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薄氷の上でワルツを
五十五.
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「来年の春、か・・・・・・」
ラウラがジュリオから来年の春にダリオ殿下との婚約が結ばれる事、そして正式発表を春花祭の頃に行われる事を聞かされた。
そしてそれは当然グィードも父から聞かされた。
慌ただしいが、裏で彼等が動いてくれたお陰である。
これで暫くはアルバーノはまともに動けなくなった事であろう。元々、野心が過ぎて周囲から浮いていた男である。其処へきて、大臣達は日和見主義を保っていたが悪魔が働きかけたお陰でアルバーノは急速に、窓際へ追いやられる様に邪険に扱われるようになっていった。
今頃、アルバーノはどうして自分がこんな事になっているのか分からず困惑している事だろう。
そして魔女ルイスはと言えば、自分の手駒になる筈の男達が死んでこの世に居ない事を知らされておらず、暢気に遊び暮らしている様だった。
アルバーノがその事を知らせずに、自分の事に必死になって奔走しているせいである。
元より、連携なぞ取れていない連中だからこのまま仲違いでもしてくれれば清々すると言う物だ。
「春花祭・・・・・・気に食わん祭だな」
と、唐突にそう言ったのはルシフェールであった。
春花祭とは、愛の女神であり春を司るアンヌンツィアータの聖誕祭である。老若男女問わず花でその身を飾って春の訪れを祝う祭りである。
「花でその身を飾る、と言うのだけは賛成だ」
ルシフェールがそう言ってパチリッ、と指を鳴らした瞬間────グィードを、いきなりその身を美しく飾り立てた姿へと変身させた。
「うわ・・・・・・っ!」
いきなり背まで伸びた艶やかな黒髪の、両サイドの蟀谷部分の髪を三つ編みにして藤の花を編み込んでそれ以外の部分はそのまま流し、先程まで着ていた服も何時の間にかぺプロスと呼ばれるワンピース風の衣服を身に着けていた。
二枚の布を両端から上を少し縫い残して着て左右の肩から手首までを数か所ピンで留め、腰をベルトで締めて優美なたるみを作るそれはイオニア式と言う様式の、女性の衣服であった。
しかも身体が完全に透けて見える薄布であった為随分と扇情的な恰好になっている。
驚いて頬を赤らめながらその姿に恥じらう姿が、随分と可憐に見えた男達は途端色めき立った。
「おお、これはこれは・・・・・・」
「随分と可憐な藤の精ですなあ」
「斯様な美しい精ならば我らでも誘惑されてしまうと言うもの」
するすると大きな悪魔達の手が伸びて、グィードをあっという間に自分達の腕の中へと攫った。
「ふふ、愛いな」
言い乍ら、ルシフェールは悪魔達の愛撫に溶け乱れはじめたグィードを目を細めて眺めていた。
暫くの間────来年学園に入学するまでは何もする事は無い。
「ふむ、暫くはこうやってのんびり過ごすのも悪くは無いな」
レツィーナと言うぶどうジュースに松脂を入れた独特な風味を持つ白ワインを舐める様にちびちび飲んでいたルシフェールは、甘い悲鳴をBGMに独り言ちた。
こんな下らない世界なぞさっさと見切りを付ければ良いのに、と思うが愛おしい妻の願いは最後まで叶えるのが夫の務めである。
グィードの気の済む迄付き合うさ、とルシフェールは寛大さを見せるのであった。
ラウラがジュリオから来年の春にダリオ殿下との婚約が結ばれる事、そして正式発表を春花祭の頃に行われる事を聞かされた。
そしてそれは当然グィードも父から聞かされた。
慌ただしいが、裏で彼等が動いてくれたお陰である。
これで暫くはアルバーノはまともに動けなくなった事であろう。元々、野心が過ぎて周囲から浮いていた男である。其処へきて、大臣達は日和見主義を保っていたが悪魔が働きかけたお陰でアルバーノは急速に、窓際へ追いやられる様に邪険に扱われるようになっていった。
今頃、アルバーノはどうして自分がこんな事になっているのか分からず困惑している事だろう。
そして魔女ルイスはと言えば、自分の手駒になる筈の男達が死んでこの世に居ない事を知らされておらず、暢気に遊び暮らしている様だった。
アルバーノがその事を知らせずに、自分の事に必死になって奔走しているせいである。
元より、連携なぞ取れていない連中だからこのまま仲違いでもしてくれれば清々すると言う物だ。
「春花祭・・・・・・気に食わん祭だな」
と、唐突にそう言ったのはルシフェールであった。
春花祭とは、愛の女神であり春を司るアンヌンツィアータの聖誕祭である。老若男女問わず花でその身を飾って春の訪れを祝う祭りである。
「花でその身を飾る、と言うのだけは賛成だ」
ルシフェールがそう言ってパチリッ、と指を鳴らした瞬間────グィードを、いきなりその身を美しく飾り立てた姿へと変身させた。
「うわ・・・・・・っ!」
いきなり背まで伸びた艶やかな黒髪の、両サイドの蟀谷部分の髪を三つ編みにして藤の花を編み込んでそれ以外の部分はそのまま流し、先程まで着ていた服も何時の間にかぺプロスと呼ばれるワンピース風の衣服を身に着けていた。
二枚の布を両端から上を少し縫い残して着て左右の肩から手首までを数か所ピンで留め、腰をベルトで締めて優美なたるみを作るそれはイオニア式と言う様式の、女性の衣服であった。
しかも身体が完全に透けて見える薄布であった為随分と扇情的な恰好になっている。
驚いて頬を赤らめながらその姿に恥じらう姿が、随分と可憐に見えた男達は途端色めき立った。
「おお、これはこれは・・・・・・」
「随分と可憐な藤の精ですなあ」
「斯様な美しい精ならば我らでも誘惑されてしまうと言うもの」
するすると大きな悪魔達の手が伸びて、グィードをあっという間に自分達の腕の中へと攫った。
「ふふ、愛いな」
言い乍ら、ルシフェールは悪魔達の愛撫に溶け乱れはじめたグィードを目を細めて眺めていた。
暫くの間────来年学園に入学するまでは何もする事は無い。
「ふむ、暫くはこうやってのんびり過ごすのも悪くは無いな」
レツィーナと言うぶどうジュースに松脂を入れた独特な風味を持つ白ワインを舐める様にちびちび飲んでいたルシフェールは、甘い悲鳴をBGMに独り言ちた。
こんな下らない世界なぞさっさと見切りを付ければ良いのに、と思うが愛おしい妻の願いは最後まで叶えるのが夫の務めである。
グィードの気の済む迄付き合うさ、とルシフェールは寛大さを見せるのであった。
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