上 下
26 / 202
第3章:怠惰

第5話:怠惰への誘惑

しおりを挟む
 しかし、それを眼の前の少女に怒鳴るように叩きつけるのは間違っていた。それゆえにベリアルは自分のこめかみから青筋が消えていくようにと努める。気分の上下が激しいのは『怠惰』を身上とする自分にはふさわしくはない。だが、創造主:Y.O.N.Nが絡むとどうしても、自分たち『七大悪魔』は、あの存在の意志とは外れたことを実行したくなってしまう。

 ベリアルは最初、サタンの言われるままにアンドレイ=ラプソティを堕天させようとした。どこからかレオン=アレクサンダーの天命が回収されつつあることを嗅ぎつけたサタンが、創造主:Y.O.N.Nに痛手を負わせようとしたのである。しかし、アンドレイ=ラプソティは堕天移行状態へと陥ったが、からくもそこから脱出するに至る。

 そして、いざ、久しぶりにアンドレイ=ラプソティと会話をしてみれば、天使とはまさにこいつのことだと言わしめんばかりに反りが合わない。こんな男を堕天させたところで、生来からの石頭は治らないとさえ思ってしまう。ルシフェルもまたアンドレイ=ラプソティと同程度の頭の固さであったが、『七大悪魔』となってからの長い年月が彼を柔軟な性格に変えさせた。

 あの過程をもう1度やりたいとは、アンドレイ=ラプソティ相手には考えたくないベリアルであった。それならいっそ、自分の膝の上に乗せている小娘を『家族になろう』と口説き落としたほうが1億倍マシな気がしてならないベリアルであった。もちろん『家族になろう』と言っても、このちんちくりんを嫁にもらう気は無い。近親相姦のタブーが無い悪魔としては、そりゃあ1発ヤッテも良いかなと思うところはあっても、決して、自分の嫁にしたくはない類の性格である、アリス=アンジェラは。

 自分の娘として扱うなら、まだ可愛げを感じるだけである。ベリアルは真剣な表情を崩し、いつもながらの優男の顔へと戻る。実際のところ、ベリアルは『怠惰』の権現様であり、そもそもとして3分以上、真剣な表情を保っていられない。凝り固まった顔の筋肉をほぐすかのようにベリアルはゴキゴキと顎の骨を鳴らす。

 そうした後、ベリアルはアリス=アンジェラににんまりと悪魔の笑顔で、再度、自分の娘にならないかと『誘惑』する。しかし、アリス=アンジェラは『混ざり者』といっても天使であるために、ベリアルの放った『誘惑』には引っかからなかった。

「残念ながら、ボクは貴方の家族になる気はこれっぽちもありまセン」

「そう言うと思ったよ。なら仕方がねえ。そっちがその気になったら、我輩に一声掛けてくれ。なるべく苦しまないように『堕天』させえてやるからよ」

 アリス=アンジェラとしては拍子抜けであった。『七大悪魔』は『欲』の体現者である。一度でも欲しいと思った人や物をそう簡単に諦めてしまえるのかと思ってしまう。しかしながら、ベリアルは『怠惰』の体現者なのだ。そこをアリス=アンジェラが失念しているだけである。

「我輩は生来からの怠け者なんだ。決して、堕天してから性格がこう変わったわけじゃない。だから女を必死に口説くのも面倒くせえ」

「さすがは悪魔なのデス。それほど苦労せずに抱ける女をご所望なのデスネ。残念ながら、アリスはそんな安い女じゃありまセン」

「そう、そこよ。わかってるじゃねえか。さすがは天使だ。女を抱きたいときは娼婦を買う。それが何故、お前らには『悪』となる? 気の無い女を無理やり手籠めにしないだけ、我輩たちはマシだろうが」

「話の論点がズレていマス。今はボクのみさおの話デス。貴方にあげるものなんか、何もありまセン」

「おっと、そりゃすまねえ。お前のみさおの値段の話だったか。我輩の落ち度だな、これは。しかし、我輩は自分の娘がどんな男と突き合おうが、介入はしないぜ? どうだ、これでアンドレイ=ラプソティの石頭についていくよりかは遥かにマシだろ!?」

「言っている意味がとことんわかりまセン。持ってきてくれた衣服に関しては感謝いたしマス。でも、それ以外に関しては唾棄すべき案件デス。では、これニテ」

 アリス=アンジェラはそう言うとベリアルの膝の上から立ち上がり、持ってきてもらった衣服を手に取り、そそくさと瓦礫の向こう側へと消えて行ってしまう。ベリアルはにんまりと悪魔の笑顔のままに、去っていくアリス=アンジェラの尻をショーツ越しにじっくりと観察する。

(やっぱ、さっき我輩のおちんこさんが異常に勃起したのは、あれはただ単に我輩の性癖の一部に大ヒットしただけだな。あいつのショーツから未だに零れ落ちる雫を見ても、何にも興奮しねえわ)

 ベリアルはアリス=アンジェラを膝の上に乗せているさなか、アリス=アンジェラが履いているショーツから愛液が染み出しているのを感じ取っていた。ベリアルが『誘惑』を使い、アリス=アンジェラをその気にさせようとしたために起こった彼女の生理現象でもある。

 しかし、さすがは『混ざり者』といえども天使である。下の口は正直でも、上の口からは理性溢れる言葉を発していたアリス=アンジェラである。ベリアルはそもそもツンデレが嫌いであるし、自分の娘として迎え入れようとしている彼女を本気でずぶ濡れにしてやろうとも思っていなかった。ただ単に『誘惑耐性』がどれほどのものかと確かめてみただけである。

(まあ、あのアリス嬢ちゃんの雰囲気から察するに、自分の指で自分を慰めたことすら無いんだろ。さっきの戦いで消耗しきった上の不意打ちを喰らっておきながら、我輩の『誘惑』には引っかからなかった。なら、アリス嬢ちゃんは『天界の十三司徒』と並ぶほどの耐性持ちだろうな……)

 ベリアルはどうしたものかと勘案するが、そういった思考すらも『面倒くさい』という思考に段々と覆われていく。そして、疲れたとばかりにその辺にあった材木を枕に眠りに落ちる。そのため、ベリアルはアリス=アンジェラが実は相当、危険な域に陥りかけていたことを見逃してしまうことになる。

「ハァハァ……。身体があつぅいのデス! さすがは『七大悪魔』で『怠惰』を司っているだけはあるのっデス!」

 アリス=アンジェラはすたころさっさとばかりに瓦礫の向こう側に小走りで走っていった。しかし、それは一秒でも早くベリアルから物理的に距離を取るためであった。突然、下腹部に襲い掛かってきた熱がアリス=アンジェラの秘部を焼きつつあったのだ。

 アリス=アンジェラとしては最初、それをただの尿意だと思っていた。しかし、いくら尿道口を必死に閉じようが、違う部分から液体が溢れ出していることに気づいたのである。それを知られる前にアリス=アンジェラはベリアルから距離を開ける。アリス=アンジェラが瓦礫の向こう側へと隠れた後、彼女は産まれたての鹿のようにガクガクブルブルと両足を震わせることになる。

 そんな状態でも、アリス=アンジェラはさらに遠くへと逃げる。汚れた地面にポタポタと自分がよくわかってない透明な液体を雫として零しながら……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ店員二人に、マッサージと称して喉奥責められながらおまんこほじられて上も下も強制快感責めされる女の子の話

ちひろ
恋愛
前回のマッサージのお話の続きです。 今回は村上くんも加わって、喉奥責められて喘げないのにいっぱいおまんこイかされちゃうし潮吹きでお顔びしょびしょになっちゃう話です。お楽しみくださいませ。

