復讐はショコラよりも甘い

璃々丸

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天国への階段を下りる

四十五.

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「・・・・・・またか」
 ジュリオがそう呟き溜息を吐きたくなるのも無理はない。前回のオルランドに引き続き、今回はラウルである。
 。速達で届けられた書状はラウルの父親であり、この国の宰相であるジャンパオロからであった。
 書状の内容はラウルが如何やら親友の仇討ちの積もりか、其方を訴えようとしていた。書類に不備があった為気付けたが、このまま除籍しても其方に迷惑を掛けるのは明白である為、話し合いの席を設けて話し合いの内容を除籍する決定的な理由としたいらしい事が書かれていた。
 面倒事に何故自分達が巻き込まれているのか、訳が分からずジュリオには頭の痛い話である。
 最近はグィードも何かを隠しているような素振りを見せているが、何か関係あるのだろうか?
「・・・・・・はあ、今度はビスカルディーニ令息、ですか」
 部屋で勉強をしていたグィードを呼び出し、手紙の事を告げると呆れを含んだ様にそう言った。
「ああ、私も同じ気持ちだよ。 一先ず、をするから、お前は何も心配しなくていい」
「はい」
 。筋書きは父親たちの中で既に出来上がっている事だろう、それをどう擦り合わせるか話し合おう、と言う訳だ。
「可哀想に、ラウル令息・・・・・・」
 口にする程白々しいものも無い。廊下を歩きながらぽつりと呟いてみたが、罪悪感だとかが全く湧いてこない。
 前の時間軸でも彼の悪辣さは朧気でも覚えている。罪を作り出してラウラを陥れ、それだけでなくグィードやバルディーニ家すらも貶める様な言動をしていた。
 そしてそれに便乗するように女性ラウラに腕力による暴力を揮うオルランド。
 それは当然、第一王子のカルロの後ろ盾があっての言動である。そしてそれを止めない王子にも憤りを感じた。
 学園に入学する頃に復讐するなんて悠長なことはしない。ただし、カルロだけは別だ。魔女ルイスの動きを制限する為にはが必要になるからである。
 そして妹の幸せを願うならダリオを魔女に捧げるわけにはいかない。
 今頃魔女達も慌てている事だろう。オルランドがブランツォーニ家を除籍されているが、貴族たちの間では何処かで生きている説と、もうとっくに野垂れ死にしている説が流れているらしいがそれぞれ信じている者は半々のようである。
 どちらにせよ、手駒が減ってしまったのだから、計画は崩れ始めている筈だ。これで、ラウルが退場するような事があれば、魔女はどうすればいいのか分からなくなるだろう。
 王子を使うわけにもいかないからこそ、その為だけにあのふたりが。  
 カルロの側近候補は他に何人か居るが、あのふたり程心許した者もいない為学園に入学する頃になっても決まらないだろう、とベルゼビュートが見立てていた。
 俄かに側近になった所で、王子の為と言い乍ら”前の時間軸”のような事をすればその者は直ぐにでも退学の後、その家はおとり潰しである。
 だから、少々を働いても許される程の存在でなくては困るのだ。
「ふ、ふふっ・・・・・・どんな話し合いをしてくれるのかなあ、楽しみだ」
 妖艶に濡れる瞳を細めて、グィードはくすくすと忍び笑った。
「ご機嫌でございますな」
 そう言いながら肩にショールを掛けてきたのは、人型になったダエーワであった。
「ふふふ、だって・・・・・・」
 振り返りながらダエーワに腕を広げ抱っこを強請ると、男は黙って抱き上げた。壊れ物を扱う様に丁寧に、しかし軽々と抱き上げてダエーワはグィードの顔を覗き込む。
「だって、皆が俺の思う様に動いてくれる。 それが、嬉しくて」
 にんまりと浮かべた笑みはまさに悪魔の如く悍ましいのに、ダエーワはその顔を見ても顔を顰める所か愛おし気に目を細めて見つめ返していた。
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