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第14章:首都攻防戦
第5話:ヨーコとクリス
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ヨーコ=タマモはダン=クゥガー様の復讐を成し遂げるための軍師役を務めているわけだが、今、ヨーコ=タマモはダン=クゥガー様の復讐のために、ダン=クゥガー様自身を手駒のひとつとして半天半人の前に配置した。
しかし、片翼の半天半人は、そもそも、ダン=クゥガー様を路傍の石を見ているが如くであった。真に倒すべき相手は、魔物の一軍を思いがままに動かしている半狐半人だと考えている風であった。
そう確信しているのであろうという行動を半天半人が取る。半天半人はその場で霞のように消えてしまう。そして、次に存在感を露わにした時、ヨーコ=タマモはゾクリと背中に悪寒が走ることになる。
半天半人が姿を顕在化した場所は傘付き戦車の上であった。しかも、ヨーコ=タマモの眼前である。ヨーコ=タマモは最善の手を通すためなら、自分の主の命すらも質草に入れることが出来る名軍師であった。
まさに『戦略を戦術で覆そうとする』存在が、一瞬の動きを見せ、名軍師の前に忽然と現れたのだが、次の瞬間には横殴りの呪力により、彼女は遥か彼方へと吹っ飛ばされたのである。
「あいつ、おもしれえな。俺様を一眼すらせずに、お前を真っ先に狙ってきやがったぜ」
「心臓が未だにバクバクと跳ね上がっておりますのじゃ。強行突破という言葉すら、愚かだと言いたくなるほどですのう。将を討たんとするならば、まずは馬を射よという言葉すら知らなそうでありますのじゃ」
「かはっ! いつから主従関係が逆転したかは知らねえが、あいつはヨーコの言う通り、ワイルドカードすぎる。邪魔をされる前に、俺様は俺様の願いを叶えにいこう」
傘付きの戦車の上に再び乗っていたダン=クゥガーが、さも立小便をしてくるとも言いたげな台詞を残し、傘付きの戦車の上から飛び降り、戦場のど真ん中へと消えていくのであった。そして、彼が小便をひっかける対象が何であるかも、重々承知であるヨーコ=タマモであった。
(ダン=クゥガー様は、これ以上の邪魔が入らぬようにと、ヴァルハラントへ単機乗り込み、レオン=アレクサンダー帝の遺児たちのことごとくを殺すおつもりなのじゃ。さて、わらわは出来る限りの時間稼ぎをしておきますかのう……)
事、ここに至り、ヨーコ=タマモは自分の死を覚悟する。ダン=クゥガー様は自分の手のひらの上から飛び出していってしまった。そこまでの道筋をつけるのが、ヨーコ=タマモとクリスティーナ=ベックマンの役目ではあるのだが、少しばかり、寂しい気持ちになってしまうのは致し方ないことであった。
いくら、ベッドの上で肉棒と肉穴を激しく絡め合った仲だったとしても、情を抱いていたのは、ヨーコ=タマモだけだったのである。ヨーコ=タマモ自身もこうなることを予想してはいたが、それが思っていたよりも早く気づかされる結果となってしまう。
「いたたたた……。可愛い美少女の顔面にドロップキックをかますのは、男として、恥を知るが良いのデス!」
「はんっ! ダン=クゥガー様にとって、わらわは大事な女であるがゆえに、取った行動よ。其方のような処女には、わからぬ感情かも知れぬのう?」
ヨーコ=タマモはそううそぶく他無かった。自分の身を護ってくれる騎士は、すでにこの場には居ない。目的を果たすためなら、悪魔とも契約する男なのだ、ダン=クゥガー様は。そして、手に入れた呪力をもってして、単身、首都:ヴァルハラントへと向かってしまっていた。ひとり残されたヨーコ=タマモは、眼前の片翼の半天半人が一番に討伐する対象であった。
ヨーコ=タマモは軍師であるが、それと同時に個人的武力はクリスティーナ=ベックマンと比べれば、数段、見劣りしてしまう。彼女はちらりとクリスティーナ=ベックマンの方へと視線を移動させるが、クリスティーナ=ベックマンは高笑いをしながら、半猫半人と6枚羽の熾天使相手に奮闘を続けていた。
クリスティーナ=ベックマンは透明なヨダレの代わりに、口からダラダラと血の色をしたヨダレを溢れ出させていた。彼女の身体を包む拳法着は刃物でズタボロにされ、さらには炎を吹く紅い槍で、あちこちが炭化していた。彼女は生粋の半龍半人であり、キョーコ=モトカードが興したモトカード流拳法の師範格でもある。
キョーコ=モトカードは半虎半人であり、その一代で、モトカード流拳法を興した人物である。彼女自身は今から300年前の第3次天魔大戦に参加した歴戦の戦士であった。しかし、次に天魔大戦が起きれば、地上界のことごとくが火の海に包まれるであろうという危惧の下、彼女は少しでも、自分の拳法術を世の中の人々に広めようとした。
そして、キョーコ=モトカードのその意志を引き継いだ師範たちは、地上界の各地に散らばり、キョーコ=モトカードの遺した拳法術を広めていく。そして、それと同時にモトカード流拳法の亜流が興り、同時に廃れていった。奇跡的に残った本流とも源流とも呼べる拳法術が、クリスティーナ=ベックマンが生まれ育った村まで伝わることになる。
クリスティーナ=ベックマンは、世が世ならば、キョーコ=モトカードの意志を継ぐ女性になっていたかもしれない。『不世出の天才』という言葉が世の中に溢れかえる中、クリスティーナ=ベックマンはこの言葉の体現者でもあった。だが、この言葉はふたつの意味を持っている。その裏に隠された意味も含め、クリスティーナ=ベックマンは『不世出の天才』であったのだ。
クリスティーナ=ベックマンは、モトカード流拳法・源流を修めたは良いが、その頃になると、仙人に近い生活を送るようになっていた。このまま、この村で小さな道場を営み続け、後世でモトカード流拳法・源流を継ぐにふさわしい人物を待ち続けるだけであった。
しかし、その村に運命の女性が現れることになる。反政府的扇動者として、流刑となった半天半人のヨーコ=タマモである。ヨーコ=タマモはエイコー大陸の東海岸一帯に広がっていたとある国家において宮廷勤めをしていた。しかし、その国家は第2次、第3次天魔大戦を経験し、さらには悪魔と天使の戦いに巻き込まれたことで、ヨーコ=タマモが宮仕えしていた大国は16か国に分断されることになる。
しかしながら、ヨーコ=タマモは各国で引っ張りだこであり、どこの国でもヨーコ=タマモを欲しがった。しかし、ヒトの心から妬みや嫉みを完全に消し去ることは出来ない。ヨーコ=タマモはとある小国の代替わり紛争に巻き込まれ、失脚するに至る……。
しかし、片翼の半天半人は、そもそも、ダン=クゥガー様を路傍の石を見ているが如くであった。真に倒すべき相手は、魔物の一軍を思いがままに動かしている半狐半人だと考えている風であった。
そう確信しているのであろうという行動を半天半人が取る。半天半人はその場で霞のように消えてしまう。そして、次に存在感を露わにした時、ヨーコ=タマモはゾクリと背中に悪寒が走ることになる。
半天半人が姿を顕在化した場所は傘付き戦車の上であった。しかも、ヨーコ=タマモの眼前である。ヨーコ=タマモは最善の手を通すためなら、自分の主の命すらも質草に入れることが出来る名軍師であった。
まさに『戦略を戦術で覆そうとする』存在が、一瞬の動きを見せ、名軍師の前に忽然と現れたのだが、次の瞬間には横殴りの呪力により、彼女は遥か彼方へと吹っ飛ばされたのである。
「あいつ、おもしれえな。俺様を一眼すらせずに、お前を真っ先に狙ってきやがったぜ」
「心臓が未だにバクバクと跳ね上がっておりますのじゃ。強行突破という言葉すら、愚かだと言いたくなるほどですのう。将を討たんとするならば、まずは馬を射よという言葉すら知らなそうでありますのじゃ」
「かはっ! いつから主従関係が逆転したかは知らねえが、あいつはヨーコの言う通り、ワイルドカードすぎる。邪魔をされる前に、俺様は俺様の願いを叶えにいこう」
傘付きの戦車の上に再び乗っていたダン=クゥガーが、さも立小便をしてくるとも言いたげな台詞を残し、傘付きの戦車の上から飛び降り、戦場のど真ん中へと消えていくのであった。そして、彼が小便をひっかける対象が何であるかも、重々承知であるヨーコ=タマモであった。
(ダン=クゥガー様は、これ以上の邪魔が入らぬようにと、ヴァルハラントへ単機乗り込み、レオン=アレクサンダー帝の遺児たちのことごとくを殺すおつもりなのじゃ。さて、わらわは出来る限りの時間稼ぎをしておきますかのう……)
事、ここに至り、ヨーコ=タマモは自分の死を覚悟する。ダン=クゥガー様は自分の手のひらの上から飛び出していってしまった。そこまでの道筋をつけるのが、ヨーコ=タマモとクリスティーナ=ベックマンの役目ではあるのだが、少しばかり、寂しい気持ちになってしまうのは致し方ないことであった。
いくら、ベッドの上で肉棒と肉穴を激しく絡め合った仲だったとしても、情を抱いていたのは、ヨーコ=タマモだけだったのである。ヨーコ=タマモ自身もこうなることを予想してはいたが、それが思っていたよりも早く気づかされる結果となってしまう。
「いたたたた……。可愛い美少女の顔面にドロップキックをかますのは、男として、恥を知るが良いのデス!」
「はんっ! ダン=クゥガー様にとって、わらわは大事な女であるがゆえに、取った行動よ。其方のような処女には、わからぬ感情かも知れぬのう?」
ヨーコ=タマモはそううそぶく他無かった。自分の身を護ってくれる騎士は、すでにこの場には居ない。目的を果たすためなら、悪魔とも契約する男なのだ、ダン=クゥガー様は。そして、手に入れた呪力をもってして、単身、首都:ヴァルハラントへと向かってしまっていた。ひとり残されたヨーコ=タマモは、眼前の片翼の半天半人が一番に討伐する対象であった。
ヨーコ=タマモは軍師であるが、それと同時に個人的武力はクリスティーナ=ベックマンと比べれば、数段、見劣りしてしまう。彼女はちらりとクリスティーナ=ベックマンの方へと視線を移動させるが、クリスティーナ=ベックマンは高笑いをしながら、半猫半人と6枚羽の熾天使相手に奮闘を続けていた。
クリスティーナ=ベックマンは透明なヨダレの代わりに、口からダラダラと血の色をしたヨダレを溢れ出させていた。彼女の身体を包む拳法着は刃物でズタボロにされ、さらには炎を吹く紅い槍で、あちこちが炭化していた。彼女は生粋の半龍半人であり、キョーコ=モトカードが興したモトカード流拳法の師範格でもある。
キョーコ=モトカードは半虎半人であり、その一代で、モトカード流拳法を興した人物である。彼女自身は今から300年前の第3次天魔大戦に参加した歴戦の戦士であった。しかし、次に天魔大戦が起きれば、地上界のことごとくが火の海に包まれるであろうという危惧の下、彼女は少しでも、自分の拳法術を世の中の人々に広めようとした。
そして、キョーコ=モトカードのその意志を引き継いだ師範たちは、地上界の各地に散らばり、キョーコ=モトカードの遺した拳法術を広めていく。そして、それと同時にモトカード流拳法の亜流が興り、同時に廃れていった。奇跡的に残った本流とも源流とも呼べる拳法術が、クリスティーナ=ベックマンが生まれ育った村まで伝わることになる。
クリスティーナ=ベックマンは、世が世ならば、キョーコ=モトカードの意志を継ぐ女性になっていたかもしれない。『不世出の天才』という言葉が世の中に溢れかえる中、クリスティーナ=ベックマンはこの言葉の体現者でもあった。だが、この言葉はふたつの意味を持っている。その裏に隠された意味も含め、クリスティーナ=ベックマンは『不世出の天才』であったのだ。
クリスティーナ=ベックマンは、モトカード流拳法・源流を修めたは良いが、その頃になると、仙人に近い生活を送るようになっていた。このまま、この村で小さな道場を営み続け、後世でモトカード流拳法・源流を継ぐにふさわしい人物を待ち続けるだけであった。
しかし、その村に運命の女性が現れることになる。反政府的扇動者として、流刑となった半天半人のヨーコ=タマモである。ヨーコ=タマモはエイコー大陸の東海岸一帯に広がっていたとある国家において宮廷勤めをしていた。しかし、その国家は第2次、第3次天魔大戦を経験し、さらには悪魔と天使の戦いに巻き込まれたことで、ヨーコ=タマモが宮仕えしていた大国は16か国に分断されることになる。
しかしながら、ヨーコ=タマモは各国で引っ張りだこであり、どこの国でもヨーコ=タマモを欲しがった。しかし、ヒトの心から妬みや嫉みを完全に消し去ることは出来ない。ヨーコ=タマモはとある小国の代替わり紛争に巻き込まれ、失脚するに至る……。
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