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第2章:国主たちの野望
第2話:純血主義
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エルフ族の女王であるアンジェラ=キシャルがそう言うと、自分の御自慢のGカップを薄い布地の上から抱え込むように、わざわざと強調してみせる。その所作には魔族の代弁者であるハジュン=ダイロクテンだけでなく、亜人族の長、ドワーフ族の国主も鼻の下をだらしなく伸ばしてしまう。そして、それぞれに補佐たちに頭を右手ではたかれて、ゲフンゲフンとわざとらしい咳をつくこととなる。
しかしながら、その中でも特に異質な存在が居た。ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエだ。彼の右隣り、やや離れた位置にエルフ族の女王が豊満な果実をゆっさゆっさと両腕で揺らしてくれているというのに、胸の前で腕を組み、さらには眼を閉じ、見向きもしないのである。これでは彼の後ろに仕えるニンゲン族の宰相であるマサユキ=サナダのほうがスケベだとなってしまう。本来、主君を諫めるべき存在である彼のほうが、エルフ族の女王のおっぱいに釘付けになってしまうという逆の結果がおきる。
「タムラ=サカノウエ殿は、本当にいけずなのですわ。ワタクシ、女としての自信を失くしてしまいかねませんわ」
エルフ族の女王であるアンジェラ=キシャルはさも残念といった感じで、自分のおっぱいを揺らすのをやめてしまう。本来なら、一番にこのGカップに釘付けになってほしい相手がちっとも振り向いてくれないためだ。タムラ=サカノウエもハイエルフのアンジェラ=キシャルと同様、純血種仲間であった。そんな彼らであったが、ニンゲンとエルフの間に生まれる子供たち、いわばハーフエルフには寛容な存在であった。亜人族としては納得できない話であったが、亜人族はどちらかと言えば、魔族との混血児が多い。だからこそ、そもそもが相容れない存在であることは致し方ないと言えよう。
簡単に言えば、ニンゲンとエルフは親戚同士であり、魔族と亜人族も同様にこの2種族間で親戚同士なのである。だからこそ、ニンゲン・エルフ族は昔から付き合いを持ち、魔族・亜人族のことを毛嫌いしてきたという歴史を持っている。だが、それを言うなら、魔族・亜人族も同様であった。たまに相反する種族同士で結婚し、子供を育むことがあるが、やはり純血主義を謳うニンゲン・エルフ族の国では住みにくい。だからこそ、信じるモノが違う他者に対しても、やや寛容である魔族・亜人族の国で住まうことになる。
それが災いし、ニンゲン・エルフ族は血筋を重要視していくことになる。エリートと呼ばれる連中は、国の高い地位を席巻していまっている。言い換えれば、家族経営を国内の政治においてもやってしまっていることになる。だが、それにも利点は十分にあり、純血主義だからこその一枚岩となっている。だからこそ、ニンゲン・エルフ族の国では内乱が起こりにくい文化となっている。もしも、誰かが下剋上を果たそうとしても、家族間の喧嘩として扱われ、処分は甘々になることは否めない。しかしながら、反旗を翻す者に対して、異常に厳しい態度を取らないことにより、内乱は起こったとしても、すぐに収まることとなる。
だが、他者に寛容でありながらも、自ら出た錆に厳しい処分を下す魔族・亜人族は逆の結果となる。これは歴史が証明しており、第2次テクロ大戦では、魔族・亜人族が主役となったことからもうかがい知れるのであった。ニンゲン・エルフ族の文化だけでなく、魔族・亜人族の文化にも長所と欠点があるということだ。文化的にどちらも成熟してはいるが、争いが起きることで、そういった問題点が浮き彫りになってしまうのは仕方ないのだろう。
「ふぅ……。可愛い男の娘が拙者に、あ~~~んして? とせがんでくる夢を見ていたのでござる。マサユキよ。いつになったら、拙者の下にテクロ大陸一番に可愛い小姓をプレゼントしてくれるのでござるか?」
なんと、ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエは、喧々囂々と言い合う他の種族たちを差し置いて、腕組みをし、こっくりこっくりと頷いてみせていたのは、単に居眠りをかましていただけであっただけなのだ。その事実を知った他の選帝侯たちは、ずっこけて椅子の上から滑り落ちてしまいそうになる。なんとか態勢を整え直したハジュン=ド・レイが円卓にしがみつくような恰好でタムラ=サカノウエに向かって文句を言ってしまう。
「あのですね……。次帝を決める選帝侯会議において、まさか居眠りなんかしますかね!? どの種族も自分の国に利権をもってくるために言葉による刃を交えている真っ最中なんですよ?」
「そんなことを言われても困るのでござるよ、ハジュン殿。だいたい、その会議を連日開きながら、早1週間が過ぎようとしているのでござる。ここまできたら、クジ引きかジャンケンで決めてしまったほうがマシなのでござる」
ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエはさも面倒くさそうな表情で右手で頭をボリボリと掻いてしまう。せっかく、意気込んで戦でもこれから始まるのかというようなヤマダイ国特有の武具に身を包んだタムラ=サカノウエであるが、いざ蓋を開いてみれば、各国の代表者たちは醜い言葉の応酬を繰り返すだけである。そんなことに真面目に付き合ってられるかとばかりに、居眠りをかましたタムラ=サカノウエであった。
円卓に集まる各国の代表たちも、このままではらちが明かないのはわかりきっていた。だが、言葉を重ねぬうちに決議へと移ってしまえば、それこそ、決定的な溝がニンゲン・エルフ族と魔族・亜人族の間に出来上がることは自明の理であった。なるべく穏便な解決方法を探るための選帝侯会議なのである。
しかしながら、選帝侯たちが集まってから1週間が経とうとも、話の方向性すら決まらないのは事実であった。だからこそ、誰しもがここで何かしらの一言を待っていたとも言って良いだろう。いたずらに時間ばかりが過ぎ去り、各国の代表たちの顔にも疲れが浮かんできていた。
「タムラ殿。私が思うには、ガリウス30世はニンゲン・エルフ族から選ばれたのです。ならば、不公平の無いように次帝は魔族・亜人族が推す人物を貴方も推してくれれば良いと思います」
タムラ=サカノウエにそう意見するのは亜人族の長であるイヴァン=アレクサンドロヴァであった。彼の言うことには一応、筋が通ったモノであり、交代制で次帝を担ごうという提案であった。だが、エルフ族の女王はそれを頑なに拒んでいた。ならば、彼女の同胞とも言って良いニンゲン族の首魁が簡単に首を縦に振ることが出来ないのも仕方がなかったことである。
「拙者はイヴァン=アレクサンドロヴァ殿の言いが一番、理にかなっていることはわかっているのでござる。だが、恨むことなかれ。アンジェラ=キシャル殿が、拙者たちニンゲン族から次帝を出しても良いと提案してくださっているのでござる。イヴァン=アレクサンドロヴァ殿には、これ以上の好条件を出せるのでござるか?」
しかしながら、その中でも特に異質な存在が居た。ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエだ。彼の右隣り、やや離れた位置にエルフ族の女王が豊満な果実をゆっさゆっさと両腕で揺らしてくれているというのに、胸の前で腕を組み、さらには眼を閉じ、見向きもしないのである。これでは彼の後ろに仕えるニンゲン族の宰相であるマサユキ=サナダのほうがスケベだとなってしまう。本来、主君を諫めるべき存在である彼のほうが、エルフ族の女王のおっぱいに釘付けになってしまうという逆の結果がおきる。
「タムラ=サカノウエ殿は、本当にいけずなのですわ。ワタクシ、女としての自信を失くしてしまいかねませんわ」
エルフ族の女王であるアンジェラ=キシャルはさも残念といった感じで、自分のおっぱいを揺らすのをやめてしまう。本来なら、一番にこのGカップに釘付けになってほしい相手がちっとも振り向いてくれないためだ。タムラ=サカノウエもハイエルフのアンジェラ=キシャルと同様、純血種仲間であった。そんな彼らであったが、ニンゲンとエルフの間に生まれる子供たち、いわばハーフエルフには寛容な存在であった。亜人族としては納得できない話であったが、亜人族はどちらかと言えば、魔族との混血児が多い。だからこそ、そもそもが相容れない存在であることは致し方ないと言えよう。
簡単に言えば、ニンゲンとエルフは親戚同士であり、魔族と亜人族も同様にこの2種族間で親戚同士なのである。だからこそ、ニンゲン・エルフ族は昔から付き合いを持ち、魔族・亜人族のことを毛嫌いしてきたという歴史を持っている。だが、それを言うなら、魔族・亜人族も同様であった。たまに相反する種族同士で結婚し、子供を育むことがあるが、やはり純血主義を謳うニンゲン・エルフ族の国では住みにくい。だからこそ、信じるモノが違う他者に対しても、やや寛容である魔族・亜人族の国で住まうことになる。
それが災いし、ニンゲン・エルフ族は血筋を重要視していくことになる。エリートと呼ばれる連中は、国の高い地位を席巻していまっている。言い換えれば、家族経営を国内の政治においてもやってしまっていることになる。だが、それにも利点は十分にあり、純血主義だからこその一枚岩となっている。だからこそ、ニンゲン・エルフ族の国では内乱が起こりにくい文化となっている。もしも、誰かが下剋上を果たそうとしても、家族間の喧嘩として扱われ、処分は甘々になることは否めない。しかしながら、反旗を翻す者に対して、異常に厳しい態度を取らないことにより、内乱は起こったとしても、すぐに収まることとなる。
だが、他者に寛容でありながらも、自ら出た錆に厳しい処分を下す魔族・亜人族は逆の結果となる。これは歴史が証明しており、第2次テクロ大戦では、魔族・亜人族が主役となったことからもうかがい知れるのであった。ニンゲン・エルフ族の文化だけでなく、魔族・亜人族の文化にも長所と欠点があるということだ。文化的にどちらも成熟してはいるが、争いが起きることで、そういった問題点が浮き彫りになってしまうのは仕方ないのだろう。
「ふぅ……。可愛い男の娘が拙者に、あ~~~んして? とせがんでくる夢を見ていたのでござる。マサユキよ。いつになったら、拙者の下にテクロ大陸一番に可愛い小姓をプレゼントしてくれるのでござるか?」
なんと、ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエは、喧々囂々と言い合う他の種族たちを差し置いて、腕組みをし、こっくりこっくりと頷いてみせていたのは、単に居眠りをかましていただけであっただけなのだ。その事実を知った他の選帝侯たちは、ずっこけて椅子の上から滑り落ちてしまいそうになる。なんとか態勢を整え直したハジュン=ド・レイが円卓にしがみつくような恰好でタムラ=サカノウエに向かって文句を言ってしまう。
「あのですね……。次帝を決める選帝侯会議において、まさか居眠りなんかしますかね!? どの種族も自分の国に利権をもってくるために言葉による刃を交えている真っ最中なんですよ?」
「そんなことを言われても困るのでござるよ、ハジュン殿。だいたい、その会議を連日開きながら、早1週間が過ぎようとしているのでござる。ここまできたら、クジ引きかジャンケンで決めてしまったほうがマシなのでござる」
ニンゲン族の首魁であるタムラ=サカノウエはさも面倒くさそうな表情で右手で頭をボリボリと掻いてしまう。せっかく、意気込んで戦でもこれから始まるのかというようなヤマダイ国特有の武具に身を包んだタムラ=サカノウエであるが、いざ蓋を開いてみれば、各国の代表者たちは醜い言葉の応酬を繰り返すだけである。そんなことに真面目に付き合ってられるかとばかりに、居眠りをかましたタムラ=サカノウエであった。
円卓に集まる各国の代表たちも、このままではらちが明かないのはわかりきっていた。だが、言葉を重ねぬうちに決議へと移ってしまえば、それこそ、決定的な溝がニンゲン・エルフ族と魔族・亜人族の間に出来上がることは自明の理であった。なるべく穏便な解決方法を探るための選帝侯会議なのである。
しかしながら、選帝侯たちが集まってから1週間が経とうとも、話の方向性すら決まらないのは事実であった。だからこそ、誰しもがここで何かしらの一言を待っていたとも言って良いだろう。いたずらに時間ばかりが過ぎ去り、各国の代表たちの顔にも疲れが浮かんできていた。
「タムラ殿。私が思うには、ガリウス30世はニンゲン・エルフ族から選ばれたのです。ならば、不公平の無いように次帝は魔族・亜人族が推す人物を貴方も推してくれれば良いと思います」
タムラ=サカノウエにそう意見するのは亜人族の長であるイヴァン=アレクサンドロヴァであった。彼の言うことには一応、筋が通ったモノであり、交代制で次帝を担ごうという提案であった。だが、エルフ族の女王はそれを頑なに拒んでいた。ならば、彼女の同胞とも言って良いニンゲン族の首魁が簡単に首を縦に振ることが出来ないのも仕方がなかったことである。
「拙者はイヴァン=アレクサンドロヴァ殿の言いが一番、理にかなっていることはわかっているのでござる。だが、恨むことなかれ。アンジェラ=キシャル殿が、拙者たちニンゲン族から次帝を出しても良いと提案してくださっているのでござる。イヴァン=アレクサンドロヴァ殿には、これ以上の好条件を出せるのでござるか?」
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