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仲間だから
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サキュラSIDEーーー
江戸華喧華は暗黒の気を全身から揺らつかせ、私に詰め寄ってくる。トラテツは喧華に遠距離まで蹴り飛ばされ、アンドレはモトミンと共に魔力石と化してしまった。
「どうしたの?アンタの策とやらでこの状況を切り抜けてみなさいよ?」
どうせ出来ないんでしょ?と言う風に喧華は表情をニタつかせる。そして喧華はその大きな手で私の首元を掴んできて、片腕で私の体を持ち上げる。
「ぐぐぐ…」
首が締め付けられ、私はそれを外そうともがくが、もがく度に喧華の握る手は強くなる。
「ざまあないね小娘…これは報いだよ!さっきまで私に偉そうな口を叩いたことへのね!」
喧華の醜い顔はますます醜くなる。今の喧華の表情は魔物そのものだ。ところどころに血管が浮き出、筋肉でボコボコに体が剥き出しになり、180センチを超える魔物は150センチ足らずの華奢な私を相手に情け容赦をかけずジワジワと心身をいたぶり尽くす。
「ほらほらどんどん全身が真っ青になっていくよ早く振りほどかないと貴女の命も無いわよ!!」
私は足をバタバタとさせてなんとか喧華から離れようとするが喧華はビクともしない。
「苦しいかい?そんなに苦しいなら離してやるよ!」
ドンッ!!
喧華はそう放つと私の体を壁に打ち付ける形で手を放した。
「ゴホッゴホッ」
喧華から喉から締め付けられ、地に崩れ落ちたまま痛みから咳き込む。喧華は血の気もよだつような形相で私を見下ろす。
江戸華喧華SIDEーーー
ふん、ガキの分際で私に説教なんかするからそうなるのよ!まあこう言う年頃の子は大抵自信過剰になったりするからこちらが上だと言うことを思い知らせてあげた方が良いのよ。
しかしこの少女、生意気さは鼻につくけど中々見所はあるわね…少なくとも海溝潤実よりは使えそうだわ…。
「ねえ貴女…私に楯突こうとするとは中々良い度胸してるじゃない、私の部下になると言うなら命は助けてあげても良くってよ?」
私はサキュラに言ってあげた。しかしサキュラは私を睨みつけたまま声を上げた。
「冗談言わないで…貴女の部下になるくらいなら死んだ方がマシよ…」
この小娘め、大人しくしてたら図に乗りやがって…。
その時姿は見えないがガストと言う霊族の私の部下の一人が私に耳打ちしてきた。
『この少女はやめといた方が良いですよ、何故ならあの海溝潤実が酷い目に遭っているのを想像して感じているような奴ですから』
なんてガキなの?薄気味悪いったらないわ…一瞬でも部下にしてあげようとした私が愚かしい…。
私も海溝潤実は嫌いだがこの小娘のように気持ちの悪い趣味を持つ奴はもっと嫌いだ。不良と言い、こう言うような小娘といい何故世の中は愚かしい奴らに溢れかえっているのか?
「ふんっ、それはそうとサキュラ貴女仲間が酷い目に遭ってるの想像して感じてるんですって?」
それを聞いた途端サキュラは顔を青ざめだした。そんなに言われるのが嫌ならその気持ち悪い趣味から足を洗いなさい!
「確かに海溝潤実は酷い目に遭うべき人間よ、しかしそれで感じたりするなんて貴女も人の事言えた義理じゃないわよね?」
サキュラは私が一つ一つの言葉を放つ度に徐々に怒りなのか?焦りなのか?そういった表情を見せてきた。
「貴女には関係ないでしょう!?」
「いいえあるわ!貴女の為に言ってあげる!このような悪趣味からは今すぐ足を洗うべきだわ!」
私の真心はこの子に届くかしら、いいえ届くはずよ!今ならまだ間に合う!ノファンのような人生の落伍者になってはもう遅い!まだ12にも満たないこの子が今のうちに汚い趣味に堕ちてしまったら…。
私はサキュラが可哀想になってきた。
サキュラがこうなったのもきっと海溝潤実のせいね。
「大丈夫、私は正義の味方…日本に溢れ返る汚い文化を共に駆逐しましょう!」
私はサキュラに手を差し伸べた。
「貴女だって部下を人身御供にして暗殺させたり次々と犠牲にしていっているじゃない…一緒にしないで!」
サキュラSIDEーーー
喧華はさも私に同情を向けるように私に説得しようとする。しかし貴女も同じ事言える立場じゃないと言ってやりたい。
私は別に自分が正しいとは思っていない。しかし人から言われて哀れみを持たれたり侮辱される言われはない。それにそれは私がスキルを行使するのに必要なものなの!この呪われたスキルを行使するのにはね!
「ならばこうしましょう、私の横には今ガストと言う可愛い部下がいるの、私と貴女、どちらが正しいか幻影を見せてくれるのだそうよ!」
喧華はこう言いだした。どうりで私に対する嫌な気配が喧華の他にもビンビンと伝わってきた筈だわ…。
するとガストと言う喧華の部下は姿を現した。しかしその姿を見て私は愕然とした。何故なら彼女は以前私と関わっていて、前まで仲良くしていた人だったからだ。
そして海溝潤実とも私つてに伝え、潤実の為に怒って私と仲違いをしてでも最後まで海溝潤実を思っていた人だ。
「…なんで貴女がここにいるの?」
私は有り得ない出来事からか寒気を覚え体がふるふると震える形で喧華に仕えるように立つその人物に問う。
「あらなんでかしらね?」
その人はすっとぼけた様子でクスリとあざ笑う。その人はそう、今は白い魔力石となった軽間奈照と言う人だった。
「あらお知り合いなのね、さあガスト、私とサキュラどちらが正しいか証明してあげなさい!」
喧華はそう言い放つ。
「奈照…喧華から離れなさい!さもなければ海溝潤実と戦わなければならなくなる!」
私は奈照に言い聞かせる。事実、海溝潤実はスキル「クトゥルフブレイクリー」を体得しにゼウスの像まで向かって行っている。彼女と奈照が戦わなければならないとなると…。
「いいじゃない、私は彼女と戦ってみたかったのよね?」
奈照は余裕げに言う。それは以前の馴染みとして言っているのか?それとも…。前者であれば良いがさっきから彼女に揺らめく殺気はなんなの?
「それと私は喧華様から素敵なスキルをいただいたの。「黒の幻覚」と言うスキルよ、今貴女にそれをかけてあげるわね♪」
奈照は手のひらを私に突き出してきて、そこから黒い瘴気が広がっていく。一瞬、衝撃を覚えて目の前が一瞬チカリとしたその途端、私の目の前の景色が変わった。
これが…黒の幻覚と言うスキルなの?と思ったその時あるものが姿を現した。
『気持ち悪い趣味ねえ可愛い見た目なのに…』
『人は見かけによらないなあ…惚れてたのに…』
『最近の子供ばどういう躾受けているのかしら』
『海溝さんが可哀想になってきた』
人の陰口が私に響く何なのこの声は…。私が耳を押さえていても人の陰口はどんどんと私の中に入り込んで行く。
耐えられなくなり私はそこから逃げるが陰口だけは入り込んできて止む事を知らない。一体なんなの?
「海溝潤実!」
走っているとやがて海溝潤実が私を怪訝な目で見ているのが見えた。
『見損なったよサキュラ…貴女は私をそんな目的の為にクトゥルフにしたんだね?』
「潤実…!それは…」
『近寄らないで気持ち悪い!貴女がそんな子だとは思わなかった…さようなら!』
「潤実!!」
海溝潤実が私から離れていく…。
仲間外れにされるのはもう慣れっこだが海溝潤実にあんな事言われると悔しくなってくる。
『そう、これは貴女の心を知った時の皆の反応よ!』
やがて奈照の姿が現れた。
『初めて貴女の本性を垣間見た時は身の毛がよだつ思いをしたわ…どうりで前々からおかしいと思ってたのよ…』
奈照は闇に覆われた表情で私に毒づく。
私らしくない…なんで私こんな事で傷ついてるんだろう?
私が私で無くなっていく…チエチエ助けて…!
海溝潤実SIDEーーー
私は強敵に立ち向かう為のスキル「クトゥルフブレイクリー」と言う能力を体得しようとゼウスの像まで向かっていた。
でもサキュラ達の身の危険と言うのかな?嫌な予感を感じたので私は道を引き返す。
するとガニメルさんが現れてどうしても引き返してはならないと私に立ちはだかったのだ。
『仮にここを通りたくばこの私を倒してみせる事だ!』
三矛の槍を構えて私を脅すガニメル。
私は一瞬躊躇う、でもこれで逃げてちゃいけない!私だって戦わなければならないとしたらそうしなければならない!
だってそれはサキュラや、トラテツ、今まで出会ってした人達もそうしてきた事だし私も彼女らから教えられた事だもん!
だから今は脅されたって私は逃げない!
私もクトゥルフに変身してガニメルさん同様槍を構え、戦闘に備えるようにしてみせた。
戦うのは嫌だ、でも嫌だからって仲間を見殺しにするのとは違う。
私もいつまでも成長しないままじゃ駄目なんだ!
私の中の時間は止まっている。戦う前の動悸、息苦しさが伝い、心臓の鳴る音と感じが強く、気になるのは足や槍が震えてしまっている事だ。
戦う時はいつもこうだ、トラテツや奈照さんはいつも堂々としていたのに…。
『ハッハッハッハ!』
やがてガニメルは笑いだした。
私はキョトンとする。何故この人は笑いだしているんだろう?
私はガニメルさんが笑いだしているのを見て私…小馬鹿にされているのかな?と少し哀しい気持ちになる。
どうやら違うようで、ガニメルさんは笑い終えるとにこやかな表情になり私に言ってみせた。
『実は私は君を試していたのだ、君がクトゥルフになるのに相応しい子かどうかをね…。
確かに君の言う通り、クトゥルフブレイクリーを体得しに向かい戻った時にサキュラ達が死んでしまってたら元も子もない…』
よくわからないけど私…どうやら試されていたみたいだ。
とするとクトゥルフブレイクリーというのは…?
『クトゥルフブレイクリーというのは既に君の中にある!』
ガニメルはそう言いだした。
「私の…中に?
でも、私は戦えてないし…」
私はガニメルさんに問う。
『君は自分が何も出来なくて弱い人間だと思っているのだろう、しかし君は今までの戦いの中で戦士としての気概はいくらか見せた。
そうで無ければ君はサキュラに選ばれる事は無かった!』
「………」
私は言いあぐねてしまっているとやがてガニメルさんが私を抱きしめにきた。
ハンサムな人に抱きしめられて私は身動き出来なくなってしまう。
『大丈夫だ、君は私でもある…君に力を引き出してあげよう…このままじっとしていて…』
我に返った私が振りほどこうとするとガニメルさんはこう言いだしてきて私は固まったようにじっとして動けなかった。
男の人にこう抱きしめられるのは初めてで(トラテツならともかく話す事自体も出来ない)ましてや相手はテレビでしかお目にかかれないようなハンサムな人だ。
でも私だけがこんな思いしていいのかなとも思う。
あっち側でサキュラやトラテツ、そしてアンドレさんが戦っていると言うのに…。
その時私の肌の感触が無くなる。
なんとガニメルの姿はそこになく、代わりにガニメルさんの脳に語りかけてくるような声が聞こえてきた。
『まだ完全には引き出せていないがクトゥルフブレイクリーの力を君に与えた、だが君自身の命の保証は出来ない、それでも助けに行くのか?』
私の中の答えは決まっていた。
「はい!仲間ですから!」
きっと蓮香ちゃんだってそうするはず!仲間の身の危機があるとして、行くなと言うルールに従うよりはルールを破ってでも仲間を助けに行く!
だって気の弱った真澄さんを助ける程の正義感の持ち主だもん!
蓮香ちゃんの勇気とガニメルさんのスキルを身に纏った私は急いでサキュラ達の元へと走って行った。
江戸華喧華は暗黒の気を全身から揺らつかせ、私に詰め寄ってくる。トラテツは喧華に遠距離まで蹴り飛ばされ、アンドレはモトミンと共に魔力石と化してしまった。
「どうしたの?アンタの策とやらでこの状況を切り抜けてみなさいよ?」
どうせ出来ないんでしょ?と言う風に喧華は表情をニタつかせる。そして喧華はその大きな手で私の首元を掴んできて、片腕で私の体を持ち上げる。
「ぐぐぐ…」
首が締め付けられ、私はそれを外そうともがくが、もがく度に喧華の握る手は強くなる。
「ざまあないね小娘…これは報いだよ!さっきまで私に偉そうな口を叩いたことへのね!」
喧華の醜い顔はますます醜くなる。今の喧華の表情は魔物そのものだ。ところどころに血管が浮き出、筋肉でボコボコに体が剥き出しになり、180センチを超える魔物は150センチ足らずの華奢な私を相手に情け容赦をかけずジワジワと心身をいたぶり尽くす。
「ほらほらどんどん全身が真っ青になっていくよ早く振りほどかないと貴女の命も無いわよ!!」
私は足をバタバタとさせてなんとか喧華から離れようとするが喧華はビクともしない。
「苦しいかい?そんなに苦しいなら離してやるよ!」
ドンッ!!
喧華はそう放つと私の体を壁に打ち付ける形で手を放した。
「ゴホッゴホッ」
喧華から喉から締め付けられ、地に崩れ落ちたまま痛みから咳き込む。喧華は血の気もよだつような形相で私を見下ろす。
江戸華喧華SIDEーーー
ふん、ガキの分際で私に説教なんかするからそうなるのよ!まあこう言う年頃の子は大抵自信過剰になったりするからこちらが上だと言うことを思い知らせてあげた方が良いのよ。
しかしこの少女、生意気さは鼻につくけど中々見所はあるわね…少なくとも海溝潤実よりは使えそうだわ…。
「ねえ貴女…私に楯突こうとするとは中々良い度胸してるじゃない、私の部下になると言うなら命は助けてあげても良くってよ?」
私はサキュラに言ってあげた。しかしサキュラは私を睨みつけたまま声を上げた。
「冗談言わないで…貴女の部下になるくらいなら死んだ方がマシよ…」
この小娘め、大人しくしてたら図に乗りやがって…。
その時姿は見えないがガストと言う霊族の私の部下の一人が私に耳打ちしてきた。
『この少女はやめといた方が良いですよ、何故ならあの海溝潤実が酷い目に遭っているのを想像して感じているような奴ですから』
なんてガキなの?薄気味悪いったらないわ…一瞬でも部下にしてあげようとした私が愚かしい…。
私も海溝潤実は嫌いだがこの小娘のように気持ちの悪い趣味を持つ奴はもっと嫌いだ。不良と言い、こう言うような小娘といい何故世の中は愚かしい奴らに溢れかえっているのか?
「ふんっ、それはそうとサキュラ貴女仲間が酷い目に遭ってるの想像して感じてるんですって?」
それを聞いた途端サキュラは顔を青ざめだした。そんなに言われるのが嫌ならその気持ち悪い趣味から足を洗いなさい!
「確かに海溝潤実は酷い目に遭うべき人間よ、しかしそれで感じたりするなんて貴女も人の事言えた義理じゃないわよね?」
サキュラは私が一つ一つの言葉を放つ度に徐々に怒りなのか?焦りなのか?そういった表情を見せてきた。
「貴女には関係ないでしょう!?」
「いいえあるわ!貴女の為に言ってあげる!このような悪趣味からは今すぐ足を洗うべきだわ!」
私の真心はこの子に届くかしら、いいえ届くはずよ!今ならまだ間に合う!ノファンのような人生の落伍者になってはもう遅い!まだ12にも満たないこの子が今のうちに汚い趣味に堕ちてしまったら…。
私はサキュラが可哀想になってきた。
サキュラがこうなったのもきっと海溝潤実のせいね。
「大丈夫、私は正義の味方…日本に溢れ返る汚い文化を共に駆逐しましょう!」
私はサキュラに手を差し伸べた。
「貴女だって部下を人身御供にして暗殺させたり次々と犠牲にしていっているじゃない…一緒にしないで!」
サキュラSIDEーーー
喧華はさも私に同情を向けるように私に説得しようとする。しかし貴女も同じ事言える立場じゃないと言ってやりたい。
私は別に自分が正しいとは思っていない。しかし人から言われて哀れみを持たれたり侮辱される言われはない。それにそれは私がスキルを行使するのに必要なものなの!この呪われたスキルを行使するのにはね!
