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やべえ

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「大人しくすりゃ悪いこたねえよ。」
「俺と一緒にいた奴はどうしたっ。」
「ああ?一緒にいた奴~?」


「オルですよ。こいつを連れてこいとのことでしたので、置いてきました。」
「あいつも良い値で売れただろうに。」
「船長。ふたりも捕まえると騒ぎになりますよ。レッドキャッスルに出入り禁止になります。」


「そりゃ困る。仕方ねえ。こいつ売って満足すっかあ。」
「ええ。これなら良い値で売れますとも。」
「楽しみだなあ。」


ゲラゲラ笑ってアホ二人が部屋を出て行った。
オルは無事なのか。良かった。


じゃあ、船には俺だけか。自分のことだけ考えればいいわけだ。
鎖も両足を繋いだだけのやつだし、歩くことは出来そうだな。


重りはついてねえし、手も自由。
…あいつら何がしてえんだ?


鎖自体は重いけどよ。動くことは出来るぜ?
こっち来てからかなり筋肉ついたからな。


問題は走れるかだ。
ガレオン船かそれ以上の船だと、船底から上まで何層にも仕切られていたはずだ。


上にたどり着くまで誰にも会わねえってのは無理だろうから、いざって時に走れなきゃいけないだろう。
明かりがねえのも痛いな。


この部屋にも外にも明かりはない。
船の中なら当たり前だけどな。必要最低限しか火を使わねえから、明かりは少ない。


だが、困った。目は慣れてきたけど、それでも見えねえんだよなあ。
う~ん。売るつもりなら下手なことしねえだろうし、しばらくは様子見か。


それにしても、俺、すげえ落ち着いてんな。
攫われて、売られそうだってのに。


理由はわかってんだけどな。船長だ。
たぶん、船長は来てくれると思うんだよ。


俺を助けにっていうより、落とし前をつけに。
ここまでコケにされて黙ってる人じゃねえし。


見習いってことになってるけど、俺は船長の所有物だ。
自分の物を取られて黙ってるなんてあり得ねえ。


今頃、怒り狂ってんだろうなあ。
もしかして、このまま戻ったら怒られんじゃね?


『何、勝手に攫われてやがるっ。』


って感じで。
うわあ。やべえ。何かで誤魔化さないと。


何で誤魔化す?やっぱお宝か?
それとも酒かな。


船底は食糧庫になってることが多い。
ここからなら近いだろ。


この部屋の周りには人もいなさそうだし、大人しくしとけば隠せねえかな。
あ~。でも樽か。ビンの酒は船長室だよな。


でも、他に思い付かねえし、ちっと覗いてみっか。
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