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5-1 最上位種発芽編:世界が変わっても
253 歴史的快挙なんかよりも
しおりを挟む数日後、イニシアの大森林の中層に構えてるキャンプ地。
周りには結界が張られており、魔物がより付けないようになっていた。
ダンジョンの上にかまえてもいいが、あそこで結界なんてものを貼り続ける余裕なんて無い。バケモノが溢れ出てくるのだ。
彼らがここにいる理由は、測定員としての任があるからだった。
ボス部屋を攻略してからの少しの間に発せれる通信魔道具による連絡を受信し、攻略した冒険者の帰りを待つ。測定にはギルドの職員や、ギルドに所属をしているならばギルドの関係者が待つのが常。
「リリーさん」
「んぁ? 寝てた、なんだ?」
ケトスを待つテントの中で、声をかけられたリリーが仮眠から目を覚ました。
「最終回層のボスを倒したと連絡が来てからの方が時間が経ってしまってますが……」
ギルドの職員だ。心配そうな顔の割には、ちょっとにこにことしてる。
寝ぼけてるリリーの頭ではなにがなんだかわからないが、リリーのスタンスは一貫している。
「そんなどーでもええことで起こすな」
「どうでもいいって……、歴史的な快挙ですよ!?」
「ふーん」
「ふーんって……」
興味がなさそうにして、耳に小指を入れてほじった。
見た目は幼いが、実年齢はこの場にいる誰よりも高齢。仕草にそれらが垣間見えるのが、見た目のこともあり、なんだか見てはいけないものを見ている気にさせられる。
といっても、褐色肌で、肌着で、耳が長い幼女が、寝起きの表情のまま、ただだらしなく耳掃除をしているだけだ。
何もおかしなことはない。
「ギルドの方には連絡をしましたから、あとは帰ってくるのを待つだけですね」
「ふぁぁぁ~……そうだな~」
「心配とかしてないんですか? 自分の血盟の新人じゃないですか」
「するわけないだろ」
「で、ですが」
「私より強い奴の心配なんてする方がおかしいだろ。どーせあいつは帰ってくる」
「リリーさんより強い……? はは、ご冗談を……」
愛想笑いを浮かべるギルド職員に目を向け、へ、と口を曲げた。
「人を見る目がないんじゃなぁ、兄ちゃんらは」
「――お、ただいま~」
「ケトスー、約束した日よりも一日遅いぞ? 怠けてたんじゃないか?」
「あはは、帰り道に迷っちゃった」
ボロボロなケトスがテントを開けて戻ってきた。ドカッと座ると、リリーさんがさささと背中に周り肩もみを始めた。
ギルド職員は帰ってきたことも記録に残さないといけないことから、別のテントに移っていく。
「んぁ~……つかれたつかれた。腹も減ったなぁ。クラディスのご飯が食べたいよぉ……」
「すっかりお熱だな。友達の方は、西の街で上位魔族と戦ったみたいだぞ?」
「わぁ、そんなことが起きてたんだねぇ~……。くあ、眠い……けど」
肩もみをするリリーの手にケトスは上から手を重ね、グイと引っ張った。顔が真横にある状態のリリーに、ケトスは声を潜めて話し始める。
「リリーさん。
数日後、イニシアの大森林の中層に構えてるキャンプ地。
周りには結界が張られており、魔物がより付けないようになっていた。
ダンジョンの上にかまえてもいいが、あそこで結界なんてものを貼り続ける余裕なんて無い。バケモノが溢れ出てくるのだ。
彼らがここにいる理由は、測定員としての任があるからだった。
ボス部屋を攻略してからの少しの間に発せれる通信魔道具による連絡を受信し、攻略した冒険者の帰りを待つ。測定にはギルドの職員や、ギルドに所属をしているならばギルドの関係者が待つのが常。
「リリーさん」
「んぁ? 寝てた、なんだ?」
ケトスを待つテントの中で、声をかけられたリリーが仮眠から目を覚ました。
「最終回層のボスを倒したと連絡が来てからの方が時間が経ってしまってますが……」
ギルドの職員だ。心配そうな顔の割には、ちょっとにこにことしてる。
寝ぼけてるリリーの頭ではなにがなんだかわからないが、リリーのスタンスは一貫している。
「そんなどーでもええことで起こすな」
「どうでもいいって……、歴史的な快挙ですよ!?」
「ふーん」
「ふーんって……」
興味がなさそうにして、耳に小指を入れてほじった。
見た目は幼いが、実年齢はこの場にいる誰よりも高齢。仕草にそれらが垣間見えるのが、見た目のこともあり、なんだか見てはいけないものを見ている気にさせられる。
といっても、褐色肌で、肌着で、耳が長い幼女が、寝起きの表情のまま、ただだらしなく耳掃除をしているだけだ。
何もおかしなことはない。
「ギルドの方には連絡をしましたから、あとは帰ってくるのを待つだけですね」
「ふぁぁぁ~……そうだな~」
「心配とかしてないんですか? 自分の血盟の新人じゃないですか」
「するわけないだろ」
「で、ですが」
「私より強い奴の心配なんてする方がおかしいだろ。どーせあいつは帰ってくる」
「リリーさんより強い……? はは、ご冗談を……」
愛想笑いを浮かべるギルド職員に目を向け、へ、と口を曲げた。
「人を見る目がないんじゃなぁ、兄ちゃんらは」
「――お、ただいま~」
「ケトスー、約束した日よりも一日遅いぞ? 怠けてたんじゃないか?」
「あはは、帰り道に迷っちゃった」
ボロボロなケトスがテントを開けて戻ってきた。ドカッと座ると、リリーさんがさささと背中に周り肩もみを始めた。
ギルド職員は帰ってきたことも記録に残さないといけないことから、別のテントに移っていく。
「んぁ~……つかれたつかれた。腹も減ったなぁ。クラディスのご飯が食べたいよぉ……」
「すっかりお熱だな。友達の方は、西の街で上位魔族と戦ったみたいだぞ?」
「わぁ、そんなことが起きてたんだねぇ~……。くあ、眠い……けど」
肩もみをするリリーの手にケトスは上から手を重ね、グイと引っ張った。顔が真横にある状態のリリーに、ケトスは声を潜めて話し始める。
「リリーさん。みえた」
「……また、スキルでも身につけたのか? 勇者様は贅沢だな」
「前からあったやつだよ。使いこなせれてないんだけど……帰ってくる途中で未来がみえたんだ」
ケトスはメガネを外して目頭を抑え、ため息を吐き捨てる。
「で、何が見えたんだ?」
「王都で人が死ぬかも」
「そりゃ大変だ。……じゃあ、すぐに戻るか?」
「お願いしていい?」
リリーはニコと笑い、ケトスを抱えたままテントから飛び出していった。
「リリーさん!? ケトスさんも……。まだ、測定が!」
「あとはあんたらに任せるよ!! それよりも、ケトスが腹減ったっていうから、すぐに王国に戻る!! じゃあね」
ケトスを馬車に放り込み、リリーは馬をつないでいた紐をほどき、慣れた手付きで、御者席に乗った。
「そら。走れ、馬共!!」
「はははは。リリーさん、頼もしいや。じゃあ、ちょっと寝るね~」
「寝とけ寝とけ。この何十年かぶりの運転テクで寝れたらの話だがな」
手綱がしなり、ケトスとリリーを乗せた馬車はデュアラル王国に向けて走り出した。みえた」
「……また、スキルでも身につけたのか? 勇者様は贅沢だな」
「前からあったやつだよ。使いこなせれてないんだけど……帰ってくる途中で未来がみえたんだ」
ケトスはメガネを外して目頭を抑え、ため息を吐き捨てる。
「で、何が見えたんだ?」
「王都で人が死ぬかも」
「そりゃ大変だ。……じゃあ、すぐに戻るか?」
「お願いしていい?」
リリーはニコと笑い、ケトスを抱えたままテントから飛び出していった。
「リリーさん!? ケトスさんも……。まだ、測定が!」
「あとはあんたらに任せるよ!! それよりも、ケトスが腹減ったっていうから、すぐに王国に戻る!! じゃあね」
ケトスを馬車に放り込み、リリーは馬をつないでいた紐をほどき、慣れた手付きで、御者席に乗った。
「そら。走れ、馬共!!」
「はははは。リリーさん、頼もしいや。じゃあ、ちょっと寝るね~」
「寝とけ寝とけ。この何十年かぶりの運転テクで寝れたらの話だがな」
手綱がしなり、ケトスとリリーを乗せた馬車はデュアラル王国に向けて走り出した。
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