クトゥルフの雨

海豹ノファン

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過酷な戦い

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海溝潤実SIDEーーー

私が見た光景は人間と言う生き物のおぞましさを感じる光景だった。

筋肉質な男の人が緑色の肌をした宇宙人のような人を痛めつけているのとそれより体のサイズの小さな宇宙人が数人の人間の男に滅多打ちにされている所。

それを、何十人もいるギャラリーは止める事もせず「もっとやれ!」と喜び、まるで娯楽もののように人間の子供に宇宙人をいじめさせると言うショーだった。

「ははは!心配いらん!相手は公園の公共を乱す悪だ!悪相手なら何をやっても良いのだ!!」

その筋肉質の人…ひょっとして江戸華喧太郎さん!?
私は目を疑った。
憧れのヒーローの江戸華喧太郎さんがこのような事をして、また人にさせるような人だとは…!

「さあ潤実!変身よ!!」
「うんっ!」

サキュラの言う通り、私は走りながらクトゥルフの戦士姿に変身した。

「何をヤッているの!??」

私はトライデントを構え江戸華喧太郎めがけて言い放つ。

「俺は公共の場を汚す悪を成敗しているのよ!お前もやるか…!?」

喧太郎は私の顔を見やると目をギョッとさせて体をピクンとさせるのが見えた。

「お、お前は…!」

この人、私の事を知ってるの?

「私の事を知ってるのですか!?」

私は喧太郎に尋ねる。

江戸華喧華SIDEーーー

忘れもしない!
あいつは私の人生を狂わせた女…!

そもそも私はやっと大文字修羅と言う素敵な、しかも若い彼氏に娶られる事が出来たのにそもそもこの疫病神がいなければ私は修羅君と結婚出来たかも知れないしインスマスにもならずに済んだんだ!

そもそもあの男をメッタ刺しにして捕まっていたはずなのに何で奴がここにいる!??

大人しそうな風貌して油断ならない女だわ!
職場でも足を引っ張って私の幸せからも足を引っ張ってどうしようもない疫病神!

こんな奴といるとロクな事にならないのよ!!

私は正義の味方!正義の味方は何をやっても許されるのよ!それにこんな女のせいで皆んなが私のような不幸に陥らなくて済む!!

そう、私がやるべき事…。

それはあの「疫病神」を徹底的にぶちのめす事よ!!

私はチッチーから海溝潤実《やくびょうがみ》に標的を変えた。

「くたばれ疫病神ーー!!!」

私は疫病神に殺気を放ち、拳を前に突き出した。

海溝潤実SIDEーーー

何故か私に向かって殺気を放ち、喧太郎が襲いかかって来る。

喧太郎の無数の拳が目の前に飛んでくる。
何この無数の拳は!?

私は咄嗟にウォーターバリアを張る。
ドドドド!!!

喧太郎のウォーターバリアを叩く音が鈍く鳴る。

「え…?そんな!!」

ウォーターバリアがなんと破壊されてしまった。
ウォーターバリアは破られ、私は喧太郎から無数の拳を浴びせられる事になる。

「潤実!!!」

サキュラの声が虚しく響く。

私は宙を舞い、地に叩きつけられた後、意識を失ってしまった。

サキュラSIDEーーー

潤実は喧太郎から無数の拳を浴びせられ、三メートルは弾き飛ばされる。

倒された潤実はバリアで防いだにも関わらず全身がボロボロとなり白目を向き、ビクビクと痙攣していて下が濡れていた。

そんな姿を楽しむように喧太郎が下衆な笑みを浮かべて潤実に歩み寄る。

いけない!このままだとあの子が…!
今ならあの娘に入っていけるはず!
私は潤実の体に「憑依」した。

私は潤実に憑依するが体が動かない…いけない!神経もやられてしまってる!

そうだ!軽間奈照の魔力で海溝潤実の体を治療するのよっ!

私は海溝潤実に軽間奈照の回復の光と言うスキルを貰っているのを確認し、海溝潤実の壊された神経組織などの治療に試みた。

海溝潤実に軽間奈照の魔法をあげたのは正解だったわね…。

しかしそんな思惑を他所に江戸華喧太郎は私が海溝潤実に憑依し、海溝潤実の体を治療している様子を訝しげに見る。

「この女の体から光が…コイツ自分の体の傷を修復させようとしているのか!?」

しまった!喧太郎に見切られた。

「そうはさせるか!!」

「ぐはっ!!」

私、潤実は喧太郎から脇腹を蹴られる。

「相変わらずわかりやすい女だ、てめえのやろうとしている事はお見通しなんだよ!」

そんな時、それを見かねた男が呼び止める。

「お、おい!その子は女の子だぞ!いくら正義の味方でもやって良い事と悪い事があるんじゃないのか??」

顔に恐怖の色が見えるが良識のある男の人のようね。

逆に喧太郎は男に目を向き、ありもしないでっち上げをする。

「何言ってんですか、コイツは可愛い子の皮を被った悪魔なんですよ、コイツのせいで人生ボロボロにされた奴は山ほどいるんです♪」

この女…海溝潤実に対して相当な憎悪を持っているわね…。

それにしても肝っ玉の小さい奴だわ。
弱い者に憎悪を向けても何のメリットも無いのに。

「成る程…正義の味方様が言うのなら間違っていないかも…」

善悪の区別も特に付けずに強い人の言う事に簡単になびいてしまう男も男だわ。

しかし多少は喧太郎は手を止めてくれたので時間稼ぎは出来た。

体はほぼ修復したけれど動けるほど回復するまで間に合うかしら…。

「さあ続きだ、たっぷりなぶりながら殺してやる…!!」

喧太郎は拳を鳴らし下衆に笑いながら私に寄ってきた。

「どうせならとっておきのお願いするわ、さっきまでのじゃ全然足りないもの」

修復で喋れるようになった私、潤実は喧太郎に挑発して見せた。

それを聞いた喧太郎の顔はゆでダコのように真っ赤になり、体の至る所に血管が浮き出る。

「言わせていけばこの小娘!!いっそ全身不随にしてやる!!!」

私に挑発されるがままノッてしまう喧太郎。
喧太郎は空高くジャンプし、膝を下に向け、私の体の内部をひと思いに潰そうとする。

「死ねえ!!!」

単純な女だわ、私はまた1、2秒は時間稼ぎ出来たと思い、海溝潤実の体を動かせるようにする。

完全と言う訳では無いけれど、これなら戦闘から逃げるくらいには出来そうね。

しかしそんな時、別の赤い物体が飛んでくる。
何なの?あれ…!

私は目を見開く。
何と赤い物体は人のようで、喧太郎に殴打を放ち、弾き飛ばしたのだった。

「ぐはっなんだ!??」

地面に叩きつけられた喧太郎は何が起こったのかと戸惑う。

一方喧太郎にぶつかった赤いオーラを纏った人は赤い衣を纏ったうら若き女になる。

うら若き女の瞳は射るように鋭く、いくつかの修羅場を潜り抜けてきたと見える。

「抵抗も出来なくなった奴を更に面白がるようにいじめたり、相手をそそのかして気に入らない奴をいじめるように仕向けるのが正義の味方のする事かよ」

先程の熱気の為か、ユラユラと揺らめく空間から赤髪の女は髪をユラユラさせながら歩み寄った。

あの子は…可園彩華!

何故あの娘がここに…それに海溝潤実には敵意を向けているはず…!

私はあの子の心理を更に深く探った。
するとあの子の真意が見えてきた。

成る程ね…。
私は立ち上がる。

「ありがとう、可園彩華!」

「勘違いすんなよ、馴れ合いに来たんじゃねえ!」

私は礼を言うが彩華はふんっとつっけんどんに返事をする。
まあこの態度も想定済みだけどね。

彩華は今度はギャラリーに向け、大声で放った。

「てめえらっ!大の大人が善と悪の区別も付けずに強いだけの奴になびいてどうすんだ!!あすたむらんど徳島は子供の遊技場以上に子供に健全な心身を養う場だ!!大人なら責任持って子供に自由に考えられる教育をしやがれ!!」

彩華の怒鳴り声はギャラリー達に響いた。

「おいデクの棒!」

彩華は喧太郎に鋭い目線を向ける。

「アタイは海溝潤実とは違う、このアタイとタイマンしてみるか?ん?」

まるで凄むように喧太郎に低い声で挑発を仕掛ける。

彩華の威圧に押された喧太郎は今は男であるのを忘れているのか「お、覚えてらっしゃい!!」とオカマのような声を上げて逃げていった。

おっと、そろそろ本物の海溝潤実が目を覚ます頃だわ。

私はサキュラに体を戻す事にしましょう。

海溝潤実SIDEーーー

可園彩華…一体どう言うつもりなんだろう?
私に恨みを抱いているはずなのに私を助けてくれた…?

ひょっとしたら悪い子では無いのかも?
でもトラテツは疑ってるみたいだしサキュラも

「敵には違いない、貴女を助けたのには理由がある、でも今は知る必要は無いわ」

と言う。

可園彩華…敵なの?味方なの?私の疑問は深まるばかりだ…。
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