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第6章:救世主
第1話:真偽
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「お買い上げありがとうございました!」
マルコ=ポーニャは元気に頭を下げると、パタパタと足音を鳴らしながら、宿屋の階段を下っていく。すっかり陽が落ちかけているために、父親にはどこをほっつき歩いていたんだっ! と怒られるかもしれないと心配してしまうアリス=アンジェラであったが、マルコ=ポーニャは『金貨1枚分に値するお返しをした』とお父さんに言うと、たくましささえ見せる。
アリス=アンジェラは部屋のドアのところで両手を握り合わせ、どうかマルコ=ポーニャが父親にどやされないように手配してほしいと創造主:Y.O.N.N様に願い出る。創造主:Y.O.N.Nとしても、マルコ=ポーニャがアリス=アンジェラを暴走状態へと陥りかけたきっかけを創ったことになるが、それでもあの少年の手により、アリス=アンジェラの暴走が止まった事実を受け入れざるをえなくなる。
「ありがとうございマス、創造主:Y.O.N.N様」
創造主:Y.O.N.N様から肯定の言葉を受けたアリス=アンジェラは未だにジンジンと痛むお尻をスカート越しでさすりつつ、部屋の中へと戻っていく。その後、アリス=アンジェラの様子を見にきたコッシロー=ネヅに余った卵料理をアンドレイ様と共に食べてほしいと願い出る。
「どうしたのでッチュウ? 色気よりも食い気のアリスちゃんが自分が買った分を他のひとにわけるなんて?」
「うーん、ちょっと今日は卵はお腹いっぱいかなと思いまシテ」
さもありなんと思えてしまうコッシロー=ネヅである。出来あいものの屋台で余っていた分を全て購入してくるところはアリス=アンジェラらしいと言えば、らしい行為である。大方、そこの店主の口車に乗せられて、根こそぎ全部買ってしまったのだろうというのは想像に難くない。
そして、それらの半分を腹に収めたは良いが、さすがに見るのも嫌になってきたのだろうと思う、コッシロー=ネヅであった。残りはアンドレイ様とふたりで平らげておくとアリス=アンジェラに言い、コッシロー=ネヅは背中に乗せた卵料理を落とさぬように注意しながら、階段を下へと降りていく。
「おやおや……。これはちょっと買い過ぎなんじゃないですか?」
「自分もそこにツッコミを入れたかったでッチュウけど、お腹満腹丸のアリスちゃんの機嫌を自分から損ねる気はなかったのでッチュウ。自分たちでも食べ切れなかったら、ベリアルに残飯処理させるでッチュウ」
コッシロー=ネヅがそう言うものの、何を考えて、これほどの量の卵料理を買い込んでしまったのか? と疑問に思わざるをえないアンドレイ=ラプソティであった。いくら卵は身体に良い食品と言えども、限度というモノがある。しかし、文句ばかり言ったところで、眼の前に並べられた卵料理が減るわけではない。
「ん? 我輩におすそ分けだと? てか、ゆで卵ばっかりじゃねえかっ! もっと他の物を持ってこいよっ!」
アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅは余ったオムレツ、オムライスなどを食べたのだが、ゆで卵はさすにが1日3個くらいまでしか食べれず、その余ったゆで卵を全てベリアルにおすそ分けと言いつつ、押し付けたのであった。ベリアルは頭をボリボリと掻きつつ、竹製の笊いっぱいに乗せられているゆで卵を受け取ると、部屋の奥へと戻っていく。
「やれやれ。口ではあんな風に言ってますけど、彼も存外、悪い気分ではなさそうでしたね」
「今度から、アリス嬢ちゃんひとりで買い物させてくんじゃねえぞっ! って言いながら、まんざらでも無かった感じをぷんぷん匂わせていたのでッチュウ」
「自分にとって、アリス殿は世話のかかる娘のように感じてしまっています。それはベリアルも同じなのでしょう」
アンドレイ=ラプソティたちはベリアルが泊まる部屋の前から退散し、自分が泊まる部屋へと戻っていく。そして、空いた皿を重ねた後、それらをベッドの脇の机の上に置き、アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅは明日のことについて、意見交換を始めるのであった。
「聖地:エルハザムに明日、踏み込んでみようと思います。預言者と救世主、そして救世主が『真』であれば、その救世主には守護天使が付くはずです」
「なるほどなのでッチュウ。創造主:Y.O.N.N様の真意を守護天使様から直接聞くわけでッチュウね?」
コッシロー=ネヅの質問に、コクリと首級を縦に振ることで肯定の言葉とするアンドレイ=ラプソティであった。救世主の守護天使ともなれば、自分を除く『天界の十三司徒』や『四大天使』の中の誰かであることは間違いない。今の段階で誰なのかは予想はつかないが、顔見知りであることは間違いないはずであった。
「ミカエル、ウリエル、ラファエル、ガブリエル……。いや、サンダルフォン?」
「その辺りは違うと思うでッチュウよ? 『四大天使』の彼女らは天魔大戦における指揮官なのでッチュウ。となれば、他の者だと思うのでッチュウ」
「私としては悪い意味で期待を裏切る者を守護天使に付けそうな気がするんですよね、まあ、ここで言い合ったところで、答えはわかりませんけれど」
アンドレイ=ラプソティはコッシロー殿が創造主:Y.O.N.N様から『ノーコメント!』という言葉を受け取ったことで、四大天使も候補にあがる可能性があることを指摘したのである。特にガブリエルは救世主受胎の告知を聖母に行った経歴持ちである。いくら四大天使と言えども、守護天使になる可能性は捨てきれないのであった。
コッシロー=ネヅとしては、四大天使は省いて良い気がしてならなかった。ベリアルとの情報交換で『第4次天魔大戦』が起きる可能性が低いことはわかっていたのだ。それゆえに『四大天使』が救世主の守護天使になる可能性もまた低いと言わざるをえない。
首級を左右に傾けながら、アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅは守護天使の候補となる天使の名を挙げていく。しかしながら、やはり実地で会ったほうが早いという結論に至るまで、それほど時間は要さなかった。
「では、ここは賭けといきましょう。私は『四大天使』と読みます」
「それは面白そうでッチュウね。なら、僕は『天界の三華天使』にさせてもらうのでッチュウ。賭けに買った方は負けた方に何をしてもらうことにするでッチュウ?」
「そう……ですね。救世主が『偽』だったら、その救世主の横っ面に拳を叩きこむのはどうでしょうか?」
「チュッチュッチュ! それは面白い賭けなのでッチュウ。市民から非難業々間違い無しなのでッチュウ。どうせなら、『真』でも、ぶん殴ってやれば良いんじゃないのでッチュウ?」
「さすがに『真』だったら、守護天使にとっちめられちゃいますよ? まあ、『偽』だったら、守護天使が付いているわけが無いのですがね?」
マルコ=ポーニャは元気に頭を下げると、パタパタと足音を鳴らしながら、宿屋の階段を下っていく。すっかり陽が落ちかけているために、父親にはどこをほっつき歩いていたんだっ! と怒られるかもしれないと心配してしまうアリス=アンジェラであったが、マルコ=ポーニャは『金貨1枚分に値するお返しをした』とお父さんに言うと、たくましささえ見せる。
アリス=アンジェラは部屋のドアのところで両手を握り合わせ、どうかマルコ=ポーニャが父親にどやされないように手配してほしいと創造主:Y.O.N.N様に願い出る。創造主:Y.O.N.Nとしても、マルコ=ポーニャがアリス=アンジェラを暴走状態へと陥りかけたきっかけを創ったことになるが、それでもあの少年の手により、アリス=アンジェラの暴走が止まった事実を受け入れざるをえなくなる。
「ありがとうございマス、創造主:Y.O.N.N様」
創造主:Y.O.N.N様から肯定の言葉を受けたアリス=アンジェラは未だにジンジンと痛むお尻をスカート越しでさすりつつ、部屋の中へと戻っていく。その後、アリス=アンジェラの様子を見にきたコッシロー=ネヅに余った卵料理をアンドレイ様と共に食べてほしいと願い出る。
「どうしたのでッチュウ? 色気よりも食い気のアリスちゃんが自分が買った分を他のひとにわけるなんて?」
「うーん、ちょっと今日は卵はお腹いっぱいかなと思いまシテ」
さもありなんと思えてしまうコッシロー=ネヅである。出来あいものの屋台で余っていた分を全て購入してくるところはアリス=アンジェラらしいと言えば、らしい行為である。大方、そこの店主の口車に乗せられて、根こそぎ全部買ってしまったのだろうというのは想像に難くない。
そして、それらの半分を腹に収めたは良いが、さすがに見るのも嫌になってきたのだろうと思う、コッシロー=ネヅであった。残りはアンドレイ様とふたりで平らげておくとアリス=アンジェラに言い、コッシロー=ネヅは背中に乗せた卵料理を落とさぬように注意しながら、階段を下へと降りていく。
「おやおや……。これはちょっと買い過ぎなんじゃないですか?」
「自分もそこにツッコミを入れたかったでッチュウけど、お腹満腹丸のアリスちゃんの機嫌を自分から損ねる気はなかったのでッチュウ。自分たちでも食べ切れなかったら、ベリアルに残飯処理させるでッチュウ」
コッシロー=ネヅがそう言うものの、何を考えて、これほどの量の卵料理を買い込んでしまったのか? と疑問に思わざるをえないアンドレイ=ラプソティであった。いくら卵は身体に良い食品と言えども、限度というモノがある。しかし、文句ばかり言ったところで、眼の前に並べられた卵料理が減るわけではない。
「ん? 我輩におすそ分けだと? てか、ゆで卵ばっかりじゃねえかっ! もっと他の物を持ってこいよっ!」
アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅは余ったオムレツ、オムライスなどを食べたのだが、ゆで卵はさすにが1日3個くらいまでしか食べれず、その余ったゆで卵を全てベリアルにおすそ分けと言いつつ、押し付けたのであった。ベリアルは頭をボリボリと掻きつつ、竹製の笊いっぱいに乗せられているゆで卵を受け取ると、部屋の奥へと戻っていく。
「やれやれ。口ではあんな風に言ってますけど、彼も存外、悪い気分ではなさそうでしたね」
「今度から、アリス嬢ちゃんひとりで買い物させてくんじゃねえぞっ! って言いながら、まんざらでも無かった感じをぷんぷん匂わせていたのでッチュウ」
「自分にとって、アリス殿は世話のかかる娘のように感じてしまっています。それはベリアルも同じなのでしょう」
アンドレイ=ラプソティたちはベリアルが泊まる部屋の前から退散し、自分が泊まる部屋へと戻っていく。そして、空いた皿を重ねた後、それらをベッドの脇の机の上に置き、アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅは明日のことについて、意見交換を始めるのであった。
「聖地:エルハザムに明日、踏み込んでみようと思います。預言者と救世主、そして救世主が『真』であれば、その救世主には守護天使が付くはずです」
「なるほどなのでッチュウ。創造主:Y.O.N.N様の真意を守護天使様から直接聞くわけでッチュウね?」
コッシロー=ネヅの質問に、コクリと首級を縦に振ることで肯定の言葉とするアンドレイ=ラプソティであった。救世主の守護天使ともなれば、自分を除く『天界の十三司徒』や『四大天使』の中の誰かであることは間違いない。今の段階で誰なのかは予想はつかないが、顔見知りであることは間違いないはずであった。
「ミカエル、ウリエル、ラファエル、ガブリエル……。いや、サンダルフォン?」
「その辺りは違うと思うでッチュウよ? 『四大天使』の彼女らは天魔大戦における指揮官なのでッチュウ。となれば、他の者だと思うのでッチュウ」
「私としては悪い意味で期待を裏切る者を守護天使に付けそうな気がするんですよね、まあ、ここで言い合ったところで、答えはわかりませんけれど」
アンドレイ=ラプソティはコッシロー殿が創造主:Y.O.N.N様から『ノーコメント!』という言葉を受け取ったことで、四大天使も候補にあがる可能性があることを指摘したのである。特にガブリエルは救世主受胎の告知を聖母に行った経歴持ちである。いくら四大天使と言えども、守護天使になる可能性は捨てきれないのであった。
コッシロー=ネヅとしては、四大天使は省いて良い気がしてならなかった。ベリアルとの情報交換で『第4次天魔大戦』が起きる可能性が低いことはわかっていたのだ。それゆえに『四大天使』が救世主の守護天使になる可能性もまた低いと言わざるをえない。
首級を左右に傾けながら、アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅは守護天使の候補となる天使の名を挙げていく。しかしながら、やはり実地で会ったほうが早いという結論に至るまで、それほど時間は要さなかった。
「では、ここは賭けといきましょう。私は『四大天使』と読みます」
「それは面白そうでッチュウね。なら、僕は『天界の三華天使』にさせてもらうのでッチュウ。賭けに買った方は負けた方に何をしてもらうことにするでッチュウ?」
「そう……ですね。救世主が『偽』だったら、その救世主の横っ面に拳を叩きこむのはどうでしょうか?」
「チュッチュッチュ! それは面白い賭けなのでッチュウ。市民から非難業々間違い無しなのでッチュウ。どうせなら、『真』でも、ぶん殴ってやれば良いんじゃないのでッチュウ?」
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