上 下
169 / 202
第17章:ミハエル救出

第7話:女狐の本質

しおりを挟む
「ふんっ。押し倒す前に、少しばかり痛めつけねばならぬのぅ!」

 ヨーコ=タマモは芭蕉扇を大きく振り回し、緑色で出来た風で魔術障壁マジック・バリアを張る。その魔術障壁マジック・バリアを食い破らんと大小さまざまな雷鳴の竜サンダー・ドラゴンが天から降り注いでくる。

 幾度も魔術障壁マジック・バリアが破砕する音が辺りに響き渡るが、ヨーコ=タマモは何度も芭蕉扇を大きく振り回す。雷鳴と緑色の風の塊が幾度ともなくぶつかり合い、互いの主張をぶつけ合う。ミハエル=アレクサンダーは天空から降り注いでいる雷鳴だけでは足りぬと判断し、今度はメデューサの盾へと長剣ロング・ソードの刃を何度もかち合わせる。

 横方向からの雷鳴が飛んでくると同時に、ヨーコ=タマモはまるで舞いを舞うかのように素早く足を運ぶ。それと同時に芭蕉扇も横薙ぎに払うのであった。横方向の雷鳴群と緑色の風の凶刃カマイタチ群が互いの身を食いちぎり合う。

 その様子をごくりと生唾を喉奥に押下しているアンドレイ=ラプソティたちであった。今のところ、ヨーコ=タマモはミハエル=アレクサンダーと互角の勝負を繰り広げている。しかし、いくら轟く雷鳴を真っ向から打ち払っていても、その雷鳴を越えた先には、メデューサの盾という絶対反射をおこなう防壁が待っていた。

 ヨーコ=タマモにそのメデューサの盾を越えて、ミハエル=アレクサンダーにダメージを与えれるかは謎のままである。しかしながら、そうだからといって、ヨーコ=タマモとミハエル=アレクサンダーのタイマンに介入することははばかれるアンドレイ=ラプソティたちであった。

「ほんにわらわは嫌われておるのう。そこまでして、わらわを近寄らせたくないのかえ?」

「うるさい、女狐めっ! さっさと神鳴りで丸焦げになるが良いっ!」

 実際のところ、ヨーコ=タマモが着ている着物のあちこちがミハエル=アレクサンダーが発する雷鳴群によって、黒焦げにされていた。ヨーコ=タマモが生み出す風の凶刃カマイタチは完全にはミハエル=アレクサンダーの雷撃を全て防いでいたわけではない。

 ヨーコ=タマモは妖艶な笑みを零しながらも、身体中から熱い汗を噴き出していた。ミハエル=アレクサンダーが放つ呪力ちからに自分の妖力ちからをぶつければ、ぶつけるほど、身体の膣奥から熱が溢れだしてくる。ヨーコ=タマモの子宮は、この外道の子種が欲しくてたまらないと、ヨーコ=タマモに訴えかけ続けたのである。

 ヨーコ=タマモは、ハァハァ……と熱い吐息を吐くと同時に、口からだけでなく、下の口からもヨダレが溢れ出してしまう。風の凶刃カマイタチをすり抜け、雷鳴がヨーコ=タマモに当たるや否や、ブシュッ! と卑肉から歓喜の音が漏れ出してしまう。

「ほんにおぬしはひどい男じゃ。女にここまで容赦なく、攻撃してくるかえ? ダン=クゥガーが過去の男に思えてくるほどの外道なのじゃっ!」

 ヨーコ=タマモは自分がクズ男好きなのを自覚している。クズな男たちのことを、ダメンズと称されることがある。そして、そんなダメンズと好んで付き合う女のことをダメンズ・ウォーカーと呼ぶこともある。ヨーコ=タマモはダメンズに対して、どうしても母性を発揮し、その母性で包み込まなければならないという観念にとらわれてしまう。

 ダン=クゥガーは自分が為したいことがあれば、ステディな関係にある女をも、あっさりと切り捨てる薄情者であった。だが、ダン=クゥガーはそもそもとして『世の中、どうなろうがどうでもいい』という考えの下、動いていた。ダン=クゥガーの属性は『間違いなく悪』であったが、『悪そのもの』では無かった。だからこそ、ダン=クゥガーに捨てられた時は、ヨーコ=タマモも割とあっさりと、ダン=クゥガーとの縁が切れてしまったのだと納得できた。

 しかしながら、今度のクズ男は、レオンハイマートオートに住む妊娠可能な女性たちの子宮を全て、悪魔皇;サタンに売り渡し、その代わりに自分は過大な呪力ちからを得たという、まさに外道であった。

 アンドレイ=ラプソティは彼が肉親を売り渡さなかったことを評価したが、ヨーコ=タマモは、母親も含めて、悪魔に子宮を売り渡してほしかったと、今更に思ってしまう。もし、母親すらも巻き込んでいたのなら、ヨーコ=タマモは卑肉からクジラのように潮を吹いていたに間違いなかったであろう。

「惜しい、惜しいのぅ!」

「何を言いたい!? まだ戯言をほざくかっ!」

「なあに。3万人以上の女子おなごの腹を捧げておいて、やること言えば、父の仇討ちなのじゃろう? そんなことが、それほど大事かえ?」

「グッ! 子が父の仇討をすることは、ヒトとして当然であろうっ! ヒトとして、何を間違っているのだっ!!」

「本当に救いようのない男じゃて。わらわがお主をベッドで寝かしつけながら、それほどの呪力ちからがあれば、レオン=アレクサンダー帝を超えるほどの大帝国を作れると教えてやるのじゃっ!」

 ヨーコ=タマモは正直に、ミハエル=アレクサンダーの呪力ちからを評価してみせる。しかし、ミハエル=アレクサンダーの眉間のシワはもっと深いモノに変わっていく。自分が為したいことは、ただひとつ、父親の仇を討つことだ。まずはそこからなのだ。これほどの呪力ちからがあるからこそ、逆に絶対に失敗できないことなのだ。

 ミハエル=アレクサンダーは自分の母以外の子宮を悪魔皇:サタンに捧げた。彼の乳母やお世話係の女中たちの子宮すらも捧げたのである。顔も知らぬ市井しせいの女たちの子宮だけではなかった。自分と関係の深い女性たちも犠牲にしたのである。だからこそ、復讐など無意味と思わせてやろうと言ってきた、この女狐だけは許せなかった。

「そこをどけっ! ヨーコ=タマモ!」

「はんっ! 他の女にうつつを抜かすことなど、絶対にさせる気はないのじゃ!」

 ミハエル=アレクサンダーは長剣ロング・ソードを介して、直接、ヨーコ=タマモの体内に叩きこんでやろうとした。今の今まで距離をなるべく開けて、ヨーコ=タマモと対峙してきたが、このままでは決着に時間がかかりすぎると判断したミハエル=アレクサンダーであった。

 一気に勝負に出たミハエル=アレクサンダーは右腕を大きく振り上げ、上段構えから、一直線にヨーコ=タマモの頭頂部へと長剣ロング・ソードを振り下ろしていく。ヨーコ=タマモは芭蕉扇を真っ二つにされ、さらに頭頂部へと長剣ロング・ソードを叩きこまれていこうとしているのに、そのギラつく視線だけは変わり映えはしなかった。

 ミハエル=アレクサンダーは殺ったと思った。だが、真っ二つにしたはずのヨーコ=タマモから血しぶきは上がらなかった。

「クッ! 失念していたっ! さすがは大妖狐の血を継ぐと言っているだけはあるっ!」

「今のは熱い汗ではなく、冷や汗が出たのじゃ。本当に真っ二つにされたかと思ったのじゃぞ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

彼女の母は蜜の味

緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…

【R18】少年のフリした聖女は触手にアンアン喘がされ、ついでに後ろで想い人もアンアンしています

アマンダ
恋愛
女神さまからのご命令により、男のフリして聖女として召喚されたミコトは、世界を救う旅の途中、ダンジョン内のエロモンスターの餌食となる。 想い人の獣人騎士と共に。 彼の運命の番いに選ばれなかった聖女は必死で快楽を堪えようと耐えるが、その姿を見た獣人騎士が……? 連載中の『世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!〜少年聖女と獣人騎士の攻防戦〜』のR18ver.となっています!本編を見なくてもわかるようになっています。前後編です!! ご好評につき続編『触手に犯される少年聖女を見て興奮した俺はヒトとして獣人として最低です』もUPしましたのでよかったらお読みください!!

処理中です...