睡眠開発〜ドスケベな身体に変えちゃうぞ☆〜

丸井まー(旧:まー)
BL
本人に気づかれないようにやべぇ薬を盛って、毎晩こっそり受けの身体を開発して、ドスケベな身体にしちゃう変態攻めのお話。 なんかやべぇ変態薬師✕純粋に懐いている学生。 ※くぴお・橘咲帆様に捧げます!やり過ぎました!ごめんなさい!反省してます!でも後悔はしてません!めちゃくちゃ楽しかったです!! ※喉イキ、おもらし、浣腸プレイ、睡眠姦、イラマチオ等があります。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

イケメン御曹司の初恋

波木真帆
BL
ホテル王の御曹司である佐原恭一郎はゲイを公言しているものの、父親から女性に会うようにと頼まれた。 断りに行くつもりで仕方なく指定されたホテルラウンジで待っていると、中庭にいた可愛らしい人に目を奪われる。 初めてのことにドキドキしながら、急いで彼の元に向かうと彼にとんでもないお願いをされて……。 イケメンスパダリ御曹司のドキドキ初恋の物語です。 甘々ハッピーエンドですのでさらっと読んでいただけると思います。 R18には※つけます。

【R18】先生が、なんでもお願い聞いてくれるって言ったから【官能】

ななこす
恋愛
痴漢に遭った谷珠莉(たにじゅり)は、かねてから憧れていた教師、村瀬智生(むらせともき)に助けられる。 ひょんなことから距離の縮まった珠莉と村瀬の、禁断関係の行く末を見守る話。 *官能表現、R-18表現多くなる予定です。ご容赦下さい。

サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―

文月 沙織
BL
祖国を出た軍人ダリクは、異国の地サファヴィアで娼館の用心棒として働くことになった。だが、そこにはなんとかつての上官で貴族のサイラスが囚われていた。彼とは因縁があり、ダリクが国を出る理由をつくった相手だ。 性奴隷にされることになったかつての上官が、目のまえでいたぶられる様子を、ダリクは復讐の想いをこめて見つめる。 誇りたかき軍人貴族は、異国の娼館で男娼に堕ちていくーー。 かなり過激な性描写があります。十八歳以下の方はご遠慮ください。

その令嬢は兵器である

基本二度寝
恋愛
貴族の子女だけを集めた舞踏会。 その場で王太子は婚約破棄を宣言した。 傍らに、婚約者令嬢の従妹を侍らせて。 婚約者は首を傾げる。 婚約の破棄などしてもよいのかと。 王太子と従妹は薄ら笑いを浮かべている。 彼らは愚かな事をしたことに、気づかずに。 ※若干のR表現 ※タイトル【凶器】→【兵器】に変更しました。 ※ちょこちょこ内容変更しまくってすいません…。

憧れの剣士とセフレになったけど俺は本気で恋してます!

藤間背骨
BL
若い傭兵・クエルチアは、凄腕の傭兵・ディヒトバイと戦って負け、その強さに憧れた。 クエルチアは戦場から姿を消したディヒトバイを探し続け、数年後に見つけた彼は闘技場の剣闘士になっていた。 初めてディヒトバイの素顔を見たクエルチアは一目惚れし、彼と戦うために剣闘士になる。 そして、勢いで体を重ねてしまう。 それ以来戦いのあとはディヒトバイと寝ることになったが、自分の気持ちを伝えるのが怖くて体だけの関係を続けていた。 このままでいいのかと悩むクエルチアは護衛の依頼を持ちかけられる。これを機にクエルチアは勇気を出してディヒトバイと想いを伝えようとするが――。 ※2人の関係ではありませんが、近親相姦描写が含まれるため苦手な方はご注意ください。 ※年下わんこ攻め×人生に疲れたおじさん受け ※毎日更新・午後8時投稿・全32話

ヒーローの末路

真鉄
BL
狼系獣人ヴィラン×ガチムチ系ヒーロー 正義のヒーロー・ブラックムーンは悪の組織に囚われていた。肉体を改造され、ヴィランたちの性欲処理便器として陵辱される日々――。 ヒーロー陵辱/異種姦/獣人×人間/パイズリ/潮吹き/亀頭球

処理中です...