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第20章:巣立ち
第3話:帝国軍
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「ロケットォォォ・パーーーンチ!!」
「すでにその技は見切ったのデス。お返しのシャイニング・パンチなのデス!」
「ぐべぼぁぁぁ!?」
アリス=アンジェラはこの日、神聖マケドナルド帝国の首都:ヴァルハラントの一角に建設されている円形闘技場に足を運んでいた。この円形闘技場は、そもそも、神聖ローマニアン帝国の時代から存在していた歴史的建造物である。
神聖マケドナルド帝国の初代の帝であるレオン=アレクサンダーは、この地を征服した後、それでも反逆を企てようとした一味を、この円形闘技場で戦わせたのである。もちろん、レオン=アレクサンダーの性格から言って、反逆者同士で戦わせたのでは無い。自分の配下がどれほど優秀なのかを民衆に見せつけるために行われた決闘であった。
反逆者たちには闘技場の真ん中に置いてある武具立てから、好きなモノを選んで良かった。そして、現帝国側の士官たちには、刃を潰した長剣と粗末な木製の丸盾のみが与えられたのである。そこまでのハンデ戦を組まされても、現帝国側の士官たちが、もやしである旧神聖ローマニアン帝国の旧臣たちに負けることなど、ほとんど無かった。
稀に現帝国の士官たちをなぎ倒す者は現れても、それはそれで、レオン=アレクサンダー帝にとって、喜ばしいことであった。彼の右腕であるアンドレイ=ラプソティがあの手この手で、その勇壮な旧臣を口説き、現帝国に組み入れたからである。結局のところ、旧神聖ローマニアン帝国は、レオン=アレクサンダー帝によって、利用されるだけ利用されたのである。良い意味も悪い意味も含めてだ。
そんな曰く有りの円形闘技場で、今日の一番の大目玉として、久方ぶりにアリス=アンジェラに求婚してきた男が登場したのである。闘技場で開かれた大会において、その男は優勝したのだが、それだけは物足りずに、アリス=アンジェラへ決闘を申し込んだのだ。
今世の帝:ミハエル=アレクサンダーも観覧に来ているというのに、その男は自信たっぷりに、アリス=アンジェラを組み伏せてみせようと豪語した。本来なら不敬罪で、大会で優勝した結果すらも剥奪されるはずであったが、宰相のヨーコ=タマモが、これは面白いということで、ミハエル=アレクサンダー帝も追認することになる。
巻き込まれた側のアリス=アンジェラは、しぶしぶながら、円形闘技場に集う観衆たちの視線が特に集まる闘技場へと降り立つ。アリス=アンジェラは、不遜な男に、好きな武器を選べと言うが、その男はこの腕一本でのし上がってきた以上、アリス=アンジェラ相手に徒手空拳で十分だと、ほざいたのである。
アリス=アンジェラはハァァァ……とあからさまな嘆息をつき、その男と手合わせする。しかしながら、アリス=アンジェラは、弾丸のようにすっ飛んでくる男の右の拳に大層驚くことになってしまう。寸でで、それを躱すは良いが、男は容赦という言葉を知らないのか、アリス=アンジェラにどんどん肉薄し、接近戦を仕掛けるのであった。アリス=アンジェラは、少しだけ、この男に興味心を抱いてしまう。
だが、悲しいかな……。その男は数年掛かって身につけた必殺パンチをアリス=アンジェラによって受け止められるや否や、その必殺パンチの完全上位である『シャイニング・パンチ』によって、地に伏せられることになる。
「俺はアリス=アンジェラを超えられない……のかっ!!」
「ただの半狼半人にしては、頑張ったほうだと思いマス。でも、あと100年は修行し直す必要があると思いマス!」
「いやだっ! それだと、アリス=アンジェラがおばあさんになってしまうじゃないかっ! 俺は今の美しさと可愛さと可憐さが混ざり合った最高潮のアリス=アンジェラを抱きたいんだっ!」
「そ、そんなに褒めても何も出せないのデス。あと、衆目が集まる前で『抱きたい』とか、ストレートな物言いは、決して褒められることではないのデス」
「なん……だと!? やはり天界の住人を口説くには、吟遊詩人が奏でるような神話クラスの口説き文句が必要なのか!? 俺は武の才能がヒトより秀でているという自信はあっても、そちらの方は皆無だっ!!」
「あのぅ……。自慢をしたいのか、自虐したいのか、よくわからないのデスガ」
