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第19章:自由意志
第1話:人形
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アリス=アンジェラの右手は真っ赤な宝石を握っていた。レオン=アレクサンダーは生前、アリス=アンジェラに心臓を握りつぶされて絶命したのだが、その心臓の代わりに悪魔皇:サタンが新たに魔人の核を与えた。アリス=アンジェラの小さな右手には若干、大き目のサイズである。アリス=アンジェラはその紅い宝石をギリギリと万力で締め上げるように握って行く。
しかし、アリス=アンジェラがレオン=アレクサンダーの新たな心臓を握りつぶす前に、その右腕をぶった切ろうと、レオン=アレクサンダーがアンドレイ=ラプソティの胸から長剣を引っこ抜く。アリス=アンジェラはズボッ! という音と共に、レオン=アレクサンダーの胸から右腕を引っこ抜く。
「それを返せ……。警告は一度までだ」
「アリスが欲しいのは、こんな紛い物の命ではありまセン」
アリス=アンジェラは驚くほどにあっさりと肉の地面の上へと、その紅い宝石を放り捨てる。レオン=アレクサンダーはギリッ! と歯噛みするが、足元に投げ捨てられた自分の核を左手で拾い上げ、それをぽっかり空いた胸へと戻す。その途端、肉と骨が再生し、空いた穴を無理やりに閉じてしまうのであった。
「後悔することになるぞ。お前は俺を舐めたっ!」
「舐めるのは、そそり立つおちんこさんと子宝袋で十分なのデス」
「ならば、貴様を押し倒し、望むようにさせてやろう!!」
レオン=アレクサンダーはそう言うと、上段構えから下方に向かって、一直線に凶刃を振り下ろす。アリス=アンジェラは少しだけ右足を後ろに下げ、身体の軸をずらす。レオン=アレクサンダーは必殺の一撃を簡単に躱されたものの、今度は斜め下から凶刃を振り上げる。
「なん……だと!?」
「女子供、そして、無抵抗に近しい腑抜けた天界の十三司徒を斬ることしか出来ぬ錆びついた刃で、アリス=アンジェラをどうにか出来ると思わないでほしいのデス」
レオン=アレクサンダーは驚愕の表情となる。眼にも止まらぬ速さで長剣を斬り上げたというのに、その初動の部分でアリス=アンジェラの右足がその凶刃を止めたのである。しかも、小柄で絶壁洗濯板なアリス=アンジェラからは感じ取れないほどの異様すぎる重さを長剣を通じて、手に伝わってくる。
レオン=アレクサンダーがいくら呪力を込めようが、長剣はそこから動きもしなかった。まるで硬くて重すぎるアダマンタイトで、その長剣自体が固定されてしまったかのようであった。
レオン=アレクサンダーは考えを改めることになる。押して駄目なら引いてみろという言葉通りに、それを実践する。斜め下から斬り上げる行為を止め、一度、長剣を自分の懐へと戻すのであった。そうした後、バックステップし、アリス=アンジェラからなるべく距離を空ける。
その2人の様子を悪魔皇:サタンは未だに涼しい顔で玉座に腰を落ち着かせていた。ここまでは、悪魔皇:サタンの予想通りの展開であった。まだ、レオン=アレクサンダーはヒトの身であった頃の戦い方をしている。人智が及ぶか及ばない程度の剣技では、創造主:Y.O.N.Nの愛娘をどうこう出来るはずが無いと、わかりきっていたのである。
そのことをレオン=アレクサンダーに気づかせてやろうと、悪魔皇:サタンは右手の人差し指と親指を用いて、パチーンと甲高い音を立ててみせる。レオン=アレクサンダーはその音を鼓膜で拾い、ちらりと視線を悪魔皇:サタンの方に向ける。自分が与えられた呪力を出し惜しみして、勝てる相手では無いと告げられた気がしてならないレオン=アレクサンダーであった。
地上界の征服王と呼ばれた頃のプライドが揺れ動くことになるが、悪魔皇:サタンの忠告を素直に受け入れるだけの度量が、今のレオン=アレクサンダーには有った。レオン=アレクサンダーは自分への忠言や諫言を行って良いのは、自分にとって唯一無二の存在であるレイのみだと思っていた。しかしながら、一度、死んで生まれ変われとはよく言ったものであり、レオン=アレクサンダーは確かに精神面でも生まれ変わったと言っても良かった。
「あの時は油断した。だが、今度は油断しないぞっ!」
「あの時とはいったい、どの時のことを指しているのかわかりまセン」
憎まれ口とはまさにこのことである。アリス=アンジェラは上から目線で、レオン=アレクサンダーと会話を行う。レオン=アレクサンダーは、これを挑発として受け取るが、それでも、下賤の身が戯言をほざいているという受け取り方をして、流してみせる。
しかしながら、レオン=アレクサンダーは、そもそもとして、アリス=アンジェラのことを見誤っていた。アリス=アンジェラにとって、レオン=アレクサンダーが指し示す『あの時』が思い当たらないのだ。生前のレオン=アレクサンダーを屠った時、アリス=アンジェラはただただ忠実に創造主:Y.O.N.N様から与えられた使命を果たしたに過ぎないのである。レオン=アレクサンダーの事情なぞ、まったくもって、意に介さずにだ。
だからこそ、アリス=アンジェラは今もただ単に創造主:Y.O.N.N様に仕込まれたプログラムを忠実に実行しているに過ぎない人形同然であった。アリス=アンジェラが頭の中に思うことはただひとつ。眼の前で受肉を果たしたレオン=アレクサンダーという名の魔人をどう殺すか? ということだけであった。
先に動いたのはレオン=アレクサンダーであった。彼は身体から通常の悪魔とは比較にもならないほどの魔素を噴き出す。まるでそこに光すらも飲み込むブラックホールが出来上がったかのようでもあった。レオン=アレクサンダーは魔素を一旦、身体の奥底から噴き出した後、その魔素を用いて、悪魔皇:サタンから与えられた長剣をコーティングしていく。
レオン=アレクサンダーの右手に握られている長剣は朱と黒が混ざり合う色に染まり上がる。その長剣からは陽炎が立ち昇り、レオン=アレクサンダーとアリス=アンジェラとの間にある空間を歪めていく。そうでありながらも、アリス=アンジェラは特に戦いのための構えを取ることは無かった。レオン=アレクサンダーはそのふてぶてし過ぎるアリス=アンジェラに激昂してしまいそうになるが、先ほどと同様に、下賤の身では、自分の呪力の凄さはわからぬものだと決めつけることにより、平静を保つ。
「いざ、斬り伏せんっ! 屠り喰らうォォォ!!」
レオン=アレクサンダーは朱と黒色でコーティングされた長剣を両手で持ち、満月を描くように両腕の肘から先を捻らせる。何もない空間に真円が描かれると同時に、そこから深淵がこの地上界を覗き見ようとする……。
しかし、アリス=アンジェラがレオン=アレクサンダーの新たな心臓を握りつぶす前に、その右腕をぶった切ろうと、レオン=アレクサンダーがアンドレイ=ラプソティの胸から長剣を引っこ抜く。アリス=アンジェラはズボッ! という音と共に、レオン=アレクサンダーの胸から右腕を引っこ抜く。
「それを返せ……。警告は一度までだ」
「アリスが欲しいのは、こんな紛い物の命ではありまセン」
アリス=アンジェラは驚くほどにあっさりと肉の地面の上へと、その紅い宝石を放り捨てる。レオン=アレクサンダーはギリッ! と歯噛みするが、足元に投げ捨てられた自分の核を左手で拾い上げ、それをぽっかり空いた胸へと戻す。その途端、肉と骨が再生し、空いた穴を無理やりに閉じてしまうのであった。
「後悔することになるぞ。お前は俺を舐めたっ!」
「舐めるのは、そそり立つおちんこさんと子宝袋で十分なのデス」
「ならば、貴様を押し倒し、望むようにさせてやろう!!」
レオン=アレクサンダーはそう言うと、上段構えから下方に向かって、一直線に凶刃を振り下ろす。アリス=アンジェラは少しだけ右足を後ろに下げ、身体の軸をずらす。レオン=アレクサンダーは必殺の一撃を簡単に躱されたものの、今度は斜め下から凶刃を振り上げる。
「なん……だと!?」
「女子供、そして、無抵抗に近しい腑抜けた天界の十三司徒を斬ることしか出来ぬ錆びついた刃で、アリス=アンジェラをどうにか出来ると思わないでほしいのデス」
レオン=アレクサンダーは驚愕の表情となる。眼にも止まらぬ速さで長剣を斬り上げたというのに、その初動の部分でアリス=アンジェラの右足がその凶刃を止めたのである。しかも、小柄で絶壁洗濯板なアリス=アンジェラからは感じ取れないほどの異様すぎる重さを長剣を通じて、手に伝わってくる。
レオン=アレクサンダーがいくら呪力を込めようが、長剣はそこから動きもしなかった。まるで硬くて重すぎるアダマンタイトで、その長剣自体が固定されてしまったかのようであった。
レオン=アレクサンダーは考えを改めることになる。押して駄目なら引いてみろという言葉通りに、それを実践する。斜め下から斬り上げる行為を止め、一度、長剣を自分の懐へと戻すのであった。そうした後、バックステップし、アリス=アンジェラからなるべく距離を空ける。
その2人の様子を悪魔皇:サタンは未だに涼しい顔で玉座に腰を落ち着かせていた。ここまでは、悪魔皇:サタンの予想通りの展開であった。まだ、レオン=アレクサンダーはヒトの身であった頃の戦い方をしている。人智が及ぶか及ばない程度の剣技では、創造主:Y.O.N.Nの愛娘をどうこう出来るはずが無いと、わかりきっていたのである。
そのことをレオン=アレクサンダーに気づかせてやろうと、悪魔皇:サタンは右手の人差し指と親指を用いて、パチーンと甲高い音を立ててみせる。レオン=アレクサンダーはその音を鼓膜で拾い、ちらりと視線を悪魔皇:サタンの方に向ける。自分が与えられた呪力を出し惜しみして、勝てる相手では無いと告げられた気がしてならないレオン=アレクサンダーであった。
地上界の征服王と呼ばれた頃のプライドが揺れ動くことになるが、悪魔皇:サタンの忠告を素直に受け入れるだけの度量が、今のレオン=アレクサンダーには有った。レオン=アレクサンダーは自分への忠言や諫言を行って良いのは、自分にとって唯一無二の存在であるレイのみだと思っていた。しかしながら、一度、死んで生まれ変われとはよく言ったものであり、レオン=アレクサンダーは確かに精神面でも生まれ変わったと言っても良かった。
「あの時は油断した。だが、今度は油断しないぞっ!」
「あの時とはいったい、どの時のことを指しているのかわかりまセン」
憎まれ口とはまさにこのことである。アリス=アンジェラは上から目線で、レオン=アレクサンダーと会話を行う。レオン=アレクサンダーは、これを挑発として受け取るが、それでも、下賤の身が戯言をほざいているという受け取り方をして、流してみせる。
しかしながら、レオン=アレクサンダーは、そもそもとして、アリス=アンジェラのことを見誤っていた。アリス=アンジェラにとって、レオン=アレクサンダーが指し示す『あの時』が思い当たらないのだ。生前のレオン=アレクサンダーを屠った時、アリス=アンジェラはただただ忠実に創造主:Y.O.N.N様から与えられた使命を果たしたに過ぎないのである。レオン=アレクサンダーの事情なぞ、まったくもって、意に介さずにだ。
だからこそ、アリス=アンジェラは今もただ単に創造主:Y.O.N.N様に仕込まれたプログラムを忠実に実行しているに過ぎない人形同然であった。アリス=アンジェラが頭の中に思うことはただひとつ。眼の前で受肉を果たしたレオン=アレクサンダーという名の魔人をどう殺すか? ということだけであった。
先に動いたのはレオン=アレクサンダーであった。彼は身体から通常の悪魔とは比較にもならないほどの魔素を噴き出す。まるでそこに光すらも飲み込むブラックホールが出来上がったかのようでもあった。レオン=アレクサンダーは魔素を一旦、身体の奥底から噴き出した後、その魔素を用いて、悪魔皇:サタンから与えられた長剣をコーティングしていく。
レオン=アレクサンダーの右手に握られている長剣は朱と黒が混ざり合う色に染まり上がる。その長剣からは陽炎が立ち昇り、レオン=アレクサンダーとアリス=アンジェラとの間にある空間を歪めていく。そうでありながらも、アリス=アンジェラは特に戦いのための構えを取ることは無かった。レオン=アレクサンダーはそのふてぶてし過ぎるアリス=アンジェラに激昂してしまいそうになるが、先ほどと同様に、下賤の身では、自分の呪力の凄さはわからぬものだと決めつけることにより、平静を保つ。
「いざ、斬り伏せんっ! 屠り喰らうォォォ!!」
レオン=アレクサンダーは朱と黒色でコーティングされた長剣を両手で持ち、満月を描くように両腕の肘から先を捻らせる。何もない空間に真円が描かれると同時に、そこから深淵がこの地上界を覗き見ようとする……。
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