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更に得る力!
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サキュラSIDEーーー
私とした事が不覚だわ奈照から放たれた瘴気でセロトニンの消費が早まって鬱状態になってしまうなんて…。
おかげで潤実やKEIさんに同情されるし…ま、でも潤実のキャラはブレないのね。
「痛いよ…で、でも彩華ちゃんが無事で良かった…」
「無事なわけねーだろボケが!!」
彩華から足蹴にされてるにも関わらず彩華を労う潤実とそんな潤実を更に罵倒する彩華の組み合わせ…。
まさに火と水ね…。
それはそうと少なくとも私と潤実は生きているように思う。
だって私と潤実はここ、煉獄から遠ざかるように半透明になっていっているから…。
「ふうっ、とりあえずサキュラ、アタイらとはお別れだ、なんつかその…向こうでも頑張れよ!」
彩華は私に激励をかける。
「彩華さん、せっかく会えたのにお別れだなんて…」
「お前は黙ってろ!」
ボロボロに地面に這いつくばった状態で潤実は彩華へ名残を惜しむが彩華は最後まで潤実を罵り尽くす。
本当に貴女達微妙な組み合わせだわ…。
「うるみんドンマイ…ともかく元気でやれよ、わいそろそろじっちゃんが迎えに来てくれるとこやわ!」
そんな最中、トラテツが潤実に声をかける。
「え…トラテツ…?」
予想外の言葉なのか潤実は時間が止まったようにその場で固まる。
『おおいトラテツ!!』
そこでしゃがれた男性の声が聞こえだす。
すると煉獄の窟《くつ》のような空間から光の線が刻むように現れだし、そこから光が差し込んできた。
『迎えが来たようじゃな、うるみん、お別れじゃ』
トラテツは穏やかな顔を私に見せて宙に浮きだした。
「そ…そんな、トラテツ…!」
私は慌てて立ち上がる、嫌だよ!トラテツとお別れなんて…!
「トラテツ!行かないでっ!!」
「潤実!やめなさい!!」
私はトラテツを戻そうと駆け寄るもそれをサキュラは止める。
でもサキュラはクトゥルフではなく所詮は力の弱い女の子…私は力いっぱいサキュラを振りきってトラテツの元に走る。
「トラテツーーー!!!」
現実を受け入れられない私は天国に迎えられ宙に上がっていくトラテツを引き戻そうと走って行った。
彩華はその間にトンファーを持ち出して私に向かうように飛び出した。
「現実を見ろボケが!!!」
彩華さんがトンファーを振るい私を弾き飛ばす。
そこで私の意識は途絶えた。
サキュラSIDEーーー
「手荒な事させてしまったわね…」
眠っている潤実を優しく膝に寝かせる私。
「どうって事ねえよ、地獄なんて慣れっこだから」
彩華は笑ってみせた。
本当に彩華はりなっしーにも見える。
やっている事は滅茶苦茶だが何だかんだで正義感は強く、たとえ自分と意見など色々食い違う相手でも、その人が危機に面した時は見捨てずに助けに行く。
まさに正義の不良だ。
私はりなっしーに似過ぎている少女、彩華を見てついクスリとしてしまう。
「な、何がおかしいんだよ?」
潤実を背負いだした彩華が怪訝そうに私を見る。
「なんでもないわ」
私はそう答え、彩華と現実に向かって歩いた。
潤実、貴女はまだ生きている、辛いけれどトラテツも、彩華も死んでいる…死を受け入れなさい。
それはきっと貴女の強さの糧になるはずだから…。
ーーー
しばらく歩くと古びた寺のような建物が見えだした。
「残念だがアタイが送ってやれるのはここまでだ、この建物に入れば現実に戻る事が出来る、アタイもそろそろ迎えが来たみたいだな…」
彩華の言う通り、後ろからは恐ろしい形相をした巨人達が彩華を追いにやって来ていた。
『可園彩華貴様!!勝手に地獄から抜け出しおって!!罰を厳しく課すから覚悟しろ!!!』
あれが「地獄の鬼」ね。イメージ通りではあるわ。
「アイツは厄介だからな、手配犯の側にいる奴も共に地獄に引きずりだす、お前らは早く逃げた方が良いぜ!」
彩華はそう言ってトンファーを持ち変えた。
『そいつがお前を唆したのか!こいつらも地獄に引きずり込んでやる!!!』
地獄の鬼が私達に飛びかかってきた。
「させるかよっ!!!」
すかさず彩華が地獄の鬼を殴り飛ばす。
彩華のような平均的な女性の体格にどのようにしてこの力を出せるのかわからない程清々しく鬼は飛ばされてくれる。
『お前地獄の鬼に向かって!許せねえ!!』
地獄の鬼達が彩華をギッと睨みつける。
「心配するな、ちゃんと捕まってやるよ…でも楽に捕まったんじゃ面白味も無いだろ?」
彩華はどこかで聞いた事のある台詞を吐いて二丁のトンファーを構えて鬼達に向かっていた。
「彩華…ありがとう…」
私は彩華に礼を述べ、潤実と共に寺の奥へと潜って行った。
しかし地獄に生きる不良…そうだ、彼女はあの子にも丸被りだわ。
Hell breakのケイ、Hell breakとは東堂花穂さんの作品で日葵と言う子が早死にしたが為に賽の河原という地獄に落ちてケイ、唯奈と冒険する話。
ケイは地獄の中でも日葵や唯奈を助け、天国にいるおばあちゃんに会う為に天国に向かう。
きっと彩華もケイのように地獄の中でもがいている罪のない魂を助け続けるでしょう…。
そして私は寺の門を潜り、煉獄から脱出した。
ーーー
「あら、目が覚めた?」
私はある場所で目を覚ます。
ここは…よくある民家の一室のようだ。
民家と言っても、地上にあるような木造かリビングフロアのような風景では無く、
ユラユラと揺れる海草のような飾りのインテリアや外から海を見たような壁調のリビング、貝がらのようなランプが照らされたルルイエ一般の家の中のフロアだった。
その部屋には一人のローブをまとった老婆がいたが、ヒレ耳、人より白い肌、西洋風の顔立ちなど、ルルイエ人の特徴を醸し出していた。
そして私は濃い緑色の藁で寝かされていたが地上のベッドのように弾力があり暖かい、まあ人が寝るのに良い作りに作ってあるから、違いは見た目だけだ。
そして私の隣には潤実が寝かされていた。
「う…ここは?」
あら目が覚めたみたいね。
「そちらのお嬢さんも目覚めたみたいね、一週間は目が覚めなかったから心配してたのよ」
「い、一週間!??」
潤実は驚いていたが私はインスマスとの戦いもあり一週間や二週間で目覚めない者などザラにあったのでさほど驚く程の事とは思えなかったが。
「さあさ、そろそろ時間なので昼食としましょうか♪」
そう言うと老婆は食卓を囲んで食事を用意した。
焼き魚や海の幸を中心に飾られた食物の香りが食欲を唆る。
「自己紹介を忘れたわね、私はサキナ、そちらのお嬢さんは地上の女の子のようね?」
ふと思い出したようにサキナと言う老婆は私達に顔を向け自己紹介を交わした。
サキナ…どこかで聞いた事のある名前だ。
「あ、はい私は海溝潤実、日本人です!」
潤実は緊張した様子でサキナに名乗った。
「サキュラです」私もサキナに名乗り、食卓を囲み食事を摂ることにした。
「不思議な事ってあるものね、夢の中にかつて私の愛した人が出てきて私にこう言ってきたの、外に二人の少女を連れてきたから助けて欲しいって!
そして外に出てみたら丁度貴女達が死んだように眠ってたのよ!」
サキナはこう言い出した。
「ひょっとしてその人ってガニメルさん…?」
潤実が思い出したようにサキナに聞き出した。
「ガニメルを知ってるの!?」
ふとサキナは目を丸くした。
彼女はどうやらガニメルと繋がりがあるらしい。
私は彼女と話をしてみることにした。
「ガニメルは私のお兄さんになってくれてた人よ」
私はサキナに聞かせた。
「そう…貴女が…どうりで若い頃の私と似ていたわけだわ…」
サキナは感慨に耽るように声を落とす。
そしてサキナは立ち上がり私達に何かを見せてきた。
サキナが見せてきたのは一つの水晶玉だった。
その水晶玉は私達ルルイエ人の思い出を記録するアイテム。
地上の人もアルバムなるものがあるがそれと主旨は同じだ。
サキナはそれを撫でると水晶玉からは一筋の光が照らされ、海の壁に波紋が現れたかと思うと波紋からは美男子と美少女が仲睦まじく語らっている様子が映し出された。
「この人達は…」
潤実はその光景を見て思い出したように紡いだ。
「海溝潤実さん、その様子を何処かで見た事があるのですね?」
「はい…見たと言うか…思いだしたと言うか…」
潤実は例え方に迷っているが正確には私とガニメル兄さんが作った像に触れだし、前世の記憶を呼び起こしたと言う事だ。
「それにしてもあの女の子…サキュラにそっくり…」
潤実は感慨にふけるように水晶玉から映し出されるフォトグラフを見守る。
私は当然だと思った。
何故ならこの私はサキナと言う少女をベースにガニメルがルルイエに伝わるネクロノミコン技術により造られた生命体だからだ。
しかしサキナと言う少女も今は老婆となっている。
私も本来年は取っていなければならないはずだが取っていないのはこれまでライフティイートと言うスキルで男の生命力を吸ってきたからだろう。
「でも、これでも私は若い…」
その時サキナは言い出した。
それは体がまだ若いという事なのだろうか?それとも年齢的に若いという事なのだろうか?
サキナは突如声を低くしだし、私達に言い放ってきた。
「私は腰も曲がり、既に年老いているように見えるが実はまだ35歳、何故そのような事になっているのかおわかりですか?」
「………」
潤実はサキナの静かな口調から怒気を感じたのか、怯えた犬のような反応を見せている。
「ネクロノミコン技術に呪いが込められていて、使われた対象者の細胞は老化を早めてしまう、そう言う事ですね?」
私は潤実の代わりに答えてみせた。
潤実は赤の他人なのだが決してサキナとは無関係では無い。
何故なら潤実はガニメル兄さんから転生した女の子だからだ。
ガニメル兄さんは人肌の恋しさのあまりサキナと言う少女に呪いをかけ、それを用いて私と言うサキナそっくりの人形を作ったのだ。
「勘が鋭いのね、そう言う事よ」
サキナはゆっくりと立ち上がる。
その手には光球が影を照らしていて、その光球は私達への憎しみを込められた光球だと私は察した。
そしてサキナは放った。
「少し名残惜しいけど…貴女達の命貰うわ!」
「ちょっと待って!まだ状況が飲み込めてないわ!そこにいる海溝潤実にもわかりやすいように伝えなさい!!」
私は机から立ち上がりサキナに怒鳴ってみせた。
何も知らずに食べようとする潤実、その時潤実にかけられている魔力石から怒声が放たれてきた。
『うるみんっ!そのくいもんに手をつけたらあかん!!』
「と、トラテツ…そう言えばトラテツはどこにいるの?」
突然魔力石から声がしたのに驚き、トラテツがいない事に戸惑い声を震わす潤実。
「わかりなさい!トラテツは魔力石になっているのよ!!」
