まだ西野さん(ということにしてる)の放尿音の余韻が残ってるうちに!
「あ……」
廊下を駆けている足がピタリと止まる。
いや、駄目だろ。
神室秀青、お前は間違ってる。
これじゃあまるで、嵐山がゲイだから否定してるみたいじゃないか。
俺は別に、男性が男性を好きになろうとそれは普通のことだと思っている。
男性が女性を、女性が男性を好きになる気持ちと、なんら変わりはないと。
でも、今の俺のやっていることは、普段の考えとは真逆だろ。
どうしようもない変態で、人類最低の変態を自負している、そんな俺が他の奴よりも誇れるところは、性の多様性に素晴らしさを感じるところじゃなかったのかよ。
しっかりしろ、頭を冷やせ。
例えあいつが男性として俺を好きであったところで、それは否定に値するようなことじゃあ、絶対にない。
「……。」
あとであいつに謝ろう。
そして、あいつの気持ちに真摯に向き合って、正面から話そう。
自分の気持ちを正直に。
「……よしっ。」
俺は再び、食堂へと足を動かす。
なんだかさっきよりも体が軽い気がする。
吹っ切れたからだろうか?
ピロリロリロリロ♪
「ん?」
携帯の着信が不意に鳴り出す。
メールか? 誰だ?
俺は携帯を取り出し、メールを開く。
そこには、見覚えのないアドレスからのメールが表示され、こう書かれていた。
〈嵐山です。お前と、今後のことについて本当に大事な話がある。放課後、屋上で待ってます。〉
………。
「なんであいつ俺のアドレス知ってんだよっ!」
俺の叫びに、廊下にいた生徒全員がその視線を俺に向けた。
頭を冷やしきるには、もう少し時間が必要そうだ。
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