231 / 283
4-3 理外回帰編:始まりの街・レイメイへ
210 大真面目なクソガキ
しおりを挟む出てくる見覚えのある魔物を倒して出てくる魔石をひょいひょいと拾い上げて収納袋へとしまっていった。
まだ入って少ししかたってないと言うのに、ダンジョンに大歓迎をされている。
そして魔物の出が悪くなったので、進む前に紙束を取り出した。
「じゃーん! ダンジョンのマップ! 貸してもらったんだー」
「わあ! 1、2、……4枚ですか?」
「5階層目のボス部屋を除いて階層ごとに道が書かれてるんだってさ。これで安心して進める」
ダンジョンは魔王が造ったモノって聞いたことがある。罠の位置や魔物時間とともにランダムみたいだけど、通る道はそこまで大きく変わらないのだと。
罠に関しては部屋自体が罠になっていることもあって……毒ガスが出てくる部屋とか、閉じ込められる部屋とか……本当に下位ダンジョンなのかって話だ。これは部屋に入らなければ済む話だけど、通り道にある罠に関しては気を付けなければ。
「罠を見つけれるようなスキルを持ってたら、もっと安心だったけど」
「……? 走れば大丈夫ですよ!」
「うーん……最適解のような、不正解のような……」
あの速度で走れば問題はないような気がするけど、せっかく初めてのダンジョンなのだから少し落ち着いて見て回りたいと言うのがある。こういう遺跡探索とか、未知の場所とか、わくわく――
(って、緊張感無さすぎるな。最近頭がこの世界に順応し過ぎて怖くなってくる)
考え直すために頭をふるふると振り、深呼吸。
こういう困った時には、頼りになる先生に相談することにしよう。
(エリル先生、エリル先生)
(……お。最近手助けしなくても良くなったますたーじゃないですか、なんですか?)
あ、怒ってる。
(えーと、罠感知って今持ってるスキルとかで代用できないかなーって思って。物には魔素が通ってるからユニークの魔素理解でなんとかできたりしないですか?)
(ふーん)
(もーごめんってエリル。僕はまだ弱いから助けが必要なんです、頼らせてください)
(今度、私とお出かけする時間の確保を約束したら、いいですよ?)
(はい、わかりました。エリルとお出かけをします。行きたいって言ってた竹林とか、おススメのお菓子屋さん案内させてもらいます)
(!! ……はぁ~~、ますたーは仕方がないお人ですね~! できますよー! まっかせてください!!)
一気に声色が変わった……。
(ごめんね。まだまだひよっこだから、これからも手を煩わせるかもしれない)
(そんなの気にしなくてもいいんですよ! じゃんじゃんどしどし頼ってください!)
言われてみると最近は二人で何かするっていうことの機会が前よりも確かに減っていた。
相変わらず魔導書を一緒に読んで、料理を作るときに話をしたり、僕のより効率のいい掃除の仕方を教えてもらっていたりとはしてたけど、散歩をしたり、暇なときに他愛のない話をしたりはしてなかったな。
(えーと、欲しいスキルは罠感知でしたね。そんなスキル、簡単にゲットできますよ!)
(あら、そうなの?)
(えぇ、まぁ! ちょちょいのちょいって具合に簡単です。魔素理解もレベル表記はされてないにしても、かなり上がってきてますし、他のユニークスキルのレベルも上がってきてるから色んなことができるのですよ!)
(やっぱりユニークスキルにもレベルがあるんだ……)
ステータスボードには、事細やかなレベルは書かれていなかったからないと思っていた。
それもそうか。スキルやステータスにはあって、あれだけないって言うのが不思議だものな。
(ということは、そのうちユニークスキルも一緒になったり、名前が変わったりするの?)
(もっちろんです、楽しみにしておいてくださいね! では、ちょっと罠感知の仕組みを調べるので……しばしお待ちを……)
ユニークスキルも進化するってことは、まだまだ伸ばせるところは多いってことか。
(っと……はい、えーとですね。罠感知なら……。そうですね、罠に一度引っかかってください!)
(……えーーーっと……うん。わかったよ)
つっこまずに言うことを聞こう。
アンに少し待機してもらって、さっきアンが踏んで行った場所までいって床を踏んだ。
カチッ。
半歩前の天井から槍が落ちてきてガキンッと地面に突き刺さる。
「ウッ……」
そしてゆっくりと戻っていく。どういう仕組みよ、コレ。
(……これでなにか分かったの?)
(感圧板のこと、天井の仕組みを一度見たので同じような仕組みには引っかからないようになります! 最後に地面に手を当ててみてください!)
言われた通りに床に手を当ててみると、行く手にもやもやと罠と思われる異物の反応があった。
(……床や壁の魔素と、隠れている異物の魔素の微妙な違いを分かるようにする……ってこと?)
(だいたいそんなかんじです! 罠感知の正当な覚え方ではありませんが、これが手っ取り早いので)
手を離すと感じられなくなる……では手でなくて足だったら? 靴があるから手ほどの鮮明さはないのか。
ということなら、といつものように目の前に空っぽの魔法陣を展開した。
「視覚情報を残して共有、これは鑑定のようなものでいいな。異物の魔素の理解度を高めるためには何回か引っかからないといけないかもな……」
「あるじ?」
「ちょっと待っててね、もう少しで出来そうなんだ」
「……?」
スキルを自分の体が勝手に習得するのを待つより、魔法を作る作業でスキルを強引に会得すれば何十倍も早い。
視覚化、そこを着色して分かりやすくすることも出来なくもないか? 靴を脱ぐわけにもいかないけど、手で触るくらいなら歩く度に情報が更新されるのがいいよな。だったらぼんやりしたのでも分かるように回数を重ねて……。
階層ごとに床と壁の作りが異なる場合も自動で分かるよう――いや、広く広がる空間の魔素を白と認識してそこに他の色の異物の魔素を感じるようにすれば……。
…………情報が足りない。
「……アン、さっき言ってたことをやろう」
「さっき言っていたこと……?」
そういうと、あ! と気づいた様子。
「うん、罠の反応をもう少し見る必要があるんだ。この階層を走り回ろう!」
「はいっ!」
傍から見れば気が狂った二人組に見えるだろう。
ダンジョン内を走り回る冒険者なんて、僕達くらいしかいないんじゃないかと思う。
(残念なことに、大真面目だ)
二人で『身体強化』を使ってダンジョン内を走り回っていった。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる