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水X火
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「しょ…勝負…て…」
「決まってんだろ、どちらが奈照さんのスキルを扱うに相応しいか勝負しろって事だよ!」
戦え…って事?
私は目の前にいる少女に威圧されている形だ。
少女、彩華は私をギッと睨み足を前に出す。
逆に私は後ずさり、目の前の威圧感に怯んでしまう。
「それとも自信が無いのか?」
ハンっと彩華は見下すように笑む。
「潤実ちゃん!何も挑発に乗る事無いじょ!!」
トラテツが放った所、突然何かが飛んで来る。
「女と女の戦いだ、男は引っ込んでろ!」
トラテツ君は鎖のようなもので縛られ身動きが出来なくされる。
「おい、どうなんだ?」
さらにずいっと彩華は前に出る。
私は蛇に睨まれた蛙のように何かを言おうにも口をパクパクさせるだけで声が出てこない。
「へっお前の奈照さんへの思いはその程度だったって事か!ならこの石は必要ねえよな!!」
彩華は私の首にかけてある奈照さんの魔力のこもった石を取り上げようとする。
「駄目!!!」
私は奈照さんの魔石を奪われまいと庇う。
取られると奈照さんが自分の目の前からいなくなる気がしたから。
「奈照さんの石は貴女には渡さない!!」
私を見下そうとする彩華の態度に悔しさも覚え、私は怒声を放つ。
「へへ、そうこなくっちゃな!」
彩華はそう言うと札を取り出し呪文を唱える。
「エマタシクカソワカエマタシクカソワカ…」
すると景色はセピア色となり、トラテツ君も鳥も、生き物の気配もその場から消え、その場は私達二人だけのフィールドとなってしまう。
「特殊な奴以外は入ってこれない結界を張ってやった!これで思う存分戦えるぜ!」
彩華はトンファーを二丁持ち、構える。
私もトライデントを構える。
奈照さんの魔法石を賭けた戦いの火蓋は切って落とされた。
奈照さんは渡さない!
きっと向こう側も奈照さんは自分のものだと言う気持ちなんだろう。
この戦いは引くに引けない!
トラテツSIDEーーー
あれ?潤実ちゃんと彩華の女どこ行ったんな?
ひょっとして結界張った?
消える前彩華札持ってブツブツ言よったな。
あかんやばい!
彩華潤実と二人だけで戦うために結界張って誰も邪魔入らんようにしたんじゃ!
えらいやっちゃえらいやっちゃヨイヨイヨイヨイとちゃうわ!
サキュラやったらそう言う結界も入れてまうて言よったな!
となると頼みの綱はサキュラだけじゃ!
ほなけど猫の姿に戻れるんかな…。
わいは貝里て女がある時は猫に戻れんかったんもあって懸念はするがすぐに猫の姿に戻れた。
移動する時は猫の姿が落ち着くわ!
早うサキュラ呼んで二人の戦い止めにいかな!!
海溝潤実SIDEーーー
来るか!?と思ったその前に彩華は既にトンファーを私に打ち添えていた。
「がはっ!?」
横によろつく私。
「何だ?見えなかったのか??」
と彩華。
「くそおおおおぉ!!!」
私は悔し紛れに槍百烈突きを彩華に浴びせるも彩華は槍の矛先を二丁のトンファーで器用に受け止めてしまう。
「トンファーにはこういう使い方もあるんだよ!」
彩華は体を横捻りして私を槍ごと地に転がした。
彩華は間髪入れずトンファーで私の顔を打ち付けようとする。
私は瞬時に体を回してトンファーを避ける。
そしてすぐさま戦闘体勢に転じる。
新しく編み出した必殺技ここで使う時!
「水竜槍《すいりゅうそう》!!」
私は宙に舞い上がりまるで水上に跳ねる竜のように空に舞い槍を彩華の頭上に突き下ろそうとする。
「させるか!!」
彩華はなんとトンファーから炎の渦を発して私の水竜槍を破ってしまう。
その刹那、彩華は蹴りを放ち、私は蹴り飛ばされる。
「あうっ!」
私は壁に打ち付けられ、衝撃が全身に伝った。
私は諦めずに槍を構えて立とうとした所に彩華は既に私のすぐ前にいて私は彩華に顔を撃ち添えられる。
速すぎる、私は彩華の速すぎる攻撃にただ翻弄されていた。
「ウォーターバリア!!」
ダメージをかなり負ったがウォーターバリアで防げば攻撃は避けられ…。
「お前がそれを放つ事を待っていたんだよ!!」
え、どう言う事?
彩華はその間真っ赤な炎をフィールド全体に張り巡らせてくる。
ひょっとして全体の温度を炎によって上げてバリアの中にいられなくする作戦か!?
私はウォーターバリアで防ぐもどんどん熱気が上がってゆく。
ウォーターバリアの水温は彩華の放つ炎の渦で40度、50度と上がっていく。
「このまま閉じこもってると熱気と酸素不足で脳がやられてしまうぞ?早く解いた方が良いんじゃないのかい?」
これはバリアと言う名の籠城戦となっていた。
私はサウナにいるような熱気の中で必死に耐えている状態。
ウォーターバリアは沸騰しだしこのまま耐えていては私はのぼせてしまう。
逆にバリアを破れば彩華から打撃を食らう羽目になるか…どのみち危機一髪に変わりなかった。
私はウォーターバリアの先から彩華に照準を定める。
そうだ、ここは私達だけのフィールド、他人は足を踏み入れられない。
私はウォーターバリアの先からある技を発動しようとしていた。
「メイルストローム!!」
私はメイルストロームを発する。
狙いはバッチリ!
彩華はすぐそこにいる。
これで彩華にダメージを与えられるだろう。
そう思った私は愚かだった。
「甘いよ!!」
なんと彩華はメイルストロームをトンファーで打ち添え、あまつさえそれをウォーターバリアのすぐ目の前に叩き返すのだ。
メイルストロームの威力で大地がえぐれたかと思うと私は足元をすくわれ、穴に滑り落ちた形で体のバランスを崩す。
その刹那ウォーターバリアは破られる。
私はサウナにずっといたようにのぼせていて気を失いそうな状態となっていた。
それを知ってか知らずか、彩華は二丁のトンファーを振り上げて私にトドメを刺そうとする。
「終わりダーーーー!!!」
私の目には獲物を狩る鷹のような目をした彩華の姿が、鳳凰《ほうおう》のように見えていた。
かの鳥は死者を黄泉に誘う鳥。
このフィールドにいる限り、敗北はすなわち黄泉行きを意味していた。
ドスッッッッ!!
トンファーの先が私の腹わたをえぐる。
「ぐふぅ!」
私は腹を圧迫されて内容物が出てしまう。
トンファーはグリグリと私の腹わたをえぐってくる。
ちょっもう無理だってええぇ!!
「奈照さんが受けた苦しみはこんなもんじゃねえ!」
ぐううっ!
ひょっとして私が奈照さんを殺したと本当に思ってるの?
あれは違う…でも声が出ない。
あれ…。
なんか大事な事を忘れているような…。
なんだっけ…。
私は意識が朦朧としてきた。
フィールドの中は高温だ。
しかし彩華はこんな所にいて平気なの??
至って涼しげだ。
私はのぼせて汗びっしょりでボーッとしているというのに…。
ああもう駄目だ…私彩華と戦っていたはずだ。
でも赤子の手をひねると言って良い形で簡単にやられてしまった。
強いよ…。
挑む前から格が違い過ぎたんだ…。
私の目の前は次第に暗くなってきた。
ーーー見覚えのある部屋。
「あっ目が覚めたで?」
ふと気がつくと私は布団に寝かされていてトラ猫のトラテツが私の顔を覗き込んでいた。
「それと汗ようけかいとって今喉カラカラちゃうん?水分補給言うてサキュラが飲みもん持って来てくれたじょ!」
成る程飲み物が湯気を放ち芳醇な香りを漂わせている。
「これはゆずティー?」
私は飲んでみてトラテツに聞く。
「いや、なんやルルイエで採れる果物から作ったお茶らしいよ、体力回復とかに良えんやって」
トラテツの言う通り飲むごとに喉が癒えると共に気分が良くなっていくのを感じた。
しかしそのお茶を飲んだ後大事な事を思い出す。
「そうだ!奈照さんの…!」
私は彩華と奈照さんの魔力石を賭けて戦っていた。
しかし私は彩華相手にはまるで歯が立たず、バリアも彩華の機転から高温を上げる作戦によって破れ、私は…。
きっと奈照さんの魔力石は彩華の手に渡ったに違いない。
「ハァ…」
私のため息をトラテツは見逃さなかった。
「どないしたん?ため息やしよったら幸せ逃げるじょってじっちゃんも言よったじょ」
トラテツいちいちうるさいけど言ってる事いちいち可愛い。
「うん、私奈照さんの魔力石を賭けて可園彩華と戦ってたけど…結局魔力石は彩華の手に渡っちゃった…」
奈照さん…私より…彩華さんのほうが魔力良く使ってくれそうだよ…彩華さんをずっと守ってあげてね…でもそう思うたび悲しくなるよ…。
「うぐ…ひっく…」
私は悔しくなって…悲しくなってつい泣いてしまう。
トラテツの前なのに恥ずかしい。
「潤実ちゃんよう見てみ?奈照さんの魔力石はちゃんとあるじょ?」
トラテツは言ってくる。
「え?」
私は首元に触れてみる。
何かがあり、それを摘んで見てみるとなんと、奈照さんの魔力石がそこにあるではないか!
「嘘!信じられない!でもどうして?」
何故かある事に私は少し興奮気味になり、しかし彩華に奪われた筈なのにと言う疑問も湧いてきた。
トラテツの話によると私は気を失っている間に覚醒したらしい。
「ふふふ奈照さんの魔力は私のものだ!」
彩華が私の首元にかけてある奈照さんの魔力石を掴もうとする。
その時私の体中から水色の闘気が渦巻く。
「な、なんだ!?何が起こった??」
水色の闘気に巻き込まれて後ずさった彩華は戸惑いの声を放つ。
私はその時、ユラっと水色の闘気を纏いながら立ち上がっていた。
その姿はなんと、水竜の化身かとも思われた。
彩華は歯を軋ませ、強がってみせる。
「畜生!しぶとい女だ!!」
彩華は立ち上がった私をトンファーで滅多打ちにしようとする。
しかし私は身を翻し、それをハラリと躱す。
「何っ避けた??」
その刹那、私は尾びれと化した足を振るい彩華を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた彩華は壁に叩きつけられてがはっと咳き込む。
「一体何が…!?」
なんと私は槍を持った水竜と化し闘気を纏いながら宙に浮いていた。
ーーー
「それは嘘よ」
トラテツが得意げに話している時にサキュラが部屋に入ってきた。
「あぁもうせっかく潤実ちゃんも目キラキラさせとったのに!」
実際、トラテツの話を聞いて私にもそんな力があったんだ♪
などと本気で信じてた…信じて損した…。
「でも私の首元には何で奈照さんの魔力石があるの?あれから何があったの?」
私はサキュラに尋ねる。
本当なら奈照さんの魔力石を狙っていた彩華の手に渡るはずだったのだ。
「そうね…」
サキュラは語りだす。
サキュラSIDEーーー
私はトラテツに連れられて潤実と彩華が戦っているだろう場所に辿り着く。
一見、何も無いように思われたがそこはやけに熱く感じられた。
何かがあるとは熱気で感じることが出来た。
私はそこに結界が張られていると睨み、結界破りを施した。
結界が破られるとそこには彩華が気を失った潤実から奈照の魔力石を奪い取ろうとする姿が。
「何をヤッているの!?」
私は彩華に睨み、放つ。
「何ってそいつと奈照さんの魔力を使うに相応しいのはどちらか白黒つけてたんだよ!」
彩華は言い返す。
「だがアタイが勝ったんで奈照さんの魔力はアタイのもんだ!」
そして彩華は潤実から奈照の魔力石を離し、我が身にかけようとする。
「…彩華、奈照の魔力石を今すぐ潤実に返しなさい」
私は奈照の悲しそうな表情を魔力石から見て、彩華に促した。
「はあ!?何でだよ!アタイが勝ったんだからアタイのもんだろ!」
彩華は喧嘩腰に怒声を放つ。
「彩華、貴女は戦いに勝った後何をしてた?恨みをぶつけるように潤実を詰ってたよね?そんな事して奈照が浮かばれると思ってるの?」
柄にもなく私は彩華に言い聞かす。
何で私がそんな気になってしまってるのかしら…。
彩華は暫く納得いかないといった表情をしながらもじっと立っていたが渋々ながら「わかったよ」と言い奈照の魔力石を潤実の首元に戻してくれた。
海溝潤実SIDEーーー
「そうなんだ…」
まさかサキュラがあんな事を言うなんて…それと彩華にあんな素直な一面があったとは…。
私は少しだけサキュラの事が良く見えた気がした。
…のだけれど…。
「ともあれ貴女の実力不足が彩華との戦いで再確認が出来たわ、更にメニュー増やして強化に臨むわよ!」
サキュラは分厚い紙を持ち出し今後の訓練計画を立てられる羽目になる。
私はそのメニューを目に通して血の気が引く思いがした…。
やっぱりサキュラは鬼だ…。
それを見ていたトラテツも「サキュラ鬼やなあ…」と呟いてた。
「決まってんだろ、どちらが奈照さんのスキルを扱うに相応しいか勝負しろって事だよ!」
戦え…って事?
私は目の前にいる少女に威圧されている形だ。
少女、彩華は私をギッと睨み足を前に出す。
逆に私は後ずさり、目の前の威圧感に怯んでしまう。
「それとも自信が無いのか?」
ハンっと彩華は見下すように笑む。
「潤実ちゃん!何も挑発に乗る事無いじょ!!」
トラテツが放った所、突然何かが飛んで来る。
「女と女の戦いだ、男は引っ込んでろ!」
トラテツ君は鎖のようなもので縛られ身動きが出来なくされる。
「おい、どうなんだ?」
さらにずいっと彩華は前に出る。
私は蛇に睨まれた蛙のように何かを言おうにも口をパクパクさせるだけで声が出てこない。
「へっお前の奈照さんへの思いはその程度だったって事か!ならこの石は必要ねえよな!!」
彩華は私の首にかけてある奈照さんの魔力のこもった石を取り上げようとする。
「駄目!!!」
私は奈照さんの魔石を奪われまいと庇う。
取られると奈照さんが自分の目の前からいなくなる気がしたから。
「奈照さんの石は貴女には渡さない!!」
私を見下そうとする彩華の態度に悔しさも覚え、私は怒声を放つ。
「へへ、そうこなくっちゃな!」
彩華はそう言うと札を取り出し呪文を唱える。
「エマタシクカソワカエマタシクカソワカ…」
すると景色はセピア色となり、トラテツ君も鳥も、生き物の気配もその場から消え、その場は私達二人だけのフィールドとなってしまう。
「特殊な奴以外は入ってこれない結界を張ってやった!これで思う存分戦えるぜ!」
彩華はトンファーを二丁持ち、構える。
私もトライデントを構える。
奈照さんの魔法石を賭けた戦いの火蓋は切って落とされた。
奈照さんは渡さない!
