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第2章:始祖神の使い
第6話:武者震い
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「れれれ、練習!? わたしが男に慣れるための練習!? わたしの唇を奪う気なの!?」
「違うわっ! 司令官としてのキリっとした態度を取るための練習だわっ! 最低限、物怖じしないためにも度胸を持つための練習だわっ!!」
シャクマが頭のおかしい発言を連発するアキヅキに対して、思わず、強めにツッコミを入れてしまう。アキヅキはまるで親に叱られてしまったかのように両肩を落として、シュンッとなってしまうのである。
こればかりはシャクマは言い過ぎたと感じてしまう。指揮官として眼の前の女性に自信をつけなければならないというのに、自分がその自信を砕いてどうするんだと。
シャクマは頭をボリボリと掻き、あーーー! と自分に一喝するのであった。
「すまん。強く言い過ぎた……。だからと言って、あからさまに肩を落とすのはやめてくれ……。あとで接吻でもなんでもしてやるから」
「ちちち、違うわよっ! 誰もキスしてほしいとか頼んでないでしょうがっ!」
アキヅキがフーフーと肩で息をする。その姿はまるでシャクマの喉笛を食いちぎってやろうか!? とすら思えるほどの威嚇をもっていた。そしてその態度のままに猛然と抗議をするのであった。
(本当にコロコロと態度が急変するなあ?)
それがシャクマの素直な感想であった。しかしながら、眼の前の女性は心に火が灯り易いながらも、自分の主張は物怖じせずにしっかりとする。根っこが真っ直ぐなんだなと感心せざるをえないのであった。
「そんだけ言えれば十分だな。俺の心配は杞憂だっただけかもしれん。頼むぞ、殿。これから先、泣き言はお前さんには許されないからな……」
「うん、わかってる……。わたしは司令官代理だもんね。わたしに砦の皆を統率する能力があるかどうかはわからない。でも、それでも気丈には振る舞ってみせる……」
アキヅキ自身にもわかっていたのだ。ゼーガン砦を死守するということは、必ず大勢の死者が出ることくらい。それでも、このゼーガン砦をショウド国軍に抜かれれば、その他の砦も焼かれ、やがて火の国全土をショウド国軍に荒らされてしまう。
そうさせないためにも、部下にあたる兵士たちに『生きながらにして死ね』と命じなければならない時が必ずやってくる。
アキヅキは心の中に訪れる寒気に、身体までもが振るえてきた。両腕を胸の前に組み、二の腕部分を両手で必死に抑える。両のまぶたをギュッと閉じ、必死に身体の奥底からこみ上げてくる恐怖と闘いはじめたのであった。
そんな震える彼女の身に温かさが外からやってくる。
「大丈夫だ。殿。俺がお前さんを護ってやる」
シャクマがアキヅキを正面側から優しく抱きしめたのであった。シャクマの身体は鎧武者が身に着ける甲冑に包み込まれていたのだが、何故かその甲冑を介して、彼の体温が、穏やかな心臓の鼓動が伝わってくるかのようであった。
そのゴツゴツとした感触に違和感を覚えながらも、安心感に包まれていくアキヅキであった。
「震えてるな。よしよし。俺だけには身を預けておけ」
「馬鹿ッ。これはただの武者震いよっ」
シャクマは自分の喉仏あたりで気丈に振る舞うアキヅキに、ははっと軽く笑ってしまうのであった。そして、まるで父親が娘にするかのように優しく彼女のキレイな金髪で覆われた頭を右手で撫でるのであった。
「ありがとっ。シャクマのおかげで震えが止まってきた……」
「なんだよ、武者震いじゃなかったのか?」
アキヅキはシャクマの軽口にプフッと噴き出してしまう。何故、自分はシャクマに対してだけ、甘えられるのか? その理由は今の時点ではわからずじまいなのであった。
「ね~。アキヅキちゃん、食料のことなんだけど~。再度確認してみたんだけど、やっぱり籠城するには心許ないっていうかニャ~って、失礼しましたニャ!!」
「あっ! ちょっと待って!! フラン、待ってってばーーー!!」
フラン=パーンがノックもせずに、ドアのノブをガチャリと回して、指令室へと舞い戻ってきたのであった。そして、フランが見たのは、まるで恋人のように抱きしめ合う男女の姿だっだ。
フランはこれはとんでもないモノを見てしまったと思ってしまう。剣の道に生きてきたために、女らしさの欠片もなかった幼馴染がついに恋の味を知ってしまった。これをすぐにでも皆に教えなくてはならない。そんな使命感がフランの心を支配するのであった。
フランは半猫半人特有の素早さを発揮するべく、両足の太ももに力を貯めていく。半猫半人が太ももに最大限に力を込めた時の筋肉の太さの比率は他種族に比べて、随一であった。
次第に盛り上がっていくフランの太ももをアキヅキは涙目になりながら、見る他無かった。
しかし、そんなフランよりも素早く動く人物が居た。
「おっと。フランのお嬢ちゃん。これはちょっとした訓練だ」
シャクマがいつの間にかフランの後ろに回り込んで、フランの首根っこを右手で捕まえてしまったのである。半猫半人の弱点は首根っこを掴まれることである。この部分を掴まれた状態で宙にブランブランと吊るされてしまうと、半猫半人は急激に身体から力が失ってしまうのだ。
「ニャハハ。捕まってしまったのニャ。で、お言葉ですが、いったい、何の訓練だったですニャ?」
首根っこを掴まれて吊るされた状態ではあるが、フランは首を無理やりひねって後ろに立っているシャクマの方に顔を半分向ける。
「ああ。皆が心配するから言っては無かったんだが、殿は昼間に暴漢に襲われてな? もう少しでその暴漢たちに犯されそうになっていたわけだ」
「なるほどですニャ。それで大の男相手に組み伏せられても、そこから抜け出す訓練をしていたわけですニャ」
「そういうことだ。というわけで、砦内に不穏な噂が飛び交わないように、フランお嬢ちゃんの脳内には、ただの訓練だったと記憶しておいてくれ」
フランは首根っこを掴まれながらも、器用にコクコクと首級を上下させて、『是』という態度をシャクマに示すのであった。シャクマはそれを受けて、フランの両足が地面に付くように、宙づりにしていたフランの身体を降ろしていくのであった。
「違うわっ! 司令官としてのキリっとした態度を取るための練習だわっ! 最低限、物怖じしないためにも度胸を持つための練習だわっ!!」
シャクマが頭のおかしい発言を連発するアキヅキに対して、思わず、強めにツッコミを入れてしまう。アキヅキはまるで親に叱られてしまったかのように両肩を落として、シュンッとなってしまうのである。
こればかりはシャクマは言い過ぎたと感じてしまう。指揮官として眼の前の女性に自信をつけなければならないというのに、自分がその自信を砕いてどうするんだと。
シャクマは頭をボリボリと掻き、あーーー! と自分に一喝するのであった。
「すまん。強く言い過ぎた……。だからと言って、あからさまに肩を落とすのはやめてくれ……。あとで接吻でもなんでもしてやるから」
「ちちち、違うわよっ! 誰もキスしてほしいとか頼んでないでしょうがっ!」
アキヅキがフーフーと肩で息をする。その姿はまるでシャクマの喉笛を食いちぎってやろうか!? とすら思えるほどの威嚇をもっていた。そしてその態度のままに猛然と抗議をするのであった。
(本当にコロコロと態度が急変するなあ?)
それがシャクマの素直な感想であった。しかしながら、眼の前の女性は心に火が灯り易いながらも、自分の主張は物怖じせずにしっかりとする。根っこが真っ直ぐなんだなと感心せざるをえないのであった。
「そんだけ言えれば十分だな。俺の心配は杞憂だっただけかもしれん。頼むぞ、殿。これから先、泣き言はお前さんには許されないからな……」
「うん、わかってる……。わたしは司令官代理だもんね。わたしに砦の皆を統率する能力があるかどうかはわからない。でも、それでも気丈には振る舞ってみせる……」
アキヅキ自身にもわかっていたのだ。ゼーガン砦を死守するということは、必ず大勢の死者が出ることくらい。それでも、このゼーガン砦をショウド国軍に抜かれれば、その他の砦も焼かれ、やがて火の国全土をショウド国軍に荒らされてしまう。
そうさせないためにも、部下にあたる兵士たちに『生きながらにして死ね』と命じなければならない時が必ずやってくる。
アキヅキは心の中に訪れる寒気に、身体までもが振るえてきた。両腕を胸の前に組み、二の腕部分を両手で必死に抑える。両のまぶたをギュッと閉じ、必死に身体の奥底からこみ上げてくる恐怖と闘いはじめたのであった。
そんな震える彼女の身に温かさが外からやってくる。
「大丈夫だ。殿。俺がお前さんを護ってやる」
シャクマがアキヅキを正面側から優しく抱きしめたのであった。シャクマの身体は鎧武者が身に着ける甲冑に包み込まれていたのだが、何故かその甲冑を介して、彼の体温が、穏やかな心臓の鼓動が伝わってくるかのようであった。
そのゴツゴツとした感触に違和感を覚えながらも、安心感に包まれていくアキヅキであった。
「震えてるな。よしよし。俺だけには身を預けておけ」
「馬鹿ッ。これはただの武者震いよっ」
シャクマは自分の喉仏あたりで気丈に振る舞うアキヅキに、ははっと軽く笑ってしまうのであった。そして、まるで父親が娘にするかのように優しく彼女のキレイな金髪で覆われた頭を右手で撫でるのであった。
「ありがとっ。シャクマのおかげで震えが止まってきた……」
「なんだよ、武者震いじゃなかったのか?」
アキヅキはシャクマの軽口にプフッと噴き出してしまう。何故、自分はシャクマに対してだけ、甘えられるのか? その理由は今の時点ではわからずじまいなのであった。
「ね~。アキヅキちゃん、食料のことなんだけど~。再度確認してみたんだけど、やっぱり籠城するには心許ないっていうかニャ~って、失礼しましたニャ!!」
「あっ! ちょっと待って!! フラン、待ってってばーーー!!」
フラン=パーンがノックもせずに、ドアのノブをガチャリと回して、指令室へと舞い戻ってきたのであった。そして、フランが見たのは、まるで恋人のように抱きしめ合う男女の姿だっだ。
フランはこれはとんでもないモノを見てしまったと思ってしまう。剣の道に生きてきたために、女らしさの欠片もなかった幼馴染がついに恋の味を知ってしまった。これをすぐにでも皆に教えなくてはならない。そんな使命感がフランの心を支配するのであった。
フランは半猫半人特有の素早さを発揮するべく、両足の太ももに力を貯めていく。半猫半人が太ももに最大限に力を込めた時の筋肉の太さの比率は他種族に比べて、随一であった。
次第に盛り上がっていくフランの太ももをアキヅキは涙目になりながら、見る他無かった。
しかし、そんなフランよりも素早く動く人物が居た。
「おっと。フランのお嬢ちゃん。これはちょっとした訓練だ」
シャクマがいつの間にかフランの後ろに回り込んで、フランの首根っこを右手で捕まえてしまったのである。半猫半人の弱点は首根っこを掴まれることである。この部分を掴まれた状態で宙にブランブランと吊るされてしまうと、半猫半人は急激に身体から力が失ってしまうのだ。
「ニャハハ。捕まってしまったのニャ。で、お言葉ですが、いったい、何の訓練だったですニャ?」
首根っこを掴まれて吊るされた状態ではあるが、フランは首を無理やりひねって後ろに立っているシャクマの方に顔を半分向ける。
「ああ。皆が心配するから言っては無かったんだが、殿は昼間に暴漢に襲われてな? もう少しでその暴漢たちに犯されそうになっていたわけだ」
「なるほどですニャ。それで大の男相手に組み伏せられても、そこから抜け出す訓練をしていたわけですニャ」
「そういうことだ。というわけで、砦内に不穏な噂が飛び交わないように、フランお嬢ちゃんの脳内には、ただの訓練だったと記憶しておいてくれ」
フランは首根っこを掴まれながらも、器用にコクコクと首級を上下させて、『是』という態度をシャクマに示すのであった。シャクマはそれを受けて、フランの両足が地面に付くように、宙づりにしていたフランの身体を降ろしていくのであった。
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