私は不敵に笑みを浮かべるサキナを睨んだまま潤実に言い放つ。
酷な話だけどトラテツはいない、喧華と相打ちになり、喧華と共にこの世を去ったのだ。
『ほなけど安心せえ!わいはじっちゃんと一緒に天国からずっとお前を見守っとる!ほなけんお前はインスマスと戦い闇に染まった日本を元に戻せ!!』
後ずさるサキナ。
「答えなさいサキナ!何故貴女が私達をそこまでうらむのか!!」
サキナはガクリと項垂れ語りだした。
ガニメルのいない間にあった一部始終を…。
私とした事が不覚だわ奈照から放たれた瘴気でセロトニンの消費が早まって鬱状態になってしまうなんて…。
おかげで潤実やKEIさんに同情されるし…ま、でも潤実のキャラはブレないのね。
「痛いよ…で、でも彩華ちゃんが無事で良かった…」
「無事なわけねーだろボケが!!」
彩華から足蹴にされてるにも関わらず彩華を労う潤実とそんな潤実を更に罵倒する彩華の組み合わせ…。
まさに火と水ね…。
それはそうと少なくとも私と潤実は生きているように思う。
だって私と潤実はここ、煉獄から遠ざかるように半透明になっていっているから…。
「ふうっ、とりあえずサキュラ、アタイらとはお別れだ、なんつかその…向こうでも頑張れよ!」
彩華は私に激励をかける。
「彩華さん、せっかく会えたのにお別れだなんて…」
「お前は黙ってろ!」
ボロボロに地面に這いつくばった状態で潤実は彩華へ名残を惜しむが彩華は最後まで潤実を罵り尽くす。
本当に貴女達微妙な組み合わせだわ…。
「うるみんドンマイ…ともかく元気でやれよ、わいそろそろじっちゃんが迎えに来てくれるとこやわ!」
そんな最中、トラテツが潤実に声をかける。
「え…トラテツ…?」
予想外の言葉なのか潤実は時間が止まったようにその場で固まる。
『おおいトラテツ!!』
そこでしゃがれた男性の声が聞こえだす。
すると煉獄の窟《くつ》のような空間から光の線が刻むように現れだし、そこから光が差し込んできた。
『迎えが来たようじゃな、うるみん、お別れじゃ』
トラテツは穏やかな顔を私に見せて宙に浮きだした。
「そ…そんな、トラテツ…!」
私は慌てて立ち上がる、嫌だよ!トラテツとお別れなんて…!
「トラテツ!行かないでっ!!」
「潤実!やめなさい!!」
私はトラテツを戻そうと駆け寄るもそれをサキュラは止める。
でもサキュラはクトゥルフではなく所詮は力の弱い女の子…私は力いっぱいサキュラを振りきってトラテツの元に走る。
「トラテツーーー!!!」
現実を受け入れられない私は天国に迎えられ宙に上がっていくトラテツを引き戻そうと走って行った。
彩華はその間にトンファーを持ち出して私に向かうように飛び出した。
「現実を見ろボケが!!!」
彩華さんがトンファーを振るい私を弾き飛ばす。
そこで私の意識は途絶えた。
サキュラSIDEーーー
「手荒な事させてしまったわね…」
眠っている潤実を優しく膝に寝かせる私。
「どうって事ねえよ、地獄なんて慣れっこだから」
彩華は笑ってみせた。
本当に彩華はりなっしーにも見える。
やっている事は滅茶苦茶だが何だかんだで正義感は強く、たとえ自分と意見など色々食い違う相手でも、その人が危機に面した時は見捨てずに助けに行く。
まさに正義の不良だ。
私はりなっしーに似過ぎている少女、彩華を見てついクスリとしてしまう。
「な、何がおかしいんだよ?」
潤実を背負いだした彩華が怪訝そうに私を見る。
「なんでもないわ」
私はそう答え、彩華と現実に向かって歩いた。
潤実、貴女はまだ生きている、辛いけれどトラテツも、彩華も死んでいる…死を受け入れなさい。
それはきっと貴女の強さの糧になるはずだから…。
ーーー
しばらく歩くと古びた寺のような建物が見えだした。
「残念だがアタイが送ってやれるのはここまでだ、この建物に入れば現実に戻る事が出来る、アタイもそろそろ迎えが来たみたいだな…」
彩華の言う通り、後ろからは恐ろしい形相をした巨人達が彩華を追いにやって来ていた。
『可園彩華貴様!!勝手に地獄から抜け出しおって!!罰を厳しく課すから覚悟しろ!!!』
あれが「地獄の鬼」ね。イメージ通りではあるわ。
「アイツは厄介だからな、手配犯の側にいる奴も共に地獄に引きずりだす、お前らは早く逃げた方が良いぜ!」
彩華はそう言ってトンファーを持ち変えた。
『そいつがお前を唆したのか!こいつらも地獄に引きずり込んでやる!!!』
地獄の鬼が私達に飛びかかってきた。
「させるかよっ!!!」
すかさず彩華が地獄の鬼を殴り飛ばす。
彩華のような平均的な女性の体格にどのようにしてこの力を出せるのかわからない程清々しく鬼は飛ばされてくれる。
『お前地獄の鬼に向かって!許せねえ!!』
地獄の鬼達が彩華をギッと睨みつける。
「心配するな、ちゃんと捕まってやるよ…でも楽に捕まったんじゃ面白味も無いだろ?」
彩華はどこかで聞いた事のある台詞を吐いて二丁のトンファーを構えて鬼達に向かっていた。
「彩華…ありがとう…」
私は彩華に礼を述べ、潤実と共に寺の奥へと潜って行った。
しかし地獄に生きる不良…そうだ、彼女はあの子にも丸被りだわ。
Hell breakのケイ、Hell breakとは東堂花穂さんの作品で日葵と言う子が早死にしたが為に賽の河原という地獄に落ちてケイ、唯奈と冒険する話。
ケイは地獄の中でも日葵や唯奈を助け、天国にいるおばあちゃんに会う為に天国に向かう。
きっと彩華もケイのように地獄の中でもがいている罪のない魂を助け続けるでしょう…。
そして私は寺の門を潜り、煉獄から脱出した。
ーーー
「あら、目が覚めた?」
私はある場所で目を覚ます。
ここは…よくある民家の一室のようだ。
民家と言っても、地上にあるような木造かリビングフロアのような風景では無く、
ユラユラと揺れる海草のような飾りのインテリアや外から海を見たような壁調のリビング、貝がらのようなランプが照らされたルルイエ一般の家の中のフロアだった。
その部屋には一人のローブをまとった老婆がいたが、ヒレ耳、人より白い肌、西洋風の顔立ちなど、ルルイエ人の特徴を醸し出していた。
そして私は濃い緑色の藁で寝かされていたが地上のベッドのように弾力があり暖かい、まあ人が寝るのに良い作りに作ってあるから、違いは見た目だけだ。
そして私の隣には潤実が寝かされていた。
「う…ここは?」
あら目が覚めたみたいね。
「そちらのお嬢さんも目覚めたみたいね、一週間は目が覚めなかったから心配してたのよ」
「い、一週間!??」
潤実は驚いていたが私はインスマスとの戦いもあり一週間や二週間で目覚めない者などザラにあったのでさほど驚く程の事とは思えなかったが。
「さあさ、そろそろ時間なので昼食としましょうか♪」
そう言うと老婆は食卓を囲んで食事を用意した。
焼き魚や海の幸を中心に飾られた食物の香りが食欲を唆る。
「自己紹介を忘れたわね、私はサキナ、そちらのお嬢さんは地上の女の子のようね?」
ふと思い出したようにサキナと言う老婆は私達に顔を向け自己紹介を交わした。
サキナ…どこかで聞いた事のある名前だ。
「あ、はい私は海溝潤実、日本人です!」
潤実は緊張した様子でサキナに名乗った。
「サキュラです」私もサキナに名乗り、食卓を囲み食事を摂ることにした。
「不思議な事ってあるものね、夢の中にかつて私の愛した人が出てきて私にこう言ってきたの、外に二人の少女を連れてきたから助けて欲しいって!
そして外に出てみたら丁度貴女達が死んだように眠ってたのよ!」
サキナはこう言い出した。
「ひょっとしてその人ってガニメルさん…?」
潤実が思い出したようにサキナに聞き出した。
「ガニメルを知ってるの!?」
ふとサキナは目を丸くした。
彼女はどうやらガニメルと繋がりがあるらしい。
私は彼女と話をしてみることにした。
「ガニメルは私のお兄さんになってくれてた人よ」
私はサキナに聞かせた。
「そう…貴女が…どうりで若い頃の私と似ていたわけだわ…」
サキナは感慨に耽るように声を落とす。
そしてサキナは立ち上がり私達に何かを見せてきた。
サキナが見せてきたのは一つの水晶玉だった。
その水晶玉は私達ルルイエ人の思い出を記録するアイテム。
地上の人もアルバムなるものがあるがそれと主旨は同じだ。
サキナはそれを撫でると水晶玉からは一筋の光が照らされ、海の壁に波紋が現れたかと思うと波紋からは美男子と美少女が仲睦まじく語らっている様子が映し出された。
「この人達は…」
潤実はその光景を見て思い出したように紡いだ。
「海溝潤実さん、その様子を何処かで見た事があるのですね?」
「はい…見たと言うか…思いだしたと言うか…」
潤実は例え方に迷っているが正確には私とガニメル兄さんが作った像に触れだし、前世の記憶を呼び起こしたと言う事だ。
「それにしてもあの女の子…サキュラにそっくり…」
潤実は感慨にふけるように水晶玉から映し出されるフォトグラフを見守る。
私は当然だと思った。
何故ならこの私はサキナと言う少女をベースにガニメルがルルイエに伝わるネクロノミコン技術により造られた生命体だからだ。
しかしサキナと言う少女も今は老婆となっている。
私も本来年は取っていなければならないはずだが取っていないのはこれまでライフティイートと言うスキルで男の生命力を吸ってきたからだろう。
「でも、これでも私は若い…」
その時サキナは言い出した。
それは体がまだ若いという事なのだろうか?それとも年齢的に若いという事なのだろうか?
サキナは突如声を低くしだし、私達に言い放ってきた。
「私は腰も曲がり、既に年老いているように見えるが実はまだ35歳、何故そのような事になっているのかおわかりですか?」
「………」
潤実はサキナの静かな口調から怒気を感じたのか、怯えた犬のような反応を見せている。
「ネクロノミコン技術に呪いが込められていて、使われた対象者の細胞は老化を早めてしまう、そう言う事ですね?」
私は潤実の代わりに答えてみせた。
潤実は赤の他人なのだが決してサキナとは無関係では無い。
何故なら潤実はガニメル兄さんから転生した女の子だからだ。
ガニメル兄さんは人肌の恋しさのあまりサキナと言う少女に呪いをかけ、それを用いて私と言うサキナそっくりの人形を作ったのだ。
「勘が鋭いのね、そう言う事よ」
サキナはゆっくりと立ち上がる。
その手には光球が影を照らしていて、その光球は私達への憎しみを込められた光球だと私は察した。
そしてサキナは放った。
「少し名残惜しいけど…貴女達の命貰うわ!」
「ちょっと待って!まだ状況が飲み込めてないわ!そこにいる海溝潤実にもわかりやすいように伝えなさい!!」
私は机から立ち上がりサキナに怒鳴ってみせた。
何も知らずに食べようとする潤実、その時潤実にかけられている魔力石から怒声が放たれてきた。
『うるみんっ!そのくいもんに手をつけたらあかん!!』
「と、トラテツ…そう言えばトラテツはどこにいるの?」
突然魔力石から声がしたのに驚き、トラテツがいない事に戸惑い声を震わす潤実。
「わかりなさい!トラテツは魔力石になっているのよ!!」
私は不敵に笑みを浮かべるサキナを睨んだまま潤実に言い放つ。
酷な話だけどトラテツはいない、喧華と相打ちになり、喧華と共にこの世を去ったのだ。
『ほなけど安心せえ!わいはじっちゃんと一緒に天国からずっとお前を見守っとる!ほなけんお前はインスマスと戦い闇に染まった日本を元に戻せ!!』
後ずさるサキナ。
「答えなさいサキナ!何故貴女が私達をそこまでうらむのか!!」
サキナはガクリと項垂れ語りだした。
ガニメルのいない間にあった一部始終を…。
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