アリス=アンジェラはこの男の好漢ぶりは、決して嫌いではなかった。しかしながら、この男は不器用すぎる。ロック=イートという名が体を示すかのように、頑なな部分ばかりであり、機転を利かすといったところは、てんで、期待出来なさそうであった。
もし、彼がもう少し、女性が喜びそうな振る舞いが出来ていたなら、ロック=イートにもチャンスがあったのであろう。だが、そもそもとして、彼がアリス=アンジェラにプレゼントしようとしたのは、彼の右の拳なのである。アリス=アンジェラは呆れることはあっても、素敵抱いて! とは決して、口から出せるわけもなかったのである。
「して……。この男の処分はどういたしましょうかな、ミハエル帝」
「うむ。アリス=アンジェラ将軍に負けてしまったのは残念無念だが、彼を帝国軍の士官に招き入れるのは悪くない。兵士は数多用意出来ても、将を得るのは難しいからな」
「さすがはわらわの旦那様じゃ。日々、成長しておられるのう。というわけじゃ。アリス=アンジェラ将軍。貴殿の軍にロック=イートを組み込むゆえ、彼の教育は任せたのじゃぞ」
「えええええ!? こいつがボクの部下になるんデス!? 絶対に猪突猛進して、軍を崩壊させるとしか思えないのデス!」
アリス=アンジェラの言い分はもっともであった。ロック=イートに一軍を与えるのは危険すぎる判断である。そして、将来的にアリス=アンジェラの不安は的中するのだが、それは良い意味での期待の裏切りとなる。ロック=イートは猪武者であることは決して変わらなかったが、それでも、敵国が用意した数々の罠を力づくで食いちぎってくれる、頼もしい先鋒役に収まってくれるのであった。
後日、コッシロー=ネヅの談で言わせてもらえば、大将軍ともなれば、部下はどう扱うかが肝要であり、決して、自分の好き好みだけで選んではいけないという諫言にも似た言葉が当てはまるだろう。兎にも角にも、ミハエル=アレクサンダー帝は円形闘技場で開かれる大会をも通じて、士官クラスの才能を持つ若者を募っていった。宰相:ヨーコ=タマモの才腕のおかげもあるが、神聖マケドナルド王国の軍事力は日に日に高まっていく。
アリス=アンジェラが大将軍に任命されてから、さらに2年の月日が経とうとした時、神聖ローマニアン帝国は、初代:レオン=アレクサンダー帝が構築した軍事力と遜色無いレベルで再構築されたのであった……。
「すでにその技は見切ったのデス。お返しのシャイニング・パンチなのデス!」
「ぐべぼぁぁぁ!?」
アリス=アンジェラはこの日、神聖マケドナルド帝国の首都:ヴァルハラントの一角に建設されている円形闘技場に足を運んでいた。この円形闘技場は、そもそも、神聖ローマニアン帝国の時代から存在していた歴史的建造物である。
神聖マケドナルド帝国の初代の帝であるレオン=アレクサンダーは、この地を征服した後、それでも反逆を企てようとした一味を、この円形闘技場で戦わせたのである。もちろん、レオン=アレクサンダーの性格から言って、反逆者同士で戦わせたのでは無い。自分の配下がどれほど優秀なのかを民衆に見せつけるために行われた決闘であった。
反逆者たちには闘技場の真ん中に置いてある武具立てから、好きなモノを選んで良かった。そして、現帝国側の士官たちには、刃を潰した長剣と粗末な木製の丸盾のみが与えられたのである。そこまでのハンデ戦を組まされても、現帝国側の士官たちが、もやしである旧神聖ローマニアン帝国の旧臣たちに負けることなど、ほとんど無かった。
稀に現帝国の士官たちをなぎ倒す者は現れても、それはそれで、レオン=アレクサンダー帝にとって、喜ばしいことであった。彼の右腕であるアンドレイ=ラプソティがあの手この手で、その勇壮な旧臣を口説き、現帝国に組み入れたからである。結局のところ、旧神聖ローマニアン帝国は、レオン=アレクサンダー帝によって、利用されるだけ利用されたのである。良い意味も悪い意味も含めてだ。
そんな曰く有りの円形闘技場で、今日の一番の大目玉として、久方ぶりにアリス=アンジェラに求婚してきた男が登場したのである。闘技場で開かれた大会において、その男は優勝したのだが、それだけは物足りずに、アリス=アンジェラへ決闘を申し込んだのだ。
今世の帝:ミハエル=アレクサンダーも観覧に来ているというのに、その男は自信たっぷりに、アリス=アンジェラを組み伏せてみせようと豪語した。本来なら不敬罪で、大会で優勝した結果すらも剥奪されるはずであったが、宰相のヨーコ=タマモが、これは面白いということで、ミハエル=アレクサンダー帝も追認することになる。
巻き込まれた側のアリス=アンジェラは、しぶしぶながら、円形闘技場に集う観衆たちの視線が特に集まる闘技場へと降り立つ。アリス=アンジェラは、不遜な男に、好きな武器を選べと言うが、その男はこの腕一本でのし上がってきた以上、アリス=アンジェラ相手に徒手空拳で十分だと、ほざいたのである。
アリス=アンジェラはハァァァ……とあからさまな嘆息をつき、その男と手合わせする。しかしながら、アリス=アンジェラは、弾丸のようにすっ飛んでくる男の右の拳に大層驚くことになってしまう。寸でで、それを躱すは良いが、男は容赦という言葉を知らないのか、アリス=アンジェラにどんどん肉薄し、接近戦を仕掛けるのであった。アリス=アンジェラは、少しだけ、この男に興味心を抱いてしまう。
だが、悲しいかな……。その男は数年掛かって身につけた必殺パンチをアリス=アンジェラによって受け止められるや否や、その必殺パンチの完全上位である『シャイニング・パンチ』によって、地に伏せられることになる。
「俺はアリス=アンジェラを超えられない……のかっ!!」
「ただの半狼半人にしては、頑張ったほうだと思いマス。でも、あと100年は修行し直す必要があると思いマス!」
「いやだっ! それだと、アリス=アンジェラがおばあさんになってしまうじゃないかっ! 俺は今の美しさと可愛さと可憐さが混ざり合った最高潮のアリス=アンジェラを抱きたいんだっ!」
「そ、そんなに褒めても何も出せないのデス。あと、衆目が集まる前で『抱きたい』とか、ストレートな物言いは、決して褒められることではないのデス」
「なん……だと!? やはり天界の住人を口説くには、吟遊詩人が奏でるような神話クラスの口説き文句が必要なのか!? 俺は武の才能がヒトより秀でているという自信はあっても、そちらの方は皆無だっ!!」
「あのぅ……。自慢をしたいのか、自虐したいのか、よくわからないのデスガ」
アリス=アンジェラはこの男の好漢ぶりは、決して嫌いではなかった。しかしながら、この男は不器用すぎる。ロック=イートという名が体を示すかのように、頑なな部分ばかりであり、機転を利かすといったところは、てんで、期待出来なさそうであった。
もし、彼がもう少し、女性が喜びそうな振る舞いが出来ていたなら、ロック=イートにもチャンスがあったのであろう。だが、そもそもとして、彼がアリス=アンジェラにプレゼントしようとしたのは、彼の右の拳なのである。アリス=アンジェラは呆れることはあっても、素敵抱いて! とは決して、口から出せるわけもなかったのである。
「して……。この男の処分はどういたしましょうかな、ミハエル帝」
「うむ。アリス=アンジェラ将軍に負けてしまったのは残念無念だが、彼を帝国軍の士官に招き入れるのは悪くない。兵士は数多用意出来ても、将を得るのは難しいからな」
「さすがはわらわの旦那様じゃ。日々、成長しておられるのう。というわけじゃ。アリス=アンジェラ将軍。貴殿の軍にロック=イートを組み込むゆえ、彼の教育は任せたのじゃぞ」
「えええええ!? こいつがボクの部下になるんデス!? 絶対に猪突猛進して、軍を崩壊させるとしか思えないのデス!」
アリス=アンジェラの言い分はもっともであった。ロック=イートに一軍を与えるのは危険すぎる判断である。そして、将来的にアリス=アンジェラの不安は的中するのだが、それは良い意味での期待の裏切りとなる。ロック=イートは猪武者であることは決して変わらなかったが、それでも、敵国が用意した数々の罠を力づくで食いちぎってくれる、頼もしい先鋒役に収まってくれるのであった。
後日、コッシロー=ネヅの談で言わせてもらえば、大将軍ともなれば、部下はどう扱うかが肝要であり、決して、自分の好き好みだけで選んではいけないという諫言にも似た言葉が当てはまるだろう。兎にも角にも、ミハエル=アレクサンダー帝は円形闘技場で開かれる大会をも通じて、士官クラスの才能を持つ若者を募っていった。宰相:ヨーコ=タマモの才腕のおかげもあるが、神聖マケドナルド王国の軍事力は日に日に高まっていく。
アリス=アンジェラが大将軍に任命されてから、さらに2年の月日が経とうとした時、神聖ローマニアン帝国は、初代:レオン=アレクサンダー帝が構築した軍事力と遜色無いレベルで再構築されたのであった……。
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