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第20章:巣立ち
第7話:オシリス
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ベリアルと別行動を取った後に、久方ぶりの最高のイクを体験できたアリス=アンジェラは満足感に1時間ほど、浸ることになる。だが、はっきりしてきた頭の中で、自分の前を横切ったあのひとはアンドレイ=ラプソティ様と奥さんのミサ=ミケーンさんだと思い出し、すぐさま服を着て、静寂の冥宮を展開したまま、自分のために用意された屋敷に戻るのであった。
そして、静寂の冥宮を解くや否や、侍女たちにお風呂の用意をしてもらい、自分の体内から噴き出たあらゆる体液で汚れた身体を洗い流すのであった。そして、本当の意味でキレイになった身体で、アンドレイ=ラプソティ様を探すために、屋敷から飛び出すのであった。
「おい、それは本当か!? アンドレイがこのヴァルハラントにやってきたってのは!?」
「チュッチュッチュ! これは一大事なのでッチュウ! 午後の調練を中止してでも、アンドレイ様を見つけなければならないのでッチュウ!」
「ボクがアンドレイ様を見かけた時は、自分の目を疑いましたが、あの方はアンドレイ=ラプソティ様ご本人で間違いないのデス!」
アリス=アンジェラは思い返せば、以前のアンドレイ様とは違った雰囲気であった。額から一本、悪魔の角が飛び出しており、天界の十三司徒とは今や呼べない顔となっていた。だが、傍らを一緒に歩くあの女性はミサさんで間違いない。ならば、いくら雰囲気が変わろうとも、あの方がアンドレイ様であることは間違いないのであった。
「どこの方角に消えていったか、覚えてるか? アリス嬢ちゃん!」
「うぅ。アリスは作業中だったために、どこへ向かっていったかまでは眼で追い切れていないのデス……。でも、多分ですけど、宮廷へと向かったはずなのデス」
「チュッチュッチュ。ここはアリスちゃんの予想に頼る他無いでッチュウ。今のアンドレイ様が天使なのか、悪魔なのか、はっきりわからない以上、宮廷に近づけるのは危険なのでッチュウ!」
ベリアルたちはコクリと頷き合い、アンドレイ=ラプソティが向かったと思われる宮廷へと急ぐのであった。ベリアルたちには一抹の不安があった。散々、行方をくらませていたアンドレイ=ラプソティが、自分から姿を現したからには、それ相応の事情があってからこそだと思えたのである。
「チッ! 嫌な予感のほうが当たりそうなのは、どうしてだろうな!?」
「チュッチュッチュ。まったく同感なのでッチュウ!」
「ボクがアンドレイ様を見かけた時に、作業を中断していればよかったのデス。そうしていれば、無辜の民たちが犠牲になることは無かったはずナノニ!」
「今更、それを言ったところでどうにもならねえぞっ! 我輩たちは今、出来ることに全力を注ぐんだっ!」
ベリアルたちの眼には塩の塊が並ぶ大通りを走りに走っていた。ヒトの背丈ほどある塩の塊があちらこちらで見受けられる。こんなことを出来るのは、やはりアンドレイ=ラプソティのみである。大通りに人々が集まり、塩の塊を不思議そうな顔をして見ている。民衆たちは何が起きているのか、さっぱり理解できないでいたのだ。ベリアルたちだけでなく、ヴァルハラントを統治する者たちにとって、幸運だったことは、一定範囲内のニンゲンが全て一度に塩の塊と化したために、慌てふためく民衆が発生するのが遅れたということであろう。
大通りのあちらこちらに塩の塊が乱立することになるが、目撃者自体も塩の塊となってしまっている。外れの道から大通りに出てきた者たちは、不思議そうにその塩の塊を見ている。ベリアルはチッ! と舌打ちした後、その塩には念のため触るんじゃねえ! と大声を張り上げて、大通りを真っ直ぐに北へとひた走って行く。
ベリアルたちの眼には、懐かしいあの背中が見えていた。徒党の中で誰よりも頼もしく、誰よりも自分の背中を預けれる広い背中。彼を追い求め、すでに2年という月日が経っていた。ベリアルたちがかの人物の後方10ミャートルまで接近すると、その者は微笑みながら、ベリアルたちの方へと振り向く。
「やあ、100年振りでしょうか?」
「寝言は寝ている時に言いやがれっ! なんで、罪の無い人々を塩の柱に変えやがったっ!」
「何でと言われても、私の中の正義が溢れ出したせいだとしか言いようがありません」
「それは、アンドレイ様の天使の心から出た善なのでッチュウか!? それとも、悪魔の心から出た善なのでッチュウか!?」
「質問の意味がさっぱりわかりません。コッシロー殿は地上界に染まり過ぎたために、天界の掟をお忘れですか?」
「アンドレイ様! 目覚めのシャイニング・パンチなのデス!!」
「ふふっ。言葉を交わすよりも、拳を交える。それでこそ、アリス=アンジェラです!!」
ベリアルとコッシロー=ネヅが、アンドレイ=ラプソティに声を掛けたが、塩の柱を乱立させたアンドレイ=ラプソティはまともな答えを返してこようとはしなかった。このまま、押し問答が繰り広げられるかと思った矢先、口から言葉を発する前に、右の拳を振り抜いた絶壁洗濯板美少女がいた。彼女は光を纏わせた右の拳を本気で、アンドレイ=ラプソティの左頬にぶち込もうとしたのである。
「旦那様には手出しさせないのですニャン」
「おお、この娘がオシリス様が昔、大層、可愛がったという小娘かっ! これは予想以上だなっ!」
「ククッ! これは滾りますわね。オシリス様が褒めちぎっていただけはありますわよ!」
アンドレイ=ラプソティへの蛮行を止めるべく、アンドレイ=ラプソティの前へと7人の妙齢の女性たちが躍り出る。その手に様々な武器を手にしており、それを用いて、アリス=アンジェラの右の拳を止めてみせるのであった。さらには、アリス=アンジェラの身体にそれらの武器をあてがい、無理やりアリス=アンジェラの動きを止めてみせるのであった。
「てめえらっ! アリス嬢ちゃんに何をしやがるっ!」
「てめえらって、失礼な言い方だっ! あたいたちは一見、ガサツに見えるが、これでも立派な女性だぜ!?」
「ホルス。貴女といっしょにガサツ仲間に入れるのはやめてくれませんこと? 私は美女も裸足で土下座してしまうほどのアヌビスなの。そこをわかっていまして?」
「喧嘩は止めるニャン。今はアリス=アンジェラとベリアルをどうにかするべきですニャン」
「あ、そうだったっ! アンドレイ様。いや、オシリス様。こいつらをどうするんですか? あたいたちが殺してしまっていいのかい?!」
アンドレイ=ラプソティの周りを固める7人の女性たちは不穏な空気を醸し出していた。ベリアルたちはただでさえ、アンドレイ=ラプソティと一触即発だというのに、それを平然と無視した形で、彼女たちが一方的に話を進め始める。嫌気を感じたベリアルは、この場の空気ごと、彼女たちを両断してやろうとばかりに、右手に死神の大鎌を現出させる。
「ほら、いつも言っているでしょう。まずは相手の言い分に耳を傾けなさいと。激昂しやすいベリアルが、斬りかかってくる気、満々ですよ?」
「そんな与太話なんか、どうでもいい……。アンドレイ=ラプソティ。お前は我輩たちの敵に回るのか!?」
そして、静寂の冥宮を解くや否や、侍女たちにお風呂の用意をしてもらい、自分の体内から噴き出たあらゆる体液で汚れた身体を洗い流すのであった。そして、本当の意味でキレイになった身体で、アンドレイ=ラプソティ様を探すために、屋敷から飛び出すのであった。
「おい、それは本当か!? アンドレイがこのヴァルハラントにやってきたってのは!?」
「チュッチュッチュ! これは一大事なのでッチュウ! 午後の調練を中止してでも、アンドレイ様を見つけなければならないのでッチュウ!」
「ボクがアンドレイ様を見かけた時は、自分の目を疑いましたが、あの方はアンドレイ=ラプソティ様ご本人で間違いないのデス!」
アリス=アンジェラは思い返せば、以前のアンドレイ様とは違った雰囲気であった。額から一本、悪魔の角が飛び出しており、天界の十三司徒とは今や呼べない顔となっていた。だが、傍らを一緒に歩くあの女性はミサさんで間違いない。ならば、いくら雰囲気が変わろうとも、あの方がアンドレイ様であることは間違いないのであった。
「どこの方角に消えていったか、覚えてるか? アリス嬢ちゃん!」
「うぅ。アリスは作業中だったために、どこへ向かっていったかまでは眼で追い切れていないのデス……。でも、多分ですけど、宮廷へと向かったはずなのデス」
「チュッチュッチュ。ここはアリスちゃんの予想に頼る他無いでッチュウ。今のアンドレイ様が天使なのか、悪魔なのか、はっきりわからない以上、宮廷に近づけるのは危険なのでッチュウ!」
ベリアルたちはコクリと頷き合い、アンドレイ=ラプソティが向かったと思われる宮廷へと急ぐのであった。ベリアルたちには一抹の不安があった。散々、行方をくらませていたアンドレイ=ラプソティが、自分から姿を現したからには、それ相応の事情があってからこそだと思えたのである。
「チッ! 嫌な予感のほうが当たりそうなのは、どうしてだろうな!?」
「チュッチュッチュ。まったく同感なのでッチュウ!」
「ボクがアンドレイ様を見かけた時に、作業を中断していればよかったのデス。そうしていれば、無辜の民たちが犠牲になることは無かったはずナノニ!」
「今更、それを言ったところでどうにもならねえぞっ! 我輩たちは今、出来ることに全力を注ぐんだっ!」
ベリアルたちの眼には塩の塊が並ぶ大通りを走りに走っていた。ヒトの背丈ほどある塩の塊があちらこちらで見受けられる。こんなことを出来るのは、やはりアンドレイ=ラプソティのみである。大通りに人々が集まり、塩の塊を不思議そうな顔をして見ている。民衆たちは何が起きているのか、さっぱり理解できないでいたのだ。ベリアルたちだけでなく、ヴァルハラントを統治する者たちにとって、幸運だったことは、一定範囲内のニンゲンが全て一度に塩の塊と化したために、慌てふためく民衆が発生するのが遅れたということであろう。
大通りのあちらこちらに塩の塊が乱立することになるが、目撃者自体も塩の塊となってしまっている。外れの道から大通りに出てきた者たちは、不思議そうにその塩の塊を見ている。ベリアルはチッ! と舌打ちした後、その塩には念のため触るんじゃねえ! と大声を張り上げて、大通りを真っ直ぐに北へとひた走って行く。
ベリアルたちの眼には、懐かしいあの背中が見えていた。徒党の中で誰よりも頼もしく、誰よりも自分の背中を預けれる広い背中。彼を追い求め、すでに2年という月日が経っていた。ベリアルたちがかの人物の後方10ミャートルまで接近すると、その者は微笑みながら、ベリアルたちの方へと振り向く。
「やあ、100年振りでしょうか?」
「寝言は寝ている時に言いやがれっ! なんで、罪の無い人々を塩の柱に変えやがったっ!」
「何でと言われても、私の中の正義が溢れ出したせいだとしか言いようがありません」
「それは、アンドレイ様の天使の心から出た善なのでッチュウか!? それとも、悪魔の心から出た善なのでッチュウか!?」
「質問の意味がさっぱりわかりません。コッシロー殿は地上界に染まり過ぎたために、天界の掟をお忘れですか?」
「アンドレイ様! 目覚めのシャイニング・パンチなのデス!!」
「ふふっ。言葉を交わすよりも、拳を交える。それでこそ、アリス=アンジェラです!!」
ベリアルとコッシロー=ネヅが、アンドレイ=ラプソティに声を掛けたが、塩の柱を乱立させたアンドレイ=ラプソティはまともな答えを返してこようとはしなかった。このまま、押し問答が繰り広げられるかと思った矢先、口から言葉を発する前に、右の拳を振り抜いた絶壁洗濯板美少女がいた。彼女は光を纏わせた右の拳を本気で、アンドレイ=ラプソティの左頬にぶち込もうとしたのである。
「旦那様には手出しさせないのですニャン」
「おお、この娘がオシリス様が昔、大層、可愛がったという小娘かっ! これは予想以上だなっ!」
「ククッ! これは滾りますわね。オシリス様が褒めちぎっていただけはありますわよ!」
アンドレイ=ラプソティへの蛮行を止めるべく、アンドレイ=ラプソティの前へと7人の妙齢の女性たちが躍り出る。その手に様々な武器を手にしており、それを用いて、アリス=アンジェラの右の拳を止めてみせるのであった。さらには、アリス=アンジェラの身体にそれらの武器をあてがい、無理やりアリス=アンジェラの動きを止めてみせるのであった。
「てめえらっ! アリス嬢ちゃんに何をしやがるっ!」
「てめえらって、失礼な言い方だっ! あたいたちは一見、ガサツに見えるが、これでも立派な女性だぜ!?」
「ホルス。貴女といっしょにガサツ仲間に入れるのはやめてくれませんこと? 私は美女も裸足で土下座してしまうほどのアヌビスなの。そこをわかっていまして?」
「喧嘩は止めるニャン。今はアリス=アンジェラとベリアルをどうにかするべきですニャン」
「あ、そうだったっ! アンドレイ様。いや、オシリス様。こいつらをどうするんですか? あたいたちが殺してしまっていいのかい?!」
アンドレイ=ラプソティの周りを固める7人の女性たちは不穏な空気を醸し出していた。ベリアルたちはただでさえ、アンドレイ=ラプソティと一触即発だというのに、それを平然と無視した形で、彼女たちが一方的に話を進め始める。嫌気を感じたベリアルは、この場の空気ごと、彼女たちを両断してやろうとばかりに、右手に死神の大鎌を現出させる。
「ほら、いつも言っているでしょう。まずは相手の言い分に耳を傾けなさいと。激昂しやすいベリアルが、斬りかかってくる気、満々ですよ?」
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