30 / 83
地獄への道は美しく舗装されている
二十八.
しおりを挟む
邸に戻ったグィードを出迎えたのはラウラを筆頭に、邸中の侍女侍従、使用人達が総出で出迎えに来たのかと思う程沢山の人間が待ち構えていた。
「お兄様っ!」
「グィード様っ!!」
と、わっ、と人が押し寄せてくるものだからグィードは思わず声を上げた。
「うわっ・・・・・・ちょ、皆どうして・・・・・・」
「お兄様・・・・・・」
グィードの頬の湿布を見てラウラが泣き崩れそうになったのを、グィードが慌てて抱き留める。
「お兄様・・・・・・なんておいたわしい・・・・・・」
サファイアの如く深い青の瞳から大粒の涙をぽろぽろと零した。この程度の傷ぐらい大丈夫なのに、と思ったがよく考えれば今迄顔に傷なぞ負った事なんて無かったのに気付いた。
だからか、大した傷でなくともどうしても派手に見えてしまう顔の傷に、皆が過剰に反応しても仕方が無い話なのかもしれない。
「何だ何だ、何事があったんだ」
グィードの後方からジュリオが声を掛けてきた。如何やらジュリオと帰宅のタイミングがかち合ってしまったらしい。
「ち、父上・・・・・・ッ」
「む・・・・・・?」
慌てて振り向くグィードの右頬に湿布が貼られているのを見て、ジュリオの顔が険しいものになった。
「何があった」
ずんずんと此方に向かって歩いてきたと思えば、怖いくらい真剣な顔と声音で見下ろされる。グィードは思わず怯んだ。しかし、それに構わずジュリオの大きく無骨な手が伸びてきて、グィードの顎を掴んで無理矢理上向かせた。
「いっ・・・・・・!」
流石に無理矢理は痛い。しかし、それが返って何か説得力を持たせたのかジュリオが更にその表情を険しくさせた。
「・・・・・・話せ」
「はい・・・・・・」
皆を落ち着かせ、ラウラを彼女付きの侍女に任せるとジュリオとグィードはジュリオの執務室へと向かった。
そして執務室で今日に至る迄の経緯を搔い摘んで話しながら、それから今日あった出来事等を、グィードは全て話した。
「成程・・・・・・男同士の痴話喧嘩に巻き込まれた、と言う事か」
身も蓋もない言い草だが、まあそうなるだろう。
「まあ、そうなるのですかね・・・・・・」
自分の向かいに座る父親は何かを見透かそうとするかのようにジッ、と此方を見て来る。否、睨む、と言っても過言ではないくらい厳しい目だ。
「何故殴られた?」
「・・・・・・まあ、向こうが何かと突っかかって来るので態と殴られて親を巻き込んでやろうかと思いまして」
「成程な」
全く、とジュリオが溜息を吐いた。
「分かった、取り敢えず話し合いの席を設けさせよう。後は私に任せなさい」
「ありがとうございます、父上」
一先ず面倒な事は全てジュリオがしてくれるだろう。これだけで大分手間が省ける。取り敢えずは全て向こうが悪い事になっているので、話し合いはそれ程難しくは無い筈だった。
向こうが────三人組が何か策を講じるだろう事は分かっている。一体どんな事を仕掛けて来るのか、ある意味楽しみにしているのだけれども。
その後、久しぶりの家族そろっての晩餐となった。湿布を貼ったままの食事は少々大変だったが、久しぶりの父の存在は矢張り安心するのか、ラウラが何時もより饒舌であった。
「ラウラ、父上はもうお疲れだから話の続きは明日にしなさい」
「はぁい、お父様、じゃあまた明日。お父様、お兄様、おやすみなさいませ」
「ああ、お休み」
「お休み、ラウラ」
ふたりとお休みのキスをして、それから見送られながらラウラは出て行った。
「・・・・・・では、俺も部屋に戻ります」
「ああ、お休み、グィード」
「お休みなさい。父上」
グィードはジュリオと挨拶をして食堂を出た。
やれやれ、今日は本当に色々あったなあ・・・・・・。
今日はシャワーを浴びてさっさと寝てしまおう。グィードはほう、と色っぽい溜息を吐いた。
「お兄様っ!」
「グィード様っ!!」
と、わっ、と人が押し寄せてくるものだからグィードは思わず声を上げた。
「うわっ・・・・・・ちょ、皆どうして・・・・・・」
「お兄様・・・・・・」
グィードの頬の湿布を見てラウラが泣き崩れそうになったのを、グィードが慌てて抱き留める。
「お兄様・・・・・・なんておいたわしい・・・・・・」
サファイアの如く深い青の瞳から大粒の涙をぽろぽろと零した。この程度の傷ぐらい大丈夫なのに、と思ったがよく考えれば今迄顔に傷なぞ負った事なんて無かったのに気付いた。
だからか、大した傷でなくともどうしても派手に見えてしまう顔の傷に、皆が過剰に反応しても仕方が無い話なのかもしれない。
「何だ何だ、何事があったんだ」
グィードの後方からジュリオが声を掛けてきた。如何やらジュリオと帰宅のタイミングがかち合ってしまったらしい。
「ち、父上・・・・・・ッ」
「む・・・・・・?」
慌てて振り向くグィードの右頬に湿布が貼られているのを見て、ジュリオの顔が険しいものになった。
「何があった」
ずんずんと此方に向かって歩いてきたと思えば、怖いくらい真剣な顔と声音で見下ろされる。グィードは思わず怯んだ。しかし、それに構わずジュリオの大きく無骨な手が伸びてきて、グィードの顎を掴んで無理矢理上向かせた。
「いっ・・・・・・!」
流石に無理矢理は痛い。しかし、それが返って何か説得力を持たせたのかジュリオが更にその表情を険しくさせた。
「・・・・・・話せ」
「はい・・・・・・」
皆を落ち着かせ、ラウラを彼女付きの侍女に任せるとジュリオとグィードはジュリオの執務室へと向かった。
そして執務室で今日に至る迄の経緯を搔い摘んで話しながら、それから今日あった出来事等を、グィードは全て話した。
「成程・・・・・・男同士の痴話喧嘩に巻き込まれた、と言う事か」
身も蓋もない言い草だが、まあそうなるだろう。
「まあ、そうなるのですかね・・・・・・」
自分の向かいに座る父親は何かを見透かそうとするかのようにジッ、と此方を見て来る。否、睨む、と言っても過言ではないくらい厳しい目だ。
「何故殴られた?」
「・・・・・・まあ、向こうが何かと突っかかって来るので態と殴られて親を巻き込んでやろうかと思いまして」
「成程な」
全く、とジュリオが溜息を吐いた。
「分かった、取り敢えず話し合いの席を設けさせよう。後は私に任せなさい」
「ありがとうございます、父上」
一先ず面倒な事は全てジュリオがしてくれるだろう。これだけで大分手間が省ける。取り敢えずは全て向こうが悪い事になっているので、話し合いはそれ程難しくは無い筈だった。
向こうが────三人組が何か策を講じるだろう事は分かっている。一体どんな事を仕掛けて来るのか、ある意味楽しみにしているのだけれども。
その後、久しぶりの家族そろっての晩餐となった。湿布を貼ったままの食事は少々大変だったが、久しぶりの父の存在は矢張り安心するのか、ラウラが何時もより饒舌であった。
「ラウラ、父上はもうお疲れだから話の続きは明日にしなさい」
「はぁい、お父様、じゃあまた明日。お父様、お兄様、おやすみなさいませ」
「ああ、お休み」
「お休み、ラウラ」
ふたりとお休みのキスをして、それから見送られながらラウラは出て行った。
「・・・・・・では、俺も部屋に戻ります」
「ああ、お休み、グィード」
「お休みなさい。父上」
グィードはジュリオと挨拶をして食堂を出た。
やれやれ、今日は本当に色々あったなあ・・・・・・。
今日はシャワーを浴びてさっさと寝てしまおう。グィードはほう、と色っぽい溜息を吐いた。
3
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
目標、それは
mahiro
BL
画面には、大好きな彼が今日も輝いている。それだけで幸せな気分になれるものだ。
今日も今日とて彼が歌っている曲を聴きながら大学に向かえば、友人から彼のライブがあるから一緒に行かないかと誘われ……?
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
純情将軍は第八王子を所望します
七瀬京
BL
隣国との戦で活躍した将軍・アーセールは、戦功の報償として(手違いで)第八王子・ルーウェを所望した。
かつて、アーセールはルーウェの言葉で救われており、ずっと、ルーウェの言葉を護符のようにして過ごしてきた。
一度、話がしたかっただけ……。
けれど、虐げられて育ったルーウェは、アーセールのことなど覚えて居らず、婚礼の夜、酷く怯えて居た……。
純情将軍×虐げられ王子の癒し愛
絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが
古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。
女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。
平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。
そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。
いや、だって、そんなことある?
あぶれたモブの運命が過酷すぎん?
――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――!
BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。
『ユキレラ』義妹に結婚寸前の彼氏を寝取られたど田舎者のオレが、泣きながら王都に出てきて運命を見つけたかもな話
真義あさひ
BL
尽くし男の永遠の片想い話。でも幸福。
ど田舎村出身の青年ユキレラは、結婚を翌月に控えた彼氏を義妹アデラに寝取られた。
確かにユキレラの物を何でも欲しがる妹だったが、まさかの婚約者まで奪われてはさすがに許せない。
絶縁状を叩きつけたその足でど田舎村を飛び出したユキレラは、王都を目指す。
そして夢いっぱいでやってきた王都に到着当日、酒場で安い酒を飲み過ぎて気づいたら翌朝、同じ寝台の中には裸の美少年が。
「えっ、嘘……これもしかして未成年じゃ……?」
冷や汗ダラダラでパニクっていたユキレラの前で、今まさに美少年が眠りから目覚めようとしていた。
※「王弟カズンの冒険前夜」の番外編、「家出少年ルシウスNEXT」の続編
「異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ」のメインキャラたちの子孫が主人公です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる