176 / 202
第18章:地上界の伏魔殿
第4話:宿る命
しおりを挟む
「シャイニング・マグナム・パンチなのデス!」
アリス=アンジェラは大きく振りかぶった右腕を内側に巻き込むように肩口から発射させる。巨大な壁となって立ちはだかる炎の巨人を一撃の下に沈めるのであった。アリス=アンジェラはハァハァと肩で息をしていた。首都の中ほどまでに到達するまでに、アリス=アンジェラが討伐した悪魔はこれでちょうど100体目であった。
腕が何本もある蜘蛛のような姿をした悪魔群を突破したかと思えば、地中から全身が炎で包まれた悪魔が突然、アリス=アンジェラたちの眼の前に立ちはだかった。だが、アリス=アンジェラは走っている勢いを殺さずに跳躍し、炎の悪魔の顔面に右の拳を叩きこんだのである。
「ノリノリじゃねえか、アリス嬢ちゃん!」
「ボクばかりに悪魔を倒させないでくだサイッ! ベリアルも働くのデスッ!」
「そう言われても、我輩は怠惰の権現様だからなぁ。おい、アンドレイ、今度はお前の方から氷の巨人が現れたぞっ!」
「やれやれ……。アリス殿。ベリアルにツッコミを入れていると、無駄に体力を消費してしまいますよ。登場したばかりで悪いですが、氷の悪魔には塩の柱となってもらいますっ!」
アンドレイ=ラプソティは右手に紅き竜の槍を握っていたが、空いている左手を氷の悪魔に向けると、その手のひらから、白銀色のぶっとい光線を打ち出す。その光線が氷の悪魔の首付近に当たると、そこを中心にして、半径3ミャートルが塩化してしまう。氷の悪魔は何かを言わんとする前にズズーーンと巨大な建造物が横倒れになっていく音を立てながら、地面へと伏してしまうのであった。
アリス=アンジェラたちは障壁となって立ちふさがる悪魔群をたった3人で屠りに屠る。彼女らは魔城まで残すところ1キュロミャートル付近まで到達していた。しかし、2人に戦闘を任せっきりのベリアルを除き、アリス=アンジェラとアンドレイ=ラプソティの疲労は顔にまで浮かび上がりつつあった。
「次に大物が出てきたら、絶対にベリアルに任せますカラネ!」
「我輩が出張るほどの大物なんて、まだ現れていないだろ? まだまだアリス嬢ちゃんが頑張るターンだなっ!」
「だから、アリス殿……。ベリアルに構うなと言っているのです。言い争いをしている時間があるなら、一体でも多く、悪魔を狩りましょう」
アリス=アンジェラは一度、右腕で額から流れる汗を拭い払うと、ふうふうと呼吸を整える。その間にも不気味に揺れる地面や建物から、悪魔たちがこの地上界へと浸食するかのように現れる。アリス=アンジェラが呼吸を整え終わる時間を稼ぐためにも、彼女ら3人の後ろで待機していたミサ=ミケーンが彼女らの前へと躍り出る。
ミサ=ミケーンは両手に1本ずつ持つ蝶の短刀を振り回す。それにより、地上界へと現れたばかりの悪魔たちは細切れにされてしまうのであった。
「よくわからないですけど、あちきは今、絶好調なのですニャン! 魔素が濃く渦巻くこの地獄の入り口なのに、何故か、身体からは力が溢れてきますニャン!」
ヨーコ=タマモですら、難儀しているこの魔素が濃く渦巻くレオンハイマートオートにおいて、たかだか一介の半猫半人でしかないミサ=ミケーンは、皆の不安を裏切り、躍動し続けていた。彼女の相方であるアンドレイ=ラプソティも訝しむほどの活躍ぶりである。
「ミサ殿が、この空間において、元気いっぱいなのは喜ばしいのですが、別の不安も感じてしまいます」
「あちきも、首都に足を踏み入れるまでは、心が不安で押しつぶされそうでしたニャン。でも、何故か、元気いっぱいですニャン!」
アンドレイ=ラプソティも、ミサ=ミケーンがこの空間で元気いっぱいな理由がよくわかっていなかった。しかしながら、次に現れた悪魔が、アンドレイ=ラプソティたちの疑問を少しだけ解消するのであった。
「ご機嫌ヨウ。ベリアル。あなた、そっち側につくのであれば、少しは活躍しなサンナ」
「おおっ。久しぶりだな、ベルゼブブ。悪魔皇、悪魔将軍がこの地に居るなら、絶対に悪魔宰相のベルゼブブも来ていると思ったぜ。どこで油を売っていたんだ?」
「あなたたちに置いてけぼりを喰らっている面々にご挨拶してきタノ。彼らはこの土地に足を踏み入れただけで、満身創痍でしタワ」
「その口ぶりだと、直接的には手を出していないってことか。ありがてえ話だ。ここに集う面々に比べりゃ、あちらはここに足を踏み入れる前から疲弊していたからなっ!」
紫色の濃い魔素が集う場所に向かって、ベリアルは身構える。いつでも相手をしてやるとばかりに右手に持つ死神の大鎌を背中側に持っていく。未だ完全に地上界へと降臨していないベルゼブブはウフフ……と妖艶な笑みを零す。しかしながら、彼女の興味はベリアル以外に向くことになる。
「あら、あらあらあら。珍しい生き物が居ますコト。魔素を膣に散々受けたせいか、その本質をニンゲンから悪魔に近しい存在に作り替えられつつある人物が居ますワネ?」
「魔素を膣に受け……た? いったい、どこの誰のことを指して言っているんだ? 我輩はまだ、アリス嬢ちゃんの卑肉におちんこさんをねじ込んじゃいねえぞ!?」
「そこの可愛らしい胸が絶望的に育つ可能性が無いお嬢様のことを指していませんコトヨ。そちらではなくて、猫の尻尾が生えている方デスワ」
一同の視線が半猫半人に注がれることになる。皆の視線を一身に受けたミサ=ミケーンは、えっ!? えっ!? と驚きの表情となるのであった。
「た、確かにここ最近、アンドレイ様とずっ魂ばっ魂やってきましたけど、魔素をたっぷりと注がれた記憶はありませんニャン!?」
「あら? あらあらあら? 女のワタクシには感じますワヨ。貴女のお腹には新しい命が宿っていまスノ。そして、その新しい命が貴女に新しい呪力を与えていますワヨ」
「ええーーー!? あちきはついにアンドレイ様の子をお腹に宿したのですかニャン!? これは、今夜はお赤飯じゃないですかニャン!?」
「えっと……。ミサ、そこは喜んでいいところなんだろうけど、あんまり喜ばしいことじゃねえぞ!?」
「な、なんですかニャン!? あちきとアンドレイ様の間に赤ちゃんが出来たのですニャン! そこは皆で祝ってほしいのですニャン!}
ミサ=ミケーンの言うことはもっともであった。純粋な天使とニンゲンの間で赤ちゃんが出来るのは稀な現象である。ミサ=ミケーンにとって、これほど喜ばしいことは無いと言っても過言ではない。ついに待望の御懐妊となったのだ。だが、それが同時にミサ=ミケーンの身体に悪影響を及ぼしていることを、ミサ=ミケーンは数分後に知る由となる。
アリス=アンジェラは大きく振りかぶった右腕を内側に巻き込むように肩口から発射させる。巨大な壁となって立ちはだかる炎の巨人を一撃の下に沈めるのであった。アリス=アンジェラはハァハァと肩で息をしていた。首都の中ほどまでに到達するまでに、アリス=アンジェラが討伐した悪魔はこれでちょうど100体目であった。
腕が何本もある蜘蛛のような姿をした悪魔群を突破したかと思えば、地中から全身が炎で包まれた悪魔が突然、アリス=アンジェラたちの眼の前に立ちはだかった。だが、アリス=アンジェラは走っている勢いを殺さずに跳躍し、炎の悪魔の顔面に右の拳を叩きこんだのである。
「ノリノリじゃねえか、アリス嬢ちゃん!」
「ボクばかりに悪魔を倒させないでくだサイッ! ベリアルも働くのデスッ!」
「そう言われても、我輩は怠惰の権現様だからなぁ。おい、アンドレイ、今度はお前の方から氷の巨人が現れたぞっ!」
「やれやれ……。アリス殿。ベリアルにツッコミを入れていると、無駄に体力を消費してしまいますよ。登場したばかりで悪いですが、氷の悪魔には塩の柱となってもらいますっ!」
アンドレイ=ラプソティは右手に紅き竜の槍を握っていたが、空いている左手を氷の悪魔に向けると、その手のひらから、白銀色のぶっとい光線を打ち出す。その光線が氷の悪魔の首付近に当たると、そこを中心にして、半径3ミャートルが塩化してしまう。氷の悪魔は何かを言わんとする前にズズーーンと巨大な建造物が横倒れになっていく音を立てながら、地面へと伏してしまうのであった。
アリス=アンジェラたちは障壁となって立ちふさがる悪魔群をたった3人で屠りに屠る。彼女らは魔城まで残すところ1キュロミャートル付近まで到達していた。しかし、2人に戦闘を任せっきりのベリアルを除き、アリス=アンジェラとアンドレイ=ラプソティの疲労は顔にまで浮かび上がりつつあった。
「次に大物が出てきたら、絶対にベリアルに任せますカラネ!」
「我輩が出張るほどの大物なんて、まだ現れていないだろ? まだまだアリス嬢ちゃんが頑張るターンだなっ!」
「だから、アリス殿……。ベリアルに構うなと言っているのです。言い争いをしている時間があるなら、一体でも多く、悪魔を狩りましょう」
アリス=アンジェラは一度、右腕で額から流れる汗を拭い払うと、ふうふうと呼吸を整える。その間にも不気味に揺れる地面や建物から、悪魔たちがこの地上界へと浸食するかのように現れる。アリス=アンジェラが呼吸を整え終わる時間を稼ぐためにも、彼女ら3人の後ろで待機していたミサ=ミケーンが彼女らの前へと躍り出る。
ミサ=ミケーンは両手に1本ずつ持つ蝶の短刀を振り回す。それにより、地上界へと現れたばかりの悪魔たちは細切れにされてしまうのであった。
「よくわからないですけど、あちきは今、絶好調なのですニャン! 魔素が濃く渦巻くこの地獄の入り口なのに、何故か、身体からは力が溢れてきますニャン!」
ヨーコ=タマモですら、難儀しているこの魔素が濃く渦巻くレオンハイマートオートにおいて、たかだか一介の半猫半人でしかないミサ=ミケーンは、皆の不安を裏切り、躍動し続けていた。彼女の相方であるアンドレイ=ラプソティも訝しむほどの活躍ぶりである。
「ミサ殿が、この空間において、元気いっぱいなのは喜ばしいのですが、別の不安も感じてしまいます」
「あちきも、首都に足を踏み入れるまでは、心が不安で押しつぶされそうでしたニャン。でも、何故か、元気いっぱいですニャン!」
アンドレイ=ラプソティも、ミサ=ミケーンがこの空間で元気いっぱいな理由がよくわかっていなかった。しかしながら、次に現れた悪魔が、アンドレイ=ラプソティたちの疑問を少しだけ解消するのであった。
「ご機嫌ヨウ。ベリアル。あなた、そっち側につくのであれば、少しは活躍しなサンナ」
「おおっ。久しぶりだな、ベルゼブブ。悪魔皇、悪魔将軍がこの地に居るなら、絶対に悪魔宰相のベルゼブブも来ていると思ったぜ。どこで油を売っていたんだ?」
「あなたたちに置いてけぼりを喰らっている面々にご挨拶してきタノ。彼らはこの土地に足を踏み入れただけで、満身創痍でしタワ」
「その口ぶりだと、直接的には手を出していないってことか。ありがてえ話だ。ここに集う面々に比べりゃ、あちらはここに足を踏み入れる前から疲弊していたからなっ!」
紫色の濃い魔素が集う場所に向かって、ベリアルは身構える。いつでも相手をしてやるとばかりに右手に持つ死神の大鎌を背中側に持っていく。未だ完全に地上界へと降臨していないベルゼブブはウフフ……と妖艶な笑みを零す。しかしながら、彼女の興味はベリアル以外に向くことになる。
「あら、あらあらあら。珍しい生き物が居ますコト。魔素を膣に散々受けたせいか、その本質をニンゲンから悪魔に近しい存在に作り替えられつつある人物が居ますワネ?」
「魔素を膣に受け……た? いったい、どこの誰のことを指して言っているんだ? 我輩はまだ、アリス嬢ちゃんの卑肉におちんこさんをねじ込んじゃいねえぞ!?」
「そこの可愛らしい胸が絶望的に育つ可能性が無いお嬢様のことを指していませんコトヨ。そちらではなくて、猫の尻尾が生えている方デスワ」
一同の視線が半猫半人に注がれることになる。皆の視線を一身に受けたミサ=ミケーンは、えっ!? えっ!? と驚きの表情となるのであった。
「た、確かにここ最近、アンドレイ様とずっ魂ばっ魂やってきましたけど、魔素をたっぷりと注がれた記憶はありませんニャン!?」
「あら? あらあらあら? 女のワタクシには感じますワヨ。貴女のお腹には新しい命が宿っていまスノ。そして、その新しい命が貴女に新しい呪力を与えていますワヨ」
「ええーーー!? あちきはついにアンドレイ様の子をお腹に宿したのですかニャン!? これは、今夜はお赤飯じゃないですかニャン!?」
「えっと……。ミサ、そこは喜んでいいところなんだろうけど、あんまり喜ばしいことじゃねえぞ!?」
「な、なんですかニャン!? あちきとアンドレイ様の間に赤ちゃんが出来たのですニャン! そこは皆で祝ってほしいのですニャン!}
ミサ=ミケーンの言うことはもっともであった。純粋な天使とニンゲンの間で赤ちゃんが出来るのは稀な現象である。ミサ=ミケーンにとって、これほど喜ばしいことは無いと言っても過言ではない。ついに待望の御懐妊となったのだ。だが、それが同時にミサ=ミケーンの身体に悪影響を及ぼしていることを、ミサ=ミケーンは数分後に知る由となる。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
彼女の母は蜜の味
緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる