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第15章:ダン=クゥガー
第8話:意地と意地
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ダン=クゥガーは自身の正面に両手を突き出し、そこに分厚く大きな魔法陣を展開する。その展開された魔法陣を真正面からぶち抜こうとしていたのが、アリス=アンジェラであった。アリス=アンジェラはグヌヌゥ! と唸りながら、止められてしまった右の拳を少しでも前へと突き動かす。それに反発するかのように、ダン=クゥガーは玉のような汗を顔中から噴き出しながら、必死に耐えるのであった。
「そのキレイな顔をぶっ飛ばしてやるのデス!」
「お前に殴られるために産まれてきた覚えなんかねえわっ!」
まさに意地と意地の張り合いが起きていた。ダン=クゥガーなる男は基本的にこの世の中がどうなろうが『どうでもいい』と思ってきた人物である。それゆえに厭世観が強く、物事に対しての成否など、まさに『どうでもいい』という感想を抱いていた。だが、アリス=アンジェラが真正面から真っ直ぐに右の拳を叩きこんできたことに対してだけは、ダン=クゥガーの心奥から熱い何かが湧き出てくることになる。
「いい加減、しつこいのデス! アリスの燃える鉄拳制裁を喰らってくだサイ!」
「うるせえええ! そんなので殴られたら、俺様のイケメンがグチャグチャになるわっ! てめえこそ、いい加減、諦めろっっっ!」
アリス=アンジェラがダン=クゥガーが展開した魔法陣に右の拳をぶち込んでから、早1分が経過しようとしていた。どちらも、額から汗をダラダラと垂れ流している。この意地の張り合いの結果が見えるまで、あと十数秒もかからないのだが、アリス=アンジェラとダン=クゥガーは持てる神力と呪力の全てを、そこにつぎ込んだと言っても過言では無かった。
そして、この意地の張り合いの勝者は意外な人物に訪れることになる。
「はーははっ! どうだ、まいったかっ! 俺様の方が強いに決まっているだろっ!!」
「くぅぅぅ! 悔しいのデス! アリスのありったけの神力を否定されてしまったのデス! これほど悔しい思いをしたのは初めてかもしれないのデス!」
いくらダン=クゥガーに剣と魔法の闘技場の加護があるからといって、アリス=アンジェラはこの純粋な神力と呪力の勝負に負けたいなどと思わなかった。それゆえに、ダン=クゥガーの顔面に右の拳を叩きこむことに全力を注いだ。しかし、結果は振るわなかった。アリス=アンジェラの人生における初めての挫折となった。
しかし、アリス=アンジェラは彼女の人生における初めての挫折を心地良く受け入れる気など、まったくもってなかった。はあはあぜえぜえと肩で息をしながらも、立ち上がり、もう一度、グルングルンと右腕を大きく振り回し始めたのである。
「いいぜいいぜっ! 戦う前に言った暴言は撤回してやるっ! お前は最高に良い女だっ!!」
「何を言われたか、すっかり忘れていたのデス! 撤回されたところで、あなたを殴る意志は取り下げまセン!」
アリス=アンジェラはとうの昔に、ダン=クゥガーから言われた顔がキレイなだけで貧相な身体の持ち主という暴言など、頭の中から吹っ飛んでいた。ダン=クゥガーの謝罪に似た言葉で、先ほどの言葉を思い出すことになるが、そんなことは彼女にとって、もはや、どうでもいいことであった。何が何でも、この真っ赤に燃える右の拳をイケメン風なあいつの顔面にぶち込みたい、ただそれだけであった。
アリス=アンジェラとダン=クゥガーの第2ラウンドが始まる。アリス=アンジェラはこの時、意外と冷静であった。ただ単純に燃え盛る右の拳を叩きこむのではなく、まず、左の拳で牽制を入れたのである。ダン=クゥガーはククッ! と笑みを零し、牽制で出された左の拳を右手の前で展開している魔法陣で捌いていく。
アリス=アンジェラの左拳のジャブには明らかに神力が込められてない。いや、むしろ、神力を込めるだけの余力が無かったのである。アリス=アンジェラは左のジャブに速度だけは乗せた。だが、神力は込めなかった。あくまでも牽制であり、少しでもダン=クゥガーの防御を崩すために放った3撃であった。
ダン=クゥガー側も、これはただの牽制であることはわかっている。それゆえに、右手の魔法陣で軽く裁きつつ、本命の右ストレートを待っていた。しかしながら、ダン=クゥガーの予想外だったのはアリス=アンジェラの放った本命の右ストレート自体が牽制であることだ。
アリス=アンジェラはテレフォンパンチと呼ばれるほどに、真っ直ぐに燃え盛る右の拳をダン=クゥガーにぶっ放してきた。ダン=クゥガーは二度目も防いでやるとばかりに両手で構えた魔法陣でアリス=アンジェラの燃え盛る右の拳を防御してみせる。アリス=アンジェラは全体重を右の拳に乗せつつ、グイグイとダン=クゥガーを押していく。
ダン=クゥガーはこの時、アリス=アンジェラの神力の込め方が、先ほどとは違うことには感づいていた。だが、やっていること自体は同じであるがために、ダン=クゥガーもまた、真正面からアリス=アンジェラの右のストレートを防御しつづけた。それが始まって、またもや1分余りの攻防が始まることになる。
アリス=アンジェラの右の拳に纏う炎が段々と小さくなっていくにつれて、ダン=クゥガーの顔は喜色が強まっていく。所詮、細腕の小娘の放つ右のストレートが、強靭な魔法陣を突き破ることなど、決して出来やしないとタカを括り始めていた。
だが、アリス=アンジェラの追撃がここから始まる。アリス=アンジェラは右の拳だけでは、この強固な魔法陣を打ち破ることなど出来ないことは、先ほど、証明されたばかりである。そんな彼女が取るべき行動はただひとつ。『右の拳だけでダメなら、左の拳も叩きこめ』である。
アリス=アンジェラは右の拳を引かぬままに、左の拳もダン=クゥガーが展開する魔法陣へと叩きこむ。ダン=クゥガーは思わず、ヌグゥ!? と苦悶の声を上げることになる。ダン=クゥガーはその両方の拳を叩きこまれことに対処しようとするが、その前にアリス=アンジェラが両の拳に炎を纏わせたのであった。
「アリス嬢ちゃんにしては、考えたじゃねえか。だが、1の矢、2の矢でダメなら、3の矢って言葉がある。アリス嬢ちゃんはそこまで頭が回るかねえ?」
「チュッチュッチュ。ベリアルは楽しそうに観戦しているッチュウけど、我輩はヒヤヒヤなのでッチュウ」
「アリスちゃん、頑張るニャン! 拳だけで足りないなら、頭を使うのですニャン!」
「そのキレイな顔をぶっ飛ばしてやるのデス!」
「お前に殴られるために産まれてきた覚えなんかねえわっ!」
まさに意地と意地の張り合いが起きていた。ダン=クゥガーなる男は基本的にこの世の中がどうなろうが『どうでもいい』と思ってきた人物である。それゆえに厭世観が強く、物事に対しての成否など、まさに『どうでもいい』という感想を抱いていた。だが、アリス=アンジェラが真正面から真っ直ぐに右の拳を叩きこんできたことに対してだけは、ダン=クゥガーの心奥から熱い何かが湧き出てくることになる。
「いい加減、しつこいのデス! アリスの燃える鉄拳制裁を喰らってくだサイ!」
「うるせえええ! そんなので殴られたら、俺様のイケメンがグチャグチャになるわっ! てめえこそ、いい加減、諦めろっっっ!」
アリス=アンジェラがダン=クゥガーが展開した魔法陣に右の拳をぶち込んでから、早1分が経過しようとしていた。どちらも、額から汗をダラダラと垂れ流している。この意地の張り合いの結果が見えるまで、あと十数秒もかからないのだが、アリス=アンジェラとダン=クゥガーは持てる神力と呪力の全てを、そこにつぎ込んだと言っても過言では無かった。
そして、この意地の張り合いの勝者は意外な人物に訪れることになる。
「はーははっ! どうだ、まいったかっ! 俺様の方が強いに決まっているだろっ!!」
「くぅぅぅ! 悔しいのデス! アリスのありったけの神力を否定されてしまったのデス! これほど悔しい思いをしたのは初めてかもしれないのデス!」
いくらダン=クゥガーに剣と魔法の闘技場の加護があるからといって、アリス=アンジェラはこの純粋な神力と呪力の勝負に負けたいなどと思わなかった。それゆえに、ダン=クゥガーの顔面に右の拳を叩きこむことに全力を注いだ。しかし、結果は振るわなかった。アリス=アンジェラの人生における初めての挫折となった。
しかし、アリス=アンジェラは彼女の人生における初めての挫折を心地良く受け入れる気など、まったくもってなかった。はあはあぜえぜえと肩で息をしながらも、立ち上がり、もう一度、グルングルンと右腕を大きく振り回し始めたのである。
「いいぜいいぜっ! 戦う前に言った暴言は撤回してやるっ! お前は最高に良い女だっ!!」
「何を言われたか、すっかり忘れていたのデス! 撤回されたところで、あなたを殴る意志は取り下げまセン!」
アリス=アンジェラはとうの昔に、ダン=クゥガーから言われた顔がキレイなだけで貧相な身体の持ち主という暴言など、頭の中から吹っ飛んでいた。ダン=クゥガーの謝罪に似た言葉で、先ほどの言葉を思い出すことになるが、そんなことは彼女にとって、もはや、どうでもいいことであった。何が何でも、この真っ赤に燃える右の拳をイケメン風なあいつの顔面にぶち込みたい、ただそれだけであった。
アリス=アンジェラとダン=クゥガーの第2ラウンドが始まる。アリス=アンジェラはこの時、意外と冷静であった。ただ単純に燃え盛る右の拳を叩きこむのではなく、まず、左の拳で牽制を入れたのである。ダン=クゥガーはククッ! と笑みを零し、牽制で出された左の拳を右手の前で展開している魔法陣で捌いていく。
アリス=アンジェラの左拳のジャブには明らかに神力が込められてない。いや、むしろ、神力を込めるだけの余力が無かったのである。アリス=アンジェラは左のジャブに速度だけは乗せた。だが、神力は込めなかった。あくまでも牽制であり、少しでもダン=クゥガーの防御を崩すために放った3撃であった。
ダン=クゥガー側も、これはただの牽制であることはわかっている。それゆえに、右手の魔法陣で軽く裁きつつ、本命の右ストレートを待っていた。しかしながら、ダン=クゥガーの予想外だったのはアリス=アンジェラの放った本命の右ストレート自体が牽制であることだ。
アリス=アンジェラはテレフォンパンチと呼ばれるほどに、真っ直ぐに燃え盛る右の拳をダン=クゥガーにぶっ放してきた。ダン=クゥガーは二度目も防いでやるとばかりに両手で構えた魔法陣でアリス=アンジェラの燃え盛る右の拳を防御してみせる。アリス=アンジェラは全体重を右の拳に乗せつつ、グイグイとダン=クゥガーを押していく。
ダン=クゥガーはこの時、アリス=アンジェラの神力の込め方が、先ほどとは違うことには感づいていた。だが、やっていること自体は同じであるがために、ダン=クゥガーもまた、真正面からアリス=アンジェラの右のストレートを防御しつづけた。それが始まって、またもや1分余りの攻防が始まることになる。
アリス=アンジェラの右の拳に纏う炎が段々と小さくなっていくにつれて、ダン=クゥガーの顔は喜色が強まっていく。所詮、細腕の小娘の放つ右のストレートが、強靭な魔法陣を突き破ることなど、決して出来やしないとタカを括り始めていた。
だが、アリス=アンジェラの追撃がここから始まる。アリス=アンジェラは右の拳だけでは、この強固な魔法陣を打ち破ることなど出来ないことは、先ほど、証明されたばかりである。そんな彼女が取るべき行動はただひとつ。『右の拳だけでダメなら、左の拳も叩きこめ』である。
アリス=アンジェラは右の拳を引かぬままに、左の拳もダン=クゥガーが展開する魔法陣へと叩きこむ。ダン=クゥガーは思わず、ヌグゥ!? と苦悶の声を上げることになる。ダン=クゥガーはその両方の拳を叩きこまれことに対処しようとするが、その前にアリス=アンジェラが両の拳に炎を纏わせたのであった。
「アリス嬢ちゃんにしては、考えたじゃねえか。だが、1の矢、2の矢でダメなら、3の矢って言葉がある。アリス嬢ちゃんはそこまで頭が回るかねえ?」
「チュッチュッチュ。ベリアルは楽しそうに観戦しているッチュウけど、我輩はヒヤヒヤなのでッチュウ」
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