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第5章:4種族の邂逅

第8話:餌付けされる女王

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「ワタクシはハジュン=ダイロクテンさんに感謝を申し上げますわ。ここにいる殿方と来たら、ワタクシの気持ちを察してくれないんですもの」

「って……。腹が空いてるなら、素直に言えばいいじゃねえか……。アニキ、何でそんなクソ女に施しを与えてんだよ……」

 イヴァン=アレクサンドロヴァとしては、まったくもって面白くない展開であった。味方であるはずのハジュン=ダイロクテンが憎きサイズのおっぱいだと常日頃、怒り心頭であるのに、その邪悪なおっぱいの持ち主であるアンジェラ=キシャルの気持ちを察していること自体が不快であった。イヴァン=アレクサンドロヴァは付き合ってられるかとばかりに、バンッ! と両手で長机を叩く。そして椅子から立ち上がり、皆が集う本部から足早に退出する。

 そして、本部の外で待機していた亜人族の三大闘士であるジェニース=マカロフ、ゲラーシー=ジェコフ、レオニート=ローセフを付き従えて、亜人族の兵士たちが待機している場所へと移動開始するのであった。

「あらら……。イヴァンが怒って、退出してしまったのでッチュウ。ハジュン、後で弁解しておくでッチュウよ?」

「30後半へ足を踏み入れたというのに、イヴァンくんはまだまだ青いですねえ。まあ、明後日の朝には事情を説明しておきますよ。先生にはヤルことがまだありますので」

 ウィル・オー・ウィスプのコッヒロー=ネヅは、はあやれやれとため息をついてみせる。彼は気づいていたのだ。ハジュン=ダイロクテンの小僧がエルフ族の女王を餌付けしているのを。裏でこっそりハジュン=ダイロクテンが自分たちの味方を増やそうとしているのを決して見逃していなかったのだ。しかし、イヴァン=アレクサンドロヴァはそのことにまったく気づいていなかったのである。こればかりは年の功としか言いようがない。

 魔族の代弁者であるハジュン=ダイロクテンは202歳。魔族の宰相であるコッヒロー=ネヅは彼の3倍以上も歳をとっている。そんな二人に比べれば、亜人族のおさやニンゲン族の首魁だけでなく、エルフ族の女王ですら小僧、小娘という扱いなのである。エルフ族の女王:アンジェラ=キシャルの年齢がいくつなのかは、失礼に値するので、ここで語ることは無い。

「ふう……。ビスケットのような乾パンばかりではますますお肉が食べたくなってしまいすわね。イヴァンさんが退出してしまいましたし、今日はこの辺りでお開きにしませんこと?」

「う、うむ……。アンジェラ=キシャル殿には遠路はるばる、ここまで来てもらったばかりで、さぞかしお疲れでござろう。明日の昼に、改めて4種族の代表者たちを集めて、これからのことに関して、打ち合わせをおこなうことにしよう」

 タムラ=サカノウエはそう言うと、1日余りでエルフ族が支配するラ・ムー国の宮殿からここまでやってきてくれたアンジェラ=キシャルに深々と頭を下げる。それに対して、アンジェラ=キシャルは軽い会釈で返す。そして、椅子から立ち上がり、本部から退出してしまう。その後を彼女の付き人とエルフ族の総指揮官であるカミラ=ティアマトが続く。

 しかしながら、アンジェラ=キシャルは本部の外に出るや否や、用を思い出したとばかりに付き人たちとカミラ=ティアマトに、先にエルフ族の幹部たちのために建てられた小屋へ向かっておくようにと伝える。はぁ……と生返事をする付き人たちであったが、気まぐれで有名なアンジェラ=キシャルであったために、特に気にもせずにカミラ=ティアマトと共にその小屋へ向かっていってしまう。

 アンジェラ=キシャルは皆と別れた後、ニンゲン・エルフ連合軍だけでなく、魔族・亜人族連合軍の陣中を視察しだすのであった。そして、本部から外に出てから数十分後には目的の人物に出くわし、彼女らは近くの森の中に姿を消していく……。

「嗚呼……。ハジュン=ダイロクテン様。お待ちしておりましたわ……。ワタクシ、お肉を頬張りにきましたのよ……」

「へっへっへ。これはいけない女王様ですね。先生のお肉棒が欲しくてたまらなかったのでしょう?」

 ハジュン=ダイロクテンはいつもはお調子者でありながら紳士然としていたが、今は単純に下衆な馬鹿と化していた。そして、ズボンのベルトを外すは良いが、そこで手を止めてしまうのであった。そして、上から目線でアンジェラ=キシャルが何をすべきかを言い出す始末である。

「ほら、お肉がほしいのであれば、自分の手で先生のズボンとパンツをずり降ろしてくれて良いのですよ?」

 アンジェラ=キシャルはそう言われ、顔から火が出そうなほどの朱色に染め上げるのであった。そして、おずおずと両膝を地面につけて、ハジュン=ダイロクテンのズボンにぎこちない手つきで両手を回していく。彼女は相手に奉仕させることばかりしてきたので、自分から進んで、こういうことをしてきたことが無いことをハジュン=ダイロクテンに伺わせるには十分な動きであった。

 それに嗜虐心を感じたハジュン=ダイロクテンは、彼女をあらん限りに辱めようという考えに至る。そして、彼女の両の手首を自分の両手で掴み、彼女の両腕の自由を奪ってしまう。そして、中途半端にずり落ちているズボンを両足を巧みに動かし、下はパンツ一丁の姿へと変えるのであった。

「うう……。意地悪なのですわ。ハジュン様の肉汁したたるお肉棒を食べたいの……」

 彼女の眼の前にある紫色の布切れの先には、彼女が口いっぱいに頬張りたいお肉棒が隠されている。だが、殿方というのは、こういうシチュエーションならば、自己主張をおおいに発揮するはずなのに、そうではなかった。彼女は悲しい気分になり、ハジュン=ダイロクテンに哀願するような表情を見せる。

「何故、ワタクシに屹立するお肉棒を見せてくれないの?」

「それは、貴女が先生に対して、常日頃、生意気な口を利くからです。だから、先生は萎えているのです」

「ワタクシが悪いと言うの?」

「はい、そうです。だから、貴女にはその憎たらしい言葉を吐く口を用いてどうにかしなければならないってことです。簡単でしょ?」

 ハジュン=ダイロクテンはどこかの酒場でたむろするゴロツキかのような台詞を吐く。もちろん、これは演技であり、普段の彼ならば、女性に対して必要以上に辱めをおこなうことは稀である。例外として、ハジュン=ダイロクテンが女性に対して、このような下衆も下衆な態度を取る時は、たいていの場合、女性側の性癖に由来するのだ。

 ハジュン=ダイロクテンは魅了チャームの魔法を使い、女性を自分のとりこにする。しかし、この魔法には副作用があり、異性の性癖を強化するのだ。そして、アンジェラ=キシャルの強化された性癖は『言葉責めを受ける』ことだったのだ。普段は言葉責めをする側であるのに対して、ネンゴロな関係になる相手に対しては、逆に罵ってほしいと願ってやまないアンジェラ=キシャルであった……。
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