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第5章:天使の卵
第2話:厭戦感情
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アンドレイ=ラプソティはベッドの上で横たわりながら、先ほど、同じテーブルに椅子を並べて、そこに座って麦酒とソーセージを味わっていた飲み仲間のアリス=アンジェラのことを思い出す。あの時のアリス=アンジェラは意識的に視線をベリアルには向けていなかった。ベリアルがら『魅了』を喰らわないように注意しているというより、根本的に毛嫌いしているかのようにも思えた。それゆえか、彼女と彼の間では必要以上の会話は為されていない。
(アリス殿は熱狂的な創造主:Y.O.N.N様の絶対的な信奉者ですから、そういう態度を取っても当然とも言えるのですが……。しかしながら、機転を利かせることも時には重要……です)
アンドレイ=ラプソティはまぶたが非常に重いと感じつつも、アリス殿に忠告しておこうと思うのであった。しかしながら、この腹枕は気持ち良すぎる。枕代わりになっているコッシロー殿はグースカピースカと寝息を立てているが、それが眠りの邪魔になるどころか、子守歌に感じてしまうアンドレイ=ラプソティである。
襲い掛かる眠気に負けぬようにとアンドレイ=ラプソティは抗ってみせる。実のところ、アリス殿はとにかく繊細だと思えてしまう。頑なな性格であるがゆえに、ヒトの言葉で心が振動しやすいのではなかろうか? という危惧を抱いているアンドレイ=ラプソティである。
アリス=アンジェラはその振動しやすい心を護るために、その心の防御結界が異常に分厚い類の天使だと思えて仕方がない。そして、そういう天使ほど、心の防御結界が砕けた時は、非常に脆い存在になってしまう。
アンドレイ=ラプソティは実際にその眼で堕天していった天使や半天半人たちを見てきた。ここ、数百年でその数を増やしに増やした半天半人たちであったが、その半天半人たちが天界を席巻するに至っていないのは『堕天』が関係しているとも言えた。
そして、増えに増えた半天半人たちであったが、その半数以上が堕天した事件が起きた。それこそ『第3次天魔大戦』である。純血種の天使たちは創造主:Y.O.N.N様に対して、『疑念を抱く』という『自由意志』を持っている。それが日常茶飯事と言えたので、逆に創造主:Y.O.N.N様の無茶振りに対しての耐性力は自然と上がっているのだ。
しかし、半天半人はその存在ゆえか、創造主:Y.O.N.N様を熱狂的に信奉してしまっている。創造主:Y.O.N.N様の御言葉は『全て正しい』と、自分に言い聞かせるかのように呪文のように唱えてしまっていた。そして、『第3次天魔大戦』が長引けば長引くほど、彼らの熱狂的な呪文は声高に叫ばれるようになる。
そこにつけこんだのが悪魔皇であるサタンと悪魔将軍であるルシフェルであった。悪魔側は半天半人の存在により、『第3次天魔大戦』において、常に戦場では兵数の不利を強いられてきた。
戦争には勝つための『定石』がある。『敵よりも数で勝て』なのだ。単純であるが、これが一番、敵に対して苦痛を与えるし、自軍にとって、これほど有利なことは無い。これを巻き返すには『技術』が必要になってくる。
その『技術』とは相手よりも数段優れた武具をを身に纏うことなども含まれる。しかしながら、天界と魔界との武具の質はほぼ同等であった。それゆえに悪魔側がやったことは、悪魔が最も得意とする『魅了』の技術をフルに活用したことであった。こればかりは天界側も油断していたと過言しても間違いない。
第3次天魔大戦において、兵数上の不利を覆すために、悪魔側がやったことは遅滞活動であった。ぶっちゃけ、戦争において、兵数が有利な方は何も考えずに押し込めば良いだけである。これは天界、魔界だけでなく、地上界でも通用する戦争の基本的原則であった。そして、天界側は何も考えずに一方的に悪魔たちを追い込んでいった。
しかしながら、悪魔たちは追い込まれていく中でも、粘るだけ粘ってみせた。そして、魔界への入り口にあった砦において、悪魔はなんとその数300で10数年、粘ってみせたのだ。魔界の入り口の番人として、馬頭鬼、牛頭鬼、そしてその悪魔たちよりも勇名を馳せた存在が居た。
頭は三つ。口は三つ。眼は合わせて6つ。しかしながら、その口からは地獄の炎を吐き、純血種の天使だけでなく、半天半人たちを散々に焼いた。そう、その存在とは地獄の番犬であった。その獣の全長はゆうに100ミャートルあり、神力押ししてくる半天半人たちの命を散々に奪った。
そして、この小砦を落とすことが出来ない天界側には『厭戦感情』が高まり続ける。まさに『これ以上戦う意義などあるのか?』という疑念が半天半人たちの心に生じ、さらには日に日に高まったのだ。地上界から悪魔の勢力を一掃した。そして、天界は地上界と魔界の入り口にあるこの小砦を占領することで、『第3次天魔大戦』の決着としようとした。
しかし、これこそ悪魔の手のひらで踊ることになったのだ、天界側は。ヒトも天使も騙されていたのだ、憎き悪魔たちに。ここまでの連戦連勝で天界と地上界はイケイケ押せ押せモードになっていた。そして、前方には兵数300しか立て籠もっていない小砦である。しかしながら、さすがは『地獄の門』と呼ばれているだけはあり、呼ばれてもいない天使に対して、淫乱な女の膣口のように淫靡に華開くことは無かった。
鉄の聖女のように純潔を守り続けて十数年。ついに股開いたその膣口の奥からは魔界で牙を研ぎ続けた悪魔66万6666の兵士たちが一斉に飛び出す。厭戦感情に支配されていて、士気を否応なく落としていた1000万の天界側の兵士たちは自分たちより10分の1に満たぬ兵数に散々に敗れることになる。
そして、その責任を一斉に創造主:Y.O.N.Nにぶつけた半天半人たちは、創造主:Y.O.N.Nから無下な言葉をぶつけられる。純血種の天使たちはまあ、そう言うだろうなという予感を前から持っていたために、創造主:Y.O.N.Nの暴言は軽く受け流せた。しかし、納得いかなかった半天半人の4分の3は『堕天』してしまうことになる。
創造主:Y.O.N.Nはただ一言、『負けるべくして負けた』と言い放っただけなのだが、受け取り側にとってはまさに『暴言』としか思えなかったのである。純血種の天使は日に日に膨れる厭戦感情により、この辺でお茶を濁して終わるのだろうと予想していたのである。しかし、半天半人たちにとって、創造主:Y.O.N.Nの言葉は『裏切り』になっただけである。そして、堕天した半天半人たちは悪魔と成り果て、『第3次天魔大戦』が終えて、100年近く経った今も魔界で創造主:Y.O.N.Nを恨み続けていた……。
(アリス殿は熱狂的な創造主:Y.O.N.N様の絶対的な信奉者ですから、そういう態度を取っても当然とも言えるのですが……。しかしながら、機転を利かせることも時には重要……です)
アンドレイ=ラプソティはまぶたが非常に重いと感じつつも、アリス殿に忠告しておこうと思うのであった。しかしながら、この腹枕は気持ち良すぎる。枕代わりになっているコッシロー殿はグースカピースカと寝息を立てているが、それが眠りの邪魔になるどころか、子守歌に感じてしまうアンドレイ=ラプソティである。
襲い掛かる眠気に負けぬようにとアンドレイ=ラプソティは抗ってみせる。実のところ、アリス殿はとにかく繊細だと思えてしまう。頑なな性格であるがゆえに、ヒトの言葉で心が振動しやすいのではなかろうか? という危惧を抱いているアンドレイ=ラプソティである。
アリス=アンジェラはその振動しやすい心を護るために、その心の防御結界が異常に分厚い類の天使だと思えて仕方がない。そして、そういう天使ほど、心の防御結界が砕けた時は、非常に脆い存在になってしまう。
アンドレイ=ラプソティは実際にその眼で堕天していった天使や半天半人たちを見てきた。ここ、数百年でその数を増やしに増やした半天半人たちであったが、その半天半人たちが天界を席巻するに至っていないのは『堕天』が関係しているとも言えた。
そして、増えに増えた半天半人たちであったが、その半数以上が堕天した事件が起きた。それこそ『第3次天魔大戦』である。純血種の天使たちは創造主:Y.O.N.N様に対して、『疑念を抱く』という『自由意志』を持っている。それが日常茶飯事と言えたので、逆に創造主:Y.O.N.N様の無茶振りに対しての耐性力は自然と上がっているのだ。
しかし、半天半人はその存在ゆえか、創造主:Y.O.N.N様を熱狂的に信奉してしまっている。創造主:Y.O.N.N様の御言葉は『全て正しい』と、自分に言い聞かせるかのように呪文のように唱えてしまっていた。そして、『第3次天魔大戦』が長引けば長引くほど、彼らの熱狂的な呪文は声高に叫ばれるようになる。
そこにつけこんだのが悪魔皇であるサタンと悪魔将軍であるルシフェルであった。悪魔側は半天半人の存在により、『第3次天魔大戦』において、常に戦場では兵数の不利を強いられてきた。
戦争には勝つための『定石』がある。『敵よりも数で勝て』なのだ。単純であるが、これが一番、敵に対して苦痛を与えるし、自軍にとって、これほど有利なことは無い。これを巻き返すには『技術』が必要になってくる。
その『技術』とは相手よりも数段優れた武具をを身に纏うことなども含まれる。しかしながら、天界と魔界との武具の質はほぼ同等であった。それゆえに悪魔側がやったことは、悪魔が最も得意とする『魅了』の技術をフルに活用したことであった。こればかりは天界側も油断していたと過言しても間違いない。
第3次天魔大戦において、兵数上の不利を覆すために、悪魔側がやったことは遅滞活動であった。ぶっちゃけ、戦争において、兵数が有利な方は何も考えずに押し込めば良いだけである。これは天界、魔界だけでなく、地上界でも通用する戦争の基本的原則であった。そして、天界側は何も考えずに一方的に悪魔たちを追い込んでいった。
しかしながら、悪魔たちは追い込まれていく中でも、粘るだけ粘ってみせた。そして、魔界への入り口にあった砦において、悪魔はなんとその数300で10数年、粘ってみせたのだ。魔界の入り口の番人として、馬頭鬼、牛頭鬼、そしてその悪魔たちよりも勇名を馳せた存在が居た。
頭は三つ。口は三つ。眼は合わせて6つ。しかしながら、その口からは地獄の炎を吐き、純血種の天使だけでなく、半天半人たちを散々に焼いた。そう、その存在とは地獄の番犬であった。その獣の全長はゆうに100ミャートルあり、神力押ししてくる半天半人たちの命を散々に奪った。
そして、この小砦を落とすことが出来ない天界側には『厭戦感情』が高まり続ける。まさに『これ以上戦う意義などあるのか?』という疑念が半天半人たちの心に生じ、さらには日に日に高まったのだ。地上界から悪魔の勢力を一掃した。そして、天界は地上界と魔界の入り口にあるこの小砦を占領することで、『第3次天魔大戦』の決着としようとした。
しかし、これこそ悪魔の手のひらで踊ることになったのだ、天界側は。ヒトも天使も騙されていたのだ、憎き悪魔たちに。ここまでの連戦連勝で天界と地上界はイケイケ押せ押せモードになっていた。そして、前方には兵数300しか立て籠もっていない小砦である。しかしながら、さすがは『地獄の門』と呼ばれているだけはあり、呼ばれてもいない天使に対して、淫乱な女の膣口のように淫靡に華開くことは無かった。
鉄の聖女のように純潔を守り続けて十数年。ついに股開いたその膣口の奥からは魔界で牙を研ぎ続けた悪魔66万6666の兵士たちが一斉に飛び出す。厭戦感情に支配されていて、士気を否応なく落としていた1000万の天界側の兵士たちは自分たちより10分の1に満たぬ兵数に散々に敗れることになる。
そして、その責任を一斉に創造主:Y.O.N.Nにぶつけた半天半人たちは、創造主:Y.O.N.Nから無下な言葉をぶつけられる。純血種の天使たちはまあ、そう言うだろうなという予感を前から持っていたために、創造主:Y.O.N.Nの暴言は軽く受け流せた。しかし、納得いかなかった半天半人の4分の3は『堕天』してしまうことになる。
創造主:Y.O.N.Nはただ一言、『負けるべくして負けた』と言い放っただけなのだが、受け取り側にとってはまさに『暴言』としか思えなかったのである。純血種の天使は日に日に膨れる厭戦感情により、この辺でお茶を濁して終わるのだろうと予想していたのである。しかし、半天半人たちにとって、創造主:Y.O.N.Nの言葉は『裏切り』になっただけである。そして、堕天した半天半人たちは悪魔と成り果て、『第3次天魔大戦』が終えて、100年近く経った今も魔界で創造主:Y.O.N.Nを恨み続けていた……。
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