106 / 202
第11章:竜皇の宮殿
第4話:降臨
しおりを挟む
紅玉眼の蒼き竜は自分の右腕の先から右肩全体が塩の塊になってしまったことに大層驚くことになる。他者の神力を自分の神力に変換する天使は数多く居るが、竜の竜力さえも、自分の神力にしてしまえるアンドレイ=ラプソティに敬意を示したくなってしまう。
彼との戦いはここまでだと感じた紅玉眼の蒼き竜は、竜の住処内部から、冷気を消していく。それによって、敵意を失くしたと感じたアンドレイ=ラプソティもまた、現出させていた背中の6枚羽と紅き竜の槍を光の粒子へと変えて、この場から消すのであった。
「何故、私たちを敵視したのですか?」
アンドレイ=ラプソティは神力を示したことで、対等に古龍と話し合えると思った。そして、紅玉眼の蒼き竜もまた、竜皇様の宮殿で起きていることをアンドレイ=ラプソティに告げるだけの価値があると認識する。アンドレイ=ラプソティは眉根をひそめ、そんなことを創造主:Y.O.N.N様が行うはずが無いと言う。
紅玉眼の蒼き竜は紅いふたつの三日月を細め、アンドレイ=ラプソティを睨む。だが、次の瞬間には鋭い目つきを止め、アンドレイ=ラプソティの言葉を信じようとするのであった。
「では、誰が竜皇様にあのような無体なことをしたのだと思う?」
「七大悪魔がもっともやりそうなことですが、彼らもまた竜族の竜力を借りたい側のはずです」
「そうだ。天界も魔界も、次の天魔大戦でも竜族の竜力を欲するはずだ。我らはそれだけの竜力を持っているという自負がある。自分の敵に回るかもしれないからといって、竜皇様を排除する理由にはならないはずだ」
アンドレイ=ラプソティは両手をミサ=ミケーンにかざしながら、紅玉眼の蒼き竜の言いを聞いていた。アンドレイ=ラプソティもまた訝し気な表情になっており、いったいぜんたい、誰が何の目的で竜皇に危害を加える必要があったのだろうか? と思わざるをえなかった。
「ここ30年近く、天界には戻っていませんが、創造主:Y.O.N.N様が竜皇様を排除しようとしている話など、噂程度にも流れてきていません」
「そうか……。ならば、七大悪魔にも聞かねば、不公平と言うものだな……。そろそろ、姿を現してはどうか?」
紅玉眼の蒼き竜はアンドレイ=ラプソティから視線を逸らし、竜の住処内のとある一点を見つめる。紅いふたつの三日月に睨まれたかの存在は顎をコリコリと右手のひとさし指で掻きながら、その存在感を露わにする。
「我の意見を聞きたいってか。この宮殿にはベリアルも居るんだ。そっちに聞けば良いだけの話だろう」
「ふんっ……。怠惰の権現様こと、ベリアルに何を問えと? 貴様はあの男の道化っぷりにさぞかし満足しているはずだ、サタン」
紅玉眼の蒼き竜が『サタン』という名を言葉にすると、その言霊の竜力により、現世に悪魔皇が降臨する。古龍が羽根虫であるかのように思えるほどの、圧倒的な存在が竜の住処内部に現れ出でる。その存在はニヤリと口の端を歪ませ、背中の悪魔の8枚羽を緩く羽ばたかせている。厳かな風が竜の住処内部に吹くことになるが、この内部の重力自体が30倍になってしまったかの印象を受けてしまう面々であった。
「うぅ……。耳がキーーーーン! とするニャン。さっきまで感じていた寒さとはまた異質の寒さなのですニャン」
「サタン殿。この竜の住処の中には、いたいけな半猫半人も居ます。どうか、その威厳を少しだけも和らげてくださいませんか?」
「おっと、悪い悪い。このクソ生意気な竜が、俺様を現世に降臨させるために言霊に竜力を込めやがったからな。ちょっと、仕置きでもしようと思ったんだぜ」
力を持つ者は、その発声自体に力を乗せることが出来る。それを『言霊』と呼ぶのだが、その言葉通り、まさに言葉に力が乗るのだ、古龍や高位の天使、そして高位の悪魔ともなると。そして、言霊の竜力により、様子見していただけの悪魔皇をこの竜の住処内に呼び寄せたのが、紅玉眼の蒼き竜だったのである。
この行為に損害を被るのは、半猫半人に過ぎないミサ=ミケーンであった。ようやく、紅玉眼の蒼き竜からの冷気から解放されたというのに、ねっとりとねばつく粘液に絡み取られたかのような重さを身体に感じてしまうミサ=ミケーンであった。
しかしながら、悪魔皇ことサタンが地面へと着地し、背中の8枚羽をしまうと、彼から受ける重力は眼に見えて和らぐことになる。ミサ=ミケーンはようやく安堵の息を吐くことが出来るようになった。
「アンドレイ様のお知り合いですかニャン? すっごいイケメンですけど、底のわからない悪を感じるのですニャン」
「ミサ殿、それは彼にとってはただの誉め言葉なので、やめておいたほうが良いですよ。ほら、聞き耳を立てているのが丸わかりです。サタン殿の右耳がピクピク動いています」
悪魔にとって『悪』という言葉はそのまま誉め言葉になってしまう。気を良くした悪魔皇は腰に両手を当てながら踏ん反り返っていく。ここまで鼻高々な態度は、同じ七大悪魔のベリアルでも取らない。さすがは悪魔皇といった不遜な態度でもあった。
「よぉし、よぉし。気分が良い内に言っておいてやろう。竜皇がああなったのは、ただの寿命だ。しかし、それから後のことは、我も創造主:Y.O.N.Nも預かり知らぬことだ」
「ただの寿命? そして、その後のことは、お前たちですら、関わっていないことだと? それを信じろと言うのか!?」
「そんなにがなるんじゃねえ……。俺様が誰だと知っての狼藉……か?」
紅玉眼の蒼き竜はグヌゥ……と唸る他無かった。悪魔皇の身体からドス黒いオーラが溢れ出したのだ。先ほどまで上機嫌だったと思えば、自分の言葉ひとつで、みるみる内に豹変していくのだ。まるで、今まではただ単に虫の居所が良かっただけだと言っているようにも思えた。古龍なぞ、指先ひとつでぶち殺しても構わんのだぞ? と、その雰囲気がそう言っていた。
「すまない。疑ったことは謝ろう」
「ちょっと!? アンドレイ様に対しての態度と、このイケメン悪魔に対しての態度が720度違うニャン!?」
「ミサ殿……。720度だと、2周回って同じですよ……」
彼との戦いはここまでだと感じた紅玉眼の蒼き竜は、竜の住処内部から、冷気を消していく。それによって、敵意を失くしたと感じたアンドレイ=ラプソティもまた、現出させていた背中の6枚羽と紅き竜の槍を光の粒子へと変えて、この場から消すのであった。
「何故、私たちを敵視したのですか?」
アンドレイ=ラプソティは神力を示したことで、対等に古龍と話し合えると思った。そして、紅玉眼の蒼き竜もまた、竜皇様の宮殿で起きていることをアンドレイ=ラプソティに告げるだけの価値があると認識する。アンドレイ=ラプソティは眉根をひそめ、そんなことを創造主:Y.O.N.N様が行うはずが無いと言う。
紅玉眼の蒼き竜は紅いふたつの三日月を細め、アンドレイ=ラプソティを睨む。だが、次の瞬間には鋭い目つきを止め、アンドレイ=ラプソティの言葉を信じようとするのであった。
「では、誰が竜皇様にあのような無体なことをしたのだと思う?」
「七大悪魔がもっともやりそうなことですが、彼らもまた竜族の竜力を借りたい側のはずです」
「そうだ。天界も魔界も、次の天魔大戦でも竜族の竜力を欲するはずだ。我らはそれだけの竜力を持っているという自負がある。自分の敵に回るかもしれないからといって、竜皇様を排除する理由にはならないはずだ」
アンドレイ=ラプソティは両手をミサ=ミケーンにかざしながら、紅玉眼の蒼き竜の言いを聞いていた。アンドレイ=ラプソティもまた訝し気な表情になっており、いったいぜんたい、誰が何の目的で竜皇に危害を加える必要があったのだろうか? と思わざるをえなかった。
「ここ30年近く、天界には戻っていませんが、創造主:Y.O.N.N様が竜皇様を排除しようとしている話など、噂程度にも流れてきていません」
「そうか……。ならば、七大悪魔にも聞かねば、不公平と言うものだな……。そろそろ、姿を現してはどうか?」
紅玉眼の蒼き竜はアンドレイ=ラプソティから視線を逸らし、竜の住処内のとある一点を見つめる。紅いふたつの三日月に睨まれたかの存在は顎をコリコリと右手のひとさし指で掻きながら、その存在感を露わにする。
「我の意見を聞きたいってか。この宮殿にはベリアルも居るんだ。そっちに聞けば良いだけの話だろう」
「ふんっ……。怠惰の権現様こと、ベリアルに何を問えと? 貴様はあの男の道化っぷりにさぞかし満足しているはずだ、サタン」
紅玉眼の蒼き竜が『サタン』という名を言葉にすると、その言霊の竜力により、現世に悪魔皇が降臨する。古龍が羽根虫であるかのように思えるほどの、圧倒的な存在が竜の住処内部に現れ出でる。その存在はニヤリと口の端を歪ませ、背中の悪魔の8枚羽を緩く羽ばたかせている。厳かな風が竜の住処内部に吹くことになるが、この内部の重力自体が30倍になってしまったかの印象を受けてしまう面々であった。
「うぅ……。耳がキーーーーン! とするニャン。さっきまで感じていた寒さとはまた異質の寒さなのですニャン」
「サタン殿。この竜の住処の中には、いたいけな半猫半人も居ます。どうか、その威厳を少しだけも和らげてくださいませんか?」
「おっと、悪い悪い。このクソ生意気な竜が、俺様を現世に降臨させるために言霊に竜力を込めやがったからな。ちょっと、仕置きでもしようと思ったんだぜ」
力を持つ者は、その発声自体に力を乗せることが出来る。それを『言霊』と呼ぶのだが、その言葉通り、まさに言葉に力が乗るのだ、古龍や高位の天使、そして高位の悪魔ともなると。そして、言霊の竜力により、様子見していただけの悪魔皇をこの竜の住処内に呼び寄せたのが、紅玉眼の蒼き竜だったのである。
この行為に損害を被るのは、半猫半人に過ぎないミサ=ミケーンであった。ようやく、紅玉眼の蒼き竜からの冷気から解放されたというのに、ねっとりとねばつく粘液に絡み取られたかのような重さを身体に感じてしまうミサ=ミケーンであった。
しかしながら、悪魔皇ことサタンが地面へと着地し、背中の8枚羽をしまうと、彼から受ける重力は眼に見えて和らぐことになる。ミサ=ミケーンはようやく安堵の息を吐くことが出来るようになった。
「アンドレイ様のお知り合いですかニャン? すっごいイケメンですけど、底のわからない悪を感じるのですニャン」
「ミサ殿、それは彼にとってはただの誉め言葉なので、やめておいたほうが良いですよ。ほら、聞き耳を立てているのが丸わかりです。サタン殿の右耳がピクピク動いています」
悪魔にとって『悪』という言葉はそのまま誉め言葉になってしまう。気を良くした悪魔皇は腰に両手を当てながら踏ん反り返っていく。ここまで鼻高々な態度は、同じ七大悪魔のベリアルでも取らない。さすがは悪魔皇といった不遜な態度でもあった。
「よぉし、よぉし。気分が良い内に言っておいてやろう。竜皇がああなったのは、ただの寿命だ。しかし、それから後のことは、我も創造主:Y.O.N.Nも預かり知らぬことだ」
「ただの寿命? そして、その後のことは、お前たちですら、関わっていないことだと? それを信じろと言うのか!?」
「そんなにがなるんじゃねえ……。俺様が誰だと知っての狼藉……か?」
紅玉眼の蒼き竜はグヌゥ……と唸る他無かった。悪魔皇の身体からドス黒いオーラが溢れ出したのだ。先ほどまで上機嫌だったと思えば、自分の言葉ひとつで、みるみる内に豹変していくのだ。まるで、今まではただ単に虫の居所が良かっただけだと言っているようにも思えた。古龍なぞ、指先ひとつでぶち殺しても構わんのだぞ? と、その雰囲気がそう言っていた。
「すまない。疑ったことは謝ろう」
「ちょっと!? アンドレイ様に対しての態度と、このイケメン悪魔に対しての態度が720度違うニャン!?」
「ミサ殿……。720度だと、2周回って同じですよ……」
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
マッサージ店員二人に、マッサージと称して喉奥責められながらおまんこほじられて上も下も強制快感責めされる女の子の話
ちひろ
恋愛
前回のマッサージのお話の続きです。
今回は村上くんも加わって、喉奥責められて喘げないのにいっぱいおまんこイかされちゃうし潮吹きでお顔びしょびしょになっちゃう話です。お楽しみくださいませ。
睡眠開発〜ドスケベな身体に変えちゃうぞ☆〜
丸井まー(旧:まー)
BL
本人に気づかれないようにやべぇ薬を盛って、毎晩こっそり受けの身体を開発して、ドスケベな身体にしちゃう変態攻めのお話。
なんかやべぇ変態薬師✕純粋に懐いている学生。
※くぴお・橘咲帆様に捧げます!やり過ぎました!ごめんなさい!反省してます!でも後悔はしてません!めちゃくちゃ楽しかったです!!
※喉イキ、おもらし、浣腸プレイ、睡眠姦、イラマチオ等があります。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。
イケメン御曹司の初恋
波木真帆
BL
ホテル王の御曹司である佐原恭一郎はゲイを公言しているものの、父親から女性に会うようにと頼まれた。
断りに行くつもりで仕方なく指定されたホテルラウンジで待っていると、中庭にいた可愛らしい人に目を奪われる。
初めてのことにドキドキしながら、急いで彼の元に向かうと彼にとんでもないお願いをされて……。
イケメンスパダリ御曹司のドキドキ初恋の物語です。
甘々ハッピーエンドですのでさらっと読んでいただけると思います。
R18には※つけます。
【R18】先生が、なんでもお願い聞いてくれるって言ったから【官能】
ななこす
恋愛
痴漢に遭った谷珠莉(たにじゅり)は、かねてから憧れていた教師、村瀬智生(むらせともき)に助けられる。
ひょんなことから距離の縮まった珠莉と村瀬の、禁断関係の行く末を見守る話。
*官能表現、R-18表現多くなる予定です。ご容赦下さい。
サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―
文月 沙織
BL
祖国を出た軍人ダリクは、異国の地サファヴィアで娼館の用心棒として働くことになった。だが、そこにはなんとかつての上官で貴族のサイラスが囚われていた。彼とは因縁があり、ダリクが国を出る理由をつくった相手だ。
性奴隷にされることになったかつての上官が、目のまえでいたぶられる様子を、ダリクは復讐の想いをこめて見つめる。
誇りたかき軍人貴族は、異国の娼館で男娼に堕ちていくーー。
かなり過激な性描写があります。十八歳以下の方はご遠慮ください。
その令嬢は兵器である
基本二度寝
恋愛
貴族の子女だけを集めた舞踏会。
その場で王太子は婚約破棄を宣言した。
傍らに、婚約者令嬢の従妹を侍らせて。
婚約者は首を傾げる。
婚約の破棄などしてもよいのかと。
王太子と従妹は薄ら笑いを浮かべている。
彼らは愚かな事をしたことに、気づかずに。
※若干のR表現
※タイトル【凶器】→【兵器】に変更しました。
※ちょこちょこ内容変更しまくってすいません…。
憧れの剣士とセフレになったけど俺は本気で恋してます!
藤間背骨
BL
若い傭兵・クエルチアは、凄腕の傭兵・ディヒトバイと戦って負け、その強さに憧れた。
クエルチアは戦場から姿を消したディヒトバイを探し続け、数年後に見つけた彼は闘技場の剣闘士になっていた。
初めてディヒトバイの素顔を見たクエルチアは一目惚れし、彼と戦うために剣闘士になる。
そして、勢いで体を重ねてしまう。
それ以来戦いのあとはディヒトバイと寝ることになったが、自分の気持ちを伝えるのが怖くて体だけの関係を続けていた。
このままでいいのかと悩むクエルチアは護衛の依頼を持ちかけられる。これを機にクエルチアは勇気を出してディヒトバイと想いを伝えようとするが――。
※2人の関係ではありませんが、近親相姦描写が含まれるため苦手な方はご注意ください。
※年下わんこ攻め×人生に疲れたおじさん受け
※毎日更新・午後8時投稿・全32話
ヒーローの末路
真鉄
BL
狼系獣人ヴィラン×ガチムチ系ヒーロー
正義のヒーロー・ブラックムーンは悪の組織に囚われていた。肉体を改造され、ヴィランたちの性欲処理便器として陵辱される日々――。
ヒーロー陵辱/異種姦/獣人×人間/パイズリ/潮吹き/亀頭球
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる