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第9章:移り変わる世界

第1話:喰らう覇王

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 ドワーフ族が支配する国:ダイクーン王国の宮殿には儀式の間が存在していた。その部屋の中心部には大理石製の台座が設置されており、そこには創造主:Y.O.N.Nの姿を模したと言われている彫像が乗せられていた。しかしながら覇王:シノジ=ダイクーンはその儀式の間に入るや否や、その剛腕で創造主:Y.O.N.Nの彫像を破壊してしまう。そして、その空いた台座にどっしりと尻をつけ、この儀式の間は自分が傷を癒すための場所だと主張するのであった。

 宮殿に集まる国主や文官たちは創造主に対して不敬を働く覇王に眉をひそめることとなる。自分たちは長年、この儀式の間で創造主:Y.O.N.Nを崇めてきたのだ。しかし、その彫像を破壊してしまった覇王に対して不満を声にしてしまう。

「喝ッ! 我が父君は自分に似せた偶像を立てるなと口酸っぱく言っていた也。なのに貴様たちは父君の言葉を受け入れなかったばかりか、国中にあのような像を立てたらしいな?」

「し、しかしでおじゃるっ! 神官プリーストたちは創造主こそがこの世の頂点に座するにふさわしいお方だと言っていたでおじゃるっ。だからこそ、マロはその言葉に従ったまでで……」

 今、覇王:シノジ=ダイクーンに異を唱えているのはドワーフ族の国主であるマーロン=ダイクーンであった。自分たちは神官プリーストに言われるがままに創造主:Y.O.N.Nを奉ってきたのだと説明する。その言葉を受けて、台座に尻を乗せたままのシノジ=ダイクーンが興味深げに顎を右手でさすることとなる。そして、クックックッ! と含みをもたせた笑い声をあげた後、マーロン=ダイクーンが思わず眼を剥いてしまうような発言をする。

「なるほど……。われが居なくなってから580年も経つと、伝承は歪まされてしまったわけ也か……。あいわかった。マーロン=ダイクーン。貴様に罪は無い。ならばこそ、神官プリーストたちの嫁と娘たちを、この儀式の間に呼んでこいっ!!」

「そ、それは……!? もしや、神聖な彼女たちをシノジ=ダイクーン様の手でけがすということでおじゃるか!?」

「然り。よくわかっているではないか。さあ、われに頭をカチ割られたくなければ、嘘八百をつき続けてきたその罪を親娘に償わせる也っ!」

 覇王の言うことが本当であれば、代々の国主たちすらをだまし続けてきた神官プリーストたちの罪が相当に重いことはわかるドワーフ族の現国主であった。しかし、マーロン=ダイクーンはそれでも600年近くに及ぶ、創造主:Y.O.N.Nを奉る歴史に『否』と突き付ける自信が無かった。いくら自分の血と深い繋がりをもつ覇王の言いだとしても、それをそのままに受け入れるわけにはいかなかったのである。

「考え直してほしいのでおじゃる……。マロにはどちらが正しいのかわかないのでおじゃる……」

「ふんっ。われがこの世から姿を消している間に、教会の連中が貴様たちを洗脳しきってしまったようだな? 仕方がない。再教育と行きたいところだが、その時間も惜しい。そんなお前たちはわれの血肉としてやろうではないかっ!!」

 覇王はそう言うと、身体中から覇気をまき散らす。その覇気をまともに喰らったドワーフ族の国主と周りに居た文官たちは口から泡を吹いて、ひとりまたひとりとその場で倒れ伏せることとなる。そして、そんな彼らに向かって、覇王は股間の中心部から八岐大蛇やまたのおろちを伸ばし、彼らを言葉通りに丸のみしはじめる……。

 それから数時間後、ドワーフ族の国主に代わり、宰相:アンドレ=ボーマンが儀式の間に神官プリーストたちの嫁と娘を集めさせる。その中には神託の巫女と呼ばれる女性も居た。彼女たちは一様に白い薄手の衣服を羽織っていた。水に濡れれば、その薄手の衣服はスケスケになってしまうほどの頼りなさしか持ち合わせていなかった。

 儀式の間に集まった神官たちの嫁と娘たちは合わせて100人ほどであった。そして、彼女らの代表として神託の巫女が覇王:シノジ=ダイクーンに向かって、土下座を敢行していた。娘たちは覇王の前に立たされて、恐怖に心を蝕まれていた。誰しもが隣に立つ女性にしがみつき合っていた。そんな彼女たちを救うべく、神託の巫女が進んで覇王にご奉仕をすると言い出したのである。

「ほぅ? 神託の巫女と呼ばれるからには、そういうことには疎いと思っているのだが? その方、男のモノを受け入れた経験は持っているのか?」

 覇王:シノジ=ダイクーンはニヤニヤと含みを持った笑みを顔に浮かべつつ、今だに土下座をし続ける神託の巫女を挑発してみせる。神託の巫女はクッ! と唸りつつも、自分の顔付近で鎌首をもたげる八岐大蛇やまたのおろちにきつい目線を送ってみせる。しかし、次の瞬間、神託の巫女の顔はギョッとした顔つきへと変化してしまう。

「なんたることをっ! 覇王よっ! 其方、国主たちを喰らってしまったのですか!?」

「ククッ! 国を治めるには女王こそが相応しい也。今の世を治めていた国主や文官たちは、われの傷を癒すために、我が体内に取り込んでやった也」

 神託の巫女が驚いたのは覇王の言葉でなく、八岐大蛇やまたのおろちの先端部分がマーロン=ダイクーンの顔そのものに変わっていたことである。マーロン=ダイクーンの顔をしたソレはまるで恍惚とした表情となっており、覇王の一部となったことを喜んでいるかのようでもあった。

 覇王:シノジ=ダイクーンは自分の傷を癒すための血肉を求めた。そして、その代償として選ばれたのが現国主であるマーロン=ダイクーンそのものであったのだ。神託の巫女は土下座したままにギリッ! と歯を強く噛みしめることとなる。神託の巫女ならばこそ、気づいていたのだ。覇王が次に求めるのは神力ちからであることを。

 神官プリーストたちの嫁や娘たちをこの儀式の間に呼び集めたのは、自分たちに罪を償わせることが真ではなかった。その身に少しばかりでも宿っている神力ちからを奪うためであると。自分だけが慰みモノになれば済む話では無いと察するが時すでに遅し。覇王は八岐大蛇やまたのおろち首級くびを100倍に増やし、儀式の間に集まる神官プリーストたちの嫁や娘たちに向かって放ったのである。

「お待ちくだされっ! わらわが覇王様を満足させますゆえにっ!」

「ふんっ! 生娘がどうやってわれを喜ばせるのか? 図々しいにも程がある也ッ。貴様などに相手をしてもらうくらいなら、街にいる娼婦のほうがよっぽどマシと言うものよっ!」

 覇王はそう言うと、神託の巫女には手を出さずに、彼女の後ろで震えあがっていた100人の女性たちに向かって、魔の触手を伸ばしていく……。
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