14 / 93
会わせたい人
しおりを挟む
軽間奈照《かるまなてら》
「ママ…パパ…助けて…」
12歳の時、私は絶対治らないだろう難病に冒されていた。
身体が日に日に弱っていき、食べ物も受け付けなくなる。
そして自分では呼吸も出来なくなり、酸素ボンベをつけられる…それでも…弱ってきた身体ではそれすら敵わなくなる。
点滴、痛み止め…病魔に抵抗する薬…あらゆる手段を施されたがそれも虚しく私は死ぬのを待つだけの状態となっていた。
嫌だ死にたくない…何でこうなるの?
何をしたのか教えてよ…!
そんな時の事だった。
人なのか天使なのか、淡い光に包まれながら男の人と女の子がやってきた。
『天使…さん?』
もはや病気で喋る事が出来なくなった私。
『いや僕らはルルイエからやって来た民、君は軽間奈照さんだね?』
心を読んできたのか、男の人は答えた。
『私…病気と戦っている貴女を見てほっとけなくなったの…!だからお友達になろ!?』
辿々しく女の子の方が伝えてくる。
彼らが何者かは知らないけど…私は生き延びたい!
私は藁をも掴む思いで男の人と女の子にすがった。
海溝潤実SIDEーーー
「ここなの?」
「ええ…」
場所はとても広くて、大きな病院、コンビニやら、料理店が立ち並び、なんだか一つの商店街のようだ。
綺麗に塗装されており、外観も綺麗…。
しかし…。
「だから次の人待たせてるんでサッサと行ってください!」
受け付け室の近くを通る時の事、大きな怒鳴り声がした。
見ると患者が相談しに来ているのに横柄に怒鳴ってくる白衣を着た医師さん。
貴方…せっかく綺麗な病院の中で感動に浸ってたのにそれはないでしょ…。
医師がシッシと手で追い払い患者が泣く泣く受け付け室から去るのを見て患者さんが気の毒に思えてきた。
「ここの医師さん態度悪いけど大丈夫なの?」
「医師や看護師は派閥が大きくてイジメも起こりやすいからああいう人しか残らないようね…でも安心して、奈照ちゃんはああでは無いから」
サキュラは目を細めて奈照さんを「ちゃん」付けする。
それだけ仲が良いのかな?
「ほら、大丈夫だから、手すりにつかまって、ね!」
しばらく院内を歩くと白衣をした女の人が患者と思われる老人を励ましているのが見えた。
女の人はまるで女神のような笑顔をしている。
ああ言うのを白衣の天使と呼ぶのだろうか?
私は思った。
「あの人が軽間奈照さんよ」
サキュラは言う。
「あ、サキュラちゃん久しぶり♪それと貴女が海溝潤実さんね?はじめまして♪」
奈照と思われる若い女の人はアニメ声と言ったかん高い、でも聞き心地の良い声で爽やかに声を放つ。
そしてニッコリと自己紹介。
「私が軽間奈照よ♪わあ貴女の容姿はイメージの魔法で見せてもらったけど実物を見ると余計可愛いわね、同じクトゥルフ仲間が出来て嬉しいわー宜しくね♪」
奈照さんはキャピキャピした感じに私に握手して喋ってくる。
このテンションに少し戸惑う私。
「この子は人見知りが激しいしあと少し鈍臭い子なの、でも良い子よ」
サキュラは何気に酷いことをサラっと言う、良い子と言ってくれたから良いが。
「そうなの、私は誰とでも仲良くなれるスーパーガールだから心配ないわ、宜しくね新米天使さん♪」
「は…はい…」
私は固まったまま例えるなら太陽のような女の人と改めて両手で握手をした。
「ねえさっき奈照さんがクトゥルフ仲間とか言ってたけどクトゥルフって何なの?」
病院にあるレストランで食事を摂る私とサキュラ。
クトゥルフ…名前だけはなんとなく聞いたことがあるけど…。
「ああ、貴女にはまだ言ってなかったわね、インスマスに対抗する組織よ、そして潤実さん、貴女もクトゥルフに入ってるのよ」
「ええ!?」
私は少し驚く。
「でもサキュラちゃん…そんな事一言も…!」
私は焦る。
いつの間にか組織に入っていただなんて!
「言ったわよ、初めて会った時に言わなかったっけ?契約してと」
「あ…」
でもでも面倒な手続きとか皆んなに紹介とか色々やらなきゃいけなくなるんじゃ…。
はわわと緊張してしまう私。
他の人は何この人何かの病気?みたいに私を見るが私はそんな事気付かないくらいにこの先しないといけない事にテンパりを覚えている。
「大丈夫よクトゥルフは組織と言ってもみんな組織という概念は持っていないから」
とサキュラは言う。
「そう…?」
「組織と言ってもみんな学業とか仕事とかで忙しいの、みんながみんな集まろうと言う訳にも行かず付近にインスマスが現れたら個人、或いは手の空いたクトゥルフが対処する事になってるの」
「そうなの…それぞれ自由行動って事で良いの?」
ちょっと安心する私。
「いえ、インスマスが現れても付近の者が対処せず放ったらかしにした場合本人が責任を取らなければならない」
そう…甘やかしてはくれないんだね…。
今奈照さんは仕事の真っ只中だ。
彼女は看護師として患者を助け、そしてクトゥルフとしても人々を助けている。
本人もとても忙しくてしんどいはずなのに、みんなの為に戦っているんだね。
でもとても輝いていて、楽しそうだ。
一体何が彼女をそうさせているんだろう?
でも、私も遊んでばかりじゃいられないな。
「キャアァ!!」
「何ですか貴方は!?」
ん?向こう側で何か騒ぎがある?
私には関係ないかな?
「何してるの!行くわよ!!」
その時サキュラは私に怒鳴ってきた。
ああ私クトゥルフなんだね…。
私はサキュラと共に騒ぎのある方向に向かう。
沢山人だかりが出来ており、真ん中に眼鏡をかけて白衣を着た男の人がフラスコを持って脅している。
「よくも俺の最愛の妻を殺してくれたなヤブ医者!!この藪石魔斗《やぶいしまっど》様がこの病院を吹っ飛ばして俺も死んでやる!!」
「落ち着いてください!この病院を吹き飛ばしても貴方の奥さんは戻ってきません!」
警備員は魔斗という男の人を落ち着かせようと説得する。
「何してるの!前に出なさい!」
「あ、ちょっと!」
サキュラが強引に私を前にだす。
「な、何だねお嬢さん?」
前に出た私をチラリ見て言う警備員。
「そこにいるのはルルイエ人!貴様、ひょっとしてクトゥルフの戦士だな!?」
隣にサキュラがいるのを見定め、魔斗は私に問う。
「えと…こんな事はやめてください!こんな事をしてもお母さんは帰ってきませんよ!!」
前に出たからには何か言わなければと思い、私は魔斗に説得してみた。
すると魔斗は何故か怒りを露わにしてフラスコを投げつけてきた。
「ママ…パパ…助けて…」
12歳の時、私は絶対治らないだろう難病に冒されていた。
身体が日に日に弱っていき、食べ物も受け付けなくなる。
そして自分では呼吸も出来なくなり、酸素ボンベをつけられる…それでも…弱ってきた身体ではそれすら敵わなくなる。
点滴、痛み止め…病魔に抵抗する薬…あらゆる手段を施されたがそれも虚しく私は死ぬのを待つだけの状態となっていた。
嫌だ死にたくない…何でこうなるの?
何をしたのか教えてよ…!
そんな時の事だった。
人なのか天使なのか、淡い光に包まれながら男の人と女の子がやってきた。
『天使…さん?』
もはや病気で喋る事が出来なくなった私。
『いや僕らはルルイエからやって来た民、君は軽間奈照さんだね?』
心を読んできたのか、男の人は答えた。
『私…病気と戦っている貴女を見てほっとけなくなったの…!だからお友達になろ!?』
辿々しく女の子の方が伝えてくる。
彼らが何者かは知らないけど…私は生き延びたい!
私は藁をも掴む思いで男の人と女の子にすがった。
海溝潤実SIDEーーー
「ここなの?」
「ええ…」
場所はとても広くて、大きな病院、コンビニやら、料理店が立ち並び、なんだか一つの商店街のようだ。
綺麗に塗装されており、外観も綺麗…。
しかし…。
「だから次の人待たせてるんでサッサと行ってください!」
受け付け室の近くを通る時の事、大きな怒鳴り声がした。
見ると患者が相談しに来ているのに横柄に怒鳴ってくる白衣を着た医師さん。
貴方…せっかく綺麗な病院の中で感動に浸ってたのにそれはないでしょ…。
医師がシッシと手で追い払い患者が泣く泣く受け付け室から去るのを見て患者さんが気の毒に思えてきた。
「ここの医師さん態度悪いけど大丈夫なの?」
「医師や看護師は派閥が大きくてイジメも起こりやすいからああいう人しか残らないようね…でも安心して、奈照ちゃんはああでは無いから」
サキュラは目を細めて奈照さんを「ちゃん」付けする。
それだけ仲が良いのかな?
「ほら、大丈夫だから、手すりにつかまって、ね!」
しばらく院内を歩くと白衣をした女の人が患者と思われる老人を励ましているのが見えた。
女の人はまるで女神のような笑顔をしている。
ああ言うのを白衣の天使と呼ぶのだろうか?
私は思った。
「あの人が軽間奈照さんよ」
サキュラは言う。
「あ、サキュラちゃん久しぶり♪それと貴女が海溝潤実さんね?はじめまして♪」
奈照と思われる若い女の人はアニメ声と言ったかん高い、でも聞き心地の良い声で爽やかに声を放つ。
そしてニッコリと自己紹介。
「私が軽間奈照よ♪わあ貴女の容姿はイメージの魔法で見せてもらったけど実物を見ると余計可愛いわね、同じクトゥルフ仲間が出来て嬉しいわー宜しくね♪」
奈照さんはキャピキャピした感じに私に握手して喋ってくる。
このテンションに少し戸惑う私。
「この子は人見知りが激しいしあと少し鈍臭い子なの、でも良い子よ」
サキュラは何気に酷いことをサラっと言う、良い子と言ってくれたから良いが。
「そうなの、私は誰とでも仲良くなれるスーパーガールだから心配ないわ、宜しくね新米天使さん♪」
「は…はい…」
私は固まったまま例えるなら太陽のような女の人と改めて両手で握手をした。
「ねえさっき奈照さんがクトゥルフ仲間とか言ってたけどクトゥルフって何なの?」
病院にあるレストランで食事を摂る私とサキュラ。
クトゥルフ…名前だけはなんとなく聞いたことがあるけど…。
「ああ、貴女にはまだ言ってなかったわね、インスマスに対抗する組織よ、そして潤実さん、貴女もクトゥルフに入ってるのよ」
「ええ!?」
私は少し驚く。
「でもサキュラちゃん…そんな事一言も…!」
私は焦る。
いつの間にか組織に入っていただなんて!
「言ったわよ、初めて会った時に言わなかったっけ?契約してと」
「あ…」
でもでも面倒な手続きとか皆んなに紹介とか色々やらなきゃいけなくなるんじゃ…。
はわわと緊張してしまう私。
他の人は何この人何かの病気?みたいに私を見るが私はそんな事気付かないくらいにこの先しないといけない事にテンパりを覚えている。
「大丈夫よクトゥルフは組織と言ってもみんな組織という概念は持っていないから」
とサキュラは言う。
「そう…?」
「組織と言ってもみんな学業とか仕事とかで忙しいの、みんながみんな集まろうと言う訳にも行かず付近にインスマスが現れたら個人、或いは手の空いたクトゥルフが対処する事になってるの」
「そうなの…それぞれ自由行動って事で良いの?」
ちょっと安心する私。
「いえ、インスマスが現れても付近の者が対処せず放ったらかしにした場合本人が責任を取らなければならない」
そう…甘やかしてはくれないんだね…。
今奈照さんは仕事の真っ只中だ。
彼女は看護師として患者を助け、そしてクトゥルフとしても人々を助けている。
本人もとても忙しくてしんどいはずなのに、みんなの為に戦っているんだね。
でもとても輝いていて、楽しそうだ。
一体何が彼女をそうさせているんだろう?
でも、私も遊んでばかりじゃいられないな。
「キャアァ!!」
「何ですか貴方は!?」
ん?向こう側で何か騒ぎがある?
私には関係ないかな?
「何してるの!行くわよ!!」
その時サキュラは私に怒鳴ってきた。
ああ私クトゥルフなんだね…。
私はサキュラと共に騒ぎのある方向に向かう。
沢山人だかりが出来ており、真ん中に眼鏡をかけて白衣を着た男の人がフラスコを持って脅している。
「よくも俺の最愛の妻を殺してくれたなヤブ医者!!この藪石魔斗《やぶいしまっど》様がこの病院を吹っ飛ばして俺も死んでやる!!」
「落ち着いてください!この病院を吹き飛ばしても貴方の奥さんは戻ってきません!」
警備員は魔斗という男の人を落ち着かせようと説得する。
「何してるの!前に出なさい!」
「あ、ちょっと!」
サキュラが強引に私を前にだす。
「な、何だねお嬢さん?」
前に出た私をチラリ見て言う警備員。
「そこにいるのはルルイエ人!貴様、ひょっとしてクトゥルフの戦士だな!?」
隣にサキュラがいるのを見定め、魔斗は私に問う。
「えと…こんな事はやめてください!こんな事をしてもお母さんは帰ってきませんよ!!」
前に出たからには何か言わなければと思い、私は魔斗に説得してみた。
すると魔斗は何故か怒りを露わにしてフラスコを投げつけてきた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
彼女の母は蜜の味
緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)
幻田恋人
恋愛
夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。
でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。
親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。
童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。
許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…
僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる