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第17章:襲来
第8話:竜の凍てつく息吹
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レオナルト=ヴィッダーたちの視界にはちらちらと雪が舞っており、視界がかなり制限されていた。それゆえに街の大通りへと歩を進め、出来る限り、視界を確保しようとした、首都:ジカーゴの住民は襲い来る冷気から逃れようと、北西から南東へと大移動を開始していた。
建物に入ることが出来た者はまだ運が良かったと言えよう。ジカーゴの街は北東から吹いてくる冷気により、徐々に氷漬けになっていく。逃げ遅れた者たちは身体に纏わりつく冷気により氷の彫像となる。そして、運良く建物の中に逃げ込んだ者たちに追い打ちをかけるように、その建物自体が氷漬けとなる。しかしながら、まだ運が良かったと言ったのは、その建物の中に逃げ延びたニンゲンたちが、即座に氷の彫像にならなかったことであろう。
すし詰め状態で人々が逃げ込んだことで、建物内の熱が上がり、建物の外側が氷漬けになろうが、仲のヒトたちは自分たちの発する熱で、即座に全員、氷漬けにならずには済んだのだ。
しかし、それはあくまでも即座ではなかっただけで、冷気を放つ源に近い地域に住んでいる住民たちはほどなく、建物ごと、氷で出来たオブジェへと変わっていく……。ジカーゴの街を氷漬けにしている張本人がジカーゴの北西に現れてから30分も経とうとする頃、ジカーゴの3分の1が白が支配する死の世界へと様変わりしてしまっていた。
この緊急事態にミシガン王国の女王も事態の把握と対処に乗り出そうとする。しかしながら、この現象が作為的なモノであり、さらには対処療法ですら間に合わないくらいに、死の世界がジカーゴを覆っていくために、自分が住まう王城を迫りくる冷気から護ることだけに力を費やすこととなる。
司令塔が壊滅状態になれば、軍隊全体が機能しなくなるのは当然のことである。そして、国全体の話で言えば、女王が住まう王城が氷漬けになれば、ミシガン王国の国民全員が死に絶えることにもなりかねない。だからこそ、女王は選んだのだ。まずは司令塔となる自分が住まう王城を冷気から護ることを。
重ねて言うが、ミシガン王国の女王は国民を見捨てて、自分たちの身を護ったのではない。より多くのニンゲンの命を救うために、自分たちの安全を確保しただけである。それほどまでに、彼奴が源となっている冷気の侵食速度が速すぎたのだ。
王城には最初、蒼い山が突然、ジカーゴの北西に現出したという報告が為された。五大湖の西端から西海岸までには、小高い丘はあっても、ジカーゴの街の3分の1に影を落とすような山など存在していなかった。ズズーーーン!! という、腸重量の塊が地響きを鳴らしながら、ジカーゴの北西に着地するや否や、それは蒼き山となり、さらにはジカーゴの街の3分の1を30分足らずで死と静寂に包み込んだのだ。
「なんたること……。なんたることをっ!!」
ミシガン王国の女王:カッツエ=マルベールは憤った。彼女はドワーフであり、ウィーゼ王国とは対照的に、彼女が住まう王城にはドワーフの政務官、ドワーフの軍人たちが詰めていた。王女は配下の者たちに情報収集と、王城の護りを徹底させる。次々ともたらさられる情報を下に、ジカーゴの街に過酷な冷気をもたらしている存在が、何者であるこかを知ることとなる。
「彼奴の目的は、わらわにミシガン王国の守護者を呼び寄せることかっ!!」
ミシガン王国の女王は非常に聡い人物であった。今、ミシガン王国の首都を壊滅状態へと追いやっている彼奴が、何故にこんな暴挙に出ているかの理由を察する。首都全体を麻痺させることで、女王が守護者に頼らなければならない状況に追い詰めるためだと、カッツエ=マルベールは感じ取る。だが、女王はおいそれと守護者に頼ることは出来なかった。彼奴の目的が守護者自身であると予想したからである。
身動き出来ない状況に追い込まれた女王は、せめて、彼奴に一矢報いてくれる存在を望む。今の状況下で守護者に出張ってもらうのは無理も無理であった。そして、女王は知らなかった。状況を覆すきっかけとなる存在がジカーゴの街に人知れずやってきていたことを……。
「なんだあれは……。俺が知っている紅玉眼の蒼き竜の大きさじゃねえっ!」
「ど、どうするんですゥ!? ぼくとレオン様があいつと出会った時は、小高い丘程度の大きさでしたけど、今や、山ほどの大きさはあるのですゥ!」
レオナルト=ヴィッダーたちは死と静寂に包まれた街の大通りを北東へと進み続けていた。逃げ遅れた人々が氷の彫像となり、その間を抜けて、彼らはさらに北東へと進んでいく。吹き付けてくる冷気の量は歩を進めるのと比例して、その威を増していた。いくらデーブ=オクボーンを薪ストーブ代わりにしていると言っても、限界が近づいてきていることは自明の理であった。
そんな進退窮まろうとしているレオナルト=ヴィッダーたちの眼に、蒼き山が飛び込んでくる。その蒼き山の山頂部分には赤い三日月がふたつ並んでいた。もちろん、それは月では無く、紅玉眼の蒼き竜の紅い両目であった。レオナルト=ヴィッダーたちが一歩、また一歩、その蒼き山に近づけば近づくほど、紅い両目は、そこから紅い光を強めていく。
(我に仇為す存在が近づいてきてイル……。我にはワカル。2年前に我に傷をつけたあの存在ダッ!)
紅玉眼の蒼き竜は額に斜めに入っている古傷がジンジンと熱を帯びていくのを感じる。自分に対して、不遜な行為を働いたニンゲンが、少しづつであるが、自分に近づいてきていることを感じ取る。だが、今や、あの頃の10倍以上のサイズとなってしまっていた紅玉眼の蒼き竜は、その豆粒以下の存在の位置を的確に察知することが出来なくなってしまっていた。
それゆえに紅玉眼の蒼き竜は首級を持ち上げて、右から左へとその首級をゆっくりと振りながら、獰猛な顎を下側へと開き、大きく空いた口から氷柱を次々と発射させる。紅玉眼の蒼き竜の口から発射されたツララというよりかは遥かに大きすぎる先端が尖った氷柱は次々とジカーゴの街を穿っていく。
建物の屋根を突き破り、その中で氷の彫像と化していた人々を粉々にする。紅玉眼の蒼き竜が左から右へ首級を振りながら、氷柱を降らせたせいで、100の建物、3000人の命が消し飛ぶ。だが、紅玉眼の蒼き竜は今の氷柱の放射が、自分の仇には当たっていないと感じ、今度は右から左に首級を動かしつつ、氷柱を口から放射する。それにより、またもや100の建物、3000人の命が吹き飛ぶ。
(小癪ナ……。我に位置を特定させないように幻術を使っているナ? しかし、それもどこまでもつか、見物ヨ……)
建物に入ることが出来た者はまだ運が良かったと言えよう。ジカーゴの街は北東から吹いてくる冷気により、徐々に氷漬けになっていく。逃げ遅れた者たちは身体に纏わりつく冷気により氷の彫像となる。そして、運良く建物の中に逃げ込んだ者たちに追い打ちをかけるように、その建物自体が氷漬けとなる。しかしながら、まだ運が良かったと言ったのは、その建物の中に逃げ延びたニンゲンたちが、即座に氷の彫像にならなかったことであろう。
すし詰め状態で人々が逃げ込んだことで、建物内の熱が上がり、建物の外側が氷漬けになろうが、仲のヒトたちは自分たちの発する熱で、即座に全員、氷漬けにならずには済んだのだ。
しかし、それはあくまでも即座ではなかっただけで、冷気を放つ源に近い地域に住んでいる住民たちはほどなく、建物ごと、氷で出来たオブジェへと変わっていく……。ジカーゴの街を氷漬けにしている張本人がジカーゴの北西に現れてから30分も経とうとする頃、ジカーゴの3分の1が白が支配する死の世界へと様変わりしてしまっていた。
この緊急事態にミシガン王国の女王も事態の把握と対処に乗り出そうとする。しかしながら、この現象が作為的なモノであり、さらには対処療法ですら間に合わないくらいに、死の世界がジカーゴを覆っていくために、自分が住まう王城を迫りくる冷気から護ることだけに力を費やすこととなる。
司令塔が壊滅状態になれば、軍隊全体が機能しなくなるのは当然のことである。そして、国全体の話で言えば、女王が住まう王城が氷漬けになれば、ミシガン王国の国民全員が死に絶えることにもなりかねない。だからこそ、女王は選んだのだ。まずは司令塔となる自分が住まう王城を冷気から護ることを。
重ねて言うが、ミシガン王国の女王は国民を見捨てて、自分たちの身を護ったのではない。より多くのニンゲンの命を救うために、自分たちの安全を確保しただけである。それほどまでに、彼奴が源となっている冷気の侵食速度が速すぎたのだ。
王城には最初、蒼い山が突然、ジカーゴの北西に現出したという報告が為された。五大湖の西端から西海岸までには、小高い丘はあっても、ジカーゴの街の3分の1に影を落とすような山など存在していなかった。ズズーーーン!! という、腸重量の塊が地響きを鳴らしながら、ジカーゴの北西に着地するや否や、それは蒼き山となり、さらにはジカーゴの街の3分の1を30分足らずで死と静寂に包み込んだのだ。
「なんたること……。なんたることをっ!!」
ミシガン王国の女王:カッツエ=マルベールは憤った。彼女はドワーフであり、ウィーゼ王国とは対照的に、彼女が住まう王城にはドワーフの政務官、ドワーフの軍人たちが詰めていた。王女は配下の者たちに情報収集と、王城の護りを徹底させる。次々ともたらさられる情報を下に、ジカーゴの街に過酷な冷気をもたらしている存在が、何者であるこかを知ることとなる。
「彼奴の目的は、わらわにミシガン王国の守護者を呼び寄せることかっ!!」
ミシガン王国の女王は非常に聡い人物であった。今、ミシガン王国の首都を壊滅状態へと追いやっている彼奴が、何故にこんな暴挙に出ているかの理由を察する。首都全体を麻痺させることで、女王が守護者に頼らなければならない状況に追い詰めるためだと、カッツエ=マルベールは感じ取る。だが、女王はおいそれと守護者に頼ることは出来なかった。彼奴の目的が守護者自身であると予想したからである。
身動き出来ない状況に追い込まれた女王は、せめて、彼奴に一矢報いてくれる存在を望む。今の状況下で守護者に出張ってもらうのは無理も無理であった。そして、女王は知らなかった。状況を覆すきっかけとなる存在がジカーゴの街に人知れずやってきていたことを……。
「なんだあれは……。俺が知っている紅玉眼の蒼き竜の大きさじゃねえっ!」
「ど、どうするんですゥ!? ぼくとレオン様があいつと出会った時は、小高い丘程度の大きさでしたけど、今や、山ほどの大きさはあるのですゥ!」
レオナルト=ヴィッダーたちは死と静寂に包まれた街の大通りを北東へと進み続けていた。逃げ遅れた人々が氷の彫像となり、その間を抜けて、彼らはさらに北東へと進んでいく。吹き付けてくる冷気の量は歩を進めるのと比例して、その威を増していた。いくらデーブ=オクボーンを薪ストーブ代わりにしていると言っても、限界が近づいてきていることは自明の理であった。
そんな進退窮まろうとしているレオナルト=ヴィッダーたちの眼に、蒼き山が飛び込んでくる。その蒼き山の山頂部分には赤い三日月がふたつ並んでいた。もちろん、それは月では無く、紅玉眼の蒼き竜の紅い両目であった。レオナルト=ヴィッダーたちが一歩、また一歩、その蒼き山に近づけば近づくほど、紅い両目は、そこから紅い光を強めていく。
(我に仇為す存在が近づいてきてイル……。我にはワカル。2年前に我に傷をつけたあの存在ダッ!)
紅玉眼の蒼き竜は額に斜めに入っている古傷がジンジンと熱を帯びていくのを感じる。自分に対して、不遜な行為を働いたニンゲンが、少しづつであるが、自分に近づいてきていることを感じ取る。だが、今や、あの頃の10倍以上のサイズとなってしまっていた紅玉眼の蒼き竜は、その豆粒以下の存在の位置を的確に察知することが出来なくなってしまっていた。
それゆえに紅玉眼の蒼き竜は首級を持ち上げて、右から左へとその首級をゆっくりと振りながら、獰猛な顎を下側へと開き、大きく空いた口から氷柱を次々と発射させる。紅玉眼の蒼き竜の口から発射されたツララというよりかは遥かに大きすぎる先端が尖った氷柱は次々とジカーゴの街を穿っていく。
建物の屋根を突き破り、その中で氷の彫像と化していた人々を粉々にする。紅玉眼の蒼き竜が左から右へ首級を振りながら、氷柱を降らせたせいで、100の建物、3000人の命が消し飛ぶ。だが、紅玉眼の蒼き竜は今の氷柱の放射が、自分の仇には当たっていないと感じ、今度は右から左に首級を動かしつつ、氷柱を口から放射する。それにより、またもや100の建物、3000人の命が吹き飛ぶ。
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