51 / 283
1-4 世界把握編:小さき転生者、冒険者ギルドで暮らす
49 勉強会終了!
しおりを挟む冒険者登録をした日から二週間程が経った頃。
ここにきて、新しい習慣が僕の生活習慣に入ってきた。
それは魔法の練習だ。
毎日、レヴィさんからの贈り物の分厚い魔導書を膝の上に置いて、時間を忘れて没頭する。
たまにエリルが出てきて、一緒にベッドで横になりながら見てみたり、魔法を発動しに訓練場にまで歩いて行ったりする。
僕の眼帯で隠している目のことは誰にも言っていないので、魔導書を見られてしまうと「あれ? なんで魔法の勉強をしているの?」と混乱させてしまいそうだから、ばれないようにコソコソとするようにしている。
そんな日々を送っていると、とうとう勉強会が終わってしまった。
「よし! 以上でクラディス君に教えることが全部終了しました! この世界のことの本当に基礎的な部分だけだったけど、どうだったかな?」
「目のこととか、ギルド、血盟、魔物とか色々勉強になりました。本当にありがとうございました」
無事に勉強会も終わったことで、ペルシェトさんと丸さんに深々と頭を下げた。
途中で、教える内容を変更してもらい発展的な内容を教えてもらったり、魔物の種族の個体差などの話をしてもらった。基礎的な内容は向こうの世界の知識でカバー出来ていたから良かった。
冒険者として生きていく上に必須な知識など、本当に有益な情報を教えてもらったなぁ、感謝してもしきれない。
「ペルシェトさんも、ありがとうございます」
「ハハハ、私なんもやってなかったから大丈夫だよ~。後半はずっとクラディス君で遊んでただけだし」
それは否定できないが、でもペルシェトさんの雰囲気づくりは本当に素晴らしかった。
丸さんにも恐れず茶々を入れていく姿は、愛される後輩という感じだ。
どこの馬の骨かわからない僕にもこうして壁を作らず話をしてくれる。
勉強会が終わったからと言っても二人と縁が切れるわけではない。昼食の時は一緒にご飯を食べるのを約束して、暇があれば僕もスタッフルームに行って丸さんのお手伝いをさせてもらうことを話した。
◇◇◇
最後の勉強会が終わった後、ご飯を食べに行っていつものように解散をした。
勉強会が終わって名残り惜しいのはもちろんあるけど、冒険者ギルドでの時間の使い方が増えたのは嬉しかった。
「さて、じゃあ今日は何をしようかな……」
(ますたー、今日も魔法の勉強をしますか?)
頭の中で元気な女の子の声が響いたと思うと、エリルが人型になって目の前に出てきた。
いつ見ても見事な変身術だ。でも、もう驚くことはないからびっくり技ではなくなった。
「うん。する予定だよ」
レヴィさんから魔導書を貸してもらってからは毎日のように読み進め、夜も元気があれば読んでいる程だ。
アレはもはや僕にとっては文庫本のような立ち位置だな。
この期間中に何回も読んで完璧にしてやる!! と意気込んでいたのだが、厚さが10cm程の大きさだ。そんなことができる訳なく、分からないところはパッパッっと読み進める作戦で昨日やっと一回読み終えた。
文庫本とは言ったが、内容は知らないことばかりの魔法に関する知識だ。それも『無から有を作る』という、もはや何を言っているのかよく分からないレベルの事ばかり。
例えば、最初の魔法『衝撃』。
空気を使うという魔法の前段階には、魔素で空気を吸収、凝縮というのを作用させるために、魔法陣と言われる魔法を撃つ際に展開される円形のモノに文字を刻んでいく。
その一連の流れをしっかりと頭で理解していないと、初日のように弱々しい魔法になってしまう。あれでは実践では使えない。
そして魔法を発動する知識や手順などを総称して『魔導』と呼ぶのだ。
全部「え、そんなの本当にできるの??」と思うモノばかりでレヴィさんが言っていたように『魔導』を理解するのは難しい。だけど、面白い。
まだ完璧に理解をしているわけではないが、一応魔導書に書かれている魔法は一度は使ってみて詠唱無しと詠唱有りの二つをやってみた。
『衝撃』も最初に比べて威力が上がっているから、魔法を使うために『魔導』というのがいかに重要かが分かった。
そんな感じで魔法の方は楽しく学べている。
朝の勉強会が今日で終わりだから、朝から夜の訓練まで魔導書の二週目を読めるというのは本当に楽しみで仕方ない……!
今日もいつものように昼の時間は勉強しようと、肩掛鞄の中に魔導書を――あれ?
肩掛鞄が異様に軽い。
「あー……魔導書を寮に置いてきちゃったみたい。」
「えー!! 私も楽しみにしてたのに~!!」
「どうしようか、他の事をするっていっても何もすることないし……取りに帰る?」
「はい! そうしましょう!」
そう言って、エリルと僕はギルドの外に出た。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる