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第3章:怠惰

第4話:その果て

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 先ほどまで荒々しい男の手で身体中を揉み砕かれていたというのに、今度は羽毛のように柔らかな淑女レディたちの優しい手で撫で上げられるという行為にさらされることになる。アリス=アンジェラはこそばゆいその感覚が身を襲うたびに、軽くビクッ! ビクッ! と身体を跳ね上がらせてしまう。

 そんなアリス=アンジェラが可愛く想えたのか、光の粒子へと変わっていく肉の触手たちは、今度こそ、愛の籠った『愛撫』の意味を込めてのアリス=アンジェラをやさしく撫で上げていく。足裏、足首からふくらはぎにかけての筋肉。細いウェストの引き締まった筋肉。肩甲骨からうなじにかけての筋肉。どれもこれも触れられるだけで、身体が跳ね上がってしょうがないところばかりだ。

 そして、乳首を振れるか触れないかの軽すぎる感触でアリス=アンジェラがひと際、ビクンと跳ね上がり、背中を逆方向に逸らせる。そして、浮いた腰と太ももの間を間髪入れずに光の流離が流れ込む。こればかりはアリス=アンジェラも両手を解き、祈りのポーズを崩し、両手で秘部を覆い隠してしまうことになる。

「やられまシタ。乳首のはフェイントだったのデス……。アリス=アンジェラはいくさの中で無理やりいくさを忘れさせられたのデス。これ以上無い屈辱デス!」

 アリス=アンジェラが秘部を両手で覆い隠しながら、土下座のようなポーズを取る。しかし、いたずらな光の粒子はアンジェラ=キシャルの秘部を撫で上げつつ、さらにはお尻の谷間を抜けて、ついには昇天するのであった。アリス=アンジェラが悔しさに顔を紅く染めるが、お尻の谷間とそこにある菊門を撫で上げられ、ついにはイヒィィィ!? と素っ頓狂な声をあげてしまう。

 アリス=アンジェラは赤面しつつ両手で顔を覆い隠していた。ここまで恥ずかしすぎる声を人前で上げたことなど一度も無い。アリス=アンジェラはシクシクと悔し涙を流しながら、顔を両手で覆い隠しつつ、地面に横倒れになるしか無かった……。

 アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅ、ベリアルは年頃の少女が汚れた地面の上でシクシク泣いているのをどうしたものかと扱いに困ってしまうことになる。彼らはわかっていたのだ。アリス=アンジェラが謎の肉塊の塔が完全に崩壊するその間際に『イカサレて』しまったことを。そして、それを殿方連中に見られてしまったことを。

 アリス=アンジェラはよく頑張ったほうなのである。あそこまで肉ある触手で断崖絶壁のさきっちょにある乳首を丹念に刺激されながらも、それに耐えきったのだ。女性としての尊厳を保つために、どれほどアリス=アンジェラが耐え抜いたのかは、アンドレイ=ラプソティたちにも痛いほどわかる。

 しかし、不意打ちを喰らったアリス=アンジェラも悪いのだが、それでも意地悪いとしか言いようが無い謎の肉塊の塔の置き土産である。アンドレイ=ラプソティ、コッシロー=ネヅ、ベリアルの3人組は互いの顔を見合い、コクリと頷き合う。そして、シクシクと泣き崩れるアリス=アンジェラをその場において、アンドレイ=ラプソティたちは破壊しくされた村の中へと探索に出かけるのであった。

 アンドレイ=ラプソティとコッシロー=ネヅは真面目に今夜の食事の食材を探し求めて、破壊しつくされた村の中を探索していた。だが、ベリアルは『七大悪魔』である。悪魔的紳士さを発揮して、アリス=アンジェラが剥き出しになってしまった肌を覆い隠すための衣服を探し求めていた。そして、ベリアルがよっし、これで良いだろと見繕った衣服を手に持ち、未だにシクシクと泣き続けているアリス=アンジェラへの下へと駆け寄っていく。

「アリス嬢ちゃん。そんな恰好じゃ、寒いだろ」

「あ、ありがとうございマス。でも、もうしばらく放っておいてくれたほうが助かるのデスガ」

「いやいや。すっかり陽も大地の向こう側に隠れようとしてんだ。そんな恰好じゃ風邪を引いちまうだろ」

 アリス=アンジェラは唇をアヒルのクチバシのように尖らせる。しかし、まるで我が子をあやすかのようにベリアルはアリス=アンジェラを宥め、落ち着かせる。そして、左腕に掛けてある衣服をアリス=アンジェラに手渡していく。

「おっと。すまんすまん。衣服の前にショーツだったな。ずぶ濡れのままで服を着たら、きもちぶべぇぇぇぇ!?」

「最悪デス! このひと、最悪デス! 見てたんデスカ!? アリスの痴態をじっくり観察してたんデスカ!?」

 アリス=アンジェラはぼろ布1枚だというのに、ベリアルの左頬に右のこぶしを思いっ切り叩きこむ。それだけでは足りずとばかりに、地面に背中をつけて伸びている彼の腹の上に馬乗りとなり、左右のこぶしを交互にベリアルの顔面へと叩きつける。アリス=アンジェラは出来るならベリアルの脳内から先ほどの自分の痴態の記憶全てを消し去ろうとした。

 しかし、アリス=アンジェラはふとベリアルが自分が交互に繰り出すこぶしを甘んじて受けている感覚に捉われることになり、両腕をピタリと止めてしまうことになる。ベリアルは止まってしまった攻撃の後、両目を軽く開き、アリス=アンジェラにこう告げる。

「この感情が何かがようやくわかった気がしたぜ。なあ、アリス嬢ちゃん。俺の娘にならないか?」

「な、何を言っているのデス!? 殴られすぎて壊れてしまいまシタカ!?」

 アリス=アンジェラは背中に怖気が走ってしまう。どう考えても年齢的に曾々孫か、それ以上に連綿と続く家系を形成していそうなベリアルに自分の直の娘にならないか? と誘われたのだ。これ以上に気持ち悪い話など早々に無い。ベリアルはそう言った後、アリス=アンジェラの尻を太ももの方へと動かしつつ、上半身を起こす。そして、アリス=アンジェラの左手を両手で握りしめ、先ほどまでの飄々とした顔つきを真剣なものに変える。

「アンドレイ=ラプソティが言っていたが、お前は『混ざり者』なんだろ? 天界で家族と呼べるような者たちは居ないはずだ」

「そ、それは偏見カト! 創造主:Y.O.N.N様がボクのパパです。ママはコッシローさんです!」

 アリス=アンジェラの返答にベリアルはカハハッ! と乾いた笑いを零さずにはいられなかった。バカにされたと思ったアリス=アンジェラはムッとした表情になる。しかし、ベリアルはうつむき加減で創造主:Y.O.N.Nへの想いを彼女に告げる。

「あれを父親だと思うのはやめておけ。しょせん俺たちはあいつの道具にしかすぎない……」

「それこそ誤解なのデス! もし貴方の言う通り、創造主:Y.O.N.N様がボクたち天使を道具としか見ないのならば、そもそも『自由意志』を持たせないはずなのデス!」

 アリス=アンジェラの口から『自由意志』という言葉を聞いたベリアルは、こめかみにビキッ! と青筋が1本浮かび上がってしまう。まるで自分たちが創造主;Y.O.N.Nに逆らうこの意志さえも、創造主:Y.O.N.Nのてのひらの上でのことなのかとさえ、叫んでしまいそうになる。
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