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1-4 世界把握編:小さき転生者、冒険者ギルドで暮らす

49 勉強会終了!

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 冒険者登録をした日から二週間程が経った頃。
 ここにきて、新しい習慣が僕の生活習慣に入ってきた。
 それは魔法の練習だ。
 毎日、レヴィさんからの贈り物の分厚い魔導書を膝の上に置いて、時間を忘れて没頭する。

 たまにエリルが出てきて、一緒にベッドで横になりながら見てみたり、魔法を発動しに訓練場にまで歩いて行ったりする。
 僕の眼帯で隠している目のことは誰にも言っていないので、魔導書を見られてしまうと「あれ? なんで魔法の勉強をしているの?」と混乱させてしまいそうだから、ばれないようにコソコソとするようにしている。

 そんな日々を送っていると、とうとう勉強会が終わってしまった。

「よし! 以上でクラディス君に教えることが全部終了しました! この世界のことの本当に基礎的な部分だけだったけど、どうだったかな?」

「目のこととか、ギルド、血盟、魔物モンスターとか色々勉強になりました。本当にありがとうございました」

 無事に勉強会も終わったことで、ペルシェトさんと丸さんに深々と頭を下げた。
 途中で、教える内容を変更してもらい発展的な内容を教えてもらったり、魔物モンスターの種族の個体差などの話をしてもらった。基礎的な内容は向こうの世界の知識でカバー出来ていたから良かった。
 冒険者として生きていく上に必須な知識など、本当に有益な情報を教えてもらったなぁ、感謝してもしきれない。

「ペルシェトさんも、ありがとうございます」

「ハハハ、私なんもやってなかったから大丈夫だよ~。後半はずっとクラディス君で遊んでただけだし」

 それは否定できないが、でもペルシェトさんの雰囲気づくりは本当に素晴らしかった。
 丸さんにも恐れず茶々を入れていく姿は、愛される後輩という感じだ。
 どこの馬の骨かわからない僕にもこうして壁を作らず話をしてくれる。
 
 勉強会が終わったからと言っても二人と縁が切れるわけではない。昼食の時は一緒にご飯を食べるのを約束して、暇があれば僕もスタッフルームに行って丸さんのお手伝いをさせてもらうことを話した。

 
      ◇◇◇


 最後の勉強会が終わった後、ご飯を食べに行っていつものように解散をした。
 勉強会が終わって名残り惜しいのはもちろんあるけど、冒険者ギルドでの時間の使い方が増えたのは嬉しかった。

「さて、じゃあ今日は何をしようかな……」

(ますたー、今日も魔法の勉強をしますか?)

 頭の中で元気な女の子の声が響いたと思うと、エリルが人型になって目の前に出てきた。
 いつ見ても見事な変身術だ。でも、もう驚くことはないからびっくり技ではなくなった。

「うん。する予定だよ」

 レヴィさんから魔導書を貸してもらってからは毎日のように読み進め、夜も元気があれば読んでいる程だ。
 アレはもはや僕にとっては文庫本のような立ち位置だな。
 この期間中に何回も読んで完璧にしてやる!! と意気込んでいたのだが、厚さが10cm程の大きさだ。そんなことができる訳なく、分からないところはパッパッっと読み進める作戦で昨日やっと一回読み終えた。
 文庫本とは言ったが、内容は知らないことばかりの魔法に関する知識だ。それも『無から有を作る』という、もはや何を言っているのかよく分からないレベルの事ばかり。

 例えば、最初の魔法『衝撃インパクト』。

 空気を使うという魔法の前段階には、魔素で空気を吸収、凝縮というのを作用させるために、魔法陣と言われる魔法を撃つ際に展開される円形のモノに文字ルーンを刻んでいく。
 その一連の流れをしっかりと頭で理解していないと、初日のように弱々しい魔法になってしまう。あれでは実践では使えない。

 そして魔法を発動する知識や手順などを総称して『魔導』と呼ぶのだ。

 全部「え、そんなの本当にできるの??」と思うモノばかりでレヴィさんが言っていたように『魔導』を理解するのは難しい。だけど、面白い。
 まだ完璧に理解をしているわけではないが、一応魔導書に書かれている魔法は一度は使ってみて詠唱無しと詠唱有りの二つをやってみた。
 『衝撃インパクト』も最初に比べて威力が上がっているから、魔法を使うために『魔導』というのがいかに重要かが分かった。

 そんな感じで魔法の方は楽しく学べている。
 朝の勉強会が今日で終わりだから、朝から夜の訓練まで魔導書の二週目を読めるというのは本当に楽しみで仕方ない……!
 
 今日もいつものように昼の時間は勉強しようと、肩掛鞄ショルダーバッグの中に魔導書を――あれ?
 肩掛鞄ショルダーバッグが異様に軽い。

「あー……魔導書を寮に置いてきちゃったみたい。」

「えー!! 私も楽しみにしてたのに~!!」

「どうしようか、他の事をするっていっても何もすることないし……取りに帰る?」

「はい! そうしましょう!」
  
 そう言って、エリルと僕はギルドの外に出た。
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