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第2章:国主たちの野望

第3話:南北朝時代

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 亜人族のおさであるイヴァン=アレクサンドロヴァはニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエの一言にウグッ! と喉を詰まらせることになる。このやり取りは何度目になるかわからないほど繰り返されてきたことだ。第2次テクロ大戦は南北朝の争いが事の発端であった。今から180年前、みかどの本家の血筋が途絶え、庶子の血筋に乗り換えなければならなくなった。万世一系を唱えてきたみかどの本家であったが、その本家では子に恵まれずに、ついにその歴史に幕を閉じることとなる。

 そしてスペアとして機能するはずの庶家が互いに正統性を主張する。これにより、聖地は2分化し、それぞれにみかどを名乗り、南北朝の争いへと発展する。そして細やかな事情はさておき、それが第2次テクロ大戦への引き金となる。それを反省し、みかど自身が後継者を決めることは廃止されることとなる。そもそもの原因が本家が庶家にどうしても正統性を譲らなかったことからだ。それゆえに第2次テクロ大戦が終わったあと、各種族の代表者が選帝侯となり、選帝侯たちによる『話し合い』で次帝が決まるように変わっていったのである。

 だが、このシステムにも欠点があった。南北朝に分かれた庶家はそれぞれが本家となってしまったからには、どちらにも正統性が存在することとなる。北朝は魔族・亜人族が支援し、南朝はニンゲン・エルフ族が支援する形となった。だが、どちらか一方を廃嫡するまでには至らずに、今日まで混乱の種を残すこととなる。

 そして、イヴァン=アレクサンドロヴァの言う通り、みかどの代が変わるごとに、北朝、南朝は交代制でみかどを輩出してきた。ガリウス帝はエルフ族出身であることから、次は北朝のみかどの血筋が次帝となることは正しい。しかし、ここに落とし穴があったのだ。エルフ族の女王であるアンジェラ=キシャルは、南北朝に分かれてしまった正統性を一本に絞るために、策を講じていたのである。

 今から30年前に南朝ではみかどの血筋を強化するために、分家を作ってしまったのだ。180年前のことがもう1度起きるかもしれないということで、南朝をさらに2つに分けてしまったのである。その南朝の血筋のスペアを支援したのがニンゲン族であった。そして、ここで交代制の問題が深く関わってくる。

「魔族・亜人族が推す北朝に次帝を任せるのは、今までの慣習から考えれば妥当なのは認めるのでござる。だが、交代制と言うのであれば、新規に興したニンゲン族が擁する南朝の分家にも次帝になる権利が存在するはずでござる」

 これは詭弁と言っても過言ではなかった。魔族・亜人族から見れば、どちらも南朝であるはずなのにだ。それなのに、南朝同士でみかどの座を譲り合うと言ってきたのと同意である。これでは北朝の存在を揺るがしかねない自体となってしまっている。しかし、強く反発もできない魔族・亜人族であった。そもそも、交代制というのがおかしいのは事実なのである。その時代時代に有能な次帝に座を譲るほうが、世のひとびとも安心するはずなのだ。

 だが、民心の安寧よりも、高みから各種族を支配する者たちの視点は違っていた。つつがなく次帝選抜を決めることで、世の乱れを最小限に抑えることこそが肝要であるという結論に達していたのである。確かに有能な人物がテクロ大陸の象徴となれば、民心は穏やかになるのであろう。だが、そうすることによって、北朝、南朝どちらかに有能な人物が続くことになれば、それは要らぬ争いを産む結果となる。だからこその交代制なのである。

 そして、それに今更になって異を唱えるべく、30年前から準備をおこなってきたのがエルフ族の女王であるアンジェラ=キシャルだったのだ。彼女のいやらしいところは、彼女の上半身にたわわに実るGカップのおっぱいだけではなかったのである。魔族の代弁者であるハジュン=ダイロクテンは、ニンゲン・エルフ族が南朝に分家を作ったことに関して、南朝内で争いごとが起きるだけだと嘲笑していた。しかし、それから30年の時を経て、ハジュン=ダイロクテンはアンジェラ=キシャルを小便臭いエルフの小娘と侮っていたことに後悔することになる。

「おーほほっ! ハジュンとイヴァンの苦々しい顔を見ていると、ワタクシ、あそこが潤! と濡れてきそうですわよ!」

 アンジェラ=キシャルは孔雀羽の扇子で口元を隠しながら大笑いするが、あまりにもの痛快このうえないといった感じで笑うために、その扇子の存在は無駄となってしまっていた。ハジュン=ダイロクテンとイヴァン=アレクサンドロヴァは彼女の色気香るぷっくりとした唇を見て、余計に腹立たしい気持ちになってしまう。そして捨て台詞の如くにイヴァン=アレクサンドロヴァが口を開く。

「クッ! 言わせておけば、いけしゃあしゃあと……。その大きく開いた口に私の汚い肉棒をねじ込んで、無理やりその口を塞いでやってもいいのだぞ!」

「あらあら? 貴方の短小包茎のおちんこさんで、どうやってわたくしのブラックホールを塞ぐというのかしら?」

 エルフ族の女王という存在があまりにも口汚い返しをするものだから、彼女の右隣りに立つ彼女の補佐があるじの頭頂部に向かって、左の手刀を叩きこむことになる。

「アンジェラ様、今のはいけません。ブラックホールははしたなさ過ぎます。そこはバキュームと言うべきです」

 エルフ族が支配する国の宰相であるバーラ=イシュタルが厳かな雰囲気を醸し出しならが、彼女に訂正を促すこととなる。彼女はあるじであるアンジェラ=キシャルとは対極の位置に存在していた。高飛車であり、かつ、暴走しがちなアンジェラ=キシャルを諫める立場にあるのがバーラ=イシュタルである。そして、バーラ=イシュタルはアンジェラ=キシャルと対極にあるおっぱいのサイズであった。まるでそれは切り立った崖のように垂直降下していたのだ。それゆえに他国ではアンジェラ=キシャルが自分の補佐に回るべき胸の栄養を奪い取ったとまで揶揄されていた。

「ははっ! バーラ=イシュタル殿は大変でござるな。宰相があるじを諫める立場であることをよくわかっているのでござる。拙者、バーラ殿におちんこさんが付いていたならば、自分の小姓としてもらい受けたかったのでござる」

 ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエが朗らかな笑顔でバーラ=イシュタルを褒めたたえる。彼の言葉は率直そのものであった。それゆえにストレートにバーラ=イシュタルにの左胸に突き刺さる。バーラ=イシュタルは少しだけ顔を赤らめつつも、自分に賛辞を送ってくれたタムラ=サカノウエに対して、軽く会釈するのであった。
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