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第15章:転落

第7話:サービス

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「おや? おやや? セツラの姐さん。自ら進んで男子どものオカズ提供公開処刑場にやってくるとはどういった心境なのですかニャン?」

「あの……。わたくしはお風呂に入りにきたのであって、オカズ提供にくる予定ではありませんでしたの……」

「それはご愁傷様ですにゃん。さあ、とくと見やがれですニャン、男子共! 血濡れの女王ブラッディ・エーリカの団1番のプロポーションである、あちきが男子諸君のオカズになりにきましたニャン。ほら、拝観料をいただきますニャン」

 大浴場に集まる男子たちがどこからか取り出した小銭をアヤメ=イズミーナが足元近くに置いてある桶へと投げ入れる。アヤメはお金を払ってもらった以上、その金額分に見合うだけのサービスポーズを取ってみせる。

「アヤメってすごいわね。さすがのあたしでも、あんなこと出来ないわ」

「ロビンさんは知っているんでしょうか? 私がアヤメさんの彼氏だったら、力づくでも止めるのです!」

 エーリカとレイヨンは男子たちの観音菩薩となっているアヤメを無視して、風呂椅子を並べて、仲良く頭を洗っていた。セツラは止めなくていいのでしょうか? と2人に聞くのだが、エーリカとレイヨンは互いの顔を見つめ合い、いつものことだし、良いんじゃない? と、再び頭を洗う作業へと戻っていく。

 セツラは女性陣側にツッコミ役が不足しすぎていると感じる。だが、そうだからと言って、ツッコミを入れたところで、先ほどのような平然とした顔つきで返されるのがヲチなのは見えていた。セツラは深く考えないでおこうと思い、自分も頭を洗い始める。

 そうこうしていると、セツラもこの状況に慣れてしまったのか、麻痺してしまったのかわからないが、男子たちの目に焼き付けてやるぜ! という視線を変に意識しなくなっていた。身体全体をタオルと石鹸で洗い終えたエーリカたちは、いよいよお待ちかねの湯舟に身体を沈めさせにいく。

 湯の深さは、色々とした都合上、セツラの腹にあるへそあたりにまでしか届かなかった。だが、そんな浅さであったとしても、いくさで疲れた心と身体、それに魂の洗濯には十分な湯の量であった。セツラは下半身が温まることで、ようやく冷え切っていた身体の奥底が温まる感覚を得る。

「セツラお姉ちゃんの顔からこわばりが消えたわね。まあ、へっちゃらな顔しちゃってる、あたしのほうがよっぽど異常者なんだけどね」

「エーリカさん……。わたくしも同罪ですわ。クロウリー様には悪いですが、湯舟に身体を浸けているこの気持ち良さを幸せだと感じ取ってしまっていますもの」

「クロウリーなら、どうにかしてくれるって安心感があるのかも。タケルお兄ちゃんじゃ、こんなことは絶対に起きないもんね」

 エーリカが朗らかにそう言ってみせる。セツラは苦笑いで答えるしかない。心に罪悪感を抱きつつも、幸福感に包まれるセツラであった。そんな複雑な気持ちではあるが、今はクロウリー様に救ってもらった命を余すことなく使い、生を実感したくなってしまっていた。

 だが、心と身体と魂に安心感を得ようとしていたセツラは自分の視界に入ってきた殿方とその殿方の屹立しているおちんこさんにより、それら全てを石像以上に固めてしまう。

「おう。コッサンから聞いたぞ。風呂からあがるや否や、コッサンを連れて、大立ち回りをしてくるそうじゃねえか」

「タケルお兄ちゃん、やっほー。それに、コッサンも来てたのね。コッサン、ただ見は厳禁よ。今日はスペシャルゲストのセツラお姉ちゃんが来ているんだからっ!」

「う、うん。ま、まあなんというか……。セツラ殿、気づくのが遅れて申し訳ない」

 コッサンはそう言うと、急いで男を主張しまくっている男のシンボルを両手で隠す。そして、ゴホンと咳払いをし、エーリカたちの前から消えていく。そのコッサンの背中をニヤニヤとした顔つきで指差しているタケルお兄ちゃんに対して、エーリカは右手をひらひらと振ってみせる。タケルお兄ちゃんも、その場から離れたことで、エーリカはふたりはもうどこかに行ったわよと、セツラお姉ちゃんに教える。

「うぅ……。あんな狂暴なものを見てしまっては、お嫁に行けませんわ……」

「うん。どっちのお嫁に行くのかは言及しないけど、セツラお姉ちゃんにあんな凶悪なものを見せつけた責任をちゃんと取らせるから、安心してね?」

 エーリカは1歳年上のセツラの頭をよしよしと撫でるのであった。これではどっちが姉役なのか、わかったもんじゃないと言いたげな表情のアイスであった。存外、妹役のほうがしっかりしている時がある。強さだけで言うなら、拳王:キョーコ=モトカードのほうが上だが、こんなに奔放な姉弟子だと、妹弟子のほうがよっぽど人格者に見えてしまう。

 キョーコは湯舟が浅いので、身体を寝かせて、無理やりに身体全体を湯舟に浸けている。さらには極楽極楽と呑気にほざいているために、アイスはキョーコの身体の位置を無理やりにずらして、この浅い湯舟で溺れさせてやろうか? とすら思ってしまう。

 だが、その考えを行動に移す前に、遅れて大浴場にやってきたレイヨンとアヤメが湯舟の中へと移動してくる。アイスは機を失ったことを知り、キョーコが暴れる状況を作らないように努めた。

「いやぁ……。これはさすがにロビンの旦那に怒られますニャン」

「結局、おっぱいの大きさって、凶悪すぎる武器だと感じたのです! アベル隊長も大きいほうが良いんでしょうか!?」

 アヤメとしてはサービスはやり過ぎというほどにはやっていないという自負があった。だが、桶の中にどんどん積み上がっていく男子たちのお賽銭を見ていると、自負とは反比例して、どんどん申し訳ない気持ちになっていく。お賽銭を入れる際に、男子はどうしても膝を折るしかない。そして、お賽銭を入れた後、アヤメを下から見上げる形になる。

 アヤメとしては計算し尽くしている桶の位置であった。フサフサと生える陰毛によって、女性のデリケートゾーンはそれとなく隠れている。ならば、男子たちが注目すべきは、アヤメの豊満なおっぱいであった。そして、アヤメがその豊満なおっぱいをサービスで揺らしてみせる。すると、風が吹けば桶屋が儲かるという図式通りに男子たちが追加のお賽銭を投げ入れる。追加料金が発生したならば、その分のサービスも追加する。

 その繰り返しによって、アヤメは桶3つ分がお賽銭で満杯になってしまった。さすがにこれはやり過ぎたとアヤメは感じ、神に仕える巫女に懺悔するのであった。

「では、わたくしがこの不浄まみれのお金を清めておきますわ」

「頼みますニャン!」

 アヤメが珍しく罪悪感を抱いているために、必要以上に責めないことにしたセツラであった。しかしながら、それでもチラチラとこちらを見てくる男子たちの数はいっこうに減ることは無かった。

「もう! そんなに見たいなら、堂々と見れば良いじゃない! あんたたち、それでもおちんこさんがついてるの? いい加減にしないと、引っこ抜くわよ!?」

 エーリカは情けない男どもを一喝する。そして、キョーコに目配せをする。キョーコはにんまりとした笑顔になり、湯舟から上がると、男子たちに向かって、自分の肉体美をマッスルポーズでまざまざと見せつける。

「あたしたちの身体をキョーコで上書きしてやったわ。ざまあみろっての。アヤメ、悪いけど、口直しでもう一度、お賽銭を投げさせてね? ロビンには内緒にしておくから」

「がってんでぇ! ロビンの旦那への罪悪感はセツラの姐さんが浄化してくれましたニャン! あちきはこの書き入れ時を逃しませんニャン!」

 セツラはお風呂からあがった後、こってりエーリカとアヤメを説教しようと思うのであった……。
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