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第20章:巣立ち
第8話:イシス
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「そう憤る前に、私の話を聞いてくれませんか? でなければ、こちらも実力行使せざるをえなくなります」
アンドレイ=ラプソティはそう言うと、清浄な空気と淀んだ空気を同時に体内から体外へと吐き出す。それと同時にアンドレイ=ラプソティの背中には6枚羽が現出する。だが、アンドレイ=ラプソティの背中の羽の半分が黒く染まっており、彼が『天界の十三司徒』と呼ばれていたとは思えない姿となっていた。
「いくつか誤解を解いておきたいと思います」
「誤解? てめえが無辜の民を塩の柱にしたのは『誤解』のせいなのか!?」
「あれはたまたま、私の羽に映る魔眼と眼が合ってしまった不幸な人々です。この地まで飛んできたは良いが、昔の記憶が脳裏をよぎり、羽から神力を放出しすぎてしまいして。あくまでも不可抗力だったんですよ。わたしのこの気持ちをわかってくれますよね?」
アンドレイ=ラプソティは自分のやったことを、自分のせいでは無いとでも言いたげな言い訳をしだす。いくら天界の住人が、地上界に住む人々を常々軽んじる性質を持っているとしても、そこまで他人事のようには言わないはずであった、以前のアンドレイ=ラプソティであったならば。
しかしながら、今のアンドレイ=ラプソティは以前のアンドレイ=ラプソティでないことは、彼の姿から見ても自明の理であった。アンドレイ=ラプソティは話を続けていいですか? とベリアルに断りを入れる。ベリアルはアンドレイ=ラプソティに対しての敵愾心を解かぬままに、アンドレイ=ラプソティが口から次に出す言葉を待つのであった。
「やれやれ……。私は今の時点では、ベリアル、アリス=アンジェラ、そして、神聖マケドナルド帝国と喧嘩をする気はありません」
「今のところってか。じゃあ、いつかはやりあうってことだな!?」
「そう思ってもらえると助かります。これからどうなるかは、神聖マケドナルド帝国の二代目の帝となった、ミハエル=アレクサンダー帝と会見を開いた後になります」
「チュッチュッチュ。不可解なことばかりなのでッチュウ。まるでどこぞの国の代表者かのような口ぶりなのでッチュウ。もしかして、アンドレイ様は魔界に属する堕天使となってしまったのでッチュゥか?」
ベリアルの横へと進んできたのが天界の騎乗獣モードに変身しているコッシロー=ネヅであった。彼はベリアルと同様に、アンドレイ=ラプソティと事を構える気で満々だった。アンドレイ=ラプソティはやれやれ……と嘆息しつつ、首級を左右に振ってみせる。
「コッシロー殿の言いたいところは、こうでしょう。私が堕天使になり、そして、悪魔皇:サタンが派遣した使者として、この場にやってきたと」
「そうでッチュウ。未だ天使性の名残は残しているようでッチュウけど、悪魔の匂いもプンプンと匂ってくるのでッチュウ!」
「良い所を嗅ぎ分けているようですが、実際は違います。今の私は『天魔混合』状態です。それゆえに、天使や悪魔よりも、数段上の高い位置にいます」
「戯言はもう結構なのデス! シャイニング・マグナム・パンチなのデス!」
「ぶべぼぉぉぉ!?」
アリス=アンジェラのその一撃はまさに『奇襲』という言葉がぴったり当てはまる。今の今まで、ベリアルたちにアンドレイ様の相手を任せていたが、アリス=アンジェラはひっそりと牙を研いでいたのである。アンドレイ=ラプソティは間抜けなことに、アリス=アンジェラの炎に包まれた右の拳で、左頬をぶち抜かれることになる。
「いたたた……。腕をあげましたね。2年前の私なら、貴女のグーパンで私は今頃、昇天していたでしょう」
「あんまり利いてないのデス! ボクは手加減をした覚えがないというノニ!?」
「ふっふっふ! 今のオシリス様は昔のなよっとしていたアンドレイ様とは違うんだよっ!」
「ふにゃちんからびっきびきくらいに進化しましたの。いえ、正しくは『神化』といったほうが正しいわ」
アンドレイ=ラプソティの周りを固める7人の亜人たちが、アンドレイ=ラプソティの変化を自慢してみせる。アリス=アンジェラはムムムと唸り、もう一度、右腕をグルングルンと回し始める。しかしながら、アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラに殴られたというのに、微笑ましい表情で、アリス=アンジェラを見つめる。まるで愛しい自分の娘に送るまなざしであった。アリス=アンジェラはその視線を気持ちの悪いと受け止める。
アリス=アンジェラの眉間のシワが深く刻まれていけばいくほど、それをあやすかのように、アンドレイ=ラプソティの表情は緩んでいく。アリス=アンジェラはこの感覚を2年前に味わっている。どうしようもない戦力差を持つ相手が向けてくる余裕とも言える態度であった。
「貴女の神力では、私を打倒することなど無理です。どうか、私の配下として、その腕力を発揮してくれませんか?」
「年頃の女の子に腕力を期待するんじゃないのデス! ゴージャス・マグナム・パンチなのデス!」
アリス=アンジェラの右腕の肘辺りまでが真っ赤な炎に包まれていた。アリス=アンジェラは会話をするだけで、イラつきを覚えてしまう今のアンドレイ様をぶっ飛ばして、改心させなければならないという激情に駆られる。その激情が右腕に宿り、炎は緋喰い鳥の形となる。
「ボクの渾身の一撃を受けと……メタ!? しかも、アンドレイ様でなく、ミサさんが!?」
アリス=アンジェラの動揺は激しすぎた。この一撃をアンドレイ様に受け止められるなら、まだショックは小さかったかもしれない。だが、アンドレイ様の前へと割り込んできたミサさんが、両腕でクロスアームブロックを繰り出し、その両腕が交差する部分で、完全にアリス=アンジェラのゴージャス・マグナム・パンチの衝撃を吸収しきってしまったのだ。
「ふっふっふっ! 今のミサはミサであって、ミサではありませんニャン! アンドレイ様の神力により、あちきも『神化』したのですニャン! あちきのことはこれからは、『イシス』と呼ぶが良いのですニャン!!」
「イシス!? 知恵袋のコッシローさん、解説をお願いしマス!」
「そこでボクに振るんじゃないのでッチュウ! でも、心当たりはあるのでッチュウ。かつて、創造主:Y.O.N.N様がお創りになろうとしていたけど、天魔大戦のごたごたでお流れになってしまった計画にのぼっていた神の名前なのでッチュウ!」
「さすがはコッシローさんですね。腐っても鯛とはこのことでしょう。神の御座と呼ばれるケルビムでしたね。何故、貴方がそれを知っているのか、問いただしたいところですが……」
アンドレイ=ラプソティがコッシロー=ネヅに対して、警戒心を露わにする。コッシロー=ネヅは蛇に睨まれたカエルが如くに、縮み上がるのであった。そんなコッシロー=ネヅを庇うかのように、彼の前に出たのがベリアルであった。
「そう言えば、そんなこともあったっけな。第2次天魔大戦が起きた理由のひとつが、それだったはずだ。うちの悪魔将軍が副産物的にその計画を御破算させたやつだ」
「ベリアル、貴方が知っていたとは意外です。場をひっかき回す役割を与えられている貴方は危険すぎる存在です。副産物的とは言っていますけど、本来の目的はそこにあったのかもしれませんから」
アンドレイ=ラプソティはそう言うと、清浄な空気と淀んだ空気を同時に体内から体外へと吐き出す。それと同時にアンドレイ=ラプソティの背中には6枚羽が現出する。だが、アンドレイ=ラプソティの背中の羽の半分が黒く染まっており、彼が『天界の十三司徒』と呼ばれていたとは思えない姿となっていた。
「いくつか誤解を解いておきたいと思います」
「誤解? てめえが無辜の民を塩の柱にしたのは『誤解』のせいなのか!?」
「あれはたまたま、私の羽に映る魔眼と眼が合ってしまった不幸な人々です。この地まで飛んできたは良いが、昔の記憶が脳裏をよぎり、羽から神力を放出しすぎてしまいして。あくまでも不可抗力だったんですよ。わたしのこの気持ちをわかってくれますよね?」
アンドレイ=ラプソティは自分のやったことを、自分のせいでは無いとでも言いたげな言い訳をしだす。いくら天界の住人が、地上界に住む人々を常々軽んじる性質を持っているとしても、そこまで他人事のようには言わないはずであった、以前のアンドレイ=ラプソティであったならば。
しかしながら、今のアンドレイ=ラプソティは以前のアンドレイ=ラプソティでないことは、彼の姿から見ても自明の理であった。アンドレイ=ラプソティは話を続けていいですか? とベリアルに断りを入れる。ベリアルはアンドレイ=ラプソティに対しての敵愾心を解かぬままに、アンドレイ=ラプソティが口から次に出す言葉を待つのであった。
「やれやれ……。私は今の時点では、ベリアル、アリス=アンジェラ、そして、神聖マケドナルド帝国と喧嘩をする気はありません」
「今のところってか。じゃあ、いつかはやりあうってことだな!?」
「そう思ってもらえると助かります。これからどうなるかは、神聖マケドナルド帝国の二代目の帝となった、ミハエル=アレクサンダー帝と会見を開いた後になります」
「チュッチュッチュ。不可解なことばかりなのでッチュウ。まるでどこぞの国の代表者かのような口ぶりなのでッチュウ。もしかして、アンドレイ様は魔界に属する堕天使となってしまったのでッチュゥか?」
ベリアルの横へと進んできたのが天界の騎乗獣モードに変身しているコッシロー=ネヅであった。彼はベリアルと同様に、アンドレイ=ラプソティと事を構える気で満々だった。アンドレイ=ラプソティはやれやれ……と嘆息しつつ、首級を左右に振ってみせる。
「コッシロー殿の言いたいところは、こうでしょう。私が堕天使になり、そして、悪魔皇:サタンが派遣した使者として、この場にやってきたと」
「そうでッチュウ。未だ天使性の名残は残しているようでッチュウけど、悪魔の匂いもプンプンと匂ってくるのでッチュウ!」
「良い所を嗅ぎ分けているようですが、実際は違います。今の私は『天魔混合』状態です。それゆえに、天使や悪魔よりも、数段上の高い位置にいます」
「戯言はもう結構なのデス! シャイニング・マグナム・パンチなのデス!」
「ぶべぼぉぉぉ!?」
アリス=アンジェラのその一撃はまさに『奇襲』という言葉がぴったり当てはまる。今の今まで、ベリアルたちにアンドレイ様の相手を任せていたが、アリス=アンジェラはひっそりと牙を研いでいたのである。アンドレイ=ラプソティは間抜けなことに、アリス=アンジェラの炎に包まれた右の拳で、左頬をぶち抜かれることになる。
「いたたた……。腕をあげましたね。2年前の私なら、貴女のグーパンで私は今頃、昇天していたでしょう」
「あんまり利いてないのデス! ボクは手加減をした覚えがないというノニ!?」
「ふっふっふ! 今のオシリス様は昔のなよっとしていたアンドレイ様とは違うんだよっ!」
「ふにゃちんからびっきびきくらいに進化しましたの。いえ、正しくは『神化』といったほうが正しいわ」
アンドレイ=ラプソティの周りを固める7人の亜人たちが、アンドレイ=ラプソティの変化を自慢してみせる。アリス=アンジェラはムムムと唸り、もう一度、右腕をグルングルンと回し始める。しかしながら、アンドレイ=ラプソティはアリス=アンジェラに殴られたというのに、微笑ましい表情で、アリス=アンジェラを見つめる。まるで愛しい自分の娘に送るまなざしであった。アリス=アンジェラはその視線を気持ちの悪いと受け止める。
アリス=アンジェラの眉間のシワが深く刻まれていけばいくほど、それをあやすかのように、アンドレイ=ラプソティの表情は緩んでいく。アリス=アンジェラはこの感覚を2年前に味わっている。どうしようもない戦力差を持つ相手が向けてくる余裕とも言える態度であった。
「貴女の神力では、私を打倒することなど無理です。どうか、私の配下として、その腕力を発揮してくれませんか?」
「年頃の女の子に腕力を期待するんじゃないのデス! ゴージャス・マグナム・パンチなのデス!」
アリス=アンジェラの右腕の肘辺りまでが真っ赤な炎に包まれていた。アリス=アンジェラは会話をするだけで、イラつきを覚えてしまう今のアンドレイ様をぶっ飛ばして、改心させなければならないという激情に駆られる。その激情が右腕に宿り、炎は緋喰い鳥の形となる。
「ボクの渾身の一撃を受けと……メタ!? しかも、アンドレイ様でなく、ミサさんが!?」
アリス=アンジェラの動揺は激しすぎた。この一撃をアンドレイ様に受け止められるなら、まだショックは小さかったかもしれない。だが、アンドレイ様の前へと割り込んできたミサさんが、両腕でクロスアームブロックを繰り出し、その両腕が交差する部分で、完全にアリス=アンジェラのゴージャス・マグナム・パンチの衝撃を吸収しきってしまったのだ。
「ふっふっふっ! 今のミサはミサであって、ミサではありませんニャン! アンドレイ様の神力により、あちきも『神化』したのですニャン! あちきのことはこれからは、『イシス』と呼ぶが良いのですニャン!!」
「イシス!? 知恵袋のコッシローさん、解説をお願いしマス!」
「そこでボクに振るんじゃないのでッチュウ! でも、心当たりはあるのでッチュウ。かつて、創造主:Y.O.N.N様がお創りになろうとしていたけど、天魔大戦のごたごたでお流れになってしまった計画にのぼっていた神の名前なのでッチュウ!」
「さすがはコッシローさんですね。腐っても鯛とはこのことでしょう。神の御座と呼ばれるケルビムでしたね。何故、貴方がそれを知っているのか、問いただしたいところですが……」
アンドレイ=ラプソティがコッシロー=ネヅに対して、警戒心を露わにする。コッシロー=ネヅは蛇に睨まれたカエルが如くに、縮み上がるのであった。そんなコッシロー=ネヅを庇うかのように、彼の前に出たのがベリアルであった。
「そう言えば、そんなこともあったっけな。第2次天魔大戦が起きた理由のひとつが、それだったはずだ。うちの悪魔将軍が副産物的にその計画を御破算させたやつだ」
「ベリアル、貴方が知っていたとは意外です。場をひっかき回す役割を与えられている貴方は危険すぎる存在です。副産物的とは言っていますけど、本来の目的はそこにあったのかもしれませんから」
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