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第17章:ヨン=ウェンリー
第1話:つかの間の休息
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「うーーーん。エーリカ、これとこれを捨てて、2枚もらえば、いけるんじゃねえの?」
「あたしもそう思ってた。よしっ、キングのフォーカード」
「ウキキ。勝ち誇っている顔をしているところ、申し訳ないですが。あっしはソードのストレートフラッシュですぜ」
「うっわ、負けたわーーー! さすがは賭け事に関しては才能がずば抜けているコタローだわっ!」
エーリカたちは今現在、舟の上であった。ドードー河をのんびりと舟で渡る中、二人一組となって、毛布に包まれている状況であった。いくら遮蔽物が何もなく、頭上から燦々と夏の太陽が降り注ぐ中であってもしてもだ、河の上は吹きさらしとなっており、エーリカたちの体温を無情にも奪う。
エーリカとタケル。コタローとオニタ。そして余り物同士ということで、ボンス=カレーとジゴローが同じ毛布にくるまれていた。暇を持て余しているエーリカとタケルが間違いを起こさぬようにと、ボンスがエーリカに差し出したのがトランプだったのだ。エーリカはどこから持ってきたの? と尋ねたが、それは秘密ですと返すボンスであった。
だが、ボンスの計算間違いが起きてしまう。数ゲームほど続けると、エーリカは何も賭けないのは面白くないと言い出したのだ。ボンスは冷や汗をダラダラと流す他無かった。
「んじゃ、コタロー。あたしたちに罰ゲームを言ってちょうだい」
「ウキキ。キスは定番すぎるので、毛布にくるまるのを今日1日中ってのはどうですか?」
「ん? そんな簡単なことでいいの?」
「タケル殿もセットでお願いします、ウッキー!」
エーリカはたいして深くも考えずに、あっそーなのとしか言わなかった。これがコタローが仕掛けたとんでもない罠であるのに、気付きもしなかった。罰ゲーム有りの勝負はまだまだ続く。今度はエーリカとタケルのコンビが勝つことになり、コタローが罰を与えられることになる。
「それって、罰のような気がしないんだウッキー」
「そうだと思えば、そういう風に思っておけばいいんじゃない? でも、意外と肩が凝るわよ? 試しに言ってみたら?」
「ふ~~~む。ならば……。エーリカお嬢様、タケルお坊ちゃん。わたくしめに何なりとお申し付け……うぎぃ! 舌を噛みそうでございますぞ」
エーリカがコタローに与えた罰とは、今日1日、執事のような言葉遣いと振る舞いをするようにであった。山賊気風のあるコタローにとって、それはむずがゆさでいっぱいになってしまう。コタローはしてやられたと思うしかなかった。エーリカの言う通り、確かにこれは過ごしにくさ満点だ。
「エーリカお嬢様。最後にもう1戦、お願いします。極上の罰を用意しておりますぞウッキィィィ!!」
コタローが頭を両手で掻きむしり、発狂しそうになっているのを見て、大笑いしてしまうエーリカだった。エーリカとペアにされているタケルは何だかなぁ? と思ってしまう。生き死にの境を行ったり来たりの連続を先ほど体験しまくったというのに、ケロリとしているエーリカである。飄々としているタケルでも、エーリカの図太さには本当に驚くばかりであった。
「うあぁぁぁ……。タケルお兄ちゃん、これはまずいわよ」
「これはまた見事にひどい手を引いちまったな。いっそ、5枚全部、捨てたほうがいいんじゃねえか?」
エーリカは配られた手札を見た途端に、あからさまに大きく動揺していた。数字にまったく繋がりがなく、さらにはカードの種類自体もバラバラだ。この今の手札から役に繋がる姿がまったく想像できないのである。タケルもどうしたものかと思い悩んでしまう。しかしながら、うろたえるエーリカに対して、タケルはエーリカの手から5枚ともカードを奪い取り、それを床に叩きつけるのであった。
「これくらい勢いよく行かなきゃ、再スタートは出来ないからなっ!」
「タケルお兄ちゃん……。よっし、あたしも覚悟を決めたわっ! さあ、ボンス! あたしのために最強の5枚を渡しなさいっ!」
エーリカが自信たっぷりにボンスに向かって、右手をつき伸ばしてくる。ボンスは訝しむ顔でゆっくりゆっくり1枚づつ、エーリカにカードを渡していく。エーリカとタケルの顔は1枚目、2枚目、3枚目、4枚目と続くごとに、よっしよっし! と喜びいっぱいの顔になっていく。そして、いよいよ、ラストの5枚目を渡す時にはエーリカとタケルは興奮マックスとなっていた。
「もぉぉぉ!! 何でそこで剣のエースを渡してこないのよっ! しっかも、ここからブタってどういうこと!?」
エーリカは手札の開示を待たずに、手持ちのカードを床に叩きつけた。エーリカの手札は剣の10からキングまでしっかり揃っていたのだ。だが、最後に来たのは、このカードの並びにまったく関係ない、カップの2だった。そこはせめて、エースかなにかしらの剣のカードだと思ってしまう。
「ウキキ。本当に惜しいですな、エーリカお嬢様。それではわたくしめのカードをオープンさせてもらいましょう……」
「うっわ! 性格悪いっ! コタローが剣のエースを持っていたのねっ! もう、あたし、泣いちゃいそぅぅぅ」
「よしよし、エーリカ。コタロー、それはさすがに意地悪いぜ。剣のエースを持っているなら、最初から言っておけよ」
「ゴホン。わたくしとしても、こちらの持っているカードを欲しがっているとは思いませんでしたぞ。しかし、勝負は非情。エーリカお嬢様に、このわたくしめが特別な罰をご用意しておりますウッキ!」
コタローが決め顔を作ってまで、執事を真似てみせたことで、エーリカは思わずプフッと噴き出すのであった。本気で泣きそうになっていながらの、次の瞬間にはこの可笑しそうな顔である。そんなエーリカに対して、コタローは先ほどよりももっと意地悪な罰を与えることに決めたのであった。
「ん? 毛布にくるまるだけじゃなくて、タケルお兄ちゃんと手を結び続けるの? 右手? 左手?」
「そこはご自由にと。本当ならタオルで片方の手を縛って固定するのですが、そこまではしなくて良いと思われます、ウッキー」
「ふーーーん。まあ、タオル自体も無いし、なるべく意識的にタケルお兄ちゃんと手を結んでおくね。それで罰が成立していると思っておいてほしいわ」
エーリカはコタローにそう言うのであった。コタローはかまいませんぞと言い、これにて賭けポーカーは終了となる。30分余りの短いようで長い舟での旅が終わろうとしていた。ドードー河は河と呼ぶには川幅がとてつもなく広すぎた。だが、これほどの川幅を持っていなければ、今でもエーリカ率いる血濡れの女王の団は、アデレート王家軍に追われ続けていたことは間違いないだろう。
エーリカはドードー河を渡った先にあるジュシュの港町へと上陸する。だが、アデレート王家軍から逃げきるためには、ケアンズ王国の玄関口であるこのジュシュの港町に留まるのは危険すぎた。ケアンズ王国から追い出される結果になるにしても、容易にそれが為されないようにしなければならんかった血濡れの女王の団である。
ジュシュの町で、ほとんど休憩を取ることなく、身体に毛布や御座を巻き付けたまま、血濡れの女王の団は3つに分裂したケアンズ王国の南ケアンズ王族領へと足を踏み入れる。
「あたしもそう思ってた。よしっ、キングのフォーカード」
「ウキキ。勝ち誇っている顔をしているところ、申し訳ないですが。あっしはソードのストレートフラッシュですぜ」
「うっわ、負けたわーーー! さすがは賭け事に関しては才能がずば抜けているコタローだわっ!」
エーリカたちは今現在、舟の上であった。ドードー河をのんびりと舟で渡る中、二人一組となって、毛布に包まれている状況であった。いくら遮蔽物が何もなく、頭上から燦々と夏の太陽が降り注ぐ中であってもしてもだ、河の上は吹きさらしとなっており、エーリカたちの体温を無情にも奪う。
エーリカとタケル。コタローとオニタ。そして余り物同士ということで、ボンス=カレーとジゴローが同じ毛布にくるまれていた。暇を持て余しているエーリカとタケルが間違いを起こさぬようにと、ボンスがエーリカに差し出したのがトランプだったのだ。エーリカはどこから持ってきたの? と尋ねたが、それは秘密ですと返すボンスであった。
だが、ボンスの計算間違いが起きてしまう。数ゲームほど続けると、エーリカは何も賭けないのは面白くないと言い出したのだ。ボンスは冷や汗をダラダラと流す他無かった。
「んじゃ、コタロー。あたしたちに罰ゲームを言ってちょうだい」
「ウキキ。キスは定番すぎるので、毛布にくるまるのを今日1日中ってのはどうですか?」
「ん? そんな簡単なことでいいの?」
「タケル殿もセットでお願いします、ウッキー!」
エーリカはたいして深くも考えずに、あっそーなのとしか言わなかった。これがコタローが仕掛けたとんでもない罠であるのに、気付きもしなかった。罰ゲーム有りの勝負はまだまだ続く。今度はエーリカとタケルのコンビが勝つことになり、コタローが罰を与えられることになる。
「それって、罰のような気がしないんだウッキー」
「そうだと思えば、そういう風に思っておけばいいんじゃない? でも、意外と肩が凝るわよ? 試しに言ってみたら?」
「ふ~~~む。ならば……。エーリカお嬢様、タケルお坊ちゃん。わたくしめに何なりとお申し付け……うぎぃ! 舌を噛みそうでございますぞ」
エーリカがコタローに与えた罰とは、今日1日、執事のような言葉遣いと振る舞いをするようにであった。山賊気風のあるコタローにとって、それはむずがゆさでいっぱいになってしまう。コタローはしてやられたと思うしかなかった。エーリカの言う通り、確かにこれは過ごしにくさ満点だ。
「エーリカお嬢様。最後にもう1戦、お願いします。極上の罰を用意しておりますぞウッキィィィ!!」
コタローが頭を両手で掻きむしり、発狂しそうになっているのを見て、大笑いしてしまうエーリカだった。エーリカとペアにされているタケルは何だかなぁ? と思ってしまう。生き死にの境を行ったり来たりの連続を先ほど体験しまくったというのに、ケロリとしているエーリカである。飄々としているタケルでも、エーリカの図太さには本当に驚くばかりであった。
「うあぁぁぁ……。タケルお兄ちゃん、これはまずいわよ」
「これはまた見事にひどい手を引いちまったな。いっそ、5枚全部、捨てたほうがいいんじゃねえか?」
エーリカは配られた手札を見た途端に、あからさまに大きく動揺していた。数字にまったく繋がりがなく、さらにはカードの種類自体もバラバラだ。この今の手札から役に繋がる姿がまったく想像できないのである。タケルもどうしたものかと思い悩んでしまう。しかしながら、うろたえるエーリカに対して、タケルはエーリカの手から5枚ともカードを奪い取り、それを床に叩きつけるのであった。
「これくらい勢いよく行かなきゃ、再スタートは出来ないからなっ!」
「タケルお兄ちゃん……。よっし、あたしも覚悟を決めたわっ! さあ、ボンス! あたしのために最強の5枚を渡しなさいっ!」
エーリカが自信たっぷりにボンスに向かって、右手をつき伸ばしてくる。ボンスは訝しむ顔でゆっくりゆっくり1枚づつ、エーリカにカードを渡していく。エーリカとタケルの顔は1枚目、2枚目、3枚目、4枚目と続くごとに、よっしよっし! と喜びいっぱいの顔になっていく。そして、いよいよ、ラストの5枚目を渡す時にはエーリカとタケルは興奮マックスとなっていた。
「もぉぉぉ!! 何でそこで剣のエースを渡してこないのよっ! しっかも、ここからブタってどういうこと!?」
エーリカは手札の開示を待たずに、手持ちのカードを床に叩きつけた。エーリカの手札は剣の10からキングまでしっかり揃っていたのだ。だが、最後に来たのは、このカードの並びにまったく関係ない、カップの2だった。そこはせめて、エースかなにかしらの剣のカードだと思ってしまう。
「ウキキ。本当に惜しいですな、エーリカお嬢様。それではわたくしめのカードをオープンさせてもらいましょう……」
「うっわ! 性格悪いっ! コタローが剣のエースを持っていたのねっ! もう、あたし、泣いちゃいそぅぅぅ」
「よしよし、エーリカ。コタロー、それはさすがに意地悪いぜ。剣のエースを持っているなら、最初から言っておけよ」
「ゴホン。わたくしとしても、こちらの持っているカードを欲しがっているとは思いませんでしたぞ。しかし、勝負は非情。エーリカお嬢様に、このわたくしめが特別な罰をご用意しておりますウッキ!」
コタローが決め顔を作ってまで、執事を真似てみせたことで、エーリカは思わずプフッと噴き出すのであった。本気で泣きそうになっていながらの、次の瞬間にはこの可笑しそうな顔である。そんなエーリカに対して、コタローは先ほどよりももっと意地悪な罰を与えることに決めたのであった。
「ん? 毛布にくるまるだけじゃなくて、タケルお兄ちゃんと手を結び続けるの? 右手? 左手?」
「そこはご自由にと。本当ならタオルで片方の手を縛って固定するのですが、そこまではしなくて良いと思われます、ウッキー」
「ふーーーん。まあ、タオル自体も無いし、なるべく意識的にタケルお兄ちゃんと手を結んでおくね。それで罰が成立していると思っておいてほしいわ」
エーリカはコタローにそう言うのであった。コタローはかまいませんぞと言い、これにて賭けポーカーは終了となる。30分余りの短いようで長い舟での旅が終わろうとしていた。ドードー河は河と呼ぶには川幅がとてつもなく広すぎた。だが、これほどの川幅を持っていなければ、今でもエーリカ率いる血濡れの女王の団は、アデレート王家軍に追われ続けていたことは間違いないだろう。
エーリカはドードー河を渡った先にあるジュシュの港町へと上陸する。だが、アデレート王家軍から逃げきるためには、ケアンズ王国の玄関口であるこのジュシュの港町に留まるのは危険すぎた。ケアンズ王国から追い出される結果になるにしても、容易にそれが為されないようにしなければならんかった血濡れの女王の団である。
ジュシュの町で、ほとんど休憩を取ることなく、身体に毛布や御座を巻き付けたまま、血濡れの女王の団は3つに分裂したケアンズ王国の南ケアンズ王族領へと足を踏み入れる。
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