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第16章:逃避行

第7話:悪鬼のミンミン

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 シュウザン将軍の2千による包囲から脱したミンミンは馬を駆けさせるだけ、駆けさせた。チョウハン河まで戻ったミンミンはそこで、驚愕の場面を見せつけられることになる。長い橋のそこら中に臓腑がまき散らされている。大量の兵士の死体が野の獣に食い散らかされたかのようにバラバラで散らばっていた。

 それを為したのはたったひとりの武人であった。その者はひと休憩とばかりに橋の欄干に背中を預けていた。その武人は血まみれになりながらも、馬の首を手刀で叩き斬る。そうした後、馬の首にがぶりつく。新鮮な馬刺しをクッチャクッチャと歯で噛み千切っていたのである。

「んん? ミンミン、どうしたんだぃ? エーリカの嬢ちゃんからの撤退命令を伝えにきたんかぃ?」

「いや、違うんだべ。あいらはケンキさんを探しにきたんだべ! キョーコ様はケンキさんの姿を見なかっただべか?」

「うちの記憶が正しければ、うちが屠った敵兵の中にケンキはいなかった気がするなぁ?」

 キョーコの言にホッと胸を撫でおろすミンミンであった。ミンミンは先を急ごうとするが、それに待ったをかけるのがキョーコであった。キョーコは足を用いて、そこら中に転がっている戟を宙に舞わせる。ミンミンは足で放り投げられてきた戟を何本か左脇で抱え込む。

「エーリカの嬢ちゃんとの距離を考えれば、うちもそろそろ、この橋をぶっ壊してしまわなならん。ミンミンが遅れたとしても、うちは一切の躊躇無く、この橋をぶっ壊すよぉ?」

「わかっただ! タイムリミットまで、どれほどなんだべ?」

「そうさねぇ。短くて30分。長くて1時間といったところだぁ。さすがのうちも疲れ始めてるからねぇ。さあ、ミンミンのために橋に乗り込んでいる敵兵をぶっ飛ばすかぁ!!」

 休憩時間は終わりとばかりに、橋の欄干から背中を離すキョーコであった。新鮮な馬刺しを歯で噛み千切り、残りの馬肉を橋の上に放り投げる。グチャッという音を合図にキョーコが徒手空拳でチョウハン河に架かる橋を占拠していた敵兵を屠り始めた。

「さあ、行くがいいさぁ! 無事にケンキと合流できたら、すぐに戻ってくるんさぁ! それまで、うちがこの橋でもうひと暴れしておくさぁ!」

 キョーコは橋の上で遠目にキョーコを見ていた敵兵を次々と屠り、無理やりにミンミンが通れる道を作り出す。ミンミンは言ってくるだ! とキョーコに告げて、チョウハン河を渡り切る。キョーコは若いっていいなぁ!! という歓喜の色をその顔に浮かべていた。

 キョーコによって、道を拓いてもらったミンミンは一路、カイケイのみやこへと馬を進ませた。道中のそこらで地に伏せたアデレート王家軍の兵士と流民、さらには少数であるが、血濡れの女王ブラッディ・エーリカの団員たちがいた。ミンミンは流民や血濡れの女王ブラッディ・エーリカの団員たちに、ケンキ将軍を見なかったか? と尋ねる。

「わかっただ。ここから東の方向へとケンキさんらしいひとが馬で駆け抜けていったんだべかな?」

「はい……。死んだふりをしていたので、ちゃんとは見れてないッスけど、あれは間違いなく、ケンキ将軍だったと思うッス。でも、隊長格と思わしき人物が騎兵10で、ケンキ将軍の後を追いかけていったッス」

「うっし! おいらのやることは決まったんだべさ! おまえさんは生きている団員たちや流民たちを集めて、チョウハン河の橋に向かうだべ。今ならまだ、拳王様が奮闘してくれているんだべ!」

 ミンミンは馬を降りて、傷ついた団員に事情を聞いていた。そして、得たい情報を手に入れた後、遅れた団員たちに目指すべき場所を伝え、自分は一騎、ケンキさんが向かった方向へと馬を走らせる。それから30分後、ミンミンの顔は悪魔のような形相になる。

「おいらのケンキさんに何をしてるだっ!」

 ミンミンが怒りの表情をその顔に浮かべるのも仕方無かった。ケンキは無理やりに落馬させられ、さらにはケンキを囲んでいる下劣な兵士たちが、ケンキの身体検査をおこなっている真っ最中であった。ケンキは10名の卑劣漢たちによって、身に着けている立派な鎧だけでなく、鎧下の服全てを剥ぎ取られていた。

 さらには卑劣漢たちがケンキを草地の地面に押し倒し、ケンキの股を無理やり開き、股間の茂みをマジマジと観察している真っ最中であった。ケンキは悔しさからか、ボロボロと涙を零していた。卑劣漢たちはこれでもかというくらいに邪悪な笑みとヨダレをダラダラとこぼしていた。

 ケンキのおっぱいを空気に触れさせるだけでは満足しなかった卑劣漢はケンキの豊満なおっぱいをこれでもかともみくちゃにし、さらには男根から発射されるスペル魔で汚せるだけ汚していた。しかしながら、卑劣漢はケンキを辱めるには足りぬとばかりに高貴な御方のアソコもまた、高貴であるはずだと、ケンキのアソコと尻の穴をじっくり鑑賞する時間を設けたのである。

「ミンミン……。 わたくしはお嫁にいけない身体にされてしまいましたの……」

 泣きじゃくるケンキの消えそうな声を耳に入れたミンミンは悪鬼羅刹と化す。ケンキの身体を抑えつけている卑劣漢のひとりに向かって、戟をぶん投げる。勢いよく投げられた戟が卑劣漢の頭に当たるや否や、戟の刃部分が砕け散る。それと同時に卑劣漢の頭は衝撃を受け過ぎたスイカのように破裂する。

 卑劣漢はケンキを嬲るのをやめて、一斉に腰に履いた鞘から長剣ロング・ソードを抜き出す。しかしながら、ミンミンのほうがよっぽど動きが速かった。ミンミンは乗っている馬を卑劣漢のひとりにぶち当てる。その卑劣漢が宙を舞い、地面に着地する前に、馬から飛び降り、ついでとばかりに卑劣漢のひとりにドロップキックをかましたミンミンはすぐさま、もうひとりの卑劣漢を戟で串刺しにした。

 それでは足らぬとばかりにミンミンは左脇に抱えている戟で、次々と卑劣漢を草地の地面に縫い付けていく。馬によって轢き飛ばされた卑劣漢が草地の地面にバウンドする頃には、ミンミンによって串刺しの刑にされた卑劣漢は5人ほどにのぼった。だが、ミンミンの怒りはまだ収まっていなかった。

「おいらもまだもみくちゃにしていないケンキさんのおっぱいをいたぶっただけでは事足りず、おいらでも見せてもらっていないケンキさんのアソコと天使の尻の穴を凝視するたあ、もっての他だべ! 例えエーリカが許しても、おいらが許さないんだべ!!」

 この時のミンミンを止められる者など居なかった。それが剣王や拳王でも無理だと言えるほどのミンミンの怒気であった。ミンミンの肥満体の身体の表面全てに、怒りで煮えたぎる血管が浮き立っていたのだ。

 そんな怒れるミンミンに対して、元は騎兵であった卑劣漢たちは、眼の前の男から逃げられるイメージをまったく思いつかなかった。ミンミンが左脇に抱える戟を1本、投げるたびに、卑劣漢が串刺しになった。卑劣漢の残りはあと3名となってしまっていた。

「ひぃぃぃ! 命ばかりはお助けをっっっ! おれらはただ、敵に寝返ろうとしていたケンキを捕らえよという命令を実行したまでなんだぁぁぁ!
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