クトゥルフの雨

海豹ノファン

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会わせたい人

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軽間奈照《かるまなてら》

「ママ…パパ…助けて…」

12歳の時、私は絶対治らないだろう難病に冒されていた。

身体が日に日に弱っていき、食べ物も受け付けなくなる。

そして自分では呼吸も出来なくなり、酸素ボンベをつけられる…それでも…弱ってきた身体ではそれすら敵わなくなる。

点滴、痛み止め…病魔に抵抗する薬…あらゆる手段を施されたがそれも虚しく私は死ぬのを待つだけの状態となっていた。

嫌だ死にたくない…何でこうなるの?
何をしたのか教えてよ…!

そんな時の事だった。

人なのか天使なのか、淡い光に包まれながら男の人と女の子がやってきた。

『天使…さん?』

もはや病気で喋る事が出来なくなった私。

『いや僕らはルルイエからやって来た民、君は軽間奈照さんだね?』

心を読んできたのか、男の人は答えた。

『私…病気と戦っている貴女を見てほっとけなくなったの…!だからお友達になろ!?』

辿々しく女の子の方が伝えてくる。
彼らが何者かは知らないけど…私は生き延びたい!

私は藁をも掴む思いで男の人と女の子にすがった。

海溝潤実SIDEーーー

「ここなの?」
「ええ…」

場所はとても広くて、大きな病院、コンビニやら、料理店が立ち並び、なんだか一つの商店街のようだ。

綺麗に塗装されており、外観も綺麗…。
しかし…。

「だから次の人待たせてるんでサッサと行ってください!」

受け付け室の近くを通る時の事、大きな怒鳴り声がした。

見ると患者が相談しに来ているのに横柄に怒鳴ってくる白衣を着た医師さん。

貴方…せっかく綺麗な病院の中で感動に浸ってたのにそれはないでしょ…。

医師がシッシと手で追い払い患者が泣く泣く受け付け室から去るのを見て患者さんが気の毒に思えてきた。

「ここの医師さん態度悪いけど大丈夫なの?」

「医師や看護師は派閥が大きくてイジメも起こりやすいからああいう人しか残らないようね…でも安心して、奈照ちゃんはああでは無いから」

サキュラは目を細めて奈照さんを「ちゃん」付けする。
それだけ仲が良いのかな?

「ほら、大丈夫だから、手すりにつかまって、ね!」

しばらく院内を歩くと白衣をした女の人が患者と思われる老人を励ましているのが見えた。

女の人はまるで女神のような笑顔をしている。
ああ言うのを白衣の天使と呼ぶのだろうか?

私は思った。

「あの人が軽間奈照さんよ」

サキュラは言う。

「あ、サキュラちゃん久しぶり♪それと貴女が海溝潤実さんね?はじめまして♪」

奈照と思われる若い女の人はアニメ声と言ったかん高い、でも聞き心地の良い声で爽やかに声を放つ。

そしてニッコリと自己紹介。

「私が軽間奈照よ♪わあ貴女の容姿はイメージの魔法で見せてもらったけど実物を見ると余計可愛いわね、同じクトゥルフ仲間が出来て嬉しいわー宜しくね♪」

奈照さんはキャピキャピした感じに私に握手して喋ってくる。

このテンションに少し戸惑う私。

「この子は人見知りが激しいしあと少し鈍臭い子なの、でも良い子よ」

サキュラは何気に酷いことをサラっと言う、良い子と言ってくれたから良いが。

「そうなの、私は誰とでも仲良くなれるスーパーガールだから心配ないわ、宜しくね新米天使さん♪」

「は…はい…」

私は固まったまま例えるなら太陽のような女の人と改めて両手で握手をした。

「ねえさっき奈照さんがクトゥルフ仲間とか言ってたけどクトゥルフって何なの?」

病院にあるレストランで食事を摂る私とサキュラ。
クトゥルフ…名前だけはなんとなく聞いたことがあるけど…。

「ああ、貴女にはまだ言ってなかったわね、インスマスに対抗する組織よ、そして潤実さん、貴女もクトゥルフに入ってるのよ」

「ええ!?」

私は少し驚く。

「でもサキュラちゃん…そんな事一言も…!」

私は焦る。
いつの間にか組織に入っていただなんて!

「言ったわよ、初めて会った時に言わなかったっけ?契約してと」

「あ…」

でもでも面倒な手続きとか皆んなに紹介とか色々やらなきゃいけなくなるんじゃ…。

はわわと緊張してしまう私。

他の人は何この人何かの病気?みたいに私を見るが私はそんな事気付かないくらいにこの先しないといけない事にテンパりを覚えている。

「大丈夫よクトゥルフは組織と言ってもみんな組織という概念は持っていないから」

とサキュラは言う。

「そう…?」

「組織と言ってもみんな学業とか仕事とかで忙しいの、みんながみんな集まろうと言う訳にも行かず付近にインスマスが現れたら個人、或いは手の空いたクトゥルフが対処する事になってるの」

「そうなの…それぞれ自由行動って事で良いの?」

ちょっと安心する私。

「いえ、インスマスが現れても付近の者が対処せず放ったらかしにした場合本人が責任を取らなければならない」

そう…甘やかしてはくれないんだね…。

今奈照さんは仕事の真っ只中だ。
彼女は看護師として患者を助け、そしてクトゥルフとしても人々を助けている。

本人もとても忙しくてしんどいはずなのに、みんなの為に戦っているんだね。

でもとても輝いていて、楽しそうだ。
一体何が彼女をそうさせているんだろう?

でも、私も遊んでばかりじゃいられないな。


「キャアァ!!」

「何ですか貴方は!?」

ん?向こう側で何か騒ぎがある?
私には関係ないかな?

「何してるの!行くわよ!!」

その時サキュラは私に怒鳴ってきた。
ああ私クトゥルフなんだね…。

私はサキュラと共に騒ぎのある方向に向かう。

沢山人だかりが出来ており、真ん中に眼鏡をかけて白衣を着た男の人がフラスコを持って脅している。

「よくも俺の最愛の妻を殺してくれたなヤブ医者!!この藪石魔斗《やぶいしまっど》様がこの病院を吹っ飛ばして俺も死んでやる!!」

「落ち着いてください!この病院を吹き飛ばしても貴方の奥さんは戻ってきません!」

警備員は魔斗という男の人を落ち着かせようと説得する。

「何してるの!前に出なさい!」
「あ、ちょっと!」

サキュラが強引に私を前にだす。

「な、何だねお嬢さん?」

前に出た私をチラリ見て言う警備員。

「そこにいるのはルルイエ人!貴様、ひょっとしてクトゥルフの戦士だな!?」

隣にサキュラがいるのを見定め、魔斗は私に問う。

「えと…こんな事はやめてください!こんな事をしてもお母さんは帰ってきませんよ!!」

前に出たからには何か言わなければと思い、私は魔斗に説得してみた。

すると魔斗は何故か怒りを露わにしてフラスコを投げつけてきた。
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