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それ行け勇者ナリス!

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(私にも家来が出来たんだ!しっかりしないと!)

ナリスは(勝手に家来とみなして)チイをお供にし、自身を奮い立たせた。

その時、バサバサッと藪から大きな物音がしだす。

その時ナリスは思わず「キャアッ!」と声を張り上げ、チイに飛びついてしまう。

「な、なんだ鳥か…脅かさないでよ…」

「だ、大丈夫ですか?」

突然飛びつかれたチイは抱きついた姿勢のままでいるナリスに尋ねる。

「ちょっとバランスを崩しただけ、チイもしっかりしてね!」

心臓がバクバクしている状態のナリスだが彼女は自分が動揺しているのを悟られないようにチイに言って聞かせた。

しばらく森の中を歩いていくと向こう側から甲高い猫が話しかけているような声がこちらに話しかけてきた。

「あ、チイしゃま!チイしゃま!」

その聞き覚えのある声にハッとしたチイは振り向く。

そこにはやはりトラネコーンがいた。

「トラネコーン無事だったのね!ごめんなさいさっきは投げてしまったりして…」

さっきまでの罪悪感が吹き飛び、トラネコーンが無事であった事にほっと肩の荷が下りた思いをするチイ。

しかしトラネコーン側は深刻な表情でいる。

「そんな事は良いですにゃん!それよりお姉ちゃまが、お姉ちゃまが!」

トラネコーンは慌てふためきチイ達に必死に訴えかける。

「あ、その剣、貴女しゃまは勇者様ですにゃか!?」

ナリスが持っている剣に注目したトラネコーンはナリスに尋ねる。

「そう、泣く子も黙る勇者ナリス・ナンコテッタとは私の事だあ!」

ナリスは勇者と呼ばれつい胸を張ってしまう。

「勇者ちゃま勇者ちゃま!どうかトラネコーンのお姉ちゃまを助けて欲しいですにゃん!!」

トラネコーンは慌てているあまり上手く声が出せていない。

「わかった、ところでそのお姉ちゃんがどこにいるか案内してくれる?」

チイはトラネコーンに姉の居場所を案内してもらう事にした。

「ああ勇者様良い響き♪」

「あっちの世界に入るのは後にして先にトラネコーンの姉を救出しに行きましょう!!」

あっちの世界に入ってしまっているナリスの手を強く引っ張り込むチイ。

「はぁ、はぁ…」

若干距離が離れているのか、トラネコーンに案内してもらっているチイ達は息を上げつつ、トラネコーンについていく。

やがてトラネコーンは「あそこですにゃん!!」とチイ達に知らせた。

目の前には大きな獣が。

「キャアァ出たあぁ!!!」

ナリスは腰が抜けてその場にへたれ込んでしまう。

「勇者様!お願いしますにゃん!あの化け物をやっつけてお姉ちゃまを助けて欲しいですにゃん!!」

トラネコーンは必死に服を引っ張りながらナリスに訴えかけるが当のナリスは尻餅をついてチビって動かなくなってしまっている。

「ナリスさん!剣を持っているんでしょう?トラネコーンのお姉さんを助ける事が出来るのは貴女だけです!早く立ち上がって!!」

チイもトラネコーンと一緒にナリスに発破をかけるがナリスはそのまま動けないでいた。

「あわわ、ば、化け物…か、覚悟して…いやあやっぱり怖いぃ!」

ナリスは泣いてしまった。

「仕方がないわね!!」

チイは半ば怒りナリスから剣を奪い取る。

「何が勇者よ!貴女なんかただのヘタレじゃない!!」

チイは剣を力強く握り怪物を睨むもナリスを罵る。

ナリスは無反応のままだが少し悔しそうにしているようにチイの目からは見えた。

「トラネコーン、安心して!君のお姉さんは私が救出してみせるわ!!」

チイは力強く声を放ち獣に向かう。

「グオオオオ!!」

獣も向かってくるチイに豪腕を振り上げる。

ガシイィッ!!!

チイは剣で獣の攻撃を受け止めた。

ギリギリ…しばらく鍔迫り合いが続く。

「見てみい!これが浪速少女の底力じゃあぁ!!」

チイは思いっきり獣の腹わたを斬り咲いた。

ブシャアアアァ!!!

裂かれた獣の腹わたから大量の血しぶきが上がる。

それと同時に手のひらサイズの人形のような物体が同時に大地に転がった。

「お姉ちゃま!!」

トラネコーンはお姉ちゃまに抱きつき、無事を呼びかける。

「見せて!」

そこでチイがトラネコーンの姉の生死を確かめる。

とりあえずは生きているようだった。

ただ衰弱が進んでいる為見つけた洞窟で体の汚れを拭い安静にさせた。

その作業中、彼女が目を覚ました。

「お姉ちゃま!良かったですにゃん!良かったですにゃん!」

トラネコーンは姉の復活があまりにも嬉しいのか涙と鼻水を散々垂れ流しながらお姉ちゃまに飛びついた。

「わっ!ばっちいトラネコーンやめなさいにゃん!!!」

お姉ちゃまはトラネコーンに猫パンチを食らわせた。

「ああいつものお姉ちゃまだにゃんでも生きててくれて嬉しいにゃん!うにゃあんうにゃあん!」

トラネコーンは思いっきり嬉し泣きをした。

「貴女がたが助けてくれたのですかにゃん?私はトラーコ、ウチのバカ弟がお世話になっておりますにゃん!」

お姉ちゃま(以降トラーコ)はチイ達に挨拶を交わした。

トラネコーンはブサ可愛なトラ猫のような姿だがトラーコは美少女をミニサイズにしたような、妖精のような姿だった。

「いえいえこちらこそ」

チイはトラーコに挨拶を返す。

「チイちゃん…」

さっきからダークモードになっていたナリスが剣を持ってチイに近づく。

「どうしたの勇者様?」

「この剣は貴女が持って…」

ナリスは顔に影を覆ったままチイに剣を差し出した。

「私にはこの剣を扱う資格はない…貴女と私の違いを見てわかったの…」

「そんな事無いですにゃん!」

トラネコーンがナリスに一声を放った。

「勇者ちゃまは貴女にしか勤まりませんにゃん!!」

「トラネコーン…」

ナリスは力強く放つトラネコーンを見て説得力を見出した。

「そうですよナリスさん…」

チイもまたナリスに語りかける。

「先に謝っておきます…さっきは言い過ぎましたごめんなさい…」

先ず謝罪からはじまりチイはトラネコーンと共にナリスを説得した。

「初めから強い人なんていません、勇者だって同じです…どんな勇者も初めはレベル1からはじまり経験を積んでいって強くなる、それに貴女は生まれついての勇者、勇者として生まれたからには、勇者の使命を果たせるのは貴女だけなのです!」

「チイ…」

ナリスは涙を流しチイを見る。

「何の事かわからないけど、トラーコもチイやバカ弟と同意見だにゃん!」

状況を把握したトラーコも前に出てナリスに語りかける。

「ウチのバカ弟は王子の風上にも置けないお馬鹿だけど不思議と王子やれてるにゃん、だからナリスさんとやらも自信を持って良いですにゃん!」

「お馬鹿とはあんまりですにゃん!あんまりですにゃん!!」

トラネコーンは泣きわめく。

そんな時「王子ちゃま!王女ちゃま!こんな所にいたんですかにゃん!!」

と別の雄猫のような声が聞こえた。

見るとトラネコーンやトラーコと同じサイズの鎧を纏った生き物がいつのまにかそこに来ていた。

「子分ちゃま!」

「子分ちゃまじゃないですにゃん!王様も妃様もお怒りですにゃん!今すぐ怪獣王国に帰りますにゃん!!」

子分ちゃまは半ば注意するようにトラネコーンとトラーコに怒鳴った。

「お尻ぺんぺんは嫌ですにゃん!嫌ですにゃん!!」

「仕方ないにゃん!元はトラーコもお前を探して巻き添え食らってるにゃん!自業自得にゃん!!」

「そんなあー!チイちゃま助けてー!!」

トラネコーンはチイに訴えたがそのまま子分ちゃまとトラーコに怪獣王国まで連れて行かれた。

「さあ行こうか勇者様!」

「うん!」

そしてチイ達もまた、新たな旅路を目指した。
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