きっと向こう側も奈照さんは自分のものだと言う気持ちなんだろう。
この戦いは引くに引けない!
トラテツSIDEーーー
あれ?潤実ちゃんと彩華の女どこ行ったんな?
ひょっとして結界張った?
消える前彩華札持ってブツブツ言よったな。
あかんやばい!
彩華潤実と二人だけで戦うために結界張って誰も邪魔入らんようにしたんじゃ!
えらいやっちゃえらいやっちゃヨイヨイヨイヨイとちゃうわ!
サキュラやったらそう言う結界も入れてまうて言よったな!
となると頼みの綱はサキュラだけじゃ!
ほなけど猫の姿に戻れるんかな…。
わいは貝里て女がある時は猫に戻れんかったんもあって懸念はするがすぐに猫の姿に戻れた。
移動する時は猫の姿が落ち着くわ!
早うサキュラ呼んで二人の戦い止めにいかな!!
海溝潤実SIDEーーー
来るか!?と思ったその前に彩華は既にトンファーを私に打ち添えていた。
「がはっ!?」
横によろつく私。
「何だ?見えなかったのか??」
と彩華。
「くそおおおおぉ!!!」
私は悔し紛れに槍百烈突きを彩華に浴びせるも彩華は槍の矛先を二丁のトンファーで器用に受け止めてしまう。
「トンファーにはこういう使い方もあるんだよ!」
彩華は体を横捻りして私を槍ごと地に転がした。
彩華は間髪入れずトンファーで私の顔を打ち付けようとする。
私は瞬時に体を回してトンファーを避ける。
そしてすぐさま戦闘体勢に転じる。
新しく編み出した必殺技ここで使う時!
「水竜槍《すいりゅうそう》!!」
私は宙に舞い上がりまるで水上に跳ねる竜のように空に舞い槍を彩華の頭上に突き下ろそうとする。
「させるか!!」
彩華はなんとトンファーから炎の渦を発して私の水竜槍を破ってしまう。
その刹那、彩華は蹴りを放ち、私は蹴り飛ばされる。
「あうっ!」
私は壁に打ち付けられ、衝撃が全身に伝った。
私は諦めずに槍を構えて立とうとした所に彩華は既に私のすぐ前にいて私は彩華に顔を撃ち添えられる。
速すぎる、私は彩華の速すぎる攻撃にただ翻弄されていた。
「ウォーターバリア!!」
ダメージをかなり負ったがウォーターバリアで防げば攻撃は避けられ…。
「お前がそれを放つ事を待っていたんだよ!!」
え、どう言う事?
彩華はその間真っ赤な炎をフィールド全体に張り巡らせてくる。
ひょっとして全体の温度を炎によって上げてバリアの中にいられなくする作戦か!?
私はウォーターバリアで防ぐもどんどん熱気が上がってゆく。
ウォーターバリアの水温は彩華の放つ炎の渦で40度、50度と上がっていく。
「このまま閉じこもってると熱気と酸素不足で脳がやられてしまうぞ?早く解いた方が良いんじゃないのかい?」
これはバリアと言う名の籠城戦となっていた。
私はサウナにいるような熱気の中で必死に耐えている状態。
ウォーターバリアは沸騰しだしこのまま耐えていては私はのぼせてしまう。
逆にバリアを破れば彩華から打撃を食らう羽目になるか…どのみち危機一髪に変わりなかった。
私はウォーターバリアの先から彩華に照準を定める。
そうだ、ここは私達だけのフィールド、他人は足を踏み入れられない。
私はウォーターバリアの先からある技を発動しようとしていた。
「メイルストローム!!」
私はメイルストロームを発する。
狙いはバッチリ!
彩華はすぐそこにいる。
これで彩華にダメージを与えられるだろう。
そう思った私は愚かだった。
「甘いよ!!」
なんと彩華はメイルストロームをトンファーで打ち添え、あまつさえそれをウォーターバリアのすぐ目の前に叩き返すのだ。
メイルストロームの威力で大地がえぐれたかと思うと私は足元をすくわれ、穴に滑り落ちた形で体のバランスを崩す。
その刹那ウォーターバリアは破られる。
私はサウナにずっといたようにのぼせていて気を失いそうな状態となっていた。
それを知ってか知らずか、彩華は二丁のトンファーを振り上げて私にトドメを刺そうとする。
「終わりダーーーー!!!」
私の目には獲物を狩る鷹のような目をした彩華の姿が、鳳凰《ほうおう》のように見えていた。
かの鳥は死者を黄泉に誘う鳥。
このフィールドにいる限り、敗北はすなわち黄泉行きを意味していた。
ドスッッッッ!!
トンファーの先が私の腹わたをえぐる。
「ぐふぅ!」
私は腹を圧迫されて内容物が出てしまう。
トンファーはグリグリと私の腹わたをえぐってくる。
ちょっもう無理だってええぇ!!
「奈照さんが受けた苦しみはこんなもんじゃねえ!」
ぐううっ!
ひょっとして私が奈照さんを殺したと本当に思ってるの?
あれは違う…でも声が出ない。
あれ…。
なんか大事な事を忘れているような…。
なんだっけ…。
私は意識が朦朧としてきた。
フィールドの中は高温だ。
しかし彩華はこんな所にいて平気なの??
至って涼しげだ。
私はのぼせて汗びっしょりでボーッとしているというのに…。
ああもう駄目だ…私彩華と戦っていたはずだ。
でも赤子の手をひねると言って良い形で簡単にやられてしまった。
強いよ…。
挑む前から格が違い過ぎたんだ…。
私の目の前は次第に暗くなってきた。
ーーー見覚えのある部屋。
「あっ目が覚めたで?」
ふと気がつくと私は布団に寝かされていてトラ猫のトラテツが私の顔を覗き込んでいた。
「それと汗ようけかいとって今喉カラカラちゃうん?水分補給言うてサキュラが飲みもん持って来てくれたじょ!」
成る程飲み物が湯気を放ち芳醇な香りを漂わせている。
「これはゆずティー?」
私は飲んでみてトラテツに聞く。
「いや、なんやルルイエで採れる果物から作ったお茶らしいよ、体力回復とかに良えんやって」
トラテツの言う通り飲むごとに喉が癒えると共に気分が良くなっていくのを感じた。
しかしそのお茶を飲んだ後大事な事を思い出す。
「そうだ!奈照さんの…!」
私は彩華と奈照さんの魔力石を賭けて戦っていた。
しかし私は彩華相手にはまるで歯が立たず、バリアも彩華の機転から高温を上げる作戦によって破れ、私は…。
きっと奈照さんの魔力石は彩華の手に渡ったに違いない。
「ハァ…」
私のため息をトラテツは見逃さなかった。
「どないしたん?ため息やしよったら幸せ逃げるじょってじっちゃんも言よったじょ」
トラテツいちいちうるさいけど言ってる事いちいち可愛い。
「うん、私奈照さんの魔力石を賭けて可園彩華と戦ってたけど…結局魔力石は彩華の手に渡っちゃった…」
奈照さん…私より…彩華さんのほうが魔力良く使ってくれそうだよ…彩華さんをずっと守ってあげてね…でもそう思うたび悲しくなるよ…。
「うぐ…ひっく…」
私は悔しくなって…悲しくなってつい泣いてしまう。
トラテツの前なのに恥ずかしい。
「潤実ちゃんよう見てみ?奈照さんの魔力石はちゃんとあるじょ?」
トラテツは言ってくる。
「え?」
私は首元に触れてみる。
何かがあり、それを摘んで見てみるとなんと、奈照さんの魔力石がそこにあるではないか!
「嘘!信じられない!でもどうして?」
何故かある事に私は少し興奮気味になり、しかし彩華に奪われた筈なのにと言う疑問も湧いてきた。
トラテツの話によると私は気を失っている間に覚醒したらしい。
「ふふふ奈照さんの魔力は私のものだ!」
彩華が私の首元にかけてある奈照さんの魔力石を掴もうとする。
その時私の体中から水色の闘気が渦巻く。
「な、なんだ!?何が起こった??」
水色の闘気に巻き込まれて後ずさった彩華は戸惑いの声を放つ。
私はその時、ユラっと水色の闘気を纏いながら立ち上がっていた。
その姿はなんと、水竜の化身かとも思われた。
彩華は歯を軋ませ、強がってみせる。
「畜生!しぶとい女だ!!」
彩華は立ち上がった私をトンファーで滅多打ちにしようとする。
しかし私は身を翻し、それをハラリと躱す。
「何っ避けた??」
その刹那、私は尾びれと化した足を振るい彩華を弾き飛ばす。
弾き飛ばされた彩華は壁に叩きつけられてがはっと咳き込む。
「一体何が…!?」
なんと私は槍を持った水竜と化し闘気を纏いながら宙に浮いていた。
ーーー
「それは嘘よ」
トラテツが得意げに話している時にサキュラが部屋に入ってきた。
「あぁもうせっかく潤実ちゃんも目キラキラさせとったのに!」
実際、トラテツの話を聞いて私にもそんな力があったんだ♪
などと本気で信じてた…信じて損した…。
「でも私の首元には何で奈照さんの魔力石があるの?あれから何があったの?」
私はサキュラに尋ねる。
本当なら奈照さんの魔力石を狙っていた彩華の手に渡るはずだったのだ。
「そうね…」
サキュラは語りだす。
サキュラSIDEーーー
私はトラテツに連れられて潤実と彩華が戦っているだろう場所に辿り着く。
一見、何も無いように思われたがそこはやけに熱く感じられた。
何かがあるとは熱気で感じることが出来た。
私はそこに結界が張られていると睨み、結界破りを施した。
結界が破られるとそこには彩華が気を失った潤実から奈照の魔力石を奪い取ろうとする姿が。
「何をヤッているの!?」
私は彩華に睨み、放つ。
「何ってそいつと奈照さんの魔力を使うに相応しいのはどちらか白黒つけてたんだよ!」
彩華は言い返す。
「だがアタイが勝ったんで奈照さんの魔力はアタイのもんだ!」
そして彩華は潤実から奈照の魔力石を離し、我が身にかけようとする。
「…彩華、奈照の魔力石を今すぐ潤実に返しなさい」
私は奈照の悲しそうな表情を魔力石から見て、彩華に促した。
「はあ!?何でだよ!アタイが勝ったんだからアタイのもんだろ!」
彩華は喧嘩腰に怒声を放つ。
「彩華、貴女は戦いに勝った後何をしてた?恨みをぶつけるように潤実を詰ってたよね?そんな事して奈照が浮かばれると思ってるの?」
柄にもなく私は彩華に言い聞かす。
何で私がそんな気になってしまってるのかしら…。
彩華は暫く納得いかないといった表情をしながらもじっと立っていたが渋々ながら「わかったよ」と言い奈照の魔力石を潤実の首元に戻してくれた。
海溝潤実SIDEーーー
「そうなんだ…」
まさかサキュラがあんな事を言うなんて…それと彩華にあんな素直な一面があったとは…。
私は少しだけサキュラの事が良く見えた気がした。
…のだけれど…。
「ともあれ貴女の実力不足が彩華との戦いで再確認が出来たわ、更にメニュー増やして強化に臨むわよ!」
サキュラは分厚い紙を持ち出し今後の訓練計画を立てられる羽目になる。
私はそのメニューを目に通して血の気が引く思いがした…。
やっぱりサキュラは鬼だ…。
それを見ていたトラテツも「サキュラ鬼やなあ…」と呟いてた。
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