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第2章:失って得るモノ

第9話:薄桜色よりも桜色

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「国王様が言われていることは本当か? アイリス様を下賜してくださるってのは……」

「いやしかし、国王様が持ってこいと言っている秘宝は所在も不明なものばかりだ……。それをふたつも集めるなど、不可能だろが」

 城前の広場に集まる兵士並びに国民たちはとんでもないことをぶちあげた国王に対して、どう反応して良いものかと逡巡してしまう。齢16のアイリス=クレープス様は本当に美しく育たれた。親にすら、その身体を触れさせたことも無さそうな純粋無垢な存在に見える。その可憐な姫様を自分が汚して良い権利を与えられるというのであれば、秘宝のひとつやふたつ、手に入れるために危険に身を晒しても良いと思えてしまう。

「ええいっ! 何をごちゃごちゃ抜かしておるかっ! けがれを知らぬ16の愛娘を貴様たちに与えようというのだぞっ! 男であれば、股間についている汚い肉棒で、我がアイリス=クレープスを好きなように調教してみたいと思わぬかっ!?」

 国王:ロータス=クレープスは音声拡張器マイクを右手で握りしめ、とんでもないことを言い出す。次の瞬間、国王の周りに立つ彼の家族がそれぞれに履いている靴を片方脱いで、パッコーーーン! と勢いよく3連続で国王の後頭部を叩いてみせる。余りにもの激痛で国王は後頭部を両手で抑えつつ、その場でうずくまってしまう。そんな彼から音声拡張器マイクを奪った彼の長男がゴホン……と一度咳払いをし

「すみません……。父上は武人の血を濃く引き継いでいるため、たまに蛮族よろしくみたいな発言をしてしまいます」

 第1王子であるフィルフェン=クレープスが音声拡張器マイク片手にペコペコと軽く頭を下げながら、国王の失言の詫びを入れる。その後、国王が言っていたアイリス=クレープス下賜の件について補足説明に入る。

「まあ、簡単に言いますと、今回のいくさで頑張ってくれた兵士の皆さん、並びに国民の皆さんに喜んでもらおうと思っての父上の企画なんです。戦勝気分を盛り上げるための一助みたいなものです」

 第1王子:フィルフェン=クレープスは戦勝気分をさらに盛り上げるために、兵士を含むウィーゼ王国に所属する国民たちにさらに盛り上がってもらうためにも、ここはアイリス=クレープスを賞品に、冒険心に火を灯してもらおうという企画であると言ってのける。本当のところは秘宝のうち、どれかひとつでも手に入れて、国自体の価値を上げることを目論んでいるし、秘宝をふたつも手に入れれば、その内のひとつを他国に高値で売りさばいて、戦費を賄おうという策でもある。しかしながら、それについては一切、国民に教えるつもりが無いフィルフェン=クレープスであった。

 そういった裏事情を上手く隠しつつ、城前の広場に集まる兵士並びに国民がなんとなく納得するように話を運んでいく。これは武人の血を色濃く継ぐ国王では出来ないことであった。しかしながら、最後の決め台詞は第1王子が担当することはなく、音声拡張器マイクを痛みから復活した国王に再び返すこととなる。

「フィルフェン、ご苦労。ごほん……。貴様ら、アイリス=クレープスが欲しいかっ!」

 国王のこの問いかけに国民たちは湧き上がる。俺がアイリス=クレープス様を手に入れてやるっ! と宣言する者たちが後を絶たずにこぶしを天へと突きあげる。第1王子に熱を入れられて、国王の問いかけでその熱は焔を噴き出す。そして、広場のそこら中で取っ組み合いの喧嘩が始まる。アイリス=クレープス様をこの手にするのだと、互いで主張を始め、手がつけられない状況へと陥る。だが、国王は国民たちが相争う姿を見て、非常に満足気な表情へとなってしまう。

 男が女を手に入れるのであれば、少々、野蛮な行為に出てこそだと思ってしまうのは、やはり国王自身に流れる武人の血ならではということだ。国王:ロータス=クレープスは口の端を愉悦で歪ませて

「ならば、四の五の言わずに、この世の秘宝を持ってこいっ! アイリス=クレープスを孕ませる権利を貴様たちに与えてやろうっ!!」

 国王はそう言うと、アイリス=クレープスを自分の隣に立たせ、何を思ったのか、空いたゴツゴツとした左手で、アイリス=クレープスが着ている薄桜色のドレスの胸元を引き裂いてみせる。アイリス=クレープスの幼い形のおっぱいの先端にはその薄桜色のドレスすら色褪せて見えるくらいに美しい桜色をした乳首が顔を見せることとなる。

 城前に集まる男たちのほとんどが歓声と諸手をあげると同時に、おちんこさんまでズボンの中でスタンディングオベーションさせる。アイリス=クレープスの首から肩、そして二の腕、そして形の良いおっぱいと美しい乳首は遠目で見ても華奢さを主張していた。眼が実際に焼けてしまうのではないか? と危惧するほどに彼らの眼に桜色の乳首が焼き付いて離れない。

 アイリス=クレープスは顔だけを横に背ける。それでも前を隠そうともせずに、震える両足で屹立しつづけた。閉じたまぶたからはハラハラと涙が零れ続けたが、これは自分に着せられた罰だということを承知していた。国民が望むようなけがれ無き身体では無かった。すでに純潔は愛した男に捧げていた。それなのに、父上と兄上はそれについて、一切言及しなかった。加熱する熱に浮かされる国民たちは、これから自分を巡って命を落としていくだろう。せめてもの手向けで自分の裸体を衆目に晒すことが彼らへの慰めだと思ったからこそ、着ているドレスの上半分を父親に引きちぎられても、気丈に振る舞い続けた。

 そんな妹に憐憫の情を抱いた彼女の姉がドレスの上から上半身に羽織っていた紫陽花色のガーディガンを脱ぎ、それをもってして彼女の上半身を覆い隠す。アイリス=クレープスの裸体が隠されたことで城前に集まる男たちは大きなため息をつく。だが、一度下げた頭を再び上に向けて、今度はあの裸体を自分の舌が届く位置でじっくりと眺めてやろうと息巻く。そんな国民たちを満足気に見下ろした後、国王たちはバルコニーから退出しようとする。

「アイリスーーー!!」

 沸き立つ国民たちを割って、ある男が叫び声をあげる。その通る声は国王たちの足を無理やりに止める。国王はギョッとした顔つきになり、第一王子はククッ! ととてつもなく邪悪な笑みをその顔に浮かべる。アイリス=クレープスは再びバルコニーに戻り、その手すりから滑り落ちるのではなかろうかというほどに身を乗り出す。

「レオ……、レオ……、レオーーー!!」

 アイリス=クレープスは今まで気丈に振る舞っていたが、2年振りに聞いた想い人の声により、大粒の涙をボロボロと零す。父親の権力により、無理やりに身を離された2人であったが、2年会わなくても、互いの声を忘れるわけがない。

「アイリス、アイリス、アイリスーーー!!」

「レオ、わたしはここよっ! 貴方がわたしを孕ませてくださいましっ!!」
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