復讐はショコラよりも甘い

璃々丸

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地獄への道は美しく舗装されている

二十八.

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 邸に戻ったグィードを出迎えたのはラウラを筆頭に、邸中の侍女侍従、使用人達が総出で出迎えに来たのかと思う程沢山の人間が待ち構えていた。
「お兄様っ!」
「グィード様っ!!」
 と、わっ、と人が押し寄せてくるものだからグィードは思わず声を上げた。
「うわっ・・・・・・ちょ、皆どうして・・・・・・」
「お兄様・・・・・・」
 グィードの頬の湿布を見てラウラが泣き崩れそうになったのを、グィードが慌てて抱き留める。
「お兄様・・・・・・なんておいたわしい・・・・・・」
 サファイアの如く深い青の瞳から大粒の涙をぽろぽろと零した。この程度の傷ぐらい大丈夫なのに、と思ったがよく考えれば今迄顔に傷なぞ負った事なんて無かったのに気付いた。
 だからか、大した傷でなくともどうしても派手に見えてしまう顔の傷に、皆が過剰に反応しても仕方が無い話なのかもしれない。
「何だ何だ、何事があったんだ」
 グィードの後方からジュリオが声を掛けてきた。如何やらジュリオと帰宅のタイミングがかち合ってしまったらしい。
「ち、父上・・・・・・ッ」
「む・・・・・・?」
 慌てて振り向くグィードの右頬に湿布が貼られているのを見て、ジュリオの顔が険しいものになった。
「何があった」
 ずんずんと此方に向かって歩いてきたと思えば、怖いくらい真剣な顔と声音で見下ろされる。グィードは思わず怯んだ。しかし、それに構わずジュリオの大きく無骨な手が伸びてきて、グィードの顎を掴んで無理矢理上向かせた。
「いっ・・・・・・!」
 流石に無理矢理は痛い。しかし、それが返って何か説得力を持たせたのかジュリオが更にその表情を険しくさせた。
「・・・・・・話せ」
「はい・・・・・・」
 皆を落ち着かせ、ラウラを彼女付きの侍女に任せるとジュリオとグィードはジュリオの執務室へと向かった。
 そして執務室で今日に至る迄の経緯を搔い摘んで話しながら、それから今日あった出来事等を、グィードは全て話した。
「成程・・・・・・男同士の痴話喧嘩に巻き込まれた、と言う事か」
 身も蓋もない言い草だが、まあそうなるだろう。
「まあ、そうなるのですかね・・・・・・」
 自分の向かいに座る父親は何かを見透かそうとするかのようにジッ、と此方を見て来る。否、睨む、と言っても過言ではないくらい厳しい目だ。
「何故殴られた?」
「・・・・・・まあ、向こうが何かと突っかかって来るので態と殴られて親を巻き込んでやろうかと思いまして」
「成程な」
 全く、とジュリオが溜息を吐いた。
「分かった、取り敢えず話し合いの席を設けさせよう。後は私に任せなさい」
「ありがとうございます、父上」
 一先ず面倒な事は全てジュリオがしてくれるだろう。これだけで大分手間が省ける。取り敢えずは全て向こうが悪い事になっているので、話し合いはそれ程難しくは無い筈だった。
 向こうが────三人組が何か策を講じるだろう事は分かっている。一体どんな事を仕掛けて来るのか、ある意味楽しみにしているのだけれども。
 その後、久しぶりの家族そろっての晩餐となった。湿布を貼ったままの食事は少々大変だったが、久しぶりの父の存在は矢張り安心するのか、ラウラが何時もより饒舌であった。
「ラウラ、父上はもうお疲れだから話の続きは明日にしなさい」
「はぁい、お父様、じゃあまた明日。お父様、お兄様、おやすみなさいませ」
「ああ、お休み」
「お休み、ラウラ」
 ふたりとお休みのキスをして、それから見送られながらラウラは出て行った。
「・・・・・・では、俺も部屋に戻ります」
「ああ、お休み、グィード」
「お休みなさい。父上」
 グィードはジュリオと挨拶をして食堂を出た。
 やれやれ、今日は本当に色々あったなあ・・・・・・。
 今日はシャワーを浴びてさっさと寝てしまおう。グィードはほう、と色っぽい溜息を吐いた。
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