異世界で海賊始めました

待ち時間は長い４

「サイ！酒もってこい！」


「はい！」


今日はもう７回目だ。
機嫌悪いなあ。


あれから２週間。
帝国の王子様は、まだいるらしい。


鍵がないんだから、２、３日で諦めて帰ると思ったんだけどなあ。


王子様って忙しいんじゃないのか？
跡継ぎじゃなくたって、王子様としての仕事はあるだろうに。しつこいなあ。


早く帰ってくんないかな。
船長の機嫌が悪くて悪くて。


早歩きで酒を酌んでくる。
とにかく早く持っていかないと。


そろそろ蹴られそうなんだよな。
この頃毎日蹴られてて、アザになってきてる。


オルが湿布してくれてるけど、治る端から蹴られてるからなあ。
流石にこれ以上はってオルが止めようとしてくれたけど、それは俺が止めた。


蹴りっつっても、「一発だけ」なんだよな。
この程度で下手に止められると、溜まりに溜まって爆破した時がヤバい。
船長のまじ機嫌悪りぃ時は、蹴りなんて何発もくるし、さらには拳もくるから。


あれ、痛いんだよなあ。しかも拳の方が。
何で蹴りより拳の方が痛いんだ？
普通蹴りの方が威力あんだし、おかしいだろ。


「船長、酒持って来ました。」


「遅え！！」


ぐえ。さ、酒は。よし零してない。
「すんません。」と何とか声を絞り出し、船長の前にジョッキを置く。


声を出せるだけ、今日の蹴りはマシなんだけどな。
ヤジスさん、早く帰ってこないかなあ。たしか、１週間くらい前だったよな？


「サイ！とにかく早くすましてくっから！それまで死ぬなよ！」


なんて、縁起でもない言葉を残して、どこ行ったんだか。
王子様関係らしいってのはオルから聞いたけど、誰にも言うな聞くなって言われたしな。


今はヤジスさんがあの王子様をどうにかしてくれるのを待つばかりだ。
壁際に下がって空気になりながら、魔王と化した船長の側で、俺はひたすら耐えた。