「ならばこうしましょう、私の横には今ガストと言う可愛い部下がいるの、私と貴女、どちらが正しいか幻影を見せてくれるのだそうよ!」
喧華はこう言いだした。どうりで私に対する嫌な気配が喧華の他にもビンビンと伝わってきた筈だわ…。
するとガストと言う喧華の部下は姿を現した。しかしその姿を見て私は愕然とした。何故なら彼女は以前私と関わっていて、前まで仲良くしていた人だったからだ。
そして海溝潤実とも私つてに伝え、潤実の為に怒って私と仲違いをしてでも最後まで海溝潤実を思っていた人だ。
「…なんで貴女がここにいるの?」
私は有り得ない出来事からか寒気を覚え体がふるふると震える形で喧華に仕えるように立つその人物に問う。
「あらなんでかしらね?」
その人はすっとぼけた様子でクスリとあざ笑う。その人はそう、今は白い魔力石となった軽間奈照と言う人だった。
「あらお知り合いなのね、さあガスト、私とサキュラどちらが正しいか証明してあげなさい!」
喧華はそう言い放つ。
「奈照…喧華から離れなさい!さもなければ海溝潤実と戦わなければならなくなる!」
私は奈照に言い聞かせる。事実、海溝潤実はスキル「クトゥルフブレイクリー」を体得しにゼウスの像まで向かって行っている。彼女と奈照が戦わなければならないとなると…。
「いいじゃない、私は彼女と戦ってみたかったのよね?」
奈照は余裕げに言う。それは以前の馴染みとして言っているのか?それとも…。前者であれば良いがさっきから彼女に揺らめく殺気はなんなの?
「それと私は喧華様から素敵なスキルをいただいたの。「黒の幻覚」と言うスキルよ、今貴女にそれをかけてあげるわね♪」
奈照は手のひらを私に突き出してきて、そこから黒い瘴気が広がっていく。一瞬、衝撃を覚えて目の前が一瞬チカリとしたその途端、私の目の前の景色が変わった。
これが…黒の幻覚と言うスキルなの?と思ったその時あるものが姿を現した。
『気持ち悪い趣味ねえ可愛い見た目なのに…』
『人は見かけによらないなあ…惚れてたのに…』
『最近の子供ばどういう躾受けているのかしら』
『海溝さんが可哀想になってきた』
人の陰口が私に響く何なのこの声は…。私が耳を押さえていても人の陰口はどんどんと私の中に入り込んで行く。
耐えられなくなり私はそこから逃げるが陰口だけは入り込んできて止む事を知らない。一体なんなの?
「海溝潤実!」
走っているとやがて海溝潤実が私を怪訝な目で見ているのが見えた。
『見損なったよサキュラ…貴女は私をそんな目的の為にクトゥルフにしたんだね?』
「潤実…!それは…」
『近寄らないで気持ち悪い!貴女がそんな子だとは思わなかった…さようなら!』
「潤実!!」
海溝潤実が私から離れていく…。
仲間外れにされるのはもう慣れっこだが海溝潤実にあんな事言われると悔しくなってくる。
『そう、これは貴女の心を知った時の皆の反応よ!』
やがて奈照の姿が現れた。
『初めて貴女の本性を垣間見た時は身の毛がよだつ思いをしたわ…どうりで前々からおかしいと思ってたのよ…』
奈照は闇に覆われた表情で私に毒づく。
私らしくない…なんで私こんな事で傷ついてるんだろう?
私が私で無くなっていく…チエチエ助けて…!
海溝潤実SIDEーーー
私は強敵に立ち向かう為のスキル「クトゥルフブレイクリー」と言う能力を体得しようとゼウスの像まで向かっていた。
でもサキュラ達の身の危険と言うのかな?嫌な予感を感じたので私は道を引き返す。
するとガニメルさんが現れてどうしても引き返してはならないと私に立ちはだかったのだ。
『仮にここを通りたくばこの私を倒してみせる事だ!』
三矛の槍を構えて私を脅すガニメル。
私は一瞬躊躇う、でもこれで逃げてちゃいけない!私だって戦わなければならないとしたらそうしなければならない!
だってそれはサキュラや、トラテツ、今まで出会ってした人達もそうしてきた事だし私も彼女らから教えられた事だもん!
だから今は脅されたって私は逃げない!
私もクトゥルフに変身してガニメルさん同様槍を構え、戦闘に備えるようにしてみせた。
戦うのは嫌だ、でも嫌だからって仲間を見殺しにするのとは違う。
私もいつまでも成長しないままじゃ駄目なんだ!
私の中の時間は止まっている。戦う前の動悸、息苦しさが伝い、心臓の鳴る音と感じが強く、気になるのは足や槍が震えてしまっている事だ。
戦う時はいつもこうだ、トラテツや奈照さんはいつも堂々としていたのに…。
『ハッハッハッハ!』
やがてガニメルは笑いだした。
私はキョトンとする。何故この人は笑いだしているんだろう?
私はガニメルさんが笑いだしているのを見て私…小馬鹿にされているのかな?と少し哀しい気持ちになる。
どうやら違うようで、ガニメルさんは笑い終えるとにこやかな表情になり私に言ってみせた。
『実は私は君を試していたのだ、君がクトゥルフになるのに相応しい子かどうかをね…。
確かに君の言う通り、クトゥルフブレイクリーを体得しに向かい戻った時にサキュラ達が死んでしまってたら元も子もない…』
よくわからないけど私…どうやら試されていたみたいだ。
とするとクトゥルフブレイクリーというのは…?
『クトゥルフブレイクリーというのは既に君の中にある!』
ガニメルはそう言いだした。
「私の…中に?
でも、私は戦えてないし…」
私はガニメルさんに問う。
『君は自分が何も出来なくて弱い人間だと思っているのだろう、しかし君は今までの戦いの中で戦士としての気概はいくらか見せた。
そうで無ければ君はサキュラに選ばれる事は無かった!』
「………」
私は言いあぐねてしまっているとやがてガニメルさんが私を抱きしめにきた。
ハンサムな人に抱きしめられて私は身動き出来なくなってしまう。
『大丈夫だ、君は私でもある…君に力を引き出してあげよう…このままじっとしていて…』
我に返った私が振りほどこうとするとガニメルさんはこう言いだしてきて私は固まったようにじっとして動けなかった。
男の人にこう抱きしめられるのは初めてで(トラテツならともかく話す事自体も出来ない)ましてや相手はテレビでしかお目にかかれないようなハンサムな人だ。
でも私だけがこんな思いしていいのかなとも思う。
あっち側でサキュラやトラテツ、そしてアンドレさんが戦っていると言うのに…。
その時私の肌の感触が無くなる。
なんとガニメルの姿はそこになく、代わりにガニメルさんの脳に語りかけてくるような声が聞こえてきた。
『まだ完全には引き出せていないがクトゥルフブレイクリーの力を君に与えた、だが君自身の命の保証は出来ない、それでも助けに行くのか?』
私の中の答えは決まっていた。
「はい!仲間ですから!」
きっと蓮香ちゃんだってそうするはず!仲間の身の危機があるとして、行くなと言うルールに従うよりはルールを破ってでも仲間を助けに行く!
だって気の弱った真澄さんを助ける程の正義感の持ち主だもん!
蓮香ちゃんの勇気とガニメルさんのスキルを身に纏った私は急いでサキュラ達の元へと走って